不死の英雄伝 〜不屈の体現者〜   作:ACS

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生存報告を兼ねてクッソ久々に投下、話どころか私を覚えてる人は居るのかな……。

余談ですが、ダクソⅢをプレイしてて思ったんですよ。

トロフィー『はじまりの火を継ぐ者』

薪の王たちの中に居る曲剣使いの呪術師。

クラーナの呪術書の説明文とソレをコルニクスに渡した時に出てくる放浪者と言う単語。

もしかして前作読者の中にフロムの社員さんがいた可能性が微レ存?

…………アッハイ、調子乗りました申し訳ありません。



不屈の体現者 219

第二百十九話 臆病者の決意 少女の覚悟

 

 

ヴィヴィオと無事接触する事が出来たRDだったが、誘拐犯の一人である彼に対する視線は恐怖が込められている。まぁ当然の事かと納得したRDだったが、ヴィヴィオの奪還はスピード勝負に他ならない為説明も無しに彼女を抱き抱え、睡眠薬を嗅がせて眠らせながら部屋を飛び出した。

 

事前に監視カメラに細工し、一定の期間で映像がループする様にしておき、それによって多少の時間が稼げるだろうと彼は踏んでいた。

 

しかし––––––。

 

 

「待てRD、貴様何をしている」

 

「……チンクっすか」

 

ヴィヴィオを抱え、出口に向かって居たRDを遮ったのはナンバーズの中心人物の一人、チンクだった。

 

 

「ここ最近お前の様子がおかしかった。何処がとは言えんが普段の飄々とした雰囲気に真剣味が混ざっていたからな」

 

「流石はチンクっすねー。アンタにだけはバレ無い様に気を張ってたっすけど、それが裏目に出るとはね」

 

 

ヴィヴィオを小脇に抱えた状態のRDはポケットから待機状態のデバイスを取り出しはしたものの、臨戦態勢は取らず意味あり気に笑っていた。

 

チンクはその様子を見て不信感を強める。自分一人とは言え護衛対象を抱えた状態のRDに負ける気はしない。既にクアットロにも連絡を入れているので一対一ならまだしも他の妹達が駆け付ければ取り回しの悪いOWを搭載したデバイスを使用しているRDに遅れを取る事は無い。なのにRDの表情からはしてやったりと言う表情が見て取れる。そしてそんな警戒心むき出しのチンクに対してRDが口を開いた。

 

 

「ところでチンク、帰還してからウェンディにお茶貰ってたっすけど、アレ本当にウェンディが淹れた物っすかね?」

 

確かに出撃組は帰還後軽く休憩を取り、その際にチンクはウェンディからお茶を受け取っている。だがこのタイミングで何故そんな話が?と、其処まで考えてある可能性に気が付いた。

 

だが其れに気が付いたとしても既に手遅れ。彼女はその一杯を受け取ってしまっていた。

 

突如身体がいう事を効かなくなり膝から崩れ落ちるチンク、薬を盛られた事を悟ったチンクはそれでも立ち上がろうとするも、それより先にRDによって蹴り飛ばされる。

 

 

「ガハッ……グッ、RD……何を、盛った……?」

 

「まだ喋る余裕があるのは誤算っすね、本当なら完全に無力化出来た筈なんすけど……。まぁ要は普通の人に使ったら二度と起き上がる事が出来ない薬っすよ」

 

幾ら大部分が機械化されている戦闘機人とは言え、脳や心臓と言った重要な内臓は人間のそれだ、RDは其処に作用する麻酔の様なものをあらゆる手を使ってこの場に居るナンバーズ全員に殺す気で盛っていたのだ。

 

 

「チンク、もうこんな事辞めて投降するっす。 アンタだけじゃない、此処に居るナンバーズ全員が本当は気付いているはずだ」

 

「……何の、ことだ」

 

「もうドクターは変わっちまったって事だよ。オレよりも長い間一緒にいたアンタらの方が分かるだろ。あの人は一線を越えちまってるってな」

 

「…………」

 

「オレが接触した時点であの人は既に人間じゃなく人の皮を被った魔物だった。閣下のクローンを作った時点でさらに振りきっちまったあの人は、もうアンタらを見ていない。それどころか既に捨て駒にされてる––––––いや、捨て駒にすらされて無いんだよ!!」

 

 

RDはスカリエッティに初めて接触した時、その目に気圧された事を思い出しながらチンクへ対して自分の思いを吐き出し、説得を試みる。

 

