不死の英雄伝 〜不屈の体現者〜   作:ACS

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不屈の体現者 214

第二百十四話 生まれの真実

 

 

胸を押さえて倒れたは良いが、流石にデバイスの電気信号を操作して心臓を止めるのはやり過ぎた、死んだフリをして回収若しくは追撃に備えるつもりだったのだが、意識が遠退きつつある。

 

一応心臓マッサージを自動で行う様に調整しては居るものの、中々向こうが私にアクションを起こさない。心臓を止めてから悠に五分は過ぎた。そろそろ何か仕掛けてくれても良いだろうに……。

 

その様な事を薄れて行く意識の中で考えて居ると、轟音と共に天井が崩落。私の上に巨大な瓦礫が降り注ぐ。私は即座に身体の電気信号を操作して心臓を動かし、その場から跳ね起きると、降り注ぐ瓦礫を足場にして上階へ移動。此処ならガスの充満していない為存分に武器を振るう事が出来る。

 

QBを行い加速を付けた後、全エネルギーを注ぎ込んだブレードを振るってシャッターを切断。封鎖された状態から脱出する。

 

狭い通路を各種ブーストを使用しながら突き進む。目の前に立つ者は戦闘員も非戦闘員も関係無く斬り捨てながら己の魂が惹かれる場所へと向かう。

 

鮮血に染まる通路。奥には会議室らしき扉と、それを守る様に立つ者共。

 

 

ーーーー高町なのはに、フェイト・テスタロッサ、八神はやて、貴様らは揃いも揃って私の邪魔をするのか。

 

 

彼女達を筆頭に聖王教会と管理局の手練れが集まり道を塞いでいる。何故だか分からない。だがしかし私の中に埋もれる誰かがその事に嘆き悲しみ、私の憎悪で彼女達を殺せと訴えかける。

 

その憎悪に身を任せ様として顔を上げた時、彼女達三人の顔に明らかな動揺が走っている事に気が付いた。特に高町なのはは信じられ無い物を見る目で私を見ている。

 

顔を上げて高町なのはを見た際に、私の中の苛立ちや''討たねばならない''と言う焦燥感は一瞬だけ増加したが、私が惹かれている者は彼女では無いと感覚的に分かった。同時にこの奥に私が求める者が居る事も。

 

「君は……何者なんや?」

 

八神はやてが思わずそう呟く。それに対する私の答えはたった一つ。

 

 

「その答えを知る為に、その扉の奥にいる者に用がある……だから道を開けろッ!!」

 

 

幾らエースオブエースや実戦経験豊富な者達が相手だろうと、向こうは徒手空拳、此方はネクスト。音も無く容易く斬殺出来る筈だった。

 

ーーーーその男が現れるまでは。

 

 

会議室の扉が蹴り飛ばされ、今正に斬りかからんとしていた私に向かって飛来する。

 

ブレードを振るって扉を両断。そして戦いの中に水を差す者を最大級の殺気を込めて睨み付けたのだが、その瞬間私の中の時が止まったのでは無いかと言う錯覚と衝撃を受けた。

 

 

「やりもやってくれた物だな。盛大に私の部下を殺ってくれたのだ、その首を置いて行く覚悟は当然持っているのだろう?」

 

鮮血に染まった廊下を一瞥した彼は私に向かってそう言い放つ。周りの者が自然と道を開ける程の殺気と威圧感を与えながら、足音を響かせながら私に向かって来る。

 

口の中が乾く。額から汗が流れる。手足が震えて力が入らない。そして、無意識の内に私は一歩退いていた。

私と血縁関係にあるのでは無いかと言う程自分と似た容姿の男。そんな彼を見た瞬間、言い様の無い程の恐怖と共に沸き立つ殺意。

 

気が付けば私は周りの者等眼中に無く、弾け飛ぶ様にその男に斬り掛かる所だった。

 

 

私の渾身の斬撃。しかしそれは投擲されたマジックナイフによって踏み止まらされる。足が止まってしまった私は反射的に天井を足場にして背後に回り込み首筋を狙ってブレードを一閃したのだが、手首を掴まれた。

 

あのRDとか言う男ですら碌な反応をする事が出来なかったと言うのにこうもあっさりと。私は歯嚙みしながら膝蹴りを叩き込もうとしたのだが、それよりも早く壁に叩き付けられる。

 

反応された、と言うより読まれていたと言った動きだった。将の分際で剣の冴えが周りとは違う。この男の剣は守る剣でも、戦う剣でも無い、純粋に敵を殺す剣だ。

 

 

産まれて初めて味わう恐怖。だが震える身体とは対象的に思考は非常に冷静だった。

 

乱戦状態である今現在では得意の高速戦を行えない。かと言ってグレネードやミサイルが使用出来る距離では無い。所有している銃はKARASAWA。コレも爆風を伴う物な為近距離戦では使えない。

 

従って、私はこの場所から離れ、目の前の男を引き連れながら広い場所に向かわなくてはならない。

 

