魔王の名は返上しました、やったねなのはさん‼︎(白目)
第二百二話 激怒の理由
ーーーーやれやれ、これは又派手にやってくれた物だな。
なのはの発する神格は余りにも強大すぎて気絶する事もままならず、またその圧力故に周囲の者の魂が軋む程の物、その上彼女が怒りに支配されている所為で神格として目覚めてしまったのだからタチが悪い。
ロードランでの旅路によって根付いてしまった私の生命に対する価値観の無さ、それは未だに変える事が出来ずに居る為、同じ道を辿ろうと言うランスターの言葉に激怒したのだろう。
別に私自身はランスターの言った言葉に対しては何の感慨も抱いていない、傷付きながら強くなるのも又一つの道ではあるし、私の様に成り果ててでも手に入れたい物があるのであればそれも良いだろう、そもそも私は聖人君子ではないのだから彼女に説教をする資格など無いし、する気も無い、自分の人生なのだから好きにしたら良いと言うのが本音だ、この辺りのドライさは一生を掛けても治る事は無いだろう。
なのはも頭に血が上って逆に冷静になっているのか、八つ当たり的な事はせず、淡々とティアナの反応を伺っている、立ち上がるなら良し、膝を付くなら終わらせると言わんばかりに冷たい目を投げ掛けている、どれほどの覚悟で自分を切り売りする戦い方をすると言ったのか試している様だ、てっきり禅問答でもするのかと思っていたが、考えれば正面からなのはに睨まれている状況で口を開く事は難しいだろう。
普段なら私もこの状況に干渉しないのだが、周りを伺えば新人やその他の隊員達も体調を崩し、フェイトやはやて達も中々辛そうに立っている、無事なのは私と冷や汗程度で済んでいる守護騎士程度か。
自分の秘書であるドーリー君も表情こそは変えていないものの、顔色は非常に悪く、今にも膝を付きそうだ。
流石に見過ごせないレベルの被害になり始めた為、そろそろ止めに入るか、そう思った瞬間、ランスターがふらつきながら立ち上がり、震える指先で引き金を引いた、勿論碌に照準も合わせていない弾丸はなのはを掠める事すらせず、見当違いな場所へと向かって行く。
ーーーーしかし、彼女は確かに引き金を引いた。
強迫概念にも似た強さへの執着、自分を軽視した道に進もうとしているランスターだが、なのはの圧力に負けずに引き金を引いた、つまりはその強さへの思いは生半可な物では無いのだと言う事だ。
その思いを確かに受け取ったなのはは、目を瞑って呼吸を整え、自分の怒りを飲み込むとランスターへと指先を向ける。
「……ティアの気持ちは分かったよ、でも今は少し頭を冷やそうか」
周囲に展開する複数のシューター、それは放たれた瞬間複雑に絡み合いながらランスターの身体を撃ち抜き、撃墜する。
ランスターが撃墜された事で周りに横たわっていた威圧感が消える、その後なのはの静かな声が模擬戦の終了を告げ、それが周囲に響き渡った。
ーーーー此れは後で2人をフォローしておかないとシコリが残るだろうな……。
口下手ななのはではそれも難しく、そもそも今のなのはも落ち着かせなくては話にならず、ドーリー君は今日一日は使い物にならない、有能な秘書がこの状態なのだから隊に戻る訳にも行かない、視察は大失敗だな。
ーーーー私が目を覚ますと医務室のベッドの上だった、しかも時計を確認するとほぼ半日が経過していた。
暫く放心状態だったけど、私の眠っているベットの脇で静かに本を読んでいたRDの声で我に返った。
「よっ、目が覚めたっすか? スバルちゃんも待ち兼ねて寝ちまってるっすよ〜、飛んだ寝坊助っすね」
「私、あの後どうなって……?」
「あっさり撃墜されたっすよ、衝撃で少し思い出せてないだけっすからその内出てくるっすよ」
