不死の英雄伝 〜不屈の体現者〜   作:ACS

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みんな大好き妹様とエリオくん、それに加えて純粋なキャロちゃんの登場です。


不屈の体現者 187

第百八十七話 小さな騎士

 

 

スバルとティアナの両名が機動六課に入隊する事を決めたと同時刻、シグナムの迎えで更に三名の隊員が戦列に名を連ねる事になった。

 

『エリオ・モンディアル』

 

『キャロ・ル・ルシエ』

 

『ルーテシア・アルピーノ』

 

彼らは子供だが、その潜在能力は非常に高く、伸び代で言えばティアナ達の比では無い。

 

特にルーテシアに関しては高町家に居候になっていた際に高町恭弥による基礎トレーニングや高町なのはとの魔法講座、そして兄による戦いに対する心構えと不意の突き方などの英才教育を受けており、実力だけを考えるならならば現段階では新人達の中で最強、経験の浅さと基礎以外を学んでいないと言う所為で特化した能力こそ持っていないが、前中後のどの距離でも戦えるオールラウンダーとなっている、…………欠点があるとすれば、怠け癖と愉快犯であると言う点か。

 

他にも高速戦を得意とし雷の変換資質を持つエリオ、召喚術を筆頭に様々な補助魔法を持つキャロ、粒ぞろいの少年少女は将来が楽しみな原石と言った所、そんな事をつらつらと思いながらエスカレーターを登り、待ち合わせ場所に向かったシグナムは、盛大な溜め息と共に額を抑えていた。

 

 

「エリオくん、はいっあーん」

 

「待ってルールー!? なんか凄い色してるよこのビスケット!! 一体何味なの!?」

 

「取り敢えず体に良さ気な物を絶妙な比率で奇跡的な不味さになるように焼いてみたんだけど……」

 

「態々そんなゲテモノ作ら無いでよ!? 頼むから食べる側の事を考えて!!」

 

「考えてるから身体に”良さげ”な物を使ってんじゃん!!」

 

「良さげじゃ駄目だよ!! せめて身体に良いって断言して!!」

 

「だって、恥ずかしいじゃん?」

 

「何処が如何恥ずかしいのさ!?」

 

 

往来の真ん中で大声で騒ぐ子供二人、逃さ無いように肘の関節を決めながら形容し難い色と形のビスケットをエリオの口に押し込もうとするルーテシア、半ば予想出来ていた光景だったが、流石のルーテシアも新部隊配属になる前後くらいは大人しくしてくれると多少期待していたシグナムは、肩を落としながらエンジンの温まって来た妹様に忍び寄る。

 

往来の通行人に自身の気配を溶け込ませ、風景の一部レベルまで自分の存在感を薄くした彼女は足音を立てない様にルーテシアの背後に立ち、その鉄拳を彼女の頭頂部に振り下ろす。

 

痛烈な振り下ろし、握り拳の中指を少し浮き出させた形からの拳骨は吸い込まれるように妹様のつむじに突き刺さり、悲鳴を上げさせる。

 

 

「痛ったぁぁぁぁあ!??!?」

 

「貴様は……、今日ぐらい大人しく出来んのか!!」

 

「にゃろー……、気配を誤魔化して後ろを取るとかひきょーだよ!!」

 

「お前も立派な高町家の人間だ、気配を消しただけでは勘付かれるからな」

 

「ちょっ!! めちゃくちゃ心外なんだけど!? 壁とか天井をデフォで走る人種と一緒にしないで!! 私はまだ人間卒業して無いから、プリティーな美少女のままだから!!」

 

「安心しろ、お前もその内卒業する」

 

「いやぁぁぁあ!!」

 

 

飄々としながら人をおちょくるルーテシアだが、彼女にも苦手な人種と言う物があり、シグナムもまたその一人であった。

 

パンパンと埃を払う様な仕草で手を叩いたシグナムは、泣くフリをしながら足払いを仕掛けてきたルーテシアを掴み上げ、彼女の作った良くわから無い物体をその口に捩じ込み沈黙させたあと、エリオとの軽い自己紹介を済ませると残りの一人が居ない事に気が付いた。

 

「エリオ、もう一人は如何した?」

 

「不味っ!! 何これ不味っ!! 身体に良さそうで良くなさそうだけどやっぱり良さそうな不味さ何だけど!?」

 

