不死の英雄伝 〜不屈の体現者〜   作:ACS

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今回のブレンはなのは欠乏症を発病しています。

本人はまともなつもりですが。


不屈の体現者 75

第七十五話 失われる平穏

 

 

ブレンがミッドチルダに着て半年、彼は支給された管理局の制服のサイズを確かめながら、この半年の事を振り返っていた。

 

先ずは予想していたとは言え一悶着どころの騒動では無い騒ぎが起きた事、俺の持つ武具を狙われたり、生命そのものを狙われたりと短絡的な犯行ばかりで、その度に襲撃者全部捕まえて、軽く尋問して雇い主を吐かせてから突き出すと言う事を繰り返していたら、何時の間にか周囲が『英雄の再来』と騒ぎ出し、太陽の信徒からは現人神として崇められる始末、その度に神扱いしないでくれと懇願したのは記憶に新しい。……………………ソラールの肖像画が教祖として崇め祀られていたのには開いた口が塞がらなかったのもあったか。

 

後は言葉巧みに誘導され管理局入りした事、これに関してはクロノが一枚上手だったとしか言いようが無い。 色々と終わってからクロノの口から聞かされたのだが、彼は俺が犯人を突き出す度に俺の利用価値と実力を散々辺りに知らしめてから、上層部が優秀な人材としてスカウトしようとした矢先に俺を地球へ一度帰還させると言う手段を取った。

 

しかもこれは上層部の耳に入らないように徹底的に隠蔽され、彼らが俺に接触を測ろうとした時には既にこの地を離れていた。 その後、クロノは繋がりを持たぬ彼らに幾つかの条件を提示し、それを飲む事で俺と再びコンタクトを取ると上層部に持ちかけたそうだ。

 

その条件とは以下の通り。

 

1.ブレン・シュトッフを自分の管轄下に置く事、2.汚職容疑が浮上している提督や将官等の証拠等を握り潰さない事、3.ブレン・シュトッフを含めその周囲の者に手を出さない事、4.以上の内容を他言しない事。

 

これのお陰で俺はそのままミッドにとんぼ返りとなり、かなりの地位に立っているだろうお偉方に土下座で入局してくれと頼まれてしまい、嘱託魔導師となる事になった。

 

これも後からクロノに聞かされた話なのだが、その時の俺は数ヶ月振りになのはに会えると浮かれていた所を呼び戻されたからか、どうにも不機嫌だったらしく、上層部の者との面会では押し潰されそうな程の凄まじい威圧感が出ていたとの事。 彼らの話をしっかり聞いて居るし、僅かながらとは言え笑顔を浮かべ、敬語や受け答えも完璧だったのだが、目だけは笑っておらず、一言でも間違えたら殺されるような錯覚を覚えたとクロノは言っていた。 成る程、だから話の途中にも関わらず滝のような脂汗を流し、全身を震わせながら土下座をして来た訳だ。それに今にして思えば道行く人々も次々に道を開けていたな、表に出している自覚は無かったのだが。

 

そうして試験等を終わらせた後に漸く地球へ帰還と相成った。 お偉方からは謝罪の品として月村邸のような豪邸や超高級車など彼らの懐が心配になる程貢がれてしまった。 …………一応誠意を持って接してくれた訳だし、広告塔にでも最前線にでも好きに使ってくれとクロノに返しておいたが『君は僕の直属だ、死ぬ程こき扱わせて貰うよ』と言う非常に素敵なお返事を返して貰った。

 

こうして大まかな半年間の出来事を整理し終わり、改めて厄介事に好かれる人生だと自嘲しながら部屋を出ると、丁度廊下に居合わせたユーノとバッタリ出会ってしまった。

 

最近彼と出会ったのは不機嫌真っ只中の時だった、物凄い勢いで俺から離れて行ったので非常に印象的だった。 と言うか今も怯えている、小動物としての性だろうか?

 

 

この時ブレンは気が付いて居なかったが、半年間のおさらいの所為で再びなのはに会いたいと言う欲求がぶり返し、抜き身の刀のように近寄るだけで斬られそうな雰囲気を醸し出していて、なのはの事が心配でたまらないのか寝不足で目の下に隈も出来ており異様な風貌をしていた、ユーノで無くとも腰が引ける。

 

ブレンはユーノを一瞥し、特に話す事も無かったなと思い直してその場を離れる。 後にユーノは『遂に三枚におろされるのかと覚悟した』となのは達に話している。

 

ブレンが向かった先はブリッジ、後どの位でなのはと再会できるのかを聞きに行ったのだが、非常に緊迫した空気が張り詰めており、誰一人として目を合わせようとしないので、彼は忙しいのだと判断し、邪魔をするのも悪いからとその場を去った。 実際はブレンの威圧感に当てられていただけの話なのだが、それを知らない彼は自分の上司であるクロノを探してアースラ内を徘徊する事となった。

 

アースラクルー全員がブレンとなのはの関係については知っていたのだが、まさか此処まで入れ込んでいるとは思っても居らず、初めのうちは年相応で微笑ましいと思っていた者が、今では恐ろしい威圧感を放っている。 例えるなら人懐こいチワワやトイプードルが数日しない内に殺気を撒き散らしたドーベルマンやボルゾイになっているような物だ。

 

 

彼が去ったブリッジ内では、その場に居たクルー全員がほっと胸を撫で下ろす中、リンディは一人眉間に皺を寄せていた。

 

 

(彼、なのはさんに執着し過ぎな気がするのよね)

 

 

確かに、愛する人と長期間離れ離れになるのは辛いものだが、それにしたって彼のなのはへの執着が異常だった。 ビデオレターは勿論、殆ど毎日デバイスの通信機能で顔を合わせて会話しているのにこの有様、単なる恋心では説明が付かず、かと言って依存と言う言葉も当て嵌まらない、故にリンディは執着と称したのだ。

 

リンディはお茶を啜りながら彼の執着に付いて考える。

 

(もしも、私の思った通り執着だとしたら。 彼は彼女に一体何を求めているのかしら? いえ、そもそもからして、彼は自分がなのはさんに此れ程強い執着心を抱いている事に気付いているのかさえ疑問ね)

 

 

ブレン・シュトッフが知らず知らずの内に高町なのはに強い執着を抱いていると言うリンディのこの憶測、それは数日後に憶測から確信に変わる事となる。





ブレンがなのはに対してだけあからさまに態度が違う理由は恋だけではありません。

本人の知らない深層心理の部分で彼女にある事を求めているからこそ、彼は異様になのはだけを愛しています。
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