不死の英雄伝 〜不屈の体現者〜   作:ACS

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不屈の体現者 220

第二百二十話 茶番劇

 

ラインの乙女が去った後、痛みによって意識を覚醒させたRDが見た物は医務室の天井だった。

 

てっきり殺された物とばかり思っていた彼は重い体を起こし、自分の身体をチェックする。

 

 

「……魔力を感じない?」

 

「当たり前よ、だって貴方リンカーコアそのものを治療出来ないレベルで破壊されてるんだもの、あのバーサーカーにも困ったものですわね」

 

彼の看病をしていたクアットロが呆れながらベットの横に腰掛け、起き上がろうとするRDをベットに押し戻す。

 

「拷問くらいはされると思ったんすけどね、特にクアットロには」

 

「……ドクターに対する気持ちは変わってないわよ。ただ貴方の事もほっとけないだけですわ」

 

「ツンデレっすねぇ。で? アレからどれ位経ったんすか?」

 

「五時間くらいね。戦場の方も一旦落ち着いたのか戦火も見えてないわ。ドクターからの連絡も無いし本格的に棄てられたようだから途方に暮れていたところよ」

 

 

そう言いながら彼女はデータチップをRDに手渡し、その解析データを投影したスクリーンに移し始めた。

 

 

「あのバーサーカーが渡して寄越したものを解析した物よ。…………本当にドクターは私達の事を見ていない事が思い知らされたわ」

 

その台詞を聞きながらRDは開示された情報に目を通して行く。其処に書かれている内容は流石は狂人と呼べる物だったが、彼の居場所について記された情報に思わず笑いが込み上げてしまった。

 

 

「あはははっ、何だコレ、最初からこの騒動は全部茶番だった訳っすか、なんだよそれ……」

 

 

現在のジェイルスカリエッティの居場所。其れは彼が以前掴んでいた情報とは全く違い、最高評議会の元だった。

 

いや、正確には既に最高評議会は存在していない。数年前にラインの乙女が完成したと同時期にスカリエッティの手によって殺害され、その場を彼が占拠して管理局全てを掌握していたのだ。

 

考えてみれば年々戦力低下が問題視されているとは言え、こうも簡単に管理局の防衛網を突破された理由も理解出来た。内側から手引きして仕舞えば猿でも入れる。

 

そんな事を思いながらRDは初めてドクターと会話した内容を不意に思い出していた。

 

 

『君は、この世界についてどう思うかね?』

 

『世界っすか? どうと言われても普通っすよ』

 

『ああ、そう言った意味で問うた物じゃ無い』

 

『じゃあどんな意味っすか』

 

『例えば、ここに一冊の本がある。この中身は勧善懲悪物のオーソドックスな冒険譚だ。そしてこの中身には当然登場人物が存在する。喜怒哀楽豊かな仲間や正義感の強い主人公。彼らはその世界では確かに存在し、その人生を送っている』

 

『話が見えないんすが……』

 

『最後まで話は聞きたまえ。そこで私は考えたのだ、この物語の人物達は自分が空想上の存在だと理解しているのかと言う事をね』

 

『いや、そんな訳無いっすよ』

 

『そう、彼らは自分が架空の人物だという事を知らない。だが其れは我々が本というツールを通じてその人生を見たからそう言えるだけだ。なら我々にも同じ事を言えるのでは無いかね? 今こうして我々が生きて生活している様を本なり映像なりで一つ上の次元の者が覗いていないとは言い切れないのでは無いかね?』

 

『それは、そうっすけど……』

 

『君の言いたい事は分かる。非現実的な話だと思っているのだろう? しかしだ、私は過去にその一つ上の次元から此方に来た少年と出会っている。そして神という物が存在しているのだからこれを確認する方法は幾らでもある。一番手っ取り早く確実な方法は今我々が存在する次元そのものを崩壊させる事だね』

 

『………ハァ?』

 

『この世界を支えて居るのは不死の英雄だ。そしてその彼を始末してしまえば自ずと世界は滅び無に還る。今の私はその先に興味が尽きないのだよ』

 

 

その彼の眼は本気で、冗談を言っているようには感じられ無かった。いや実際にそれを目指して行動を起こしている。今回の騒動も一重にブレンと言う男を殺す為だけの物だ。

 

「はぁ……こりゃ、呑気に寝てねぇで早く閣下に報告しねぇとな」

 

「…………はい、貴方のデバイスですわ」

 

「オレが言うのもなんすけど、良いんすか?」

 

「…………デバイス渡した時点で察しなさいよ。気が変わらない内にさっさと報告を済ませなさい」

 

「……さんきゅー」

 

 

 

 

『っつー訳っす閣下。時空管理局って組織は実質的にスカリエッティの支配下に存在して、奴も其処に居ます』

 