他の者などどうでも良い、この男だけは私の手で始末しなくては。

 

ブレードを振るって床に穴を開け、目の前の男をその中へと引きずり込む。彼は眉一つ動かす事無く為すがまま階下へと落下。私は床を斬り裂きながら地下駐車場へと彼を引きずり込む。

 

「手荒いエスコートだ。私のファンだと言うのであればもう少し此方の事を労わって欲しいな。制服に埃が付いてしまったじゃないか」

 

「それは済まなかった。だが女性の我がままに付き合うのも男の甲斐だろう? 特に私の様な絶世の美女の我がままだ。諸手を挙げて喜んで欲しいのだがね」

 

「悪いが、私は既に愛する者達が居るのでね、君のお誘いには答える事は出来ないよ」

 

「そうか、それは残念だ。とてもとても残念だよ」

 

 

肝が座っているのか神経が切れているのか分からない彼の態度に苛立ちを覚えていた私だが、丸腰の相手に怯む必要も無いだろうと思い直し、グレネードとミサイル、KARASAWAの一斉掃射の後に再び斬り掛かったのだが、その思いはあっさりと崩された。

 

一閃、たった一刀で私の放った全ての射撃兵器は両断され、相手の反応速度では間に合わないタイミングで背後に回り込んだにも関わらず返す刀でミサイルポッドとグレネードを斬り捨てられた。

 

ミサイルとグレネードの弾薬が誘爆する前にそれらをパージ。ブーストを吹かせながら後ろに下がり、KARASAWAの照準を合わせて引き金を引く。

 

青白い閃光。強力なプラズマが着弾と同時に爆風を巻き起す傑作銃から放たれたそれは真っ直ぐに彼に襲い掛かる。

 

だがしかし、彼の前では私の攻撃は唯の悪足搔きに過ぎなかった様で。

 

彼は迫る閃光を爆発させる事なく斬り捨て、虚空から杖を取り出しそれを無造作に振るった。

 

 

その瞬間、杖先から漆黒の塊が射出され、それが私を射抜かんとする、生理的悪寒とでも言えば良いのか、視界に映るソレが途轍も無く恐ろしい物に見える。

 

大袈裟な動きで距離を取った私だが、先ほどの黒い塊が過ぎ去った箇所が根刮ぎ削り取られて消滅している事に気が付き、思わずその爪痕に目を奪われてしまった。

 

その瞬間、彼が私との距離を一瞬で詰めると同時に肩を掴み、其処から腰に掛けてを一閃。咄嗟に身体を捻って急所は外したが、代わりにネクストを破壊されてしまった。

 

展開していたネクストが両断され私服姿となった私。目に映ったのは何の変哲も無いロングソード。聖剣や神槍でも無い数打ちのそれだ。徒手空拳故に容易く降せると言う侮りが仇となった。

 

 

「この剣は、私の友が最期の決戦に挑んだ私に託してくれた一振りだ。私は決して丸腰などでは無いよ」

 

 

今の一戦で分かった。この男と私は絶望的に相性が悪い。

 

私は一手一手先を読むタイプでは無い。その場その場の状況に応じて力尽くで相手を捩伏せる事に主眼を置いている。そして彼は二手三手先を読み、相手の行動を誘導しながら自分に有利になる様に事を運ぶタイプ。しかも些細な隙すら確実に物にして敵を討つ。だからこそこの男には私の行動が手に取る様に分かるのだろう。

 

更に間が悪い事に、地下駐車場の監視カメラにマジックナイフが突き刺さり、その機能が失われている為この男は管理局員にも関わらず質量兵器を使用する。何の躊躇いも無しにだ。

 

生唾を飲み込み、相手の動きに備える。素手とは言え私は人間とは違う。重傷だが拳だけでも彼を粉砕する事は可能だ。殺れ無い事はない。

 

殺意を絶やさない様に闘志を燃やしていると、目の前の男が静かに口を開いた。

 

「神族とは言え、最早組み打ちしか出来ない君を嬲って殺すのは私としても心の中に後味の良く無い物を残す。其処でだ、君が先ほど叫んでいた''自分''と言う物を教えてやろう。哀れで惨めなカミサマである君に、ね?」

 

嫌な予感がする。感情の込もらないこの男の言葉に背中に悪寒が走る。

 

 

「さて、私は君を見て直ぐにその正体を察した。君自身も薄々察しているのでは無いかね? 私と君の容姿や動きの癖、何より破壊衝動にも似た退魔衝動」

 

そう、何故か彼の姿が目に映った瞬間、私はどんな手段を使用してでもこの男だけは殺さなくてはならないと思った。世界に対する憎しみが塗り潰され、激情すら静まるほど冷静に。

 

 

「君は、ドクタースカリエッティに製作された私のクローンだ兄妹」

 

「な、に?」

 

一瞬、彼の言っている言葉の意味が理解できなかった、彼のクローン。つまり私は偽物で、人形だと言う事。

 

