不死の英雄伝 〜不屈の体現者〜   作:ACS

201 / 224

二百話に気合を入れて三倍の量を書いた所為で気力が矢吹丈ですわ(白目)


不屈の体現者 201

第二百一話 ブロックワード

 

 

RDによってあっさりと意識を奪われてしまったあの日から数日、疲れていたとは言え病み上がりの彼に背後を取られた事がショックだった私は相変わらずのハードトレーニングを重ねていた。

 

ほぼ毎日と言って良いほどRDは私の特訓に茶々を入れて来る上に強制的に部屋へと連れ戻そうとする、毎度毎度抵抗してはみるもののあの手この手でいなされて行くので始末に負えないのだ。

 

 

ガサガサと草木が揺れる音が聞こえる、その音に反応して時計を確認するもまだRDが止めに来る時間では無い、ならば一体誰なのか、それは直ぐに分かった。

 

音源に目を向けると其処にはRDでは無くスバルが立っていた、そう言えば同室だから色々と心配を掛けていたっけ……。

 

 

「なによ、あんたも私を止めに来たの?」

 

「全然、寧ろティアを手伝いに来た」

 

「はあ?」

 

「一人よりも二人の方が色々と効率も良いだろうし、私相手なら遠慮しなくて大丈夫でしょ?」

 

「……まあ、確かに」

 

「それに、私は三、四日寝なくても全然平気だから!!」

 

「………そうだったわね」

 

 

長年付き合って来た相棒だからその内こんな事を言い出すだろうとは思っていたが、どうしてこうも私の周りにはお人好しだらけなのだろうか?

 

自然と緩んだ口元を隠す事はせず、私達は本格的な模擬戦を初めて行った。

 

重い打撃音、乾いた銃声、少女達の荒い吐息、気配を消しながら彼女達の模擬戦を覗き見ていたRDは、背中を木に預けながらどうしたものかと頭を悩ませる、非常に美しい友情ではあるが今のままではティアナが潰れてしまう。

 

優しいスバルでは文字通り血の滲む努力をしているティアナを止める事が出来ない、彼女が飴となるならば自分が鞭になるべきなのだが、自分では役者不足、如何にも対抗意識を燃やされてしまっている様で此方からの助言は大して意味が無いだろう。

 

普段なら放って置き、痛い目を見た所で茶々を入れるのだが、今回はそうも言っていられない状況があった。

 

丁度来週の今日、部隊の後見人であるブレン・シュトッフが六課を視察に来る、何時ものあの有能な秘書を連れてあの男がこの地に足を踏み入れる。

 

本能的にこの日は何かが起きると察知していたRDは出来うる限りの不安要素を排除しておきたかったのだ。

 

 

(はぁ、閣下の所に居た時は死なない事だけ考えてりゃ良かったっすけど、こっちだとそれが中々上手く行かないっすねぇ……)

 

 

内心で一人ゴチたRDは『そろそろ止めに行くっすかね』と言ってそのまま少女達の元へと向かって行った。

 

ーーーー尚、色々と悩んでいたRDは、丁度汗を掻いて頭から水を被っていた二人の前に出くわし、その透けて身体に張り付いたシャツをバッチリと目に焼きつけてしまい、ティアナに張り手を貰う事になるのだった。

 

RD曰く、『二人共中々大きな物を持っているっすね〜』との事、そのコメントを残した所為で更に殴られるのだった。

 

 

そして一週間後、その運命の日は訪れた。

 

 

本日の視察は普段の様子、主に新人達の出来上がりを確認する事が目的であり、全員で出迎える必要は無いと事前に隊長達に通達されていた為、丁度新人の出来上がりを確かめたかったなのはは予定していた模擬戦を優先し、隊舎の前で出迎えるのははやてとフェイトの二人となった。

 

ーー模擬戦の為のフィールドを生成した後、私は深呼吸しながら空を飛ぶ。

 

今は立場の関係上、昔の様に前線に出る事が無くなった私の騎士、絶対に折れ無い心を持った私の大好きな人、ブレンくんが今日私達を見に来る。

 

私の指導、私の教導、ソレを見に来る日、それは過去にすれ違いと周りを頼らない頑固さによって取り返しの付かない事故を起こした私達にとって重要な意味を持っている。

 

自分達と同じ思いをして欲しくないから、そんな人を増やしたくないから、その為の教導。

 

まだまだ道半ばだけど、その途中経過を彼へと見せる日、のはずが少し気掛かりな事が私にはあった。

 

自分の部下であるティア、彼女の様子があのミスショットをした日からおかしかった、アフターケアが不十分だったのかと思って、何度も話し合いの場を設けたのだけど『何でもないです』とか『大丈夫です』の一点張りで何も話してくれず、そのままずるずると今日まで来てしまった。

 

''何でもない''

 

''大丈夫''

 

この二つの言葉は私達が散々口にして周りを心配させた物、私の目にはティアの姿が過去の自分達とダブって見えたのだ。

 