「そうか、御苦労だったRD」

 

『それとナンバーズの件っすが……』

 

「分かってるさ、その位は何とかする」

 

『…………ありがとうございます』

 

「礼は良い、それよりその施設にルーテシアに似た女性はいるか?」

 

『あー、確かいた様な気がするっす。 ん? 居るって? さんきゅークアットロ』

 

「分かった、其れなら良い。後で六課のメンバーにも連絡を入れておけ。明日は間違いなく決戦になる」

 

『時刻的にはもう日付変わってますけどね。んじゃ御武運を……あーマジでティアナに怒鳴られる』

 

 

RDからの通信、それを受けたブレンは仮設テントのパイプ椅子に座り、これからどう動くかを考える。

 

幸いにも数で勝っていた為戦線的には押し返せた。相手も財団と言うバックボーンに金を貰って戦っているだけの傭兵も多く、頭である財団やスカリエッティさえ叩いてしまえば脆くも崩れ去るだろう。

 

だが、その中には自分を狙うリンクス達も居る。今日だけで両手の指で数えきれない人数を殺害した。しかしそのトップランカーの多くは生存している。

 

そして何より現在の管理局の状況だ。地上も本局も内外問わずの襲撃で殆ど機能しておらず。周辺の敗残兵を全てこの地に搔き集めて部隊を再編した状態だ。戦火に焼かれた市民の救護もある為戦力の低下が著しい上、六課のメンバーにも疲労が見える。

 

なのはとフェイトの両名はナインボールと交戦。管理局のトップエースによって撃破する事が出来たものの、それぞれが負傷、撃墜と言う結果と引き換えだった。

 

しかもなのはは最前線で劣勢となっているエリアに加勢して回り、膠着状態となった今も民間人救助に明け暮れている。戦力としては動かす事が出来ず、又彼女と同じ役割をフェイトに対しても回復次第それを行う様に指示を出している。

 

守護騎士も同様、シグナムは少し前に中将閣下と対談し未練の消えたゼストの介錯を行ったと連絡を入れて来た。彼女はヴィータと共に市民に被害が出ないように街の護衛を行い、ザフィーラとシャマルの避難誘導や治療に横槍が入らない様に専念している。

 

部隊長であるはやてもリィンとユニゾンし、前線で指揮をしながら砲撃魔法による支援射撃を行っている為、隊長格は全て動かせない。

 

 

残るは新人メンバーのみなのだが、RDの不意打ちが効いたらしく戦力としてはやや不安が残る。自分一人でスカリエッティの元へ乗り込んで居る間に上位のリンクスに一点突破されないとも限らない。そうなれば内側から挟撃され我々は瓦解する。そしてそれは結果として管理局の敗北に繋がるのだ。

 

それに、現在まともに全体指揮が出来る将校が自分一人と言う情けない状況になっている。他の将校は討ち死にや負傷、逃亡等で野戦病院に放り込まれ治療の真っ最中。軽傷な者は既に指揮を再開しているらしいが、不死の英雄の再来という肩書きの所為で実質的に私が中心部に座る事となってしまった。

 

散々考え悩んでいたブレンだったが、仮設テントの外から自分の顔に飛び蹴りをかます少女の所為で思考を中断させられた。

 

 

「くぉんのクソ兄貴がぁぁぁぁぁあ!!」

 

テントの外で待機していた部下の制止も聞かず殴り込みを掛けてきたのは紛れもない義妹。考え事に集中していたタイミングでブレンの癖を知り尽くしているルーテシアの飛び膝蹴りは回避不能の一撃となり、見事にその膝が彼の顔面に突き刺さる。

 

現場では兄妹関係を持ち込まない様にしていたルーテシアの乱入に思わずブレンは混乱してしまったが、直ぐに立て直し何時ものノリでその頭を鷲掴みにし、指先に力を込めて行く。

 

 

「何をしに来たルーテシア、事と次第によってはこのまま頭を握り潰すぞ?」

 

「それが怪我人にやる扱いかー!!」

 

 

と言いつつその腕を蹴り上げ、その衝撃を利用してアイアンクローから脱出しているルーテシア。ただのスキンシップだったら即座に追い出してやると内心でぼやきながらブレンは彼女に要件を聞く。

 

 

「で? 何をしに来たんだ。今の情勢を理解出来ていない訳があるまい」

 

「文句言いに来たのよ!! RDの事で!!」

 

 

その事を聞いたブレンは『ああ、そう言えば説明していなかったな』とうっかり漏らしてしまい、もう一発鋭い一撃を顎先に蹴り込まれる。

 

 

「『説明してなかったな』じゃないでしょが!! お陰で要らない怪我する羽目になるし、スバルは錯乱してすっごい事になってたし、隊長達が飛び回ってるのに私らは隊舎で待機がてら怪我人の治療だったんだぞコラ。せ・め・て私かティアナくらいには事前に報告しとけー!!」

 

「極秘中の極秘任務だぞ、そんな真似出来るか」

 

「……はあ、まあいいや。ちゃんとRDからの謝罪も貰ったし、何より兄さん殴って気が晴れたし」

 

 

そう言いつつ彼女は『キャロり〜ん私にもお茶ちょーだい』と言って椅子に座り、どっから持ってきたのかクッキーを摘みながら寛ぎ始めた。本当に状況を理解しているのだろうか?

