不死の英雄伝 〜不屈の体現者〜   作:ACS

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時の庭園の攻略が始まります、さて無印編で一番のチートは一体誰なんでしょうかね?



不屈の体現者 59

第五十九話 最後の大博打

 

 

激しい死闘を終え、庭園へと帰還したフェイトをプレシアは労いの言葉を掛けながら優しく抱きとめる。 優しい母の腕の中に抱かれたフェイトはその温もりによって目を覚ました。

 

「良く頑張ったわね、フェイト……」

 

「う、ん? かあ、さん?」

 

「ええ、母さんよ。 貴女のおかげで私達の準備も無事に終わったわ、だから後は任せて休みなさい?」

 

「そうは行かないよ、母さん。 きっとあの子も此処に来る、そうなった時に止められるのは私だけ、おちおち寝ていられないよ」

 

 

そう答えたフェイトはプレシアの手から離れて自分の足で立つ。 先の戦闘で自分と彼女の勝敗は決したが、実力自体は肉薄していた、足止めが出来るのは自分だけだろう。 最後の最後で計画を邪魔される訳には行かない。

 

 

「母さん、今すぐ始めるの? 私は準備出来てるよ」

 

「いいえ、その前に一つ『仕込み』をしておかなくてはいけないわ」

 

「? 儀式に必要な物は全部揃ってるんだよね?」

 

「ええ、アリシアの蘇生に関しては駆動炉とジュエルシードの魔力、それと貴女の魂の欠片があれば何とかなるわ。 問題はその後よ」

 

「その後って?」

 

「ふふっ、煩い犬を黙らせるには吠える原因を無くせば良いのよ?」

 

「ま、ますます分からない……」

 

プレシアは頭を抱え出したフェイトの頭をそっと撫でながら、時空の狭間に居るアースラへ強制的に通信を入れる。 その艦内では時の庭園への突入準備をして居たようで、慌ただしく動いている局員に目を向けながらプレシアは『甘い相手で助かったわね』と内心安堵しつつも、自分が管理局員だった嘗ての時代から大分質が落ちたなと思わずには居られなかった。 この場合、相手の強力な戦力が行動不能となった瞬間に、適当な罪状を上げて此処へ乗り込むべきであった。

 

自分は対外的には違法研究の責任を負って追放処分とされては居るが、その真相は当時の上司に『プロジェクトF』の成果であるフェイトを引き渡せと言われ、彼らがフェイトへと施そうとしている非人間的な実験の数々や、道具としか見ていない扱い、挙げ句の果てには女としての尊厳を穢すような発言の数々を聞き、思わずその顔面を殴り倒し、その場で辞表を叩きつけてからフェイトを連れ去ったと言う物だ。

 

無論、当時の身体は今ほど病んでいなかった為、研究データは可能な限り抹消した上に、念には念をと思い研究所は勿論、研究員全員の自宅も更地にした。 その件で一つ計算違いがあったのは、ミッド以外にも様々な次元世界から研究員は招集されていたので、一々転移するのが面倒だと思い、次元跳躍攻撃で同時攻撃したため、テロリストとしても名が売れてしまった事か。 尤も、手配書に関しては上層部の弱味に漬け込んで早急に撤回させたのだが。

 

「皆さん御機嫌よう、私が元・時空管理局中央技術開発局第3局長、プレシア・テスタロッサよ」

 

『…………時空管理局L級8番艦アースラ艦長、リンディ・ハラオウン提督です。 我々にコンタクトを取るという事は投降の意思ありと見て構わないのでしょうか? テスタロッサ女史』

 

「ふふっ、貴女方は何を根拠に私を罪人とするのかしら?」

 

『確かに、嘗てのテロ行為によって貴女は一時期手配されていましたが、上層部の圧力によって揉み消されました、その点では貴女は罪人では無いと言えるでしょうが、ジュエルシードの不法所持によって新たに法を犯す事となりました』

 

「ですから、リンディ提督? 私がジュエルシードを不法に所持していると言う『根拠』は?」

 

『…………質問の意図が分かり兼ねますが?』

 

「文字通りの意味よ? 貴女方の持つ『証拠』は今何処にあるのかしら?」

 

『………………何を言って『艦長‼︎』エイミィ?』

 

「あらあら、どうしちゃったのかしらね?」

 

『何者かからのクラッキングを受けています‼︎ 証拠データ以外にも艦の主要なプログラムが端から改竄され、行動不能‼︎ そんな、誰もこんな大規模なクラッキングに気付かないなんて⁉︎』

