不死の英雄伝 〜不屈の体現者〜   作:ACS

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半年ぶりにひっそり投稿、これだけ筆が毎日乗ってくれりゃ完結も早いのに……。


不屈の体現者 223

第二百二十三話 最後の神

 

 

嘗て白竜シースの書庫にて彼が見た亡国ボーレタリアの資料、ソウルに酔い、デーモンが跋扈する世界となったロードランとは違うもう一つの世界。

 

異世界か、並行世界か、或いは遥か昔か、気の遠くなるほどの未来の話であったのか。

 

当時はその全容を知らず、また十分な資料など無かった故に断片的な存在しか知らなかったが、神へと至り世界を手中に収めたが故にそれを知る事になったのは皮肉と言えよう。

 

ボーレタリアに召喚された古き獣、それはソウルを貪る存在であり亡国の存在した世界ではデーモンはその給仕係と言った様な存在であった。

 

世界に住まう人間からソウルを奪い、それを食事として獣に供給するデーモン、その世界の英雄はそれを討つ事で古き獣の食料を断ち、誘き出す事に成功したがそれを滅ぼす事は出来ずに封印するに留まる。

 

いや、正確にはソレを倒す事は出来たのだろう、しかし英雄は最早デーモン狩りのデーモンと化しており、古き獣のソウルを手にしてしまえば最早誰にも勝てない存在となってしまう危険があったのだ。

 

世界の底、最果ての地、それは即ち星の数ほどの世界と繋がった古き獣の寝ぐらであり、それこそがこの砂浜である。

 

 

「––––今迄の奴は封印され眠っている状態であった、しかしソウルと言う力は奴を誘い出す為の撒き餌となる」

 

ブレンは語り終えると螺旋の剣をラインの乙女へと突き付ける、お互いに神格を得たソウル体を持つ本来ならば存在してはならないモノ。

 

古き獣を起こし、今ある世界を第2のボーレタリアにする可能性がある存在同士、一人ならばまだしも二人ではそう遠く無い未来に獣の目が覚めてしまう。

 

 

「君が目覚めていなければ人形として殺すだけで良かった、しかし神格を得たのならば話は別だ、君は存在しているだけでソウルを撒き散らし、死ねば世界にソウルを拡散させる、故に私の世界の中では殺せなくなった」

 

それは神と言う存在の持つソウルが世界に拡散すると言う事、神秘を排除した世界に神の力が蔓延してしまえば嘗ての亡国の二の舞だ。

 

姿なき恐れ、伝承がソウルによって姿を得てデーモンとなり人間からソウルを奪う、その果てに古き獣が目覚める事で再びロードランの様な時代が訪れる。

「私はそれを防がなくてはならない、だからこそ此処へ招いた、此処ならば獣が目覚めたとしてもあの世界に被害は及ばないし、最悪私の存在を楔にすれば再封印も可能だからな、コレで話は終わりだ。後は我々のどちらが生き残るか、それだけだ」

 

ラインの乙女は真っ直ぐに向けられた自分の死すら幻視するほどの殺意への恐怖を飲み込むと、聖剣を握り直して斬り掛かった。

 

「––––我が名は人造神、ライン。推して参る!!」

 

「我が名は不死の英雄、ブレン・シュトッフ。来るが良い!!」

 

両者共人知を超えた速さで衝突し、その余波で砂が天高く舞い上がる。

 

ブレンの握った螺旋剣は始まりの火を焚き付ける螺旋剣であり篝火の螺旋剣、奪われた聖剣に拮抗しながら捩じくれた刀身は赤熱し、一合打ち合う度に大きな火花を散らしてお互いの身を焼いて行く。

 

ラインは初めて味わう篝火の火に鬱陶しさを覚えながらも、振り抜く様に両手をクロスさせながら斬撃を放つ、しかしブレンは放たれた斬撃を螺旋剣を差し込む様に防ぎ、後退させられない様に足を踏ん張りながら身体ごと前へと突き出し、二本の聖剣との鍔迫り合いを体重で押し返した。

 

万歳の様に両手を上に上げさせられたラインは、ブレンの横一閃を弾く為に大袈裟なバックステップを行なって一閃目を空振りさせる。

 

