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買わなきゃ(使命感
第二百二十四話 終末の刻
ブレンの肉体が消滅したと同時に地上は更なる混迷の中にあった。
彼が敗北し、その肉体が消え去った瞬間にそれまで溜め込まれていたソウルが世界の底で拡散し、その膨大な量のソウルによって封印された古き獣が目を覚ましてしまう。
世界の守護者たるブレンが消え去り、高町なのはが前線でその力を奮っている彼の世界は古き獣からすれば格好の餌場、ラインの乙女は獣が世界中のソウルを奪う様を見るばかりでそれを止める気は無い。
最早彼女の精神は人間のソレでは無くなった、取るに足らない一世界線が滅びたくらいでは眉ひとつ動かさない、現代に蘇った最強の神にとって最大の敵は己のオリジナルただ一人であり、ソウルを貪る者は単なる力の塊。
故に彼女は存分に腹を満たした後の獣からソウルを奪う算段をしている最中なのだ、見捨てこそすれ助ける事などあり得ない。
だからこそ、地上では死者が蘇り、伝承がデーモンの形を作って現れ出した、ソウルを奪われた人間は亡者となり敵味方問わずに襲い掛かり、組織的な戦争などできなくなったのだ。
ある意味では急所を制圧され、全てがスカリエッティの手の中だった状態からは解放された、しかし実際には現状の悪化である。
世界の変調、それを悟ったのはブレンと命を共有している高町なのはと、世界の破壊を目論むジェイル・スカリエッティの二人。
なのははブレンが撃破された瞬間に強烈な脱力感と、耐え難い激痛が彼女の身体を襲った事で、彼が討たれた事とそれによって引き起こされた物だと言う推測、スカリエッティは時空管理局そのものと言える場所を拠点としている為部屋を埋め尽くす様々なモニターから世界の変貌を目の当たりにした為だ。
「ハハハハッ!! 見たまえウーノ!! 見たまえ財団殿!! この世界の有様を、全ての伝承が形を成して歩き、死んだ者が朧げな意識を持って目覚める!! 今日こそが人類が数多持つ予言の日、正に終末の時と呼ぶにふさわしい!! アハハハハハッ!!」
映像越しに響く断末魔や、戦う者達の絶叫、一進一退の戦いを俯瞰しながら世界の終焉まであと僅かだとスカリエッティは確信した。
世界が揺らぐ、嘗てのロードランがそうであった様にブレンという火が消えた事で世界そのものが急速に劣化し、それによって時空の歪みが少しずつ現れ出したのだ。
部屋に立てかけられた時計が逆方向に針を回し、腕時計の表記が一切安定しない、世界の果てに何がある? 果ての果てには何がある!? 嗚呼興奮が止まらない!!
狂気の科学者は狂った笑いを繰り返しながらモニターを注視する、既に彼の用意したリンクスや傭兵はその大多数が討たれた為管理局の辛勝と言ったところだが、彼は戦争の結末自体はどうでもよかった。
––––重要なのは不死の英雄という死ぬべき時に死ねなかった神を討つ事。
正直言って彼はラインの乙女がオリジナルを下すとは思っていなかった、アレの役割は自分の前に彼が来るまでの間に彼の命を削る事、初めから史上最強の当て馬として潰す気だったのだ。
だがラインの乙女が確固たる自我を手に入れると言う計算違いが起こった結果、ブレンすら上回る最強の神として再誕した挙句自分の付けた首輪を引きちぎってしまった。
『アレでは私は真っ先に始末されてしまうね』とスカリエッティは楽しげに笑う、それは計算違いが起きれば起きるほど世界が自分の思いのままに行くオモチャでは無いと言う事を自覚出来るという稀代の天才故の悩みから来る喜び。
一方で、ラインの乙女に撃破されたブレンは人生の絶頂期の真っ只中にいるスカリエッティとは違い、ソウルの粒子になって消えて行く自分自身を半ば他人事のように感じていた。
––––嘗て嫌というほど味わった死の感覚、それとはまた違う本格的な消滅。
––––いつ、だったか、同じ感覚を、何処かで……。
それまでとは違い、まるでブレンに興味を示さず食事を終えた獣に歩み寄って行くラインを見つめ、ブレンは霞みがかった頭でそう考えた。
ソウルの消滅は完全な死を意味する、流れ出る魂の粒子はブレンの存在を世界へと溶かし、それに比例して意識も決意も溶けて行く。
––––眠い、もう、寝ても良いんだよな?
