不死の英雄伝 〜不屈の体現者〜   作:ACS

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ハイスピードで蒐集が進んで行きます、故にはやてが入院する前に闇の書は完成する予定です。

それまでにはやてを特定させないと……(白目)


不屈の体現者 89

第八十九話 熱砂の攻防

 

 

砂漠の無人世界、そこに生息する原生生物のリンカーコアをシグナムとザフィーラが蒐集していると、彼らの動向を察知したフェイトがアルフと共に割り込むように現れた。 蒐集を初めて数分後の出来事だった為、シグナム、ザフィーラは共に驚きを隠す事が出来なかった。

 

実はこの数日前、前回、前々回と守護騎士相手に後手に回っていた事を問題視していたクロノはフェイトを介してプレシアに協力を仰いでいた。 彼女は魔法技術もさる事ながら索敵能力、追跡能力共に優秀であり、事件の早期解決を望むクロノ達に取ってはうってつけな存在であった。 基本的に娘第一主義であった彼女はフェイトを仲介したおかげですんなりと協力してくれた、フェイトが自分の手でシグナムと決着を付けたいと希望している為、前線に出る事は無いだろうが、そのサポートとしてシグナム達の居場所を割り出してくれている。 彼女の能力ならば今回の交戦で守護騎士とのいたちごっこにも方が付く、フェイトがシグナムを捕らえるならばそれに越した事は無いが、実質彼らの動きを捉えた時点で勝利であった。

 

以前、クロノが闇の書に取り付けた盗聴器から彼らの主人はこの街の住人である事、主人に隠れて蒐集活動を行なっている事、主人はなのは達と同年代らしいと言う事の三つが判明している。 しかし、それ以上の情報は手に入らず、盗聴器その物の稼働時間が尽きてしまった。 なので、彼らを捕らえる、若しくは追跡する事によっての拠点の特定が今回の戦闘の目的だ。 余談だが、この盗聴器は発見され辛いように超小型の物、サイズとしては米粒大の代物なのだが、音割れが酷く使い捨て、その上値段もクロノの給料の二割強ほどだったので多用が出来ない、後に彼は思った以上の成果が上がらなかったとブレンに愚痴をこぼしていた。

 

フェイトとシグナム、アルフとザフィーラ、この二組が交戦し始めた頃、水面下でクロノ達も動いていた。 先ずリーゼ姉妹が前回彼らの味方をしたと言う事は、彼らの逮捕が彼女達には不都合だと言う事、又その事から何らかの方法で彼女達は守護騎士達を監視している物と思われる。 恐らく何らかの手段で自分とブレンの転移を妨害しに掛かってくる筈、その事を念頭に置きながらクロノはリーゼ達の襲撃に備えながらフェイトとシグナムの戦闘に意識を向ける。

 

だが、その前にプレシアとエイミィがまた別の無人世界で蒐集活動を行っているのを発見、直ぐになのはが現場へと向かい、ヴィータと対峙する。

 

和平の使者は槍を持たない。 なのはは敵意が無い事を示す為にデバイスを展開しなかった。 ヴィータは思わず舐められているのかと勘ぐったが、なのはの目を見つめてそれは無いと判断した。 臨戦態勢は解かないが、なのはの芯の入った瞳を見て、一度だけなら話を聞いてやろうと思い、その言葉に耳を傾ける。 同時に、彼女は自分の中に生まれた疑問を問い質して見ようとも考えていた。

 

 

「お話、聞かせて貰えるかな?」

 

「…………条件がある」

 

「条件?」

 

「あたしらの前の主人、いや前の前でも良い。 兎に角闇の書を完成させた奴等の末路、特に完成させた前後の事が聞きたいんだ、教えてくれたら話を聞いてやる」

 

「えっと、クロノくん? と言う事なんですが……」

 

「はぁ、少し待っていてくれ、資料を転送するよ」

 

 

そうして、クロノが端末から歴代の主人達の資料を転送しようと情報の選別をしていると、彼はフェイト達の映像に目を奪われてしまった。

 

モニターに映るフェイトとシグナムの戦闘映像、そこには不可解な光景が写し出されていた。 フェイトがフォームチェンジをしたと同時にシグナムの首にデバイスを突き付けていた。

 

速さを追求した『ソニックフォーム』 薄い装甲を更に薄くしたその姿は、レオタードとスパッツのみと言う状態、手足にはバルディッシュのフィンブレードとなのはのフライアーフィンのような光の羽『ソニックセイル』を生やしている。

 

圧倒的な運動性、機動性、攻撃速度、本来ならこの三つを手に入れる為のフォームだったのだが、彼女の手に握られたバルディッシュの力により、このフォームは全くの別物へと昇華していた。

 

『時間停止』

 

デバイスの力により、一時的にだが文字通り光の速さへと到達したフェイトの目には世界の全てが停止して見えている。 尤も、彼女の時間停止は2〜3秒程度の物で、次の時間停止にはその10倍のインターバルを必要としているのだが。

 

