第四十話 白対黒
星々が瞬く夜空、雲一つ無く美しい満月が辺りを照らし出しているその空に二つの光が交差していた。
一つはピンク色の魔力光、一つは黄色の魔力光、それは高町なのはとフェイト・テスタロッサの衝突によって使用されている魔法の光だった。
事の発端はフェイト・テスタロッサが高町なのはの話し合いを蹴って逆に決闘を申し込んだ事だ。
「ねえ、フェイトちゃん。 話し合いで何とかならないかな?」
「私の決意は何を言われても変わらないよ、もし如何しても話を聞き出したいんだったら私を捩じ伏せて見せて」
そう言って、彼女は自分のデバイスを竜狩りの槍へと可変させてなのはへ切っ先を向ける。
「さあ決闘だよ、私達のジュエルシードと魂を掛けて勝負だ‼︎」
「…………なら、私がフェイトちゃんに勝って洗いざらい全部聞き出して見せる‼︎ その勝負受けて立つよ‼︎」
先手はなのは、得意の魔法『ディバインバスター』を連発し高速で動き回るフェイトを捉えようとする。
何故この砲撃を途切れる事無く撃ち続けられるのか、それは彼女自身の魔力にあった。 なのはの魔力は膨大な上に彼女の首には原始結晶のネックレスが掛けられている、このネックレスにより無尽蔵のスタミナと魔力を常に供給されているため、息つく暇も無く一撃必殺の砲撃を雨霰のように撃つことが可能となっているのだ。
相手が速くて当てる事が出来ないならば、一撃必殺を見せ付けて精神的疲労を誘い、回避の甘くなった所を撃ち落とす事、此れが前回の敗北でなのはが学んだ事だ。
竜狩りの槍による加速の問題もあるが、隙間無く面制圧をするように砲撃を放ち続ければそれを封殺出来る。
そして、なのはの策は充分にその効果を発揮していた。
視界を埋め尽くす程の砲撃の雨、自慢のスピードを持ってその隙間を縫うように回避しているフェイトはその凄まじい弾幕に攻めあぐねいていた。
無理やり接近した場合、如何しても2〜3発は貰ってしまう、彼女の砲撃の威力は身に染みて味わっている、決して無視出来る物ではない事は良く分かっている。
竜狩りの槍による一点突破を狙おうにも、現在の彼女では狙いを定めなければ満足に目標を貫く事は出来ず、このままではジリ貧になるのを待つだけだった。
だが、彼女にはまだ手はあった。 先ずは砲撃の弾幕へ細心の注意を払いながら彼女は自身も魔力弾を放ち、激しい砲撃戦へと縺れ込ませる。
お互いのタイプの違いから力負けし始めては居るが彼女の目的は此処で競り勝つことが目的では無い、狙いは他にあり、今は視界が埋まるほどの魔法の応酬を繰り広げる事が必要なのだ。
ピンクと黄色の魔力の衝突は爆風と衝撃波を撒き散らしながら爆煙を上げ互いの視界を奪って行く。これによって目の前の白い少女の砲撃が散らばるようになり、脅威が半減する。
その隙に彼女は自分の周囲に無数のスフィアを展開し、その場に固定しながら一定感覚で放たれるように設定し、あたかも砲撃を続けていると見せかけながら真下に急降下する。
爆煙の影から外れ、スフィアから放たれる魔法の槍を迎撃する為に躍起になっている少女に狙いを定め竜狩りの槍に込められた力を解放、自らの速度を限界以上にまで引き上げ回避不能の一撃を放つ。
世界から自分以外の全てが置き去りにされ瞬きをする間も無く白い少女に向かって突撃し、その胸を貫きにかかる。
前回はこの一撃に対応出来ずに白い彼女は射抜かれた、しかし今回はなんとその彼女と目が合ったのだ。
その瞬間に自分の腕に伝わる鈍い感覚、何事かと思い槍の切っ先に視線を向けると、其処には分厚い障壁が展開されていた。
「読んでたよ、その一撃‼︎」
