不死の英雄伝 〜不屈の体現者〜   作:ACS

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某動画サイトにニンジャスレイヤーが配信されましたね。

私はあれはあれで嫌いじゃないです(白目)


不屈の体現者 66

第六十六話 叶った願い

 

 

アリシアの身体にフェイトの魂の欠片を馴染ませる作業に入っているプレシアは、ジュエルシードと駆動炉から供給される膨大な魔力に身を焼かれながらも一心に彼女の身体へと魔力を流し込んで行く。 彼女に与えられた魂の欠片はその膨大な魔力を燃料として、少しづつではあるが物言わぬ骸となったその身体に小さな火種となって生命の炎を灯してゆく。

 

感覚的にそれを察したプレシアは焦る気持ちを抑え込みながら、今度はその火種が消えてしまわないように魔力を燃料として流し込んで行く。 ここまでの作業で暴走したジュエルシード一個分の魔力を丸々使用してしまった、彼女の足元には内包された全ての魔力を吐き出し、ただの宝石となったそれが転がっている。 此処までして漸く第一段階、第二段階はこの種火を大きく燃え上がらせる事だ。

 

 

文字にすれば簡単な事に思えるが、世界を創世した不死の英雄は消えかけていた始まりの火を再生する為にその燃料として四つの王のソウルを収集する事となった。 いくら始まりの火では無いにしろ、世界創世の際に人々の魂に宿った生命の炎は元をたどればこの火だったのだから、生命の炎を再燃させるのは容易な事では無かった。

 

 

順調に思えたプレシアのアリシア蘇生も当然此処で行き詰まる、どれだけ魔力を流し込んで行っても一向にアリシアの生命の炎が燃え上がらない、そうしている内にジュエルシードが再びその魔力を使い切ってしまった。 此れで二つ目、プレシアにも若干の焦りが見え始める、心臓の音が煩わしいほど鳴り響き、全身を嫌な汗がじっとりと吹き出している。

 

そして、彼女はここですべてのジュエルシードの力を注ぎ込む事で一気に生命の炎を燃え上がらせる事に成功する。 しかし、これによって彼女の手元にあったジュエルシードは全て力を失ってしまう。 残るは駆動炉の魔力のみ、時の庭園の維持を考えない行動ではあったが、プレシアは此処で一瞬でも他の事に気を向けて仕舞えばそれで終わりだと感じたのだ。

 

背後でなのはが自分のネックレスをプレシアに渡そうとしたが、彼女はそれを受け取る事をせず、庭園の崩壊を無視してでも駆動炉を暴走させる。 なのはの差し出したネックレスがあれば何とかなるのかもしれなかったが、先程も行った通り、一瞬でも他の事に気を取られる訳には行かなかったので受け取る事が出来なかったと言うのが正解か。

 

ともかくアリシアの生命の炎は燃え上がった、だが今度はその炎が彼女の胸から溢れ出し、その身を包み始めている。 この炎は彼女自身のもの、よって身を包まれたと言っても灰になってしまう事は無いが、そんな事を知らないプレシアは手が止まり掛けてしまう。

 

血色の良くなったアリシアの顔と、僅かだが上下している胸に気が付いたのは幸運か、それとも極限まで集中していた結果なのか。 プレシアはこれが最後の正念場だと気合いを入れてアリシアの身体を隅々まで調べ尽くす。

 

死者蘇生の第二段階が終了し、最終段階に移る。 今度は身体の外へと流れ出している生命の炎を彼女の中へと戻し、二度と外へ流れ出さないようにする事だ。

 

この炎は俗に言う寿命のようなもの、これが無ければ生きられないし、これの火が消えてしまうと死んでしまう。 事故や事件で死亡した死人の身体にはこの炎が流れ出す穴が刻まれていて、そこから生命が流れ出して行く。 半蘇生状態のアリシアは正にこの状況に置かれていて、今まさに再び死に行こうとしている所なのだ。

 