 

「う、うそだ、嘘だ嘘だ嘘だッ!! 私は私だッ!! 貴様の記憶なんて私の中に巣食っている有象無象の記憶の中にはーーーー」

 

「無い、と言いたいのかね? 本当に?」

 

 

見透かした様な言葉と冷徹な視線。その二つに晒された私は言葉を詰まらせ、同時に思い出す様にフラッシュバックする一人の男の記憶。

 

 

ーー貴公…カラミットを狩ったのだろう? 素晴らしい。世が世なら大王グウィンの叙勲に見える偉業だーー

ーーさあ、決着を付けよう‼︎ 我が最期の一閃、その目に焼き付けるが良い‼︎ーー

 

ーー我が望む後の理は、神による統治の無い世界‼︎人間による人間の世界なり‼︎ 我が不動の精神‼︎ 不屈の魂‼︎ 十二分に理解して散って行け‼︎ーー

 

ーー吐かせよ、散るのはどちらか知るがいい‼︎ 俺は今、生きている‼︎ 故に滅びろ‼︎ 勝つのは俺だ‼︎ 闇の時代を産む礎となれ‼︎ーー

 

ーー余は太陽と同意なり‼︎ 太陽とは即ち天‼︎ 地を這う人間に、天が落とせるものか‼︎ 貴様は震えながらでは無く、藁のように死に行くのだ‼︎ーー

 

 

頭が割れそうな勢いで雪崩れ込む旅路。あやふやな断片的な記憶しか無い私の中でやけにはっきりとしたその記憶。つまり、それは、彼の言葉が正しいと言う事の証明であり、私は自我の無い人形と言う事。

 

 

「うわぁぁぁぁあ!!」

 

頭を振りながらその考えを振り切り、彼に向かって殴り掛かる。

 

 

「だったらッ!! 貴様を殺してこの記憶を私の物にするッ!! そうすれば私はッ、私を手に入れるんだッ!!」

 

彼の記憶を思い出した事で行える神速の踏み込み。最大級の加速に全体重を乗せた右拳を振り抜く。

 

彼は私の渾身の一打を左手で受け止める。しまったと後悔するには遅く、痛みを感じる暇も無く既に右腕は斬り落とされていた。

絶叫と共に腕を抑える。先程から受け続けている痛みに身体が遂に拒否反応を襲い、敵前だと言うのにその苦しみを堪える事が出来なかった。

 

「腕が、私の右腕がッ!!」

 

「腕の一、二本で騒ぐ物じゃないよ兄妹」

 

 

そう言って彼は私の右腕を握り潰し、その残骸を目の前へと放り投げる。

 

 

「貴様さえッ!! 貴様さえ居なければッ!! 私はッ!! 私はッ!!」

 

「自分、自己が欲しい、成る程君の戦う理由はソレなのか。哲学的な願いだ、とても美しい」

 

だがね、と彼は私を見下しながら決定的な一言を放つ。

 

 

「君のその『自己を求める渇望』果たしてそれは本物かね?」

 

「ーーーーえっ?」

 

「君には自分と言う物が存在しないのだろう? ならば何故『自分』を求めるのかね?」

 

「だって、それは、私以外の記憶で私が埋まっているから……。だから私は、私が欲しくて……」

 

「その思い、その決意、その憎悪、本当に、本当に君が心から思っている事なのかな? 君の言う有象無象の記憶の一つが囁く幻想の可能性は? 出生の際に刷り込まれた本能だとしたら? もう一度聞こう、本当に自己を求める君のその思いは本物かい?」

 

 

本物だと、言いたかった。しかし、私は口を開く事が出来なかった。何故なら己の価値観が崩壊した様な思いで茫然としていたのだから。

 

そんな心が折れ、諦めの色が浮かんでいるであろう死んだ目をした私を見て、彼は心底下らないと言うように私の事を鼻で笑う。

 

 

「…………気に入らんなその目」

 

 

そう言って彼は私の左目を抉り取る。眼球が抉られる際に映る光景と激痛。再び絶叫を上げた私だったが最早抵抗する気力も無く横たわる。

 

当たり前だ、今までの行動が自分の意思かそうで無いかすら分からない上、これからの行動も自分以外の誰かの行動理念に基づいた物になるかも知れないのだ。

 

 

ーー初めから、私に自分など無かった。ただそれだけの単純な話。

 

 

「良かったな自分の真実を知る事が出来て、そして敢えて口に出し、宣言してやろう」

 

虚ろな瞳、虚空な魂、がらんどうとなった私に追い討ちする様に彼は宣言した。

 

 

ーーーー貴様には自分など有りはしない。同じクローンでもフェイトの様な黄金の精神を持たぬ空っぽの人形。与えられた指示をこなすだけの道具だよ。




アレ? ブレン君って、主人公……だよね?

何でこんなラスボス見たいな精神攻撃してんの(白目)
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