しかし、戦闘において時間停止能力を持っていると言うことは非常に大きなアドバンテージであり、実力差、経験差の全てを無に帰す代物、四騎士の長オーンスタインもこの境地へと達しており、不死の英雄もその脅威に苦戦を強いられていた事から、小細工なども仕掛ける隙間の無い力という事がよく分かる。

 

結果、シグナムは瞬きをする暇も無く喉元へと突き立てられたバルディッシュの刃に、彼女は何が起きたのか理解が及ばなかった。 停止した世界はフェイトだけの世界、彼女だけが知覚でき、彼女だけが動く事が出来る、シグナムの困惑は当然の事であろう。

 

シグナムはフェイトによって拘束され、ヴィータは情報提供を条件に戦闘を停止、ザフィーラは二人を盾にすれば如何にかなる、となると彼女達が動くのはこのタイミングだな。

 

クロノがそう判断を下すと同時に、拠点のシステムがクラッキングされ駐屯地の機能が停止する。 だが、クロノはその前にフェイトの元へブレンを転移させていた。

 

彼がブレンをフェイトの元へと送った理由は彼女がまだ蒐集されて居ない為だ、闇の書の蒐集行動は魔導師一人に付き一回、つまり狙われる可能性が高いのはフェイトであり、なのはとブレンはその対象から外されている。 そして、クロノのその読みは的中していた。

 

 

ブレンがフェイトの元へと転移した時には既に彼女のリンカーコアは蒐集された後であった。 不意打ちを受けたので有ろう、シグナムが複雑な表情を浮かべている。

 

しかし仮面の男が退散する前に現場に辿り着く事には成功、彼は音を殺して仮面の男へと踏み込む。その踏み込みの速度を殺さないようにしながらデバイスの中に組み込んだ混沌の刃を展開し、左腕を肩口から斬り落とす。 転移魔法を使用しようとしていた仮面の男、彼は思い掛けない襲撃者によって左腕を斬り落とされてしまった為、転移魔法で逃走すると言う手段が使えなくなった。

 

基本的にブレンの魔力は垂れ流しとなっており、その莫大な魔力反応から魔導師相手に奇襲は成功し辛い物ではあったが、彼の手際の良さがそれを補っていた。

 

 

嘱託とは言え、管理局に所属する者が躊躇無く敵の腕を斬り落とした、これは非殺傷設定を常に掛けている魔導師にとっては衝撃的な事であった。

 

仮面の男もこの例に漏れず、ブレンのデバイスには非殺傷設定が掛かっていると思い、痛みを堪えながら強引に転移するつもりであった。 だが結果はこの通り、彼はなんの躊躇いも無くその凶刃を振るって腕を刎ねた、大凡常人の神経では無く、仮面の男はそれを見誤った。 目の前の幼い少年はその芸術品のような容姿からは考えられ無い程の悪鬼羅刹、血で血を洗う修羅であった。 左腕は勿論血液の一滴すら残してはならない、仮面の男は此れで逃げる事が出来なくなってしまった。

 

反撃か、腕の回収か。 仮面の男がその判断を付けようとした一瞬、本来なら隙にもならないその一瞬に、仮面の男は両足を居合い抜きで両断される。 崩れ落ちる仮面の男、抵抗をする事も出来ずに最後は右腕を刎ね飛ばされた。

 

ブレンの戦い方は相手の隙に付け込み流れを捥ぎ取ると言う物、思考の瞬間ですら彼の前では隙となる。 手足を斬り落とされ、達磨状態となった仮面の男、彼の首をブレンは義手で掴み上げる。

 

 

彼は止めを刺すフリをし、監視しているであろうもう一人をこの場へと引き摺り出す。 胸に刃を突き立て、そのまま心臓付近へと刃を押し込んで行く、クロノからは生きて口が聞けるレベルならば何をしても構わないと言われている為、今の彼に容赦は無い。

 

ゆっくりと仮面の男の胸に沈んで行く刃の切っ先、両腕両足から流れ出す大量の血、胸の傷から溢れ出した血液はそれに遠く及ばない量ではあるが、生物の急所たる心臓の真上からの出血である為、仲間を炙り出すには丁度良い物であった。

 

 

ブレンとクロノの目論見通り、もう一人仮面の男が現れ、殺気と怒気を振りまきながら殴り掛かって来た。 形振り構わずと言った調子であったが、ブレンが義手で掴み上げていた仮面の男を盾にすると、彼は拍子抜けする程あっさりその拳を引き止めた。

 

逃げられては困る為、此方の男も両腕両足を斬り落とし、胸を一閃して重傷を負わせ、四肢と本人達を駐屯地に転移させる。

 

後に残されたのは、返り血塗れのブレンとフェイトを抱き抱えたシグナム、拳を交える事を止め、其々の仲間の元へと戻ったアルフとザフィーラ。

 

ブレンは血払いすらせず、べったりと血糊で濡れた混沌の刃を守護騎士達に向ける、それは交戦の意思があるならば容赦はしないと言う思いを込めた物であった。

 

 





うん、相手が悪かったね(白目)

猫姉妹の敗因は『非殺傷設定掛かってるし斬られても大丈夫だろう』と言う局員特有の思い込みですね、この男にそんな物無いのに…………。
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