尚、この作品のフェイトの環境は原作と真逆です、プレシアは彼女を娘と認めていますし、フェイトも自分の出自やプレシアの目的は知っています。
全てを知った上での覚悟で、彼女はなのはとぶつかり合う事になります。
第三十話 ブレンの秘密基地
俺は今、装備の修繕の為に半ば秘密基地と化してきたあの廃墟に足を踏み入れている。
何度も言うが此処は様々な設備が整っている上にまだまだそれらは生きている、つまり何か作業をする際にはうってつけの場所なのだ。
手術室の中央の床板をはがして隠し通路を降りながら作業場に入り、月明かりの大剣の修理や左腕の義手の強化をしながらここ最近の悩み事に意識を割いてゆく。
元は変態企業と名高いアスピナ機関の病院だったため、此処には誰一人として足を踏み入れる事も無かったのだが。ちょっと困った事になっている。
と言うのも、何時もみんなが寝静まった深夜にこっそりと抜け出して装備の修繕をしているせいか、この廃墟に子供の霊が出ると言う噂が立っているのだ。
俺が此処から撤収すれば良いだけの話しなのだが、ロードランで手に入れた修理箱や、世界を作り変えた際に流れ込んできた各種種火や武器防具の強化箱が設置されている為、出来れば人払いをする方向で行きたい。
なのはのネックレスを製作する際に各種種火を利用して凡ゆる鉱石を惜しげも無く使って限界以上に強化したのだが、その際に失敗しない為に色んな武器を練習台にしたためその残骸が転がっている、ユーノの反応を見る限り人に見られるのはマズイのだろう。
先日も二十代くらいの青年達が5〜6人で門の前にたむろしていたので、足元へ向けてナイフを投げたら悲鳴を上げて去って行った。
ここ数日で人目につくようになってしまい、しょっちゅう追っ払わなければならなくなった事にため息を吐きながら、建物内に入れないように罠を張り巡らせて行く事にする。
丁度強化に失敗した刃物もあるし、罠を仕掛ける為の材料には困らないだろう。
ブレンが病院全域に侵入者を追い払う為の罠を張り巡らせ終わった頃、ある一組のカップルがこの廃墟に向かっていた。
「さあ恭也、私達でここ最近流行っている幽霊騒ぎを解決するわよ‼︎」
「忍の目的は此処の機材だろ?態々こんな真似しなくても直接買い付ければーー」
「前にそれをやったのだけれどね、蓋を開ければ中身はネジ一本に至るまで全てブラックボックス化されてたのよ………」
忍と呼ばれた女性はそう言うとため息を吐きながら廃墟内に足を踏み入れた。
その瞬間彼女の足元の床が沈み、罠が起動する。
「…………え?」
彼女が踏んだ感圧板は左右の壁からアヴェリンが現れ、ボルトが一気に吐き出された。
呆然としていた彼女を恭也と呼ばれた青年が押し倒すようにしてその矢から守る。
「あ、あははは、は、さ、流石アスピナ、過剰な防犯対策ね……」
「……いや、どうも最近設置された物のようだ、細工した跡が真新しい」
恭也はそう言いながら難しい顔をしながらアヴェリンとその矢を調べて行く。
「まあ射角から判断するに、立っているだけでは当たらないようになっているし、配置にしても追い払うように設置してある、この先に見られたくないものでもあるのだろう」
「見られたくない物って?」
「さあな」
そう言った恭也は巧妙に張り巡らされたワイヤーを回収し、床を一枚一枚調べて行く。
そうすると出るわ出るわ、ナイフ、剣、斧、槍、短刀、刀、どれもこれも一級品の代物ばかり。
その出来は、思わず恭也もそのナイフと刀の質に感嘆の声を漏らし美由希への手土産として持って行く事に決める程だった。
その刀剣に彼が気を取られた瞬間、なぜか廃墟内全域に電気が供給されアスピナのガードメカが起動する。
『侵入者確認、排除、排除、排除』
両手に銃を握り、肩には大砲のような物とミサイルポットのような物を装備したガードメカを視認した彼はすぐさま忍を抱き抱え、出口まで一直線に撤退する。
彼が逃げの一手を選んだ理由は、決して無視できる質では無い罠を完全に撤去出来ていない以上、忍を守りながらあのガードメカを破壊するのは困難と判断した為だ。
彼は背後から放たれるレーザーとプラズマを自身の勘と、周囲に刺さっている刀剣の刃に映る背後の映像を頼りに強引に避けてゆく。
「恭也‼︎後ろのアレが砲身をこっちに向けてる‼︎」
「クソッ、出口は目の前だってのに‼︎」
ガードメカがグレネードと肩のミサイルポットを展開し、今まさにその凶弾を叩き込もうとしているのが恭也の目に入る。
苦々しくそれを睨みつける事しか出来無い彼は、せめて自分が抱き抱えている恋人の盾になる事を決め、来るであろう衝撃に覚悟しながらガードメカを睨んだ時だった。
目の前のガードメカの背後に、彼の見知った少年が居るのを発見した。
流れるような銀髪、エメラルドのような瞳、絶世と言っても過言ではない容姿を持った隻眼隻腕の少年。
少年は手に持った刀を使ってガードメカを一刀両断すると初めて恭也達に気が付いたらしく、ポカンとした表情を浮かべている。
「あれ?もしかして恭也さんに忍さん?なんで此処に居るのさ、廃墟デート?」
「それはこっちの台詞だぞブレン、こんな時間に何故此処に居るんだ?」
「ま、まぁまぁ、ブレンくんのおかげで私達は助かったんだし、今回は不問って事にしましょうよ」
「いや、此処は俺の秘密基地だからさ、侵入者対策にあれこれ設置してたんだよ」
ブレンのその言葉に頭を抱える二人。
彼らが解決しようとしていた幽霊騒ぎの正体は、何のことはない、自分達が良く知る天然な少年だったのだ。
そして、この騒ぎも彼の何時もの世間知らずが引き起こした物。それを知った彼らは最早怒る気力も無く、恭也が軽く拳骨を落とし、深いため息を付きながら家路に着いていった。
『あー、ネットショッピングの時間だ。司会進行は俺、ジョージ・オニールでやらせて貰う。さて今日の商品は超高性能装甲車『雷電』だ、こいつは有澤総理御用達の代物でその信頼性は抜群、なんせチェインガンやスラッグガンは勿論、ナパームやグレネードですら傷一つ付かず、総理もこの車で何度も生命を救われてる。こんなところか、まぁ買うか買わねぇかはおたくら次第だ、連絡を待ってるぜ』