ジリ貧になるのはなのはにも分かっていた。 スタミナの問題は自分のネックレスが解決してくれる為、撃ち続けていればいずれ勝利出来る、しかしそれをこの黒い少女が許容する筈も無く、必ず何処かで仕掛けて来ると確信していた。
そこへ来てこの強引な撃ち合いだ。 爆煙で視界を塞がれお互いの姿が見えなくなった、このまま吶喊して来るのか、はたまた爆煙の影から強襲して来るのか、だがなのはは後者に的を絞り正面以外に分厚い障壁を展開したのだ。
理由は一つ。 この爆煙による目潰しはお互いの姿が見えないばかりか、砲撃の一つ一つが煙に隠れ回避し辛くなる為、彼女の軽装ではこれを突っ切る事は無いだろうと判断したからだ。
分厚い障壁に大きなヒビが入ったものの、代わりに高速移動する少女の身体には強烈な急静止が掛かり、その動きが止まる。
なのはが狙っていたのは正にこの瞬間、この隙を逃さないようになのはは全力全開のディバインバスターを黒い彼女に向ける。
そのデバイスに込められて行く魔力は以前とは比べ物にならず、それをまともに喰らえば今度こそ一撃で撃墜されるだろう。
しかしフェイトの目に諦めの色は無い、ギリギリまで砲撃が放たれるのを待ち、そのピンク色の魔力の奔流が放出された瞬間に真横へ飛び退き、今度こそ白い彼女を射抜こうと構えた瞬間、全くの予想外な出来事がフェイトを襲った。
放たれたディバインバスターが半ばで杖の先に再収束され、新たにもう一撃放たれようとしていたディバインバスターにその収束された物が組み込まれ、その威力を爆発的に上昇させる。
こうする事で、威力を跳ね上げると共に回避タイミングを誤認させ一撃必殺を回避先に叩き込むことが可能なのだ。
「これがディバインバスターの新しいバリエーション‼︎ ディバインバスター・ダブルアクセルッ‼︎」
その威力は先程までの比では無く、非殺傷設定であるにも関わらず凡ゆる全てを飲み込んで塵に還すような錯覚を覚える程の威圧感を放っていた。
だがそれが決まる寸前にフェイトは痛む身体に鞭を打ち更に竜狩りの槍の力を使い、力尽くでその砲撃を回避する。
加速する世界の中で、意識を持って行かれそうになりながらも正面に現れた木や岩などの障害物を蹴って向きを強引に変更、そのまま今度こそ白い少女へと吶喊する。
狙いは先ほどと同じ障壁、全く同じ部分を寸分違わず貫通させて身体ごとその先に居る少女に向かって切っ先を捩じ込む。
白い少女の身体を貫いた状態から電流を流した瞬間、同時に彼女が杖から左手を離し小規模なディバインバスターをフェイトの身体に叩き込んだ。
こうして彼女たちの激闘は相討ちと言う形で幕を下ろしたのだった。
用語集
ディバインバスター・ダブルアクセル
使用者 高町なのは
圧倒的な速さを誇るフェイトを一撃で撃墜する為になのはが考案したディバインバスターのバリエーションの一つ。
一度砲撃として放ったそれを再収束し、後発の砲撃と掛け合わせる事で威力を爆発的に跳ね上げ、回避先へと叩き込む事が可能な砲撃。
この魔法は原始結晶のネックレスから供給され続ける無尽蔵な魔力による力技な点がある為彼女以外には使用出来そうに無い。
この砲撃の利点は、通常のディバインバスターが回避された際にそれを再利用しもう一つ上の次元の物に昇華させてから回避行動によって無防備となった標的に追撃が可能と言う点と、標的による回避後のカウンターにも反撃し返す事が可能な点の二つだ。
逆にこの砲撃の欠点は、この砲撃を撃っている間はその場から動く事が出来ず、フェイト・テスタロッサのように反撃返し返しを返されると碌に回避する事は出来無いと言う点。
尚威力の上昇値は二倍では無く累乗。