幼少期は早く終わらせたいな(願望)
日常は難しい、早くバトルやりたい。
第九話 復讐者の刺客
あの後俺は病院に担ぎ込まれ、異常は無いと判断されたが、一つ困った事になっている。
運ぶ際に丁度俺たちを呼びに来た桃子さんに見つかってしまい、洗いざらい話したのだろう。
恭也さんが俺の診察が終わった直後になのはと桃子さんに説教され、放心状態になっている事だ。
俺としては身体が意識に付いてこなかった為にあの様な無様を晒してしまって逆に申し訳無かったのだが、それを言える空気では無く。
結果として気不味い雰囲気が漂っていた。
説教が終わり、病院にも居ることだからと言って桃子さんが、『この家のお父さんの所に案内するわね』と言ってある病室まで案内してくれた。
そこで眠っている男性に、桃子さんが俺の紹介をしてくれている。
高町士郎。
この家の大黒柱であり、これからお世話になる人達の大切な人。
何かをしてあげるべきかもしれないが、俺はあまり人の命運を分ける事象に干渉したくはない。
きっかけを与えるだけならともかく、丸々手助けをしてしまえば嘗ての神々と同じになってしまう。
俺はあの時代を人の強さを謳って戦い抜いたのだ、それだけは死んでも出来はしない。
いくら気が遠くなるほどこの世界を見守り続けたお陰で疲弊し尽くしていても、それだけは出来無い。
それに、見た所彼の魂の輝きは消えていない。
死んでなるものかと言う意思が伝わってくるから、近いうちに目を覚ますだろう。
そして、その予感は数日の内に現実となり、高町士郎は無事に目を覚まし、それと同時に俺は正式に彼らに引き取られる事となった。
それから更に数日後、俺はなのはと共にシフとこの街を散歩して回っている。
シフの散歩をする名目で街並みの把握をしたかったが、なのはが付いてきてくれたのは嬉しい誤算だった。
俺の隣を歩く彼女の手を握りたかったが、右腕はシフのリードを握っている状況、隻腕が恨めしい。
シフに視線を向けては見たものの、格を落とした影響なのか野生の本能が強く、以前とは比べ物にならない程欲望に忠実だった。
あっち行きたい、こっち行きたい、休憩しよう、蝶々が飛んでるよ等と言っていて、本当に仔犬のようだった。
そんな中、途中で数キロ先のビルの上に俺の事を双眼鏡で覗いている者が居た、口パクで何か用かと聞くと彼は慌てて去っていった。
時は遡り、高町士郎が目を覚ました頃。
この街にとある世界からの殺し屋が足を踏み入れた。
この殺し屋はその筋では有名な男であり、狙撃の名手と呼ばれていた。
その腕前は、数キロ先のコインをワンホールショット出来る程で、相手の索敵範囲外から確実に仕留める事で魔導師達からは有名な男だった。
そんな彼の前に、ある少年が現れる。
その目に復讐の炎を燃やし、触れる物全てに噛み付くような狂犬の気配を纏ったその少年は言った。
『手段は問わない、ある者を殺して欲しい』
その言葉と共に差し出された金塊。
アタッシュケース一杯に詰められたそれを、その少年は前金として差し出し、依頼の内容を説明する。
それは実に奇妙な依頼だった。
殺す対象の顔や名前はおろか、性別すら分からない者を殺してくれと言う内容。
『魔法文化の無い管理外世界にいるのに膨大な魔力を垂れ流しているから直ぐに分かる』
少年はそれに続けて更に奇妙な事を言った。
『最悪、殺せなくても構わない、それなりの情報を持ち帰ってくれたら報酬は払わせて貰うよ』
殺し屋はその依頼を不可解に思いながらも引き受けた。
ここ最近、管理局のマークが厳しくなり依頼がめっきり減ってしまい、食うにも困っていた所だったのだ。
故に、怪しい依頼にも関わらずそれを受け入れた。
彼自身、自分の死に様は碌でもないだろうと自覚している為、最後の依頼になるかもしれないと覚悟しながら。
彼がこの地に足を踏み入れた時に先ずやったのは拠点と地形の把握。
狙撃地点や隠れ家等の準備をして、逃走経路なども入念に製作した。
次に狙撃銃の整備。
彼の狙撃銃は原型を無くすほど改造されており、仕事の前には必ず整備を必要としていた。
だがその分威力は高い。
対物ライフルと同じ威力を持ち、専用弾が二種。
一つは対魔導師用の弾。
特殊な術式が刻まれ、シールドは勿論のことバリアジャケットすら貫通する代物。
魔導師相手でなくてもコンクリートブロック程度の遮蔽物ならば容易く貫く威力を持っている。
これが幾多の魔導師を葬ってきた彼の切り札。
その代わり、代金が馬鹿高いため今手元には十発分しか無い。
もう一つは、炸裂焼夷弾。
此方は弾そのものから特殊な製法で製作されていて、その名の通り着弾後爆発し、周囲を焼く代物だ。
手段は問わないと言われた為、一応持ってきたが使う事は無いだろうと彼は踏んでいた。
そして偵察に出た彼は、異常な魔力を放つ銀髪の少年を見つけ、離れた位置から彼を観察する。
隣の少女にも魔力はあるが、彼に比べるとまだ発展途上、対象では無さそうだ。
依頼主のアバウトな依頼に舌打ちしながら、彼は改めて双眼鏡を覗くと、件の少年と目が合った。
「……ッ、おいおい、俺が見えてんのか?」
思わずそう零した彼に答えるように、少年は何か用か?と聞いてきた。
思わず彼はその場から逃げ出し、拠点に戻って行く。
「あのガキ、此処が何キロ離れてると思ってんだ!?」
彼は念には念をと言うことで5キロは離し、更にレンズの反射も無くした双眼鏡も使っていた。
しかしあの少年はそれに肉眼で気が付いた。
ターゲットはその少年に決まった。
後は手を引くか、それとも彼を殺すかを決めるだけだったが、裏で仕事を完遂できなかったと言う事は信用にも関わるし、何より今回の仕事は死ぬ事も覚悟している。
彼に引く気は無かった。
あれ、日…常?
…………へ、平和だね(白目)