数百メートルほど後方に跳んだラインだったが、彼女が稼いだ距離はブレンの踏み込みによって瞬く間にして詰められてしまう。

 

彼の踏み込みは神代の時より一級品、後の先を取る機転と鋼の精神に加え、この間合いを潰す瞬間的な速さもブレンの持つ技術であった。

 

それ故に彼相手に後方への逃げなど格好の餌にしかならず、現に彼女は稼いだ距離以上に肉薄されてしまう。

 

亡国の英雄がデーモン狩りのデーモンであるならば、不死の英雄は神格狩りのデーモンだ、当時ならばいざ知らず全てを成し遂げた彼は討たれる側へと望んで成った。

 

だがそれは彼の最愛の女性が許さず、討ち滅びる筈の彼は今もこうして生きている、英雄であったデーモンは再び人間の為の英雄へと戻ったのだ。

 

その決意故か、切断された右腕を治療せずに螺旋剣を抱え込む様に突進、斬撃では無く突き上げる様にしてラインの右肩を消し炭に変えに行く。

 

体勢的に反撃の出来ないラインであったが、飛び退いた足とは反対の足で再び横っ飛びすると、敢えてバランスを崩す事で砂地の上に転がった。

 

直後、頭上を熱線が通過して行き空の果てで明るく弾けた、突き出された螺旋剣から放出された炎が空に浮かぶ雲すらも焼き尽くす光景を見た彼女は『あれを食らえばひとたまりもないな』と半ば他人事の様に感じながらも月明かりの大剣を背中へと展開し、アルトリウスの大剣をソウルに収納しながら両手で大王の大剣を握り、追撃に向かって来たブレンの胸元へと飛び込んで行った。

慣れない二刀流を身体能力だけで行うのは今の打ち合いで不利と悟った、ならば死中に活を求める為に攻めの一手を打つしか無い。

 

大王の大剣を地面すれすれまで低く構えながら踏み込み、下から上へと逆袈裟斬りに振り上げる。

 

無闇な斬撃はパリィによって弾かれるリスクしか無いが、今の彼には片腕が無いので積極的に斬撃を交えて行く事で相手の対応の限界まで斬撃を重ねる事が出来るのだ。

 

覚醒したラインは成長する神、今この瞬間にすらも成長して行く彼女は次第に感性が研ぎ澄まされて行くのを感じて行く。

 

相手の斬撃の軌道が手に取るように分かる、返す刀の二の太刀が予知できる、そしてそれらよりも一手早く行動できる、今の彼女には恐怖は無かった。

 

一方で切り結んでいたブレンは次第に鋭く、速くなって行くラインの攻撃に対して徐々に対応しきれなくなり、生傷が目立つ様になる。

 

始まりの火を使った肉体再生は使えない、それを使う為の剣は彼女の手の中にある。

 

エリザベスの秘薬を使おうにも隻腕で斬撃の雨を防ぎきっている以上、そんな暇は無い。

 

一つ返せば二つ、二つ返せば三つ、切り結べば切り結ぶ程に増えて行く剣尖によって遂にブレンの手から螺旋剣が弾き飛ばされる。

 

神の膂力で振り回される斬撃は容赦無くブレンの握力を奪い取った、同じ神であるにもかかわらず––––否、世界の創造神であるはずの彼の握力を奪うほどの成長、それが今のラインの乙女。

 

「ガラ空きッ!!」

 

そして、そんな彼女は剣を無くした隻腕の剣士の隙を逃しはしない、残った腕目掛けて振り上げた剣を垂直に振り下ろす。

 

両腕が斬り落とされれば最早勝ち目は無い、欲を出して首や胴を斬り裂きに行けばパリィで時間を稼がれる、それ故に彼女の狙いは残ったその腕だった。

 

回避は不能、というより回避行動自体は取れるもののその場合二の太刀で確実に狩られる、それはブレン本人が一番良く知っている。

 

片手の白刃取りは握力が無いので出来ない、なのでブレンがやった事は腕を庇う為に肩を引きながら身体を捻り、胴体を斬り裂かせる事で斬撃を振り抜かせ、砂浜に埋まった切っ先を踏み付けた。

 

 

––––このまま、彼女の背の聖剣を!!

