「……なるほど、頭も切れるし腕もそれなりに立つか、実力を弁えている見たいだし、勇気と無謀の違いも分かっている、此れは中々育て甲斐があるんじゃ無いかな? 高町一等空尉」
「うん。ビシビシ鍛えるつもりですよ、閣下」
「それは良かった、じゃあ私は此れで席を外させて貰うが一つだけ」
「?」
「あの子達は背後を気にし過ぎて前の事に目が行っていない、事故る前に助けてあげたらどうかな、なのは」
「あちゃー……、うん、そうして来るね、ブレン君」
第百八十六話 機動六課
結局あの後、駆け付けたなのはによって事故寸前で助けられた二人。スバルは憧れの人との感動の再会を果たしていたのだが、リィンフォースから咳払いと共に危険行為の減点を受けて肩を落としていた。その様子を呆れながら眺めていたティアナ。まさかあの状態からACが追跡して来るとは思わず、減速の事を相棒と共に忘れていたと言うあまりにもアホな失敗に頭を抱えていた。
しかも相手側はなりふり構わ無い射撃にも関わらず、正確にウイングロードを狙い撃っていた、足場を破壊されて向こうの土俵に引き摺り込まれてはたまら無いと言う焦りから来た失敗、これでは落第物だろうとティアナもスバルと共に肩を落としていた。
試験後、二人はロビーで試験結果を待つ間、はやてから機動六課と言う部隊の説明と勧誘を受けていた。
対ロストロギア専門の独立性の高い少数精鋭によるフットワークによって行う迅速な対応が出来る実行部隊であり、それに加えて世間を騒がせるACやネクストと言った脅威への対策部隊、質量兵器を相手取る以上下手を打てば死亡するかも知れないし、仲間の死に直面するかもしれ無い部隊、彼女達二人はそう言う説明を受けた。
部隊の後見人として、クロノ・ハラオウン、リンディ・ハラオウン、ブレン・シュトッフに加え聖王教会からはカリム・グラシアもその名を連ねている為、管理局と聖王教会の両組織からバックアップを受ける事が出来る。
特に知名度の高いブレンからのバックアップは大きく、多種多彩な質量兵器の情報、テスト先生を始めとした訓練用のAC並びにMTの配備、管理局内部でも有数の最新設備、身内によるコネ部隊と言う陰口はあるものの、それ以上にリスキーなこの部隊には身内しか呼べなかったと言う事情や、他の部隊からの勧誘を行っても今以上に生死の境を彷徨う事になるこの部隊への出向に対して色よい返事が返ってこなかったと言う裏事情から其れ等は仕方の無い物だった。
此処で一つ問題があるとすれば、何故その様な部隊に新人を勧誘するのか、と言う点だ。
ベテランばかりを集めれば特科部隊など容易く出来てしまうのでは? とも思うだろうが、部隊によってはしがらみや因縁の様なものがある上、そもそもその様な人達は自分のスタイルと言うものが確立しており、此方の指示を聞く必要が無い。
経験の浅い新人は謂わば白紙のキャンパス。因縁やしがらみと言った物には疎く、経験から来る癖も無い。特科部隊に相応しい実力を持たせるにはハードトレーニングになってしまうが、それもまた仕方無し。
その他の細かい事情説明や、身の回りの事を説明し終えたはやては、一息つきながら紅茶を啜り喉を潤す。
「とまぁこう言った訳や、どうやろうか?」
「…………普通はそんな話を聞かされて喜んで所属する酔狂な人はいませんよ」
『えっ? そうなのティア?』
『そりゃあそうでしょうよ。確実に箔や実力は付くけど命の保証が全く無い部隊なのよ? 普通は誰も行か無いわよ、普通はね。て言うか態々こんな事念話使ってまで聞か無いでよ』
『ご、ごめんティア』
『……で? スバルは如何するの?』
『私? なのはさんも居るし強くなれるなら勿論入隊したいけど……』
『なら、決まりね』
そう言って念話を打ち切りながら居住まいを正し、はやての目を真っ直ぐに見つめるティアナ、慌てて自分を姿勢を直しながら共にはやてを見つめるスバル、そんな二つの視線に晒されたはやては其処に込められた意思を汲み取った。
「……どうやら、ランスター二等陸士とナカジマ二等陸士はその『酔狂』な人の様やな、ようこそ機動六課へ」
そう言って、はやてが二人の隊員を獲得したと同時になのはが試験結果を報告する為にロビーに姿を表した。
「良かった、丁度話しが終わった所だね。 じゃあ試験結果を発表するよ」
「「は、はい……」」
「二人とも実力やその他諸々は合格点、だけど最後の暴走が大きな減点、後先考えずにあのまま走ってたら大事故だったよね? 自分やパートナーを守る事は愚か、周りに被害を出すような真似をする人が他の人を守れると思う?」
「「…………はい」」
「だから残念だけど不合格、なんだけど」
そう前置きしたなのはは深い溜め息を吐きながら、次の言葉を待つ二人に向かって今回の試験の裏事情を説明する。
「今回の試験は直接ブレン少将がちょっかいを出した形でね? あの青いACは二人の反応だとか連携、性格を把握する為にかなり強めに作られた物で、本来ならまだまだ二人が如何にか出来るような代物じゃ無かったの」
「は、はぁ……」
「それって、つまり?」
「あの暴走も強敵から全力で逃走する為の物だったし、ランスター二等陸士も背後からの追撃にしっかりと対処出来ていました、少将も二人の対応を評価して居ましたので、其れ等を差し引いた結果ギリギリ合格です」
思わぬ合格宣言に面喰らった二人だったが、彼女らが喜び出す前になのははしっかりと釘を刺す。
「今回の合格は少将の評価点が入った合格だから危険行為そのものがチャラになった訳じゃないので特別講習を受けて貰う事になります、その点はしっかりと反省してね?」
「はい!! やったよティア、合格だって!!」
「あの……、こう言った事って良くある事なんですか?」
「んー、良くあるって程じゃないけど、君達の先輩にも同じ体験をしてる人が居るから其処まで珍しい事じゃ無いかな?」
なのはは朗らかな笑顔を見せながらティアナの疑問を解消すると、特別講習の資料を手渡しながら解散を言い渡す。此れから自分の部下になる二人に期待を寄せながらその将来を夢想し、立ち去る二人の背中を見送った。
STSはブレンの影が非常に薄くなります(白目)
それとAC4以降の人物も登場する事になるのでお気をつけ下さい。