不死の英雄伝 〜不屈の体現者〜   作:ACS

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不屈の体現者 39

第三十九話 騎士対爪牙

 

 

先ず始めに仕掛けたのはアルフ。 彼女は大地を蹴り、自身の爪を振るって幼い騎士の身体を粉砕しようとする。

 

上段から凡ゆる物を叩き潰すが如く振るわれたその爪には彼女の渾身の力が込められていた。 相手は幼子、だがしかしその薄皮一枚剥いだ下は魔物なのだからこそ、凡ゆる全てに全霊でなければならない、それは大袈裟でも無く過大評価でも無く彼女の中にある野生が警鐘を鳴らした純然たる恐怖から来るものだった。

 

 

その野生が正しかったと言う事が直ぐに実感させられた。その幼い騎士は自身に迫る必殺の一撃を見ても眉ひとつ動かさず、極めて冷静に左手でその一撃を払い、それによって開いた胴に手に持つ刀の峰打ちを浴びせ彼女の肋にヒビを入れる。

 

その一撃は彼女の肺から無理矢理酸素を吐き出させたのだが、そもそも防がれる事は承知の上だったのか、彼女はそのまま彼の頭部に向かって噛み付こうと大口を開ける。

 

彼の体制は峰打ちを振り抜いたままの状態だ、刃を返すには一歩遅く、もしも左手一本で殴りつけられたとしても強引に頭に噛み付ける、そんな考えが彼女の頭にあったのだろう。 いくら凄腕と言えど体格差だけは如何ともし辛い物、普通ならばそれが通用しただろう。そう、普通ならば。

 

 

だがしかし、今の彼は自身の身体にも慣れ、嘗ての感覚との擦り合わせも完了している状態だ、その考えは非常に甘い見通しだった。

 

迎撃が間に合わないと知るや否や、彼は手に持っていた刀を手放し、彼女の顎を掴んで自分に噛み付こうとする勢いを余す所無く利用し一気に背負い投げる。

 

投げられた本人は訳も分からない内に地面に叩き付けられて 、天を仰ぎ見ている事に一瞬だけ混乱していたが直後に全身を襲った野生の勘による悪寒にその場から飛び退く。

 

瞬間、彼女の目には自分が先ほどまで居た場所に四肢を射抜くようにして投げ付けられたナイフが映った。

 

 

危なかった。 彼女がそう安堵した瞬間、側頭部を痛烈な一撃が襲いその場で鑪を踏んでしまう、彼女は蹌踉く身体を無理やり堪え何をされたかをなんとか把握する。

 

何のことは無い、回避の瞬間を狙い踏み込みからの一閃をこめかみに叩き込まれただけと言う事だ。 だが、それは言葉にすればこそ簡単だが、何をされたか分からぬように一撃を放たれたと言うことはこの程度の事は彼にとっては呼吸するかの如く容易い事と言う事に他ならない。

 

 

彼我の戦力差をまざまざと見せ付けられた彼女は屈してしまいそうになりながらも立ち上がり、側にあった巨木を粉砕し丸太となったそれを幼い騎士に投げつける。

 

迫る巨大な丸太、幼い騎士はそれを刀で両断すると空を見上げ頭上から不意を突こうとしていた彼女に目を向ける。

 

彼女は知る由も無かったが彼女が実行した策はこの幼い騎士が最も得意とする物であり、到底通用する物では無かった。

 

 

降下してくる狼の身体に狙いをすませ、一撃で意識を刈り取ろうと幼い騎士が刃を振るった瞬間にそれは起こった。

 

あと数センチで側頭部を打ち据えると言った所で彼女の身体が光り、狼の姿から人型に変身する。 その所為で振るった刃は空振りに終わり、彼女の全てが篭った拳が幼い騎士の顔に突き刺さった。

 

 

辺りに響き渡る程の雄叫びと共に地面へ騎士を叩き付けた彼女は地に伏した彼を見て辛くも勝利を収めたと思い、痛む肋を抑えながら何とか自分の主人の元へと向かおうとした時だった。

 

 

彼女の背後から草を踏む音と共に鎧が鳴る音が聞こえる、その音源は今正に自分が殴り倒した少年の居た場所から発せられていた。

 

仕留めきれなかったと言う苛立ちから来る歯軋りと共に背後を振り向くと、案の定目の前には幼い騎士が立っていた。

 

今の一撃をどうやって耐えたのか、それは在り来たりだが自ら後ろに倒れ込む事で打点をズラし衝撃を分散させたのだ。 この時、彼女の腕が圧し折られなかったのは幸いだったのだろう、捨て身の攻撃を続けたお陰で下手に腕を折ると手痛い反撃が返ってくると彼に思わせた。

 

 

彼は何処からともなくナイフを取り出し左手を使って投擲し、彼女の動きを制限する。

 

回避しようにもその回避地点にも纏めてナイフが投げられており、下手に動けば針ダルマになってしまう。 彼女に残された手は追撃が来ることが分かっていても障壁を貼ってナイフを防ぐ事しか無かった。

 

障壁はナイフを弾き落とし、彼女の身を守ったが、その直後に幼い騎士によって斬り裂かれ、無防備な身体を晒してしまう。 そしてそこに叩き込まれた心臓への拳、左腕を捻りながら正確に捻じ込まれたその拳は彼女の動きを止める。

 

更に唐竹割りの要領で振り降ろされた峰に打ち据えられながらも、最後の抵抗として彼女は膝蹴りを返そうとしたが何故か身体の時間が止まったかの如く微動だにせず、側頭部へ振るわれた義手の一撃によって意識を刈り取られた。

 

 

これは所謂ボクシングで言う所のハートブレイクショットと言われる技で、的確に心臓を打ち抜き数秒間その動きを止める事で相手を金縛りにする技である。 しかしながら実際には相手の動きや呼吸を見切った上に寸分違わずに痛烈な拳を入れなければならない為現実では殆ど不可能なのだが、逆に言えばそれを決められたと言う事は彼女とこの幼い騎士にはそれだけの実力差があったと言う事の証明だった。

 

幼い騎士は刀を納刀し、今し方仕留めた彼女を引きずりながら戦っているであろう己が主人の元へと向かって行った。




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