ナンバーズとの関係は機動六課が完成する以前から築かれており、RDの中では彼女もティアナ達と同じ様に掛け替えの無い日常の一つでもあった。

 

だからこそ、人でありながら魔物になったスカリエッティに対する執着を持つ彼女達を彼の呪縛から解放したかったのだ。

 

 

「あの男の見ている視点は誰にも理解出来ない!! 狂人なんだよ!! そんな男にお前らは何時まで忠誠を尽くすつもりなんだ!!」

 

「黙れッ!! 私達はその為に作られた存在だ!! 使い捨てにされるなら本望。例え見向きもされなくとも彼の駒の一つになればそれで良い!!」

 

 

言い聞かせる様に、裏切ったRDへの怒りで彼の言葉に耳を傾けない様に、彼女は吠えながら立ち上がる。

 

 

「お前には分からんだろう、誰かの為に戦う気持ちも!! その為に命を賭ける覚悟も!! 自分の為にしか生きられないお前にはッ!!」

 

 

チンクは感情的に叫びながら固有武装であるスティンガーを投擲し、それを爆破する事でRDの目を眩ませると同時に懐へと飛び込み、低い身長を活かし超低空から首を狙った斬撃を放つ。

 

しかし薬によって鈍った動きと、本気を出しているRDの戦闘センスにより、首の皮一枚を斬り裂いた所で回避され、カウンターに鞭のような蹴りを一閃され、壁に叩きつけられる。

 

 

「ふざけるなッ!! さっきから聞いてりゃ自分を道具みたいに言いやがって!! お前ら戦闘機人もれっきとした『人間』だろうが!! それを捨て駒で良いだの使い捨てられて本望だの、馬鹿な事言ってるんじゃねぇ!!」

「馬鹿な事? 馬鹿な事だと!! 私達は事実その為に作られたんだ!! 戦うための道具として作り出された我々に、それ以外に生きる意味があると思うのか!!」

 

「当たり前だ!!」

 

「なっ……!?」

 

 

よもや即答されるとは思わなかったチンクは言葉に詰まる。

 

彼女達のやり取りはこの場にいるナンバーズ全員に伝わっており、先の言葉も概ね全員が持つ感情だったのだ。

 

だからこそ、次にRDの発した言葉は彼女達を揺さぶった。

 

 

「戦闘機人だからって平和な世界に生きちゃいけないって誰が決めた。戦うしかないって誰が言った!! 同じ戦闘機人でもスバルとギンガはそれぞれ平和な世界で生きている。夢や希望を持って生きてるんだ!! 彼奴らに出来てお前らにそれが出来ない訳ないだろ!! 拒絶されるのが怖いならオレが一緒に居てやる!! 理解されないのが怖いならオレがお前らの良さを語ってやる!! 相手を傷付けるのが怖いならオレが全部受け止めてやる!! お前らの為なら何だってしてやるって約束する!! 道具だからって諦めてないで自分の為に生きなきゃダメなんだよ!!」

 

荒く息を整え、言いたい事は全て言い切ったと言う表情を浮かべるRD。その顔を見たチンクは嘘や打算から吐いた言葉では無いと理解したのか戦意を喪失。他のナンバーズもチンクからの念話を通じて先程の言葉を聞き、迷いが生じていた。

 

本当は誰もが分かっていた。自分達のやっている事が全くの無意味であるという事を。

 

一線を越えたスカリエッティはウーノを連れ彼女らを置き去りにして去って行った。その後の動向が分かるような物は何一つ残されておらず、文字通り彼女らは棄てられた。

 

だが彼女らは何時か彼が再び戻って来る日の為に今回の作戦を進めていた。そうすればもう一度自分達を見てくれるのでは、と言う淡い希望を懐いて。

 

そしてその認めたくない現実、自分達の行って来た行為全てがスカリエッティの心を揺らす物では無かったという事をRDによって自覚させられた。

 

彼女達が真に道具だったのならRDの言葉に揺れなかっただろう。確固たる決意に突き動かされた行動だったならRDの言葉を鼻で笑っただろう。

 

だが、彼女達の行動は只々スカリエッティに認められたいと言うだけの物。それも突き詰めてしまえば不要と断じられて何の価値も無く棄てられた事に対する反感から来るものだ。固い決意や覚悟に支えられた物では無い。

