みんな大好き、あのVACが登場!!
お世話になった人も多い筈(白目)
第百八十五話 アクシデント
「よっと」
軽い掛け声と共にTARGETを破壊するスバル、その身体には傷一つ無く息も上がっていない、相方のティアナも同じく余力が有り余っている。
火力担当のスバル、頭脳担当のティアナ、彼女達はお互いの足り無い部分を上手くカバーしながら着々とゴールに向かって足を進めて行く。
順調なタイム、残るTARGETに手古摺ったとしても五分以上は残してゴール出来る程の好記録、しかし明るい表情のスバルとは裏腹にティアナの表情は晴れなかった。
「この調子なら余裕で合格だね、ティア!!」
「…………そうね」
「如何したのさ、暗いよ? 何か不安でもあるの?」
「あの試験官が言ってたでしょ、何かアクシデントが有るかもしれないってね、態々前置きするって事はそれなりの仕掛けが有るって事、そしてそのアクシデントに対する私達の反応を確かめるって訳よ」
「えっと……、それの何が問題なの?」
「そのアクシデントのレベルよ、私はてっきり床や天井の崩落とか、センサー式のトラップだとかを予想してたんだけど、床も天井も思いの外しっかりしてるし、そもそも何かを仕掛けた痕跡も残っていない、試験なんだし私達が絶対に見つけられ無い様な罠を張る訳が無いと思うからそう言った類いの物は可能性が低いと見て間違いないわ」
「じゃあ、ハッタリだったとか?」
「無くは無いだろうけど、ちょっと違うと思う」
「じゃあ、ティアの考えるアクシデントって?」
「…………情報に無い敵襲、要するに私達に教えられたTARGET以外の敵が出てくるって事、そろそろ折り返しだし仕掛けてくるならそろそろだと思うから気を付けて」
「了解!! もしもの時は指示よろしくね!!」
「はいはい、世話が焼けるんだからまったく」
矢でも鉄砲でも持ってこいと意気込むスバルとその様子に溜息を零すティアナ、二人の会話が終わると同時に隣のビルの屋上から一筋の閃光が彼女達に向かって発射される、気を抜いて居たスバルは反応が一瞬だけ遅れたものの、その背後からティアナがその閃光を撃ち落とす。
空中で魔力弾同士がぶつかり合い、花火の様に弾けると同時に二人は遮蔽物の影に隠れて目標を確認する。
中距離型のガジェット、TARGETの一つであり、中距離攻撃とフィールドバリアによる防御に受験者の半数が脱落すると言われている難関の一つ。
「如何するティア、此処から撃ち返す?」
「言ったでしょ、そろそろアクシデントが起きる頃合いだって、あんな物相手に余計な魔力を使ってられ無いわ」
「じゃあ何時も通り私が斬り込んでティアがサポート?」
「普段ならそれで良かったかもしれ無いけど、まだタイムにも余裕はあるし何が起きるか分からない状況で二手に別れるのは得策じゃ無いわ」
「じゃあ如何するの?」
「そうね……」
そう言って、ティアナは周囲をざっと見回し使えそうな物を探す、廃ビルの通路とは言え柔軟に頭を働かせれば幾らでも打開策を練ることは可能だ。
目を皿にして周辺を見回していたティアは何かを思い付き、早速スバルに指示を飛ばして剥き出しになっている鉄骨と、焼け残っている消火器を集めさせる。
身嗜み用の手鏡を使いながらガジェットの姿を確認しているティアナは、その序でに周辺にある物陰の索敵を済ませて行く。
「ティア、持って来たよ!!」
「オーケー、あんたの馬鹿力に期待してるわよ」
「まっかせといて!!」
一通り見回して敵がいない事を確かめたティアナは、スバルの持って来た消火器を窓からガジェットに向かって投げ付け、空中でそれらを撃ち抜き、内部に溜まったガスと薬剤を周囲に散布、それによって攻撃の手を止め、ガジェットのセンサーを目視できる様にし、そこに向かって助走を付けたスバルが鉄骨を投げつける。
気合いを入れた一投はフィールドバリアを容易く突破、一撃でガジェットを鉄屑へと変えた。
「…………ねぇティア、本当にコレ大丈夫?」
「何が?」
「だってこれ質量ーー」
「兵器じゃなくて建築資材だから大丈夫よ、ちょっとグレーゾーンだけどね」
そう言って、ティアナは余った消火器を念の為回収して立ち上がりタイムを確認しながらゴールまでの最短距離を割り出しながら移動を開始、あまりにも順調な為、ティアナの心配は杞憂だったのかとスバルが思った頃、彼女達の上空から何かが落下、二人は咄嗟に背後に飛び退くと土煙を上げながら目の前に着地したそれに対しての臨戦態勢を整える。
二人の前に降り立ったそれは青いAC、左右にはライフルとパルスマシンガン、ハンガーにはバトルライフルとレーザーブレード、バランスの良い構成をしたオールラウンダーなその機体は通称『テスト先生』と呼ばれており、その正体は嘗てブレンが撃破、鹵獲した『フレイムフライ』を改修して管理局が作り上げた一体で、主に陸の各部隊に抜き打ちテストを行う事を目的とした機体である、余談だがこの機体のAIはブレンの思考と戦闘技術をベースとしている為非常に手強く、そんな機体が有無を言わせず二人に襲い掛かって行く。
