最近ネクスト扱いやら求道神扱いされて来たんですが……(困惑)
私のVOBの調子が可笑しいですよ、インテリオルさん(小声
第六話 居候
今俺とシフは混乱から立ち直ったなのはに引っ張られ、彼女の家まで向かっている。
家も無いしお金も無いと聞いた彼女が次に聞いた事は親についてだったのだが、どうやら返答を間違えたみたいだ。
素直に”忘れた”と答えたのだが、俺の右目と左腕を見てその美しい瞳に大粒の涙を溜め始め、俺の右手を握りそのまま走り出したのだ。
困惑する俺とシフを置いてけぼりにし、彼女は息を切らせて自宅の前に立ち、玄関の扉を勢い良く開け放つ。
「お母さん!!」
「あらなのは、お友達の所に行ったんじゃ無かったの?」
「えっと、あの、あのね?」
彼女は中々言いたい事が纏まらないようで、言葉を詰まらせながらも必死に何かを伝えたがっているようだ。
「なのは、取り敢えず自己紹介を済ませても構わないかい?」
「ふえっ?あ、うん」
わたわたとしていて落ち着きを無くしているようだったので、呼吸の乱れを直す時間を与える為に自ら彼女の母の前に出る。
「初めまして、ブレン・シュトッフと申します」
「娘さんとは先日公園で出会いまして、その際に僭越ながら友人とならせて頂きました」
胸に手を当てながら一礼し、彼女の母に挨拶を返したのだが、どうも視線がおかしい。
その視線を辿って行くと、それが嘗ての大王グウィンとの戦で失った俺の左腕に向かっているのが分かった。
「?ああ、この左腕ですか?」
「っ!、ご、ごめんなさい、私ったら……」
「ああいえ、お気になさらずに」
「気になるようですのでお答えしますが、この左肘から先はとある事情で灰になりました」
「後は、この右目もある男に抉り取られまして」
不死の身体のままだったなら再構築も出来たのだろうが、始まりの火の熱によって呪いが祓われていた為それが出来なかった。
始まりの火を使えば何とかなったかもしれないが、これはこれで戦いに応用出来るため、そのままにしている。
絶句。
彼女の母は口に手を当てながら、静かに涙を流し始めている。
もしや同情してくれているのだろうか?
しかし、これらはある意味人間だった頃の戦いの勲章なのだから、俺は寧ろ誇らしく思っているのだが……。
「…………ねえ、ブレン君」
「こんな事を聞くのは失礼かも知れないけれど、その……ご両親は?」
「全く覚えてませんよ?」
自分の名前を忘れているくらいだ、そんな物覚えている方が逆におかしい。
そんな事を考えていたら、いきなり彼女の母に抱きしめられた。
「ねぇブレン君、もし、もし君さえ良ければウチの子にならない?」
「あったかいご飯も、ふかふかのお布団もあるから、ね?」
「………何故いきなりそんな、ってああ」
「そう言えば昨日から何も口にしていませんからお腹がなってますし、野宿してたので服装も薄汚いですね」
「一旦出直してーー」
「大丈夫だから、ね?」
「大丈夫、大丈夫だから」
此処まで言われては断るのも失礼に当たるだろう。
しかし、今この家には余裕が無いはず。
今回の晩餐も、なのはに初めての友達が出来たからと言う理由の趣旨だったと記憶している。
それは理由付けしなければ家族の団欒すら難しい状態と言う意味を持つ。
判断に困るので、一旦シフに視線を合わせ彼の意見を聞く。
帰ってきた答えは、お腹減った、夜風は身に染みたと言う抗議の視線と、判断はそちらに任せると言う表情だった。
そう言われても此方も迷ったから君に聞いたんだよ?
「…………なのはの判断に委ねます」
「しかし私にはシフと言う友が居りまして、飲食店を経営していらっしゃるのでしたらあまり宜しくないかと……」
玄関前でお座り状態の彼を指差し、案に彼と一緒でなければ嫌だと伝える。
「それは……」
「それにご自身もかなり無理をしていらっしゃるご様子、私達を引き取るのなら負担が大きく増えると思います」
「それでも尚、私達を引き取りたいと仰るなら、私はその判断をなのはに全て委ねます」
「…………ええ、勿論、貴方を引き取らせて貰うわ」
「なのはは、どう思うかしら?」
「ブレン君、家族になろうよ!!」
「ね?」
私が敷いた不屈の理が働いて居るのだろうか?
此処まで真っ直ぐに揺れもせずに即決されるとは思わなかった、もう少し悩むと思ったんだけどね。
「一応、理由を聞いても?」
「…………正直、私はなのはの事を疎かにし過ぎて居ました」
始まったのは母として、我が子のSOSに気が付かなかった事への後悔と懺悔だった。
「『なのはは良い子だから一人で大丈夫』、この子は常にそれを口癖にしていて、私はそれに安堵していました」
「でもね、ブレン君がなのはとお友達になってくれたお陰で、この子が寂しがっていた事に気が付けたの」
「貴方は私の、私達の恩人みたいなものなの」
「だから、恩返しさせて?」
「……………お言葉に甘えさせて頂きます」
強い人だな。
なのはと同じ真っ直ぐな目をしていて、芯が通っている。
これから自分の背中にのしかかるであろう負担を全て跳ね除けてみせると言った瞳だった。
やはり、人間は素晴らしい。
ブレン君、居候するの巻き。