 

それは、彼の中ではある種の必勝パターンであった。

 

相手の意表を突き、その際に出来る刹那の空白をモノにして死中に活を求める、数多くのジャイアントキリングを成し遂げて来た彼に染み付いた唯一の癖。

 

ブレンの手がラインの背中の聖剣の柄を握る、即座に魔力を流し込んで光波を暴発させようとしたのだが、それは叶わなかった。

 

何故ならラインは切っ先を踏まれたと分かるや否や、大王の大剣をソウルへと収納すると同時に入れ替わる様にアルトリウスの大剣を展開、一瞬にしてソウルの粒子となった大王の大剣を抑えつける事が出来ず、結果としてブレンの足の上にアルトリウスの大剣を取り出せたラインはそのまま脇の下から切り上げる様に彼の残った左肩を切断したのだ。

 

左肩が切断され、驚愕の表情を浮かべたブレンは鋭い蹴りをラインの頭部目掛けて放つも片腕で防がれる。

 

常人ならば爆散するほどの力を込めたブレンの一撃を易々と、それも表情一つ変えず受け止めたラインは正に最強の神となった。

 

––––ブレンのミスは二つ。

 

一つは彼女が自分のクローンであると言う認識。

 

自分を素体として産まれた人造の神、しかしベースは才能の無い自分であるという認識と、彼女の太刀筋や反応速度が自分と瓜二つだからこそ、ソウルの業に関しても自分と同程度であると誤認してしまった事。

 

ブレン本人はロードラン時代からソウルの中の物を取り出す事が苦手であり、それは現代でも変わらない。

 

故に当時は極力鎧の腰や盾の裏などにナイフや火炎壺を装備し、その弱点を突かれない様に工夫した戦い方を基本としていた。

 

その事が彼の頭の中にあった為、彼女がこのような装備品の高速切り替えが出来るとは思いもよらなかった、精々剣から手を離して背中の月明かりの大剣を握るくらいのものだろうと考えてしまったのだ。

 

二つ目は自分を人間だと自負しているが故の隙、いや最早隙など呼べない代物、コレを隙だと断言出来るのは後にも先にも彼女だけだろう。

 

それは思考と言う人間である以上必要不可欠な()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

今の彼女には一切の思考は無い、魂に刻み込まれた忌まわしいオリジナルの戦闘経験と狂気の科学者によって後天的に才能を与えられた彼女だからこそ可能な超反射のみによる戦闘。

 

一見それはアルトリウスと似た様な物に見える、だが彼女のソレはかの深淵歩きですら判断と言う一瞬の思考を必要としているのにも関わらずそれすら排除した為、ブレンすら越える殺人機械(キルマシーン)と化している。

 

そこまで振り切ったのならば寧ろフェイントや、攻撃の誘導といった罠に弱いと思われそうだが、そんな小細工は超反応で()()されてしまう。

 

対応、そう対応なのだ、フェイントや攻撃を誘導しようとする人間の思考の間、それを読み取り反応し対応する、誘導やフェイントは一切通じずその上から切って捨てられる。

 

 

––––ブレンの敗因(ミス)はこの二つ。

 

––––自分を過小評価し、それ故に己のクローンを過小評価した点。

––––人間である事を誇り、人間である事を是としたが故の対応の遅れ。

 

 

彼がそれを悟った瞬間、ラインの乙女が振り下ろした月明かりの大剣による魔力の奔流に飲み込まれ、その肉体は消滅した。

 




ブレン君はガチモードでボッコボコにされました、多分このシリーズの中で最強の状態です。

アルトリウスの超反応に対してそれを上回る超反射をやってるような状態なので仮に全盛期主人公と全盛期放浪者のコンビで戦ったとしても、正面から殴り合って返り討ちに出来るくらいには強い(震え声

三本の聖剣も持ってますし、超再生付きの超反射キルマシーン相手に隻腕じゃ無理、というか相手を嵌める奇策使いですから完全に相性悪いですし必然と言えば必然(白目
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