第四十八話 親バカ
私達は満身創痍の身体を引きずり、なんとか拠点としているマンションまで帰宅出来た。 私は疲れた身体に鞭を打ち熱いシャワーで疲労と共に血と汗を流してから自分と未だに目を覚まさないアルフの手当を済ませ、黒革のソファーに座りながら身体を弛緩させる。
元々母さんは自分とリニスでジュエルシードを回収するつもりだった見たいだけど、病気を抱えている母さんを危険な目に合わせたく無かったから私が代わりに行くって言って無理に押し切ったんだけど、母さんは最後まで『何と無くだけど、このジュエルシード探しは一筋縄では行かない気がするから私の可愛いフェイトを行かせる訳には……』って言って渋ってたんだよね。 これが母親の勘って奴なのかな?
今までに集めたジュエルシードは三つ、なのはとの戦いで二度引き分けたから、その分彼女の持ってるジュエルシードを回収出来なかったのは中々に痛い。 ……前向きに考えれば、彼女相手に負けなかったからまだ手元に三つ残っていると言う取り方も出来なくは無いけど、それだと私が納得出来無いし、第一なんだか不完全燃焼気味だ。
明日は母さんの元に帰らないと行けないけれど、戦いの後は何時も身体が昂ぶっていて眠れないんだよね、何か軽く摘めるような夜食でも作ろうかな?
色々と簡単な料理のレシピに思考を巡らしながら調理を開始し始めた所で丁度アルフが目を覚まし始めた。
「あれ? 此処は…………」
「目、覚めた? 大丈夫? 痛いとこ無い?」
「何とか、ね。 ただ殴った拳は暫く使い物になら無さそうだよ……」
アルフの身体に再起不能なほどの深刻なダメージは残って無い事に安心し、ほっと息を吐きながら胸を撫で下ろしましたが、今まで目を逸らしていた問題を指摘されてしまった。
「どうしようかねぇ、プレシアの事、きっとフェイトの怪我の原因を知ったら発狂するんじゃないかい?…………」
「……………………ひ、一晩寝れば傷なんて無くなるよ」
「あの親バカならそれをやりかねないけどね、フェイトにはそこまでの回復力は無いだろう?」
「魔法で治せば大丈夫‼︎」
「さっきのジュエルシード封印で魔力が空っぽなんだろ? 朝まで魔力の回復を待ったとしても完全に傷を治しきれないと思うけどねぇ」
「ど、どうしよう‼︎ 母さんになんて言い訳しよう、そうだ‼︎ 転んで怪我したって事で誤魔化せないかな?」
「転んだにしちゃあ、傷の位置が不自然だと思うけどね、そもそもフェイトはプレシアに嘘がつけるのかい?」
「…………無理、かな?」
きっとそんな事したら母さんはショックで卒倒しちゃうんだろうし、私も母さんに嘘を吐きたくない。 でも素直に母さんに報告するとそれはそれでショックを受けちゃうしなぁ……。
私はどうやったら母さんがショックを受けないような報告が出来るかな?と頭を悩ませていると、なんだか妙に焦げ臭い匂いがキッチンから漂って来た。
「ねえ、フェイト? なんだか焦げ臭いんだけど何か作ってんのかい?」
「うん、ちょっと夜食代わりにフレンチトーストを」
「………………そいつはもう出来てんのかい?」
「えっ?まだ焼いてる途中だよ?」
「ねえフェイト、て事はさ。思いっきり焦げてるんじゃあ…………」
「…………あっ」
私が後ろを振り向くと、フライパンで焼いていたフレンチトーストが丸焦げになってもくもくと煙を上げていた。
結局、私たちはそのボヤ騒ぎに気を取られてしまい傷の事をすっかり忘れてしまって翌日になってその事に気が付く羽目になりました。
最終的に私達が取った手段は出発のギリギリまで魔力の回復を待ってから全身の傷を表面上だけ回復すると言う事だった。 取り敢えず傷の事はこれで良いとして、今日は久しぶりに母さんに会うのだからお土産に有名店である『翠屋』の名物であるシュークリームも用意したし、今日はゆっくり羽根を伸ばそう。
マンションの屋上から母さんの待つ『時の庭園』に転移する、広い廊下を歩きながら母さんの待つ部屋にの前まで歩いて行くと、中から母さんとリニスの声、それとかつかつと歩き回る音が聞こえてきた。
「リニス、フェイトはまだ来ないの⁉︎」
「プレシア……五分前にも同じ事言ってましたよ?」
「もう五分も経ったのよ‼︎ 五分よ五分‼︎ 五分もあればミッドの首都高を走り切れるわよ‼︎」