やはり模擬戦を延期するべきか、そう考えた瞬間、丁度全員揃ってしまい、其処で一旦思考を打ち切った。

 

 

「おはようみんな、体調は万全かな? 今日は私達の後見人の人が来てるけど、何時も通りに訓練して行こうね?」

 

『はい!!』

 

「じゃあ先ずは軽く身体を動かしてから模擬戦を始めるよ? 初めはスターズ、次はライトニングだから、ちゃんと身体あっためてね?」

 

 

私がそう告げると、みんなきっちりと準備運動を行い、体を温めて行く、チラッとティアの方に視線を合わせてみたけど、RDがかなり入念に準備運動させている、かなり憎まれ口を叩きながらだけどティアの体調に気を使っての事だろう、ティアの事を彼に任せっきりにするのは隊長として良くないが、如何にも避けられている節があるので彼に任せる他なかった。

 

 

準備運動が終わり、模擬戦を開始する時刻、既にブレンくんとキャロルさんは到着していて、はやてちゃんとフェイトちゃんに案内されて屋上から此方を眺めている。

 

様々な視線を感じながらも自分の部下に目を合わせる、スバルは緊張していてガッチガチ、ティアは逆に張り詰めた糸の様に集中、そして『その程度の怪我で戦線を離脱する気ですか?』とキャロルさんに恫喝されて模擬戦に参加させられているRD、気合い十分とは言えないが模擬戦の開始を告げる事にした。

 

 

「それじゃあ、始めようか? RDは傷が開きそうなら下がって良いからね?」

 

「オレは大丈夫っす、体調管理には人一倍気を使ってるっすから」

 

 

そう言った彼は即座に発砲、先手は取らせないと言った気迫が篭ったそれに意表を突かれかけたが、レイジングハートを一閃、飛来する弾丸を焼き払う。

 

ブレンくんの手によって派生強化されたレイジングハートは素で殴るだけでも強力な火力を持っている、不意打ち気味に放った弾丸が容易く焼き払われた事に一瞬顔を顰めたRD、彼はそのまま私を足止めする役割なのか私の正面から離れず、物陰から此方を狙撃する。

 

六課設立時に能力リミッターを掛けている私達は本来の力を発揮出来ない状態になっている、今までは経験と努力で新人の相手をして来たが、その中でもRDの伸びが異常な程な為、彼は非常に手強い。

 

 

故にこの判断は正しく、私はRDと射撃戦に持ち込まれる、彼は私がレイジングハートを構えた瞬間を狙って発砲し照準をズラしたり、回避先を予測した狙い撃ちなどを駆使しながら私の行動を制限して行く。

 

打ち負ける気は無いけど、残り二人の動向が気になる所、サーチャーを利用して索敵を行おうとした瞬間、RDとは別方向から閃光弾が放たれ私の視力を一時的に奪い去る。

 

 

一時的に光を失った私は精神を研ぎ澄ませる、両目を瞑った私を見たRDが空に向かって一発発砲、銃声が先程までの物と違うから信号弾の類いと判断、何処から襲撃されても対処できる様にレイジングハートの中ほどを片手で握り直し、敢えて隙を見せる形で構え直す。

 

簡単に隙だらけとなった私を見てRDは警戒を強め、声を上げて何かを指示しているが、それよりも一瞬早くスバルが私に向かって特攻を仕掛ける。

 

真正面から不意も打たずにウイングロードを走りながら接近するスバル、そんな物が私や強敵達に通用すると思われているのだろうか? 実に浅はか、無謀すぎる。

 

私はレイジングハートを一閃、容赦無くこめかみを打ち据えその場から弾き飛ばす。

 

 

「スバル、そんな危ない事してたら直ぐに撃墜だよ!!」

 

「いたたた、すいません!! でも作戦なんです!!」

 

そう言ってスバルは頭を抑えながら立ち上がり、再び私に向かって拳を振り上げる、近接戦で相手しても構わないけどティアの動向が気になるので早々に撃墜する事に決めた。

 

私は槍の様にレイジングハートを構えながら八発のシューターを展開、それを上下左右から襲い掛かる様にスバルへと叩き込む。

 

そして、それと同時に足元に足場を作り、踏み込みと同時に刺突を放つ、レイジングハートの持つ火力はスバルも知っている、故に如何してもガードに意識が向かう。

 

私の思った通り、スバルは前面に障壁を展開して私の刺突を防ぐ、しかしレイジングハートの炎はその障壁ですら容易く燃え上がらせる、身を守る物がなくなったスバルは背後に飛び退こうとして、シューターが迫っている事に気が付きそのまま足を止めてしまう。

 

チェックメイト、そう思っていた私だったけど下からRDの援護射撃が放たれ、私の展開したシューターを一つ残らず迎撃された。

 

あからさまにホッとしているスバル、しかしそれは致命的な隙以外の何物でも無い、何故ここまで危ない真似をするのか理解出来ないが、その危険性を教え込んでおかなくてはいざとなった時に身体が動かない。

 