そう言われば、その様な気がして来た、何がなのはさんの怒りに触れたのか、腑に落ちないまま思考の海に没頭しようとしたのだけど、それよりも先にRDの声が耳に入った。
「んじゃあ行くっすか、ほ〜らスバルちゃん、起きるっすよ〜」
「うーん……、後五分……」
「これはまたベッタベタっすねぇ……」
「行くって、何処へ?」
「閣下の所っす」
「はあ!?」
六課のロビー、RDに手を引かれて此処に来た私だったが、既にライトニングのちびっ子達は集まっており、ルーテシア以外萎縮しながら静かにコーヒーを飲んでいる少将の前に座っている。
不死の英雄の再来、彼は十年前に突如として管理外世界に現れた謎の男性で、それまで伝説上の武器とされてきた数々の武具を持っていた。
不死の英雄が最初期から使用した『ハルバード』、四騎士の長からの餞別『龍狩りの槍』、何処で手に入れたのか詳細不明な『ゴーの大弓』と『黄金の残光』『暗銀の残滅』、灰色の大狼から託された『アルトリウスの聖剣』と『アルトリウスの大盾』、そして何より不死の英雄の代名詞とも言える『月明かりの大剣』を持っていた。
これらの装備は贋作を制作するどころか所有する事すら重罪とされている、しかし彼の持つ其れ等は素人目に見ても本物だと分かるほどの力を持っていたと言う。
伝説の武器に認められた特別な人間、そんな人が私達に何を話すつもりなのだろうか?
「どうやら揃った様だね、御苦労だったRD」
「いやいや、オレは早く終わって欲しいだけっすよ、んじゃあ約束通り部屋に帰らせて貰うっす」
「私も随分と嫌われている物だな、話くらい聞いて行けば良いだろうに」
「オレは閣下の事には微塵も興味が無いっすし、何より口外禁止な話を聞かされて余計な危険を背負いたくないっすから」
そう言ってRDは去って行った、将軍相手にも相変わらずな態度を取る彼にみんな唖然としていたけど、少将は慣れているのか、特に気にも止めていなかった。
「まったく……、どうして私の部下には曲者だらけなのだろうね、胃もたれを起こしそうだよ」
「えと、閣下? どうして私達を此処に?」
「理由かい? それはランスター君、君にある」
スッと此方に視線を向ける少将、まさか直々に部隊から出て行けとでも言われるのだろうか?
「強さが欲しいのだろう? 誰一人傷付けない力が、その為に自分を極限まで追い詰め、経験を重ねて強くなろうとしたのだろう?」
「…………」
「別に咎めるつもりは無いが、君は……と言うよりもこの世界の者は少し不死の英雄と言う存在を過剰に信奉し過ぎている様だからね、この場に居る全員に事実を''視て''貰おうと思うのだよ」
ーーその方が、シコリも蟠りも無くなるだろう? そう言って少将は一本の剣を取り出した。
その剣はなのはさんと同じ様な威圧感を持っていた、少将はそれを何の苦もなく振るって刀身に炎を纏わせると、それを床に突き立てた。
瞬間、私達は炎に包まれ、脳裏に強制的に誰かの記憶が雪崩れ込む、何処とも知れない牢屋、それを俯瞰する様に眺める自分、鎧を着込んだ騎士の旅の始まり、不死の英雄の生涯の記憶、その全てが私達の頭の中へ雪崩れ込んできた。
否、それだけではない、不死の英雄が創世を成し遂げた後の絶望やその後なのはさんによって救われた事も、…………そして自分達が無理を重ねた結果撃墜された事も、全て。
確かにこれはRDの言った通りの厄介ごとね。
なのはさんが激怒した理由も何となく察しが付いた、そして自分が行っていた事のバカバカしさも、なのはさんは自分を犠牲にした強さの先に待つ結末を知っていた、私と少将を重ねて見て、同じ道に進ませたく無かったのだ、撃墜され取り返しのつかない事態になって後悔させたく無かったのだ。
ーーーー私達が気がつくと既に少将は居なかった。
超絶便利、始まりの火!!
次はなのはです。