「『もう五分経った』では無く『まだ五分しか経ってない』が正解です、それとそんな事が出来るのは貴女だけです」
「フェイトは私の娘よ? それくらいきっと出来るはず‼︎」
「プレシア、いい加減子離れしてはどうですか、フェイトはもう一人前ですよ?」
「だめよ‼︎ あの子は天然なの‼︎ 独り立ちにはまだ早いわ‼︎ もしも変質者に誑かされるような事があったら……ううっ、あの子が『アルフと二人で大丈夫だから』って言ってたから泣く泣く送り出したけど、やっぱり私も一緒に‼︎」
「プレシア⁉︎ そもそも貴女は重病人でしょう‼︎ 暴れ回らないでください‼︎」
「大丈夫よリニス、ちょっと血を吐いたり貧血おこしたり魔法使う時に激痛が起きたりする程度、そんな物はフェイトの恥ずかしがる顔や寝顔や笑顔やその他諸々を見てれば如何とでもなるわよ‼︎ 良いから羽交い締めを辞めなさい‼︎ 昔余命宣告を受けたのを跳ね除けたのだから今更おちおち死んでられないわ‼︎」
「落ち着いてくださいプレシア‼︎ と言うか余命宣告を受けていたんですか⁉︎」
「『後五年も生きれば良い方でしょう』って十年程前にその筋で一番信頼できる医者に宣告されたけれどね、そんなもの愛娘たちへの愛で乗り越えたに決まってるでしょう‼︎ アリシアを生き返らせて、フェイトとアリシアの花嫁姿を見て孫を抱いてひ孫を抱くまで死ねるものですかッ‼︎」
「ああ、駄目だこの人常識が通じない……」
「はっ、フェイトの香りと気配が扉の外から‼︎」
母さんが色々衝撃的な事を言っていた為、ノックしようと固まっていた私に、母さんが勢い良く扉を開け放ちながら抱き着き盛大に頬擦りを始めました。
「フェイトォォォオ‼︎ 嗚呼フェイト‼︎ 私の可愛いフェイト‼︎ 怪我は無いかしら? ご飯はきちんと食べてる? 夜はきちんと眠ってる? 変質者に何かされなかった? 寂しくなかった? 私はフェイトが居ないだけで食事は喉を通らないし夜も眠れない、ぼーっとしてて怪我ばかり、もう寂しくって寂しくって」
「か、母さん、苦しい、かな?」
「これが親の愛よフェイト、………………ん?」
「ど、どうしたの母さん?」
「フェイトが、フェイトが怪我をしてる‼︎」
あっ、やっぱり隠し通せなかったや。
「まさか、こんな管理外世界にこの子をこんな目に合わせる敵が居るなんて‼︎ ああやっぱり私が集めに行くべきだったのよ‼︎ ごめんなさいフェイト、貴女の身体に傷を付けるような真似をさせてしまって。 こんな駄目な母さんでごめんね‼︎」
母さんはボロボロと大粒の涙を流しながら私の身体を隅々まで魔法で治してゆく、それは正にあっと言う間の出来事で、身体中を支配していた鈍痛が嘘のように無くなり、私の身体は羽のように軽やかな動きが出来るようになった。
母さんはその後もマシンガントークを繰り広げていたけれど、私のお腹の鳴る音を聞いた母さんは、呆れ顔のアルフとリニスを置き去りにし、真っ先に私を抱き抱えて食卓に向かいました。
テーブルの上には私の好きな物が所狭しと並んでいて、私は母さんと向かい合うように座りながら地球で見た事や体験した事を話ながら楽しい食事をして行きました。
母さんがニコニコと嬉しそうに私の話を聞いてくれているのでついついライバル視しているなのはや、始めての異性であるブレンの事も話したんだけど、急に母さんが口元を抑え『まさか、フェイトが初恋⁉︎』と言っていたけど、どうなんだろう?
でもブレンにお姫様抱っこされた時にちょっと胸がドキドキしたなぁ、男の子に触れたのって彼が始めてだから恥ずかしかったのかな、後で母さんにちゃんと聞いてみよう。
不死の英雄伝 〜 舞台裏 〜
NGシーン 初恋疑惑
フェイト「あのね、ブレンはすっごくカッコ良くて、髪もサラサラで大人びててね、ちょっと表情が分かりにくいけどそこがクールな感じでね、漫画に出てくるような王子様って印象だったんだ」
プレシア「うんうん」
プレシア『リニス、聞こえてるわよね?』
リニス『なんですか?』
プレシア『私の愛娘に手を出した『ブレン』とか言う少年を始末して来なさい』
リニス『……………………』
プレシア『ああ、でもそれだとフェイトが悲しむわね、だったら薬でも暗示でも使って此処に拉致監禁しましょう』
リニス『胃薬と頭痛薬の量を増やさないといけない羽目になりそうですね…………』