プレシアが炎が流れ出す穴を発見したと同時に、不意に彼女は声が聞こえた気がした。『私に人間の可能性を見せてくれ』と、それは何処かで聞いたことの有るような声だった。

 

だが、何故だかその声が聞こえた途端、焦りや不安が四散し、冷静な判断力を取り戻す事が出来た。 彼女はアリシアを包む炎に自分の魔力を纏った手を入れ、直接その炎を操作する。 親子とは言え他者の生命に手を入れた彼女の腕は見る見る焼け爛れて行くが、彼女は躊躇わなかった。

 

生命の炎を操作する作業は脳を焼き切られそうな程の頭痛を帯びていたが、憔悴しきった身体に鞭を打ち、アリシアの体表を覆う炎を循環させながら流れ出ている穴へと少しづつ戻して行く、身体の末端から少しづつ、爪先から指先へ、指先から踝へ、踝から膝へと言った風にゆっくりと彼女の体内へと炎を納めて行く。

 

アリシアの全身を覆う炎を全て納めきり、駆動炉と自分の魔力を全て注ぎ込んで、二度と魔力が漏れないように穴を塞ぎ終えると、遂に彼女は膝をつく。

 

 

駆け付けたフェイトの治療を受けながら、プレシアは今までの苦難の道のりを思い出していた。 挫折と失敗、進まない研究や様々な文献や資料を読み漁る毎日、フェイトの誕生とそれによってより一層深まったアリシア蘇生への意欲、人生を捧げたと言っても過言ではない日々だった。

 

プレシアはふらつく身体をフェイトに支えてもらいながらアリシアの側に座り、その頬を優しく撫でる、彼女の身体からは温もりが感じられた。

 

 

「う、うーん、あれ? えっと………、おはよう? で良いのかな、お母さん」

 

「えぇ、おはよう、アリシア」

 

目を覚ました愛しい娘を抱きしめながら、プレシアは静かに涙を流すのだった。

プレシアの死者蘇生を見届けたブレンは、デバイスの通信機能を使ってクロノへプレシア確保に失敗したもののジュエルシードの回収に成功したと言う連絡を入れ、崩壊の始まったときの庭園から脱出する事を伝える。

 

クロノからの指示は、プレシア達を連れて速やかに脱出する事。 証拠を潰された上に現行犯も間に合わなかった以上、彼女達を逮捕する事は出来ず、罪は無かったものとなる、ならば掘り起こすより見逃して借りを作った方が良いと判断したのだろう。

 

脱出自体は一般局員を含めて全員が無事に終わったのだが、時の庭園は次元の狭間へと消え、アースラは航行不能、仕方無く地球へ不時着するとの事だった。

 

 

海鳴公園へとクロノはブレン達を転送し、彼はプレシア達を含めた全員に執務官としての連絡先を手渡しながら『何かあったら連絡をくれ』と言い、ブレン達は勿論、プレシア達にも複雑な思いを抱きながら頭を下げる。

 

 

「今回の一件での協力に感謝する、アースラクルーを代表して礼を言わせて貰うよ、ありがとう。 それにテスタロッサ女史も『ジュエルシード回収に協力して頂き』ありがとうございました」

 

「あら? それで良いのかしら、執務官さん?」

 

「世の中は清廉潔白なだけでは食い物にされるだけです、それになかった事を穿り返すより利用した方が価値があると思っただけですよ。 では、いずれまた『個人的に』ご協力願います」

 

彼はそうプレシアに言った後、ブレンの前に立つ。

 

「ブレン、もしかしたら君の持つ武具の件でミッドまで来て貰う事になるかもしれないが、構わないか?」

 

「構わないけど、何故?」

 

「それが本物かどうかなんて言うのは実際に目にしなくては分からないからさ、納得させるには実物を見せた方が早い」

 

「なるほどね、分かったよ」

 

ブレンの返事を聞き終えた彼はそのままアースラへと帰還して行った。

 

こうしてジュエルシード事件と呼ばれる一件は幕を下ろすのだった。





クロノが個人的な人脈を入手しました。

次回から再び日常ですね。
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