全身から力が抜けて行き、後は目を瞑るだけ、そう思った時にそれは目に映る。
ブレンの存在が消えかけている為に揺らぐ世界、それによってたった一瞬だけ始まりの火の炉とこの地底が繋がり、ブレンの視界に風化した墓王の大剣と、同じく風化した下手な修繕がされたボロボロのフードが認識できた。
それは自分の好敵手で才能の塊だったあの男の物、嗚呼そうかあの男と俺は世界の覇権を争ったんだったな。
愛する女性の顔では無く、命と世界を奪い合った男の顔を思い出して目が覚めるのは如何なものかと思うが、己の願いを込めて作り上げたこの世界に対する責任を取ると言うのなら、既に人間の思考回路ではなくなったあの女だけは生かしてはおけない。
戦いの最中に急成長を見せたのは良い、しかしその結果彼女が持っていた感情が犠牲になり、神としての側面が強く現れてしまっている、あのまま獣のソウルを吸収すれば新たな獣が誕生するばかりか再び神と言う存在を頂点とした世界になってしまう。
決意が眠気を覚まし闘志が力の抜けた体に喝を入れる、肉体が滅びはしたが辛うじてソウルの核は生きている、ブレンはその不屈の心によってソウル体を構築して立ち上がった。
しかし既に満身創痍、死に体にムチを打って立ち上がった様な物だ、その証拠にラインの乙女は完全に彼の事を無視して木の枝で編まれた様な姿をした獣の口の中に入って行く。
万が一獣のソウルをラインの乙女が手に入れたのなら勝ち目は無い、幾度も奇跡を成し遂げた男がそう感じる程の実力差が今のブレンと彼女にはあった。
––––重心が安定せず揺れる身体に殺意が沸く、俺はこんなに情けなかったか!? まだ、まだ戦えるだろう!? あの女を討つまで死んでも死に切れない!!
痛む身体を踏み出し、ラインの後を追いかけようとするも、忽ち足から崩れ落ちて砂浜に身体を打ち付ける。
情けない、情けない、情けない!! 敵の眼中にすら無いなどとッ!! 最大の屈辱、こんなザマで朽ち果てる物かッ!!
再び倒れた身体を引き起こし、不安定な重心を無理矢理修正しながら弾き飛ばされた螺旋剣を拾い上げたブレンは、獣の体内へと走って行った。
––––後ろから誰かが追ってくる、きっとそれは私のオリジナルのものだろう、不思議となんの感慨も湧かなかった。
戦闘の最中に突如としてクリアーになった思考回路で彼女はそう考える、あれ程憎かった男が今では路肩の石程に興味が無い。
それよりも彼女は口の中から腹の中へと侵入した際に見つけた漆黒の大剣の方に気が行っていた。
ロードランにあった剣とはまた違った製法で強化、製作された最強の魔剣・ソウルブランド。
所有者のソウルがデーモンに近ければ近いほどその力を増すソレは遥か昔の老王が手にした一振りだ。
無表情でその魔剣を眺めていた彼女だったが、獣のソウルの核となる部分へと到達すると、躊躇なくそのソウルへと手を伸ばし––––その手を投げ付けられた螺旋剣によって弾き飛ばされる。
それと同時にブレンが一気に踏み込み、デバイスを片手剣へと展開しながら全体重を乗せた一撃を彼女の首へと振り下ろす。
しかし彼の剣をラインは避ける事も防ぐ事もしなかった、その理由は単に避ける必要の無い攻撃だからだ。
何の神聖さも持たない平凡なデバイス、楔石で強化済みとはいえただそれだけで彼女の首は簡単には落とせない。
ブレンの技量のおかげで若干の傷は付ける事は出来たが、彼女の背中には月明かりの大剣が背負われており、多少の傷程度では直ぐに塞がってしまう。
ラインはその一撃を受け止めたあと、まるで虫を払うように無造作に魔剣を振るってブレンの身体を吹き飛ばす。
それは彼女からすれば無造作なものだったのだろうが、攻撃を受けた側からしたら完全に認識出来ない速度の一撃であり、歴戦の戦士であるブレンにすら反応が出来ずにその一撃を直撃してしまう。
