日付け変更に間に合わなかった囧rz。
第五十八話 退けぬ戦い
杖と杖の鍔迫り合いから始まった二人の一騎討ち、先ず初撃を与えたのはフェイトだった。
彼女はデバイスの鍔迫り合い状態からバルディッシュを一瞬リリースし、体勢の崩れたなのはの顎に向かって膝蹴りを放ち、跳ね上った頭のこめかみに回し蹴りを叩き込む。
鋭い連撃、力を一点に集中させたそれらは容易く人の意識を刈り取る力を持っている、しかしなのはも負けては居ない。
なのはにとっては自分の周囲全て視覚領域に収まっている。 不意打ちは勿論、追撃に対しての反応速度も超人的なので、自身に迫る踵を容易く受け止め、フェイトの動きが止まった瞬間にその顎を蹴り上げ、体勢の崩れたその隙を突き、その頭部にレイジングハートによる痛烈な打ち下ろしを叩きつけ、杖の先に魔力を収束して行く。
打ち下ろしをまともに受けたフェイトは、目の前に火花が散るような衝撃を受けながらもなのはの追撃を避ける為にそのまま海中に向かって急降下、打ち下ろしの後に放たれた砲撃を回避しながら海中へと潜水して行く。 これはバリアジャケットの生命維持能力によって水中でも行動可能だからこそ出来る芸当だ。
海面で眩く光る太陽光の反射を利用して海上からの索敵を制限したフェイトは竜狩りの槍を展開し、そこに居るなのはの攻撃に何時でも合わせられるように構える。
恐らくなのはは持ち前の馬鹿魔力を利用して海中に砲撃を放ち、大波を起こす事によって自分を炙り出しに来るはず、固定砲台型の魔導士であるなのははきっとそうするだろう。 フェイトはそう考えていたのだが、その予想は半分外れる事となる。
着水の音と共に目の前に現れた白い魔導士、まさか自分から特攻してくるとは思っても居なかったフェイトは僅かに惚けてしまったが、直後に放たれた砲撃に我に返り、荒れ狂う海流に逆らいながら更に奥深くの海底にまで潜水し、堆積している泥を舞い上げながらフォトンランサーの発射台となるスフィアを設置、土埃の中に隠しながら魔力を再収束しているなのはの射線から逃れて行く。
一方のなのはも、フェイトに正確な位置をぼかされつつもディバインバスターの発射準備を完了させる、しかし此処が海中である以上無闇矢鱈に砲撃を放つと海が大荒れとなり、それによって発生する強力な海流に流されてしまう為、連射が出来そうに無い。
故になのははそれを放つ事をせず誘導弾であるディバインシューターを八つ放ち、極力波を立てないようにフェイトを襲撃する。
しかし、既に設置されていたフェイトのスフィアからフォトンランサーが放たれ、ディバインシューターを撃ち落としながらなのはを襲撃する。
なのはは障壁を展開してフォトンランサーを全て受け止めたのだが、爆風と水泡によって正面の視界を遮られてしまい、その隙を突かれてフェイトの特攻を受けてしまう。
海水の抵抗によって本来のスピードが出ていないのが幸いしたのか、一撃で決着が付く事は無かったものの、巨大な水柱を立てながら両者共海上に復帰する。
フェイトは、なのはが障壁に集中している隙に手脚と首にバインドを放って彼女を拘束、自身の持っている最大の魔法を展開する。
『アルカス・クルタス・エイギアス』
それは小規模な雷を放つ天候を操作する魔法。
『煌めきたる天神よ、いま導きのもと降りきたれ、バルエル・ザルエル・ブラウゼル』
それは威力、攻撃範囲、共に優秀だが本来ならば個人に撃つ物ではない。
『打つは雷、響くは轟雷、アルカス・クルタス・エイギアス』
天候操作魔法、サンダーフォール。実際の雷を利用した魔法の為、バインドされながらも魔法そのものを魔力として収束しようとしていたなのはであってもそれを吸収する事は出来ず、威力を軽減する事も出来無い。
更に使用者であるフェイトは知らなかったが、ソウルの業を習得したプレシアが相性の良い雷の槍などの奇跡を元にし、バルディッシュ自体を雷派生させている為、このサンダーフォールは勿論、フォトンランサー等の魔法の威力が軒並み上昇していた。
雷雲が立ち込め、辺りに豪雨が降りしきり、暴風が吹き荒れる。 フェイト自身も自分の知る魔法よりも遥かに強力となったそれに戸惑いつつも、魔法を放つための最後の引き鉄を引く。
展開した竜狩りの槍に雷を迸らせ、有りっ丈の魔力を込めながらその雷を槍として雷雲の中へと投擲する。
