短くてすいません、ブラボに忙しくて(白目)
第二百十七話 熾天使再臨
機動六課襲撃の報から僅か二十秒足らず。
それだけの短時間で機動六課は壊滅的打撃を受けていた。
それを行ったのはナインボール・セラフのただ一機。この機体は十年前に不死の英雄の戦闘記録を完全に再現する為にDr.スカリエッティが財団の支援を受けて制作した至高の一体。
この機体のAIは戦いに置ける不死の英雄の思考を完全に再現しており、その状況判断能力、バトルセンスは最盛期の不死の英雄そのもの。かつてブレンがこの機体と交戦した際、心の隙に付け込まれ、重傷を負って敗走している。
この機体は人間の感情の機微に聡く、人質や騙し討ちと言った手段を躊躇う事なく使用する為、根が善人な集団である機動六課の面々は手も足も出なかった。
先ずナインボールは壁や障害物を破壊しながら最短距離を最速で突撃してヴィヴィオを強奪。幼子の細首を鋼の指先で締め上げながらブレードを突き付けて人質とした後、六課の人員達に一切の抵抗を行えない様にし、搭載されているオービットを使用して内部を制圧。
護衛に付いていたザフィーラやシャマルも、指先一つ、魔力の揺るぎの一片すら察知し、その度に容赦無く幼児の身体を殴り付け、指先や肋骨など即死しない部分を一つ一つ砕いて行くナインボールの前に煮え湯を飲まされながら血の海に沈む。
司令部が壊滅し、拠点としての機能を完全に失った後にフェイトとなのは達は到着した。
彼女達は決して遅くは無かった。フェイトの速さによって六課襲撃の報告から一分も経たない内に六課の敷地内に到着している。
–––––だが、それ以上にナインボール・セラフと言う機械仕掛けの紅き熾天使の方が早かった。
一分、秒数にして六十秒と言う時間はナインボールに取っては敵を降すのに十分な時間であり、施設が再建不可能になるまでの破壊活動を行う事すら可能であった。
この襲撃で六課の人員の全てが重傷及び死亡すると言う被害を受けた。戦闘員非戦闘員関係無しに軽症な者は誰一人存在しない、薄れる意識でシャマルが大規模転移魔法を発動したお陰で壊滅はしても全滅はしなかった。
しかし、聖王のクローンであるヴィヴィオは強奪され、隊の仲間は再起不能。シャマルに至っては復帰出来る事が可能なのかすら怪しいレベルの消耗となってしまった。
完全な廃墟、炎に包まれた瓦礫の山の中にナインボールは立っている。
–––––––なのはが、ヴィヴィオと仲良くなる為に購入したぬいぐるみを踏みにじりながら。
フェイトも、なのはも、怒りを通り越して頭が冷えて行く。なのはは神としての神格が溢れ出す程の怒りを抱き、フェイトは龍狩りの槍を展開して時間停止の体勢に入っている。
初めから全力、出し惜しみなく塵も残さない。その様な気迫、殺意、血の通わぬ熾天使はその様子を一瞥した後、踏み躙っていたぬいぐるみを燃え盛る炎の中に蹴り飛ばしてブレードを展開してダラリと左腕を下げる。
両者の間に沈黙が横たわる。ナインボールは元になった人物が正面からのぶつかり合いよりも奇襲や不意打ちと言った戦法を好む為、打って出る事は少ない。
又、なのは達も怒り任せの攻撃が足元を掬われる結果になる事は理解しているし、相手はブレンの戦闘経験をそっくりそのまま得ているのだ。カウンターを警戒し過ぎる事に越した事は無い。
フェイトの時間停止の前ではあらゆる小細工は通用しないのだが、その為の手順としてトップスピードに乗る必要があるので、何の準備も無しには使用出来ない、先ず時間を止める前に加速を潰される。
先に仕掛けたのはなのは。痺れを切らした訳では無い。落ち着いて戦うべきなのは分かるが、睨み合いをしてばかりでは何一つ進展しないし、攫われたヴィヴィオの事も気になるのだ。何時までも拘束されていられないのだ。
放たれたのはショートバスターと十六発のシューター。左右から挟み込む様に八発づつシューターが接近。QBやOBの挙動を制限しつつ、本命のバスターを直撃させようとする。
しかし、ナインボールは左腕のブレードを使用してシューターを両断。右腕にコジマ粒子を纏ってバスターを殴り返す。
反射された収束砲。なのははそれを障壁で防ぎ切る。
その一瞬の空白、弾き返された砲撃を防いだ瞬間、なのはの目の前にナインボールが立っていた。
振るわれる横一閃、機械故最速の一撃、集束されたエネルギー刃はそのまま彼女の身体を両断するかに思われた。
その刃がなのはに届く前に世界から音が消える。たった一瞬の攻防だったが、フェイトが時間を止めるには十分過ぎる時間だった。
自分が動いている間とは言え全てが停止したフェイトだけの世界。彼女はそのままなのはに斬り掛かるナインボールを弾き飛ばし、ファランクスによる面制圧攻撃を行った所で再び時が動き始めた。
立て続けの襲撃、槍の一閃とファランクスによる砲撃の雨、さしものナインボールも察知外からの一撃には対応できず、その砲火に晒される。
なのはの前で槍を構え、残心しながら注意深く下にいるナインボールを睨みつける。
土煙の中からゆらりと立ち上がるナインボール。時間を止め、無防備となった所への一撃だったが、それは立ち上がった。
胸元は真一文字に切り裂かれ煙が上がっている。しかしファランクスに関してはブーストを蒸して回避したのか被弾零。
しかもナインボールは舞い上がる土煙を利用してオービットを展開しており、その閃光が一斉になのは達に降り注いで行った。