私は隙を晒しているスバルの脇腹に膝蹴りを入れ、その身体の動きを止める、衝撃を内臓に伝達させる様に蹴りつけた為スバルは悶絶、そのまま膝を付く。

 

バインドで拘束して撃墜判定を言い渡そうとした時、上空から何かが落下して来る気配を察知、そのまま顔を上げると刃を纏ったクロスミラージュを突き出すティアが目に映った。

 

私はレイジングハートを待機状態に戻し、落下の勢いを付け加えたティアのその刃を片手で白刃取りする、直に刃を握ったのだから鮮血が手の平から滴り落ち、スバルとティアが息を呑む。

 

 

こんな無策な一撃の為に今迄の無謀があったのかと思うと頭に血が昇り掛けたが、それよりも先に其処まで追い詰められているのか、と言う心配が勝り一旦落ち着いて話を聞こうとした。

 

 

「ねぇティア、どうしちゃったの? こんな戦い方ティアらしくないよ? もっと自分らしく戦わないと勝てる物も勝てなくなるよ?」

 

「ッ!! それは、隊長に才能があるからですよ!!」

 

 

感情的に張り上げた声、ティアは魔力刃を解除した後、その場から大きく跳び退き、その胸の内に溜め込んだ物を爆発させた。

 

 

「私は凡人だから!! 才能が無いから!! RDを撃ってしまった!! 味方を撃って、殺す所だった!!」

 

ティアは泣きながらカードリッジをロードする、私は其処まで彼女が追い込まれていたと気が付けなかった自分が恥ずかしく、何も口を開く事が出来なかった。

 

一撃貰って其処からちゃんと話し合おう、そう思って覚悟を決めた時、彼女の口から聞き捨てならない一言が飛び出した。

 

「私は、もう誰も傷付けたくないから!! 強くなりたいんです!! 不死の英雄の様に(・・・・・・・・)傷付きながらじゃ無いと強くなれないんです!!」

 

 

その一言を聞いた瞬間、私の脳裏にある記憶がフラッシュバックする。

 

ボロボロになりながら、たった一人で戦い続け、抗い続けた凄惨な旅路、そしてその結果戦う事以外の全てを忘却したブレンくんの記憶。

 

食事という行為を忘却し、睡眠を取らず、死を気に留めない、灰の様に燃え尽きた生きる気力が無い印象を受けた幼い頃の記憶。

 

そんな物になりたいと、ティアは口にしたのだ。

 

 

 

ーーーー高町なのはは基本的に温厚な女性である、大抵の事は笑って許すし、ブレン以外にはあまりワガママも言わず、人の痛みを慈しむ心を持っている。

 

故に、彼女が怒る時は常に誰かの為の物であり、義憤以外で他者に怒りをぶつける事などなかった。

 

しかし、ティアナの放った一言はそんな彼女の逆鱗を踏み抜いた。

 

周囲の気温が二、三度下がり、世界から全ての音が消えた様な錯覚、それと同時に呼吸を忘れる程の圧力がその場に居る全員に襲い掛かる。

 

高町なのはの発する圧の正体、それは彼女が保有する''神格''による圧力だ。

 

彼女は過去に創世神としてのブレンを降し、始まりの火をその手にしている、正確には現在も彼女の手にその所有権はあるのだが、ブレンの消滅と共に神の座を手に入れる事が耐えられず、神の座を放棄してまで存在を共有する事で彼の命を繫ぎ止めた。

 

しかし、その際に彼女は確かに一度神格となり、世界の成り立ちに触れており、その影響でこの世界で唯一神格を持った人間となっているのだ。

 

この事は存在を共有しているブレンしか知らず、又その神格部分を自分が引き受ける事で彼女にその事を伏せていたのだが、感情の高ぶりによってそれが解き放たれてしまったのだ。

 

「………ティア、私の、聞き間違いかな?」

 

ティアナは答える事が出来無い、相手は世界を創った神を下し、それを上回る神格を持つ者、意識を保っている事すら奇跡に近い。

 

 

「今、『不死の英雄の様に傷付きながらじゃ無いと強くなれない』、そう言ったのかな?」

 

 

故に、ティアナは答える事が出来無い。

「あんな姿になってまで手に入れた強さなんて、私は許さないよ?」

 

高町なのはの一言は周囲に重く響き渡った。

 





実はこの世界の真の神様はなのはさんでした(白目)

彼女は一回ブレンをブッ倒して神様になってる訳ですが、自分の存在を共有する事で彼の消滅を防ぎました。

しかし、正式な手順で神の座をぶんどってるので、本人が辞めたいと言っても止められる筈もなく、彼女は人間兼神様という状態です、そしてその事を悟らせない為ブレンが密かに神格を引き取ってました。

まあ、今回の件で全てパーですがね(白目)


因みにこの一件までは、始まりの火にはブレンの残留思念が居座っていましたが、なのはが神格を表に出してしまった所為でブレンとなのはを足して割った様な見た目の存在が居座る事になります。

見た目のイメージは東方の新綺様。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。