 

『テスタロッサ女史、貴女まさか……‼︎』

 

「さあ? 貴女のご想像に任せるわ。 ただ、昔よりも簡単だったとだけ言っておくわ」

 

片手間のクラッキング、彼らの甘さに付け込む形となったが、そのお陰で自分とフェイトの罪を揉み消す事が出来た。 後は乗り込んでくる局員に危害を加えないように捕らえつつ、アリシアの蘇生を進めるだけだ。

 

公務執行妨害や傷害罪に取られないように彼らを捕縛する術は限られては来るが、そこは優秀な使い魔達に任せるとしよう。

 

「挨拶も済んだ事ですしそろそろ失礼しますわ、リンディ提督。 私も忙しい物ですから」

 

『まっーー』

 

プレシアは会話をしている隙に傀儡兵の配置を終えたので一方的に通信を切断し、最深部に設置した儀式陣の上にアリシアを優しく寝かせる。

 

この儀式はプレシア独自の魔法、恐らく二度は使えないし、使うつもりもない。

 

「アリシア……」

 

「姉さん……」

 

「始めるわよ、フェイト。 辛いかも知れないけれど…………」

 

「うん、大丈夫だよ母さん。 その位は母さんの挫折の日々を考えれば耐えられるから……」

 

「フェイト……」

 

プレシアは再びフェイトを強く抱きしめその頭を優しく撫でる、しかしその手はプレシア本人も知らぬうちに震えていた。

 

この一週間、寝食を惜しみながらソウルの業の研究を続け、その結果何とか形にする事は出来たが、不安が無いとは言えない。

 

万一失敗したら? アリシアの身体が完全に使い物にならなくなってしまったら? ソウルの業ですらアリシアを蘇らせる事が出来なかったら? まだこれだけなら抑え込む事が出来た、この程度ではプレシアの精神は揺るぎはしない、何故ならアリシアの蘇生に失敗しただけならば再び別の方法を探せば良いだけなのだからだ。 だが、『もしも失敗して、アリシアだけで無くフェイトも、この優しい愛娘までも失ってしまったら?』そう思ってしまった彼女はアリシアを失った瞬間のトラウマがフラッシュバックし全身の震えが止まらなくなっていたのだ。

 

プレシアの考案したアリシアの蘇生法は突き詰めてしまえば移植手術と代わりがなく、死者蘇生の秘薬やネクロマンシーのような死霊術、降霊術の類では無い。

 

手順も単純、フェイトのソウルを物質として抜き出し、その欠片をアリシアの身体へと移し定着させ、時の庭園全ての魔力を慎重に注ぎ込み消えた生命の炎を再燃させる。 ただそれだけのことなのだが、神代の時代にもそのような事を単独で達成した物は居ない。 だが、不死の英雄の聖書には『不死の英雄は、打ち捨てられた火防女の亡骸へその御魂を返却する、忽ち骸は起き上がり頭を下げた』と記載されていた、つまりこの方法は丸っきり不可能では無いと分かっていたからこそ、迷いはあったものの彼女は敢えてこの方法に踏み切ったのだ。

 

アリシアのクローンであるフェイトが居るからこその芸当、元が同じ魂なのだから拒否反応は無く馴染むはず。 しかしそう分かっていても、その為の一挙手一投足全てがゴマに針で絵を書くような繊細な魔法なのでナノ単位でミスが許されず、失敗すれば全てを失ってしまうと言う恐怖、それが土壇場になって芽吹いたのだ。

 

鬼にならねば見えぬ地平がある。 いっそ狂ってしまえば良かったのかも知れない、壊れてしまえば良かったのかも知れない、そうすればフェイトの事を道具として扱えたのかも知れない。 だが、プレシアにはそれが出来なかった、腹を痛めて産んだ子では無いとは言え、間違いなくフェイトは自分の娘であり、アリシアの妹なのだから。

 

 

様々な負の感情が入り乱れ、恐怖と不安に支配されていたプレシアを解放したのはフェイトの一声だった。

 

「信じるよ」

 

「フェイ、ト?」

 

「私は、母さんを信じる。 だから母さんも自分を信じて?」

 

「…………………………そうね、何を弱気になってたのかしら? 私は『大魔導士』、そして貴女の母さんなのだから成功して当たり前ね」

 

「うん」

 

「じゃあ改めて始めましょう、大魔導士プレシアの一世一代の大勝負を‼︎」

 




NGシーンは自重しました、流石にね(白目)


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