その瞬間に雷雲から雷が溢れ出し、次々となのはへと降り注ぎ、彼女は碌な抵抗も出来ずにその雷撃を浴び続けて疲弊して行く。 彼女は全身を断続的に襲いかかる鋭い痛みを歯を食いしばって堪えていたのだが、トドメの一撃として極大の雷がなのはを襲う。
爆煙に包まれ視界は塞がったけど手応えはあった、寧ろあの一撃を耐えられる訳がない、私の勝ちだ‼︎
暴風雨の中での勝利の確信、それと彼女の胸の内を駆け巡る恋敵を倒したと言う無自覚だが無上の喜び、この二つによってフェイトの中では既になのはを倒した物と捉えてしまった。
これで、きっと……‼︎
何が『きっと』なのか。 この瞬間、彼女は漸く自分の中に芽生えたその思いに気が付き戸惑いを覚えていると、突如として全身の関節全てをバインドされた。
フェイトを拘束したのは満身創痍のなのはだった。
バリアジャケットはボロボロ、その下に隠れた柔肌を露出させながらも杖を構えている。 彼女を見据えるその瞳も焦点が合っておらず、気力だけで堪えているのは見え見えだった。
だがしかし、彼女の目には強い光があった。 それは不屈の心、ブレンが彼女を愛して止まない理由、『絶対に取り戻す』依存にも似た強い恋慕が彼女の死に体の身体を突き動かし、最後の魔法を行使する力を与える。
ふらふらと杖を向け、その先端にゆっくりと魔力を収束して行く、首から掛けたネックレスから供給される無尽蔵の魔力と、元々自分の中に宿っている魔力、周囲に拡散しているサンダーフォールの残滓、それら全てを余すことなく一点に収束して行く。
巨大な魔法陣、杖の先に収束して行く魔力の光、それらは星屑のように輝き、悪天候を引き起こしていた雷雲を散らして暴風雨を静める、その雲間から差す光が幻想的な彼女の姿を見せていた。
スターライトブレイカー、ディバインバスターや累乗したそれを遥かに陵駕する彼女の全力全開、至大至高の一撃。 桜色の極大の砲撃はフェイトを飲み込むだけに飽き足らず、ユーノとアルフが展開した結界を軽々と撃ち抜き、まだ空を覆っていた雲を全て消し飛ばす。
渾身の魔法を撃ちはなったなのはを燦々と輝く太陽が照らしていた。
この一撃で勝敗は決した。
気を失ったフェイトは落下する最中にアルフに回収され、時の庭園へと帰還する、その様子を確認したプレシアは『よく頑張ったわね』と優しく呟き、約束通りにブレンをなのはの元へと転送する。
持てる全てを吐き出し、意識を失いかけていたなのはの前に帰って来た愛しい自分だけの騎士、彼には傷一つ無く無事な様子だった。
「ただいま、なのは」
優しい声で自分を抱きとめてくれた彼に、彼女の中で何かが決壊した。 ボロボロと涙が溢れ出して止まらない、泣くのを堪えようにも如何しても声を上げてしまう。
この一週間、彼女は気丈に振舞っては居たが、それは痩せ我慢に過ぎず、自分の全てを受け止めてくれる彼が帰って来たという安堵感によって、堪えていた全てが解き放たれた。
何度も、何度も、愛しい騎士の名を呼び、泣きじゃくりながらその胸に縋りついて、彼が自分の手の届く所にいる事を確認するようにその温もりを味わって行く。
その姿を見た彼女の騎士は、まるで彼女を安心させるように、そして自分は側にいるよと示すように、強く、強く抱き締めていた。
それによって、少しは落ち着きを取り戻したなのはは溢れ出る涙をそのままにしてブレンへと目を合わせる。
「……嫌だよ」
「なのは?」
「……私の側から居なくなっちゃ嫌だよ、ブレンくん。 ずっと私の側に居て?」
「…………分かった、次から気を付けるよ」
ブレンがそう答えたと同時に彼女は涙を拭い、花のような笑顔を見せながら、言い忘れていた言葉を彼に投げ掛ける。
「えへへ、おかえりなさい」
「うん、ただいま」
不死の英雄伝 〜 舞台裏 〜
NGシーン 彼の弱点?
プレシア「約束通り彼を転送しないと行けないけど……あの子の前でいいのかしら?」 テンソー
プレシア「あっ、彼デバイスを忘れて行ってるわね……どうしましょう?」
ブレン「ああぁぁぁぁぁ…………」ドップラー効果
なのは「ブレンくん⁉︎」
ブレン「おぼ、溺れる‼︎ help‼︎ helpme‼︎」
YOU DEAD
ブレン「って夢を見たんだ」
なのは「一週間振りの会話がこれだと私も怒るよ?」