「(ルールーが悶絶してるけど此処はスルーすべきだよね、うん)……地方から来ると言ってましたのでもしかしたら迷子になっているのかもしれません、ちょっと探してきますね!!」

 

そう言って返事も聞かずに走り出すエリオ、背後から『さて、お前には前々から言いたい事が山ほどあったんだ、この際だからその辺りも含めてキッチリと説教をしてやる、先ずは正座だ早くしろ』とか『待って、ジョークだから!! 目がマジだよシグナム!!』とか色々とエリオの耳に聞こえていたが、彼は一切後ろを振り返る事なく『キャロ・ル・ルシエ』を探しに行った。

 

一方のルーテシア、彼女は冷や汗を流しながら正座をし、如何にかこの般若の説教から逃れる事が出来ないかと悪知恵を働かせると同時に、自分の中の女の勘がエリオが何かをやらかすと言う予感をしている為、そちらの方の追跡を召喚魔法を使って偵察させる。

 

小さな虫がルーテシアの服の裾から飛び出し、シグナムの視界の死角を移動しながらエリオを追跡、それに気が付かないエリオはそのまま声を上げながらキャロの名前を呼びつつ広い空港内を走り回っている。

 

ルーテシアは杞憂だったか? とシグナムの説教を聞き流しながら召喚した使い魔を引っ込めようとした時、それは起きた。

 

三階から下に降るエスカレーターの上から名前を呼ばれて返事をした少女、活発なルーテシアとは真逆の大人し目のその娘は大き目の旅行鞄を抱えながら小走りに階段を降りようとして、転けた。

 

高さのあるエスカレーター上からの落下、見るからに運動神経の無さそうな彼女では受け身を取ることは出来そうに無く、運が悪ければそのまま命を落とすかも知れない。

 

更にエスカレーターを降る人が何人も居る、このままでは彼らも巻き込む事になると判断したエリオはデバイスを起動し、持ち前の高速移動を使用して人の隙間を縫うようにジグザグに移動、空中に身を投げ出したその少女を助け出し、ブレーキを掛け忘れてそのまま勢い余って少女を押し倒してしまう。

 

何とか大惨事にはならずに済んだのだが、代わりにエリオの両手が彼女のシャツの下に滑り込み、直接その胸を揉んでしまっていた。

 

押し倒した側も押し倒された側も何が起きたのか分からずにキョトンとしていたのだが、その二人の静寂を突き破る様にルーテシアが割り込んで来た。

 

彼女は先程飛ばしていた使い魔を起点にし、エリオの背後に自身を召喚、ラッキースケベを行っているエリオの身体を起こし、何処から共なく刑事ドラマに出てくるような机と椅子を取り出し、其処に彼を座らせるとライトをエリオに浴びせながら取り調べ擬きを行い始めた。

 

「エリオくん、私は君が痴漢をするとは思わなかったよ……」

 

「嫌っ、違っ、此れは事故で!!」

 

「出来心だったんだよね、私の身体じゃあ満足出来なかったんだよね……」

 

「人聞きの悪い事を言わ無いでよ!! と言うか僕達そんな関係じゃ無いでしょ!?」

 

「酷いっ、私とは遊びだったの!? 酷いよエリオくん!!」

 

 

涙を流すルーテシア、しかしその手には目薬が握られており、長い付き合いのエリオにとってはそれが嘘泣きである事が良く分かるのだが、純粋なキャロはルーテシアの方へと歩み寄り、よしよしと彼女の頭を撫でて慰め始めた。

 

 

「えっと、よしよし、辛かったね……」

 

「ひっく、ひく、うぅ……、ありがとうキャロちゃん」

 

「うん、どういたしまして……ってあれ? 私名前教えたっけ」

 

「同僚になるんだし名前くらいはね?」

 

 

先ほどの泣き真似が嘘のようにあっけらかんとして自己紹介を済ますルーテシア、彼女は自分の冗談を真に受けたキャロの誤解を解きながらその手を握り、空いているもう片方の手で遠い目をしているエリオの手を引きながらシグナムの元に向かって行った。

 

 

尚、この後ルーテシアは説教の最中に逃げ出した為、シグナムに先ほど以上に長い説教を受ける事になるのだった。





この時、エリオは知らなかった……。

後々にこの関係が泥沼の三角関係になってしまう事に(適当)
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