 

そんな疑問を懐いていたブレンだったが、彼の顔を見たルーテシアは仕方ないなと言うような顔をしながら溜め息を吐き、彼の前に拳を突き出した。

 

 

「RDから話は聞いたわ。行ってこい馬鹿兄貴」

 

「……は?」

 

「どーせ『私が今此処を離れたら〜』とか『新人達でリンクスを相手出来るのか〜』とか難しく考えてたんでしょ」

 

「ポーカーフェイスは心掛けていたんだがね……」

 

「妹舐めるなバーカ。そんな事より兄さんは誰かの為にって考えて行動出来るほど器用な人じゃないでしょ? 難しく考え過ぎなのよ。責任だとか義務だとかぶん投げてさ、頭空っぽにして戦えばそれでいいじゃん。誰がどうなるとかじゃなくて兄さんがどうしたいって話でしょ、今までだってそうだった筈だよ? どの道兄さんが居ても居なくても戦いは終わらない。ううん、むしろ居る方が終わらない。だから兄さんは今すぐ行くべきだと私は思う」

 

「…………」

 

「私らが心配なのは分かるけどさ、私もみんなもそんなヤワな鍛え方されてない。いい加減兄さんは私らを信頼してくれても良いんじゃない? もう兄さんは一人じゃないんだから」

 

 

『それに、私は兄さん達から英才教育も受けてるしね』と、そう締めくくったルーテシアは顎先に拳を寸止めして見せると、持って来たクッキーをブレンの口に放り込んだ。

 

 

「はい、美味しい美味しい妹様特製クッキー食べて元気出たならさっさと行動に移す!! もたもたしてたら本当に間に合わなくなるよ!!」

 

「…………そうだな、事此処に至っては是非もない、私は私らしく敵を討ちに行くとしよう」

 

「そーそー、なんだかんだ兄さんは脳筋なんだからうじうじ悩んじゃダメだって」

 

「脳筋呼ばわりは屈辱極まりないが、まあいい」

 

 

呆れ顔のブレンはデバイスの中から鎧と混沌の刃を展開し敵の本拠地、最高評議会の元へと向かう事を決意した。

 

 

「ルーテシア、この場は君達に任せる。期待に応えてみせろ」

 

「偉そーに、言われなくても分かってますよーだ」

 

「そしてドーリー君」

 

「はい、何でしょう閣下」

 

「君の命、いや君だけじゃない、我が部隊全員の命を貰う。私が敵を討つまでこの場を死んでも死守しろ」

 

「喜んで」

 

「それとルーテシア、メガーヌさんは無事だ。RDに保護させている」

 

「えっ? お母さんが?」

 

「だから生きろよ、生きて必ず再開しろ。コレは命令だ」

 

「うん!!」

 

 

妹に発破を掛けられたブレンはそのまま振り返る事無く仮設テントを出るのだった。全てを終わらせる為に。




不死の英雄伝〜舞台裏〜

NGシーン 修羅場?


RD『…………』←冷や汗ダラダラ

ティアナ「…………」←座った目

RD『あ、あの〜、ティアナ? 目がめっちゃくちゃ怖いんすけど……』

ティアナ「私は普通よ? RD、うん、全然怒ってないから」

RD『いや、ホラ!! 敵を騙すならまず味方からって言うっすよね? そりゃ背後からぶっ放したのは悪かったっすけど……』

ティアナ「RD、私が言いたいのはそんな事じゃないの、むしろそれは全然気にして無い」

クアットロ『ささ、RDさぁん、こーんなツンデレヒス持ち女と話してないで包帯変える時間ですよぉ』

チンク『RD、傷は痛むか? 夜食にと思ってお粥を作って来たんだ、良かったら食べてくれ』

ウェンディ『うっわー、RD本当にボコボコっスねー、ラインちゃんマジパネェ、あっ他のみんなも後から見舞いに来るっスよー』

ティアナ「ねぇRD、帰ったら話があるから」

RD『は、はは、も、もしかしてヤキモチっすか?』←震え声

ティアナ「分かった、今から其方に行くわ、遺言はそれでいいのね?」←レイプ目

RD『すいませんしたー!!』←綺麗な土下座
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