突然の奇襲に面喰らっていたスバルとは対照的に、やはりと言った表情を浮かべたティアナは足止めの為に数発発砲したのだが、テスト先生は小ジャンプを駆使しながらそれを回避、逆にパルスマシンガンの掃射を二人に浴びせ掛けながらバトルライフルで急所を狙い撃ちにする。
ティアナはばら撒かれる様に掃射されたパルスマシンガンの爆風の中で、咄嗟に自分達に向かって来るバトルライフルの弾丸を撃ち落とし、先ほど回収した消火器を投げ付ける。
撃ち落とした弾丸が跳ねた事と、派手さの割にパルスマシンガンの威力が少ない事から試験用に調整された機体である事は容易に想像が付いたが、同時に急所に一発でも被弾した場合即失格となる事も理解した。
消化剤による目眩まし、その隙に視線を使ってスバルに強襲する様に指示、彼女はそのサインに従い間髪入れずに殴り掛かったのだが、この襲撃は予想されていたのだろう、左手に握ったバトルライフルに拳を払われ、開いた胴体に重い蹴りを叩き込まれる。
地面をボールの様に跳ねながら転がっていたものの、スバルは途中で体勢を立て直し、足のローラを使用してブレーキを掛けて踏み止まったものの、内臓へのダメージによって吐き気に襲われている為、隙だらけとなっている。
それを見たティアナはスバルを連れて一度来た道を戻り、状況を打破する為に近くの部屋に飛び込んでその身を隠す、余裕があるとは言え手間取っていればタイムアップしてしまう、意地になって交戦してどうにかなる相手では無いと察したティアナは焦りを抑えながら彼我の戦力差の分析を初めようとした。
青いACはレーザーブレードを振るって消火剤を振り払い、周辺の索敵を開始、戦闘モードからスキャンモードに移行した青いACは壁を透過して逃亡した二人を発見する。
ホバー移動で廊下を走り、慣性を利用してターン、あっさりと発見されるとは思っていなかったティアナの隙を突いてライフルを発砲する。
反応の遅れから回避も迎撃も出来なかったティアナを救ったのはグロッキーだったスバル、彼女は近くに転がっていたロッカーを合図と共にACに向かって蹴り飛ばし、ティアナに向かう凶弾を撃ち落とすと共に鑪を踏ませる。
「ティア!!」
「バスター!! 柱!!」
短い掛け声と指示、一日二日のコンビでは無い二人の阿吽の呼吸に寄って行われたそれにより、スバルは自慢の一撃をティアナの指定した柱へと叩き込む。
ベルカ式のデバイスにカートリッジがロードされ、スバルは拳に魔力を纏う、精神を研ぎ澄ませながら強くイメージするのは、あの灼熱の地獄から自分を救い出してくれたあの人の姿、そしてその魔法。
「一撃、必倒!! ディバイン・バスタァァァァア!!」
全身の力を余すことなく乗せた拳、それを振り抜くと同時に発射された砲撃は指定された柱を粉砕し、支えを失った周辺の床と天井に致命的なダメージを与えて崩落させる。
ネクストとは違って長時間の飛行を行え無いACは床の崩落に巻き込まれて転落、コンクリートの天井板の追撃も合間って完全にその下に埋もれてしまう。
自身も崩落した床に巻き込まれたものの、即座にティアナはデバイスのアンカーを利用し、スバルを抱えながら無事なエリアに退避、そのままゴールに向かおうとしたが、コンクリートの掛け布団を跳ね除けながら崩落した床下から三角飛びでよじ登ってくるACを視認したティアナはスバルに道無き場所に道を創り出す魔法『ウイングロード』を発動させて光の道の上を彼女の背中に乗って駆け抜ける。
その際に発動した部分の道を消し、青いACの追撃の心配を無くしておく、万全を期す為に青いACの射程範囲外から大回りでゴールする事になる為タイム的にはギリギリになってしまうが、ティアナはそのままスバルにゴーサインを出した。
「ねぇティア!! アレ倒さなくても良いの!?」
「私達の試験内容は『指定したTARGETの全機破壊』と『指定時間内のゴール』の二つ、不測の事態に気を付けろとは言われたけどアレを撃破しろとは一言も言われてないわ!! 第一今の私達じゃあアレに対して勝ち目が全く無い!! 余計な心配しなくて良いから全力で振り切りなさい!!」
「了解!! ちょっと飛ばすからしっかり捕まって!!」
その言葉と共にスバルは加速する、背後からの攻撃を受け無いために速度を上げながらゴールへと近付いて行き、背中に背負ったティアが最後のTARGETを破壊し終わった瞬間、フルスロットルでゴールへと突っ込んで行った。
ーーーーこの時、数十秒残して予定時間に間に合ったのだが、唯一ティアナには誤算があった。
ーーーーそれはハイブーストを使って後方から猛然と追撃を開始して来ている青いACへの牽制に夢中になり過ぎ、スバルに対してブレーキの指示を出し忘れてしまい、止まる事が出来ずにゴールを突っ切ってしまった事である。
不死の英雄伝 〜舞台裏〜
なのは「ところで閣下、あの『テスト先生』の正式名称は何なんです? 前々から気になってるのですが……」
ブレン「ドーリー君曰く『テスト先生一号機』らしい」
なのは「えっ?」
ブレン「アレは『テスト先生』と言う愛称では無く、そのまま『テスト先生』と言う名称と言う事だよ、高町一等空尉」
なのは「ドーリーさんのネーミングセンスって……」
ブレン「あぁ、意外とアレだよ。フレイムフライの事も『蝿』って略してたしね」
なのは「あはは……」