安定の一週間ぶり、もう私もダメかもしれんね(白目)
第二百十三話 産まれた意味
壁に穴を開けて内部へと侵入した私の前に十人程の魔導師達が立ちはだかる。相手する価値も無いのは一目見て分かるのだが、その内の一人が合図をすると通路を塞ぐように次々とシャッターが降りて行く。……足止めか。
横目で自分が侵入して来た横穴を見たのだが、其処もシャッターが降りている。軽く手の平でシャッターを叩いて見たが特殊な素材を使っているのか頑丈な事が見て取れる。ブレードで斬り裂くのも骨が折れそうだ。
「大人しく投降しろ、貴様に打つ手は無い」
私の道を塞ぐ魔導師達の一人がそう告げる。高圧的な投降勧告の様に聞こえるが、裏では連中にそのつもりは無いだろう。言外の殺気が感じられる。
ーーーーどいつも此奴もそうだ。確固たる意識と言う物を揺るぎない自分と言う物を内に秘めている。私の中に無いものを持っている。
妬ましい、恨めしい、私の方が貴様ら人類などと言う劣等より優れていると言うのに、何故私には自分が無いのだ。
QBを起動して魔導師達の中へと吶喊。彼らが何かしら反撃や回避行動を取る瞬間にその全てを解体。こんな案山子以下の者の分際で、一丁前にこの私を討とうと言うのだから腹立たしい。
何時もの様に思考が熱を帯びそうだった為、一度深呼吸をする事で気持ちを落ち着かせる。
今は密室となった空間に閉じ込められた状態だ。目的の者に出会う為には当然の事だが此処から脱出しなくてはならない。
それと、実に素晴らしい事に私が敵を始末した後位から通気口を通してこの部屋にガスが流し込まれて居る。長居すれば窒息、ブレードや銃火器を使用して脱出を測っても爆炎に晒される事になる。正義の味方である管理局も随分と素敵な真似をしてくれるな。
身を低くしながらガスから一旦逃れ打開策を練る。ガスを引火させて無理矢理脱出すると言う手もあるが、それをするとPAが剥がされる。速度を出す為にネクストの装甲は薄い物であり、場合によっては従来のデバイスのバリアジャケットレベルかそれ以下だ。実際に私のネクストの装甲はフェイト・テスタロッサのソレより耐久性が低い。爆炎でPAが剥がれるだけならばまだしも、ネクスト自体にダメージが入るのは出来るだけ避けたい。
素手で壁や天井をこじ開けようにもこの部屋周辺が包囲されているのが壁越しにも分かる、負けはしないが捨て身の特攻でもされると厄介だ。
ーーーー打開策を模索している内に思ったよりも早くガスが充満し始めた。うだうだと考えている暇は無い、か。
白銀の少女を映す監視カメラの映像を眺めるブレン。会議場だと言うのに胸を押さえて倒れ伏した彼女を忌々しげに睨みつける彼はその正体を即座に看破しており、拳を血が滲む程握り締めていた。
ガスによる窒息を狙うように指示を飛ばしたのはこの男であり、被害度外視でどの様な手段を使用してでもこの少女を始末しろと告げて居る。
ガスの使用もその内の一つ、ブレンは外道な手段ではあるが生物である以上有効ではあるだろうと踏んだのだが、アッサリと死に過ぎて居る。
さて次の手段はどうした物か。彼自身は彼女が死んだとは思っていない。自分の感覚が正しければ彼女は神族、この程度で死ぬとは思えない。故に上の階の床を全て抜き、瓦礫で彼女を圧殺する様に次の指示を飛ばした。
本来なら自分が出向き、直接彼女を始末するべきなのだが、公開意見陳述会の会場にはデバイスを持ち込めず、全ての装備を外に置いてきてしまっている。
ブレンは隣に座るキャロルに万一に備えて自身のデバイスを取ってくる様に指示を出す。彼女は無言で了承の合図を出すと、静かに席を立ち裏口から外に向かって走り出して行った。
秘書の姿を見送った彼は椅子に腰掛けながら制服の布地の中に仕込んであるナイフを確認する、と言っても普通のナイフでは持ち物検査に引っかかるので技術局に無茶を言って作らせた特殊なナイフだ。
カードリッジを使用して魔力刃を展開する事の出来るマジックナイフ。拳の中に収まる程度のサイズであり暗器として使用するには申し分無いのだが、このマジックナイフはカードリッジシステムに対応仕切れず、一度使用すると破損してしまう為使い捨てであると言う事や、魔力刃の出力が安定せず、ブレンですら振るった際に刃が砕けてしまうなど色々と欠点が多く、実用には至らなかった代物だ。
しかし、護身用や投擲用としては十分、目標が此処まで乗り込んで来たとしてもデバイスが手元に来るまで対処できるだろう。
ーー此れも私の因果か……。次から次へと忙しい事だな。
椅子に体重を預けるブレンは重い溜息を吐き、目を閉じてふと思う。
ーーもしあの時、私があの男に破れ、その手にあの火を収めたとして、奴は私と同じような運命を辿ったのだろうか。
始まりの火、世界の覇者となる権利を争い剣を交えた自分とは逆しまな男。真反対な性格であり目指す物は同じであっても過程が異なっていた為、文字通りあらゆる全てを賭けて戦った奴ならば、私と違った運命を歩んでいたのでは無いのだろうか?
ーーーー愚問だな、あの男ならば後悔などしない。私のように断崖の果てに思いを馳せる事は無い、確信できる。
まったく……我ながら悩み事が多くて嫌になる。昔ほど思い切りが良くなくなったのはいよいよ老害化が進んだ結果かな? その辺りをどう思うね、我が逆しま君? そう言ってブレンは静かに笑い、自分が討ち果たした放浪者の事を懐かしみながら続報を待つ事にしたのだった。
秋なんでハロウィンネタを入れようと思ったのですが、あまりネタが浮かばなかったので断念しました(白目)
短編でやるかもしれませんが。