そして切り裂かれた腹部からソウルがラインに吸収されて行く、それは魔剣の持つソウルアブソーブという吸魂の力による物であり、その力を使われた者はソウルと共に強化された能力を奪われる、この弱体化は不可逆的な弱体化であり、一度奪われてしまえば永久に元に戻る事は無く、その存在はソウルの業を扱うものへの確実な脅威であった。
当然その事が分からない二人ではない、ブレンは通用しない武器を使いながらソウル体の身体には致命傷となる一撃を凌ぎ続けなくてはならない。
小細工など不要、機械の様に無表情となったラインの乙女がブレンに対して斬りかかる、既に反応が出来ない彼は長年の経験からくる直感では無く、反射神経のみで一撃を受け流す。
横薙ぎの一撃にデバイスを構えながら上にかちあげる様に弾き、即座の振り下ろしには彼女の剣速からタイミングを計って横一閃することで剣の腹を叩いて弾く。
相手の攻撃の軌道を完全に読み切り、剣の軌道を予測しながらの打ち合い、確かに驚異的な技術ではあるが、残念ながらブレンには打つ手が無かった。
こうして打ち合っていても握力を奪われ、疲労が蓄積するだけであり、会心の一撃を与えたと思っても相手には傷一つ付かない状況、単なる悪あがき程度の意味でしかない。
ジリ貧、しかも最悪な事に体内で暴れる二人から古き獣はソウルを奪う事に決めたのか、互いの体から力が抜けて行く。
そうなると既に肉体を消失しソウル体だけとなったブレンに勝ち目は無く、彼はそれを身を以て感じながらゆっくりと失われて行く自身の力に歯噛みしつつも剣を強く握る。
流石にソウルを奪われる事を良しとは出来ないのか、ラインの猛攻が苛烈さを増し始めた。
ソウルブランドを残像が残る速さで振るいながら、紙一重で攻撃を防ぐブレンの手数を上回って行くのと同時に、デバイス越しでも発動するソウルアブソーブによって目に見えて彼の力が衰えて行く。
打ち合えば打ち合う程に弱体化して行く自分自身、分かっていてもどうする事も出来ないブレンだったが、有効な打開策が思い浮かぶ前に握っていたデバイスの刃が砕けてしまった。
柄だけとなったデバイス、展開していたバリアジャケットも効力を失い、投げ付けた螺旋剣も近くには無い、打つ手は無く力を奪われて弱体化した現状では力技による蘇生も不能。
ブレンは今度こそ自分の完全な死を確信したが、ラインの刺突を避ける際に足元にもう一つ、投げ付けた螺旋剣とは別の剣が落ちている事に気が付いた。
それが何なのか、そんな事は今の彼にはどうでも良かった、ただラインの攻撃を凌げるのであれば、勝機を見出せるのであれば何でも良かった。
結果として、その目の良さと彼が培ってきた経験がその窮地を救う事になる。
足元の大剣の切っ先を踏み付け、梃子の原理で柄の部分を上向きにして掴み、トドメとばかりに回避不能の一閃を放ったラインの攻撃の合間に差し込んで強引に鍔迫り合いへと持ち込んだ。
彼は知らなかったが、今彼自身が持つ剣はソウルブランドの対となる魔剣・デモンブランド。
それはデーモンを狩る魔剣であり、所有者の存在がデーモンから遠ければ遠い程力を増す剣、本来ならば既に人間を超越し神と言う名の一種のデーモンとなっていたブレンには扱えない代物だったが、ソウルブランドによる吸魂と古き獣によるソウルドレインによって神としての力の大半を奪われて人間に近付いた為、奇跡的に扱える様になっていた。
それ故に防げない筈の攻撃を防ぐ事に成功したばかりか、拮抗とまでは行かなくとも辛うじて戦える様になった、その代償は全ての能力が半分以下になるというあまりにも大きな物であったが。
彼は直感していた、仮にこの娘との戦いに勝利出来たとしても、最早自分に第一線で戦えるだけの力は残されまいと。
刻一刻と失われて行く自身の力、今のラインとの戦いを無傷で終わらせる事は不可能であり、それは即ちソウルアブソーブによる更なる弱体化を意味するのだ、その上で彼女を打ち倒した後に残る獣の封印にも力を使うのだから、確実に戦士として戦う力など残りはしない。
故に彼はコレが自分の最後の戦いだと決め、その最後の戦いに挑む為に剣を構えるのだった。