 

其処へ自分達を求める様なRDの本心から投げ掛ける言葉だ。彼女達の心の隙間へ其れは染み渡る。

 

 

「––––––臆病者が威勢の良い事を言うじゃないか」

 

 

ナンバーズの戦意がなくなり、RDが肺の中の空気を吐き出した瞬間、通路の奥からラインの乙女が現れた。

 

右腕が斬り落とされ、抉られた左目に眼帯を掛け、そして深淵の魔術によって侵食されて黒く染まった髪。痛々しい姿をした彼女だが以前の狂戦士染みた殺気は四散している。

 

そして見るべきはその左手に握られた聖剣、月明かりの大剣。ヴィヴィオに御守りとして渡された最強の証。

 

本来なら不死の英雄が真の所有者である為、他人には扱う事は愚か認められ無い者には触れる事すら許されない筈の剣。だがその聖剣はラインの乙女が新たに抱いた決意を認めその手に収まる事を良しとした。

 

 

「随分と大胆なイメチェンっすね。其処までしてまだ剣を握るんすか?」

 

「当然、君が生きる為に戦う様に、私も己の為に剣を振る」

 

「自分なんてない癖に良く言いやがる」

 

「あるさ、今の私は()()()()()()()()()()()()()()()。私の内に潜む有象無象は全て存在しない。今の私は一個の剣だ、そしてその私が叫ぶのだ。ただ一言あの男に勝てと」

 

スッと聖剣を突き付け、RDに対して純粋な殺意をぶつけるラインの乙女。その眼は静かに強い光を宿し、説得が容易では無いとRDは理解させられた。

 

戦闘は避けられないと考えた彼はデバイスに搭載していた転送装置を起動し、ヴィヴィオを六課の拠点へと転送する。

 

この転送装置は企業連の科学力と管理世界の魔法技術によって作られた試作品で、何処にいても指定したポイントに転送する事が出来る品なのだが、β版どころかα版と言っても言い出来で、一度きりの使い捨てにも関わらず大量の魔力を消費し転送出来る人間は一人。本来この道具はRD本人が危機的状況から脱出する為の物だった。

 

 

「ほう? そんな物を用意していたにも関わらず自分に使わなかったのは何故だ? 君は今の私に勝てるとは思っていないだろう?」

 

「……さあ、それはオレにも分かんねぇっす」

 

 

確かに相手は隻眼隻腕の少女だ。見た目だけなら負ける要素は無い。その全身から溢れ出す神気さえなければ。

 

周囲が静まり返る程重い威圧感。呼吸すら忘れそうになるそれは確実にRDを後退させ、元より自分の死に対して人一倍敏感でソレを恐れている彼の身体は無意識に震えていた。

 

「確かに、今のお前にオレが勝てる気が全くしないっす。今からでも逃げ出したくって堪らない。だけど––––」

 

 

そう言ってRDは自分に言い聞かせる様に前に踏み出し、過呼吸になりながらラインの乙女の放つ神気に当てられたチンクの前に立ち、デバイスを起動してライフルとレーザーブレードを取り出して構える。

 

「此処でオレが逃げたらオレはオレのままだ。何にも変わらない臆病者のままだ。此奴ら全員に何でもしてやるって約束しちまったんだ。自分の為に生きろって言っちまったから、無様に逃げる訳にはいかねぇんすよ!!」

 

 

それともう一つ、彼の脳裏には自分を信じると即答してくれた少女の顔が思い起こされ、彼の背中を後押ししていたのだ。

 

彼女だけではない、此処で逃げれば自分は機動六課の人間全てを裏切る事になる。何時しかあの場所は彼にとって居心地の良い場所になっていたのだ。

 

 

「来なッ!! 神だろうが悪魔だろうがオレの命は安くは無いっすよ!!」

 

「……フッ、ならその命、私が高く買い取ってやろう」

 

 

これ以上交わす言葉は無い。そう言わんばかりにラインの乙女は踏み込みその聖剣を一閃する。その斬撃を見たRDは障壁を展開し、その一撃を受け止めた後眉間を銃撃しようとした。

 

だが彼女の振るう聖剣は任意の物を透過し、それ以外を斬り捨てる最強の聖剣。RDの展開した障壁など壁にならず易々とその刃が首元へと届く。

 

RDは首を逸らし、伸び切った左腕を斬り落とそうとブレードを振るうも追撃に放たれた槍のような鋭い蹴りがRDの身体をくの字に折り曲げる。

 

 

(しょ、障壁の上から、蹴り砕かれた!? クソッ!? 身体能力が段違いだッ!!)

 

 

弾き飛ばされる様に吹っ飛び、衝撃を散らしダメージを分散させる。たった一撃で沈むものかと言うRDの決意はそう簡単に折れはしない。

 

RDは吹き飛ばされた勢いをそのままに、壁へ激突する間際に壁面を蹴り付け、踏み込みの威力を高めた状態でラインの乙女へと突っ込んで行く。

 

それに対してラインの乙女は慌てる事無く聖剣に魔力を込めながら突きを放つ。踏み込みに対するカウンター。RDはソレを紙一重で回避し、カウンター返しにブレードを首筋に叩きつけようとした。

 

その瞬間聖剣が爆発、しかもそれはブレンが好んで使用していた力任せの暴発では無く、指向性を持った魔力放出だった。

 

聖剣を中心に吐き出される強力な魔力の奔流、紙一重で回避していたRDはカウンター返しにカウンターを合わせられた為、回避する事も勢いを殺す事も出来ずに魔力放出に呑み込まれる。

 

身を焼く神の魔力。人間の持つソレとは違う異質な力。半身を焼かれたRDは崩れ落ちそうな身体で無理矢理ラインの乙女に押し付け、膝を付く事を拒みながら破壊されたブレードの柄で顳顬を殴り付ける。

 

RDは痛みを精神力で誤魔化し、恐怖を闘志で押さえ込みながら尚も争う。

 

ラインの乙女は的確に顳顬を殴られた事で鑪を踏む。その隙を見逃さず畳み掛ける様に追撃を放つ、超至近距離での殺し合い、当てることの出来ないライフルは投げ捨て、壊れたブレード一本で立ち向かう。

 

膝蹴りを彼女の子宮の上に叩き込み、強烈な吐き気と痛みを味あわせる事で動きを止め、唯の鉄の棒となったブレードで顎を打ち抜く。

 

だが、相手は人ではなく神。その全てに耐えきり、聖剣を逆手に握り直した彼女はそのままRDを串刺しにする。

 

口から夥しい出血をするRD、無理な姿勢からの一撃だった為か幸いにもそれだけでは致命傷になりはしなかった。

 

これを好機と見たRDはラインの乙女の手首を握り、左脇腹に向けて打ち抜いたブレードを突き立て、其処に拳を叩きつける事でパイルバンカーの様に内臓に到達させる。

 

だが、RDの抵抗も此処まで。僅かに身体が開いた隙に聖剣を引き抜かれ、光波と奔流の二撃を叩き込まれ、前のめりになって倒れ伏した。

 

 

「RD!!」

 

「…………安心しろ、その男は生きている」

 

 

脇腹に突き立てられたブレードを引き抜き、ラインの乙女はそう告げる。

 

 

「私もナンバーズの皆には世話になった。その男を殺してしまったら皆悲しむからな、それは私も望まない」

 

 

倒れ伏したRDに近寄った彼女はそのまま聖剣でRDのリンカーコアを破壊し、彼を介抱しているチンクの手にとあるメモリーチップを握らせる。

 

 

「このチップにはドクターに関する情報が入っている。コレがあればこの事件が一気に解決するレベルのな」

 

「……ライン、お前は何をする気なんだ?」

 

 

自分達以上にスカリエッティに対する依存心が強い彼女が、彼に対する謀叛とも言える物を渡すと言うことが信じられなかったチンクは思わず問いただしてしまった。

 

 

「クローンがオリジナルと対峙した時、思う事は一つだろう?」

 

 

クールな笑いを見せた彼女はそのままチンクの横を通り過ぎ、外へと出て行った。

 

その胸に懐く思いは復讐心や敵愾心では無い。越えなくてはならない壁に対する闘志。

 

 

(月並みな言葉だが、あの男を討たなくては私に明日は無い、常にあの男の影が私に付きまとう。だから勝つ!! 明日を手に入れる為に、誰の為でも無い、誰に言われた訳では無い、私が私の為に勝つ!!)

 

 

強い決意、それはやはり同一の存在故に持つ性質が彼女を突き動かすのか、ナンバーズとの生活とオリジナルに対する致命的で屈辱的な敗北は人形であった彼女を大きく成長させたのだった。





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