不死の英雄伝 〜不屈の体現者〜   作:ACS

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猫姉妹逮捕、しかし残る不安要素は二つ。

一つは闇の書に潜むマヌスの残留思念。

もう一つはブレンへの復讐心を燃やす転生者。

最終決戦は前倒しになりそうですね。


不屈の体現者 90

第九十話 絶望へのカウントダウン

 

 

クロノから自分のデバイスへ転送された歴代の主人達の末路に目を通したヴィータは、自らの常識が足元から音を立てて崩れ去って行くような感覚に見舞われていた。

 

見るも無惨な結末、それをどれ一つ覚えていない筈なのに、何故か渡されたデータに嘘偽りを感じられ無い。 それを否定したくて震える指先で、隅々まで矛盾や不自然な箇所が無いか、重箱の隅をつつくように一字一句目を通したが、見れば見るほど真実であると思えてしまう。 主人を救う為に奔走した筈が、自らの手で主人を断崖へと突き落とす為に暴れ回っていた、感情の起伏の激しいヴィータはその事に気が付き、 一刻も早く仲間達の蒐集行動を止めさせなければならないと悟った彼女は、主人への罪悪感から発狂しそうになりながらも他の守護騎士達へとそのデータを送る。

 

 

クロノはその光景を見ながら『早期解決が出来そうだ』と胸を撫で下ろしていた。 彼自身守護騎士に思うところが無いと言えば嘘となるが、クロノ自身闇の書の背景はある程度知っている。

 

正式名称『夜天の魔道書』、主と共に旅をして、各地の偉大な魔導師の技術を収集し、研究するために作られた収集蓄積型の巨大ストレージであり、現在の形は歴代の主人の誰かに改悪された結果である為、守護騎士達が絶対的な悪と言う訳では無いのだ。

 

兎も角これで彼らを交渉のテーブルへと座らせる事が出来る、後は彼らの主人と連携して闇の書を『夜天の魔道書』に修復したいのだが、それはユーノの結果待ちか。 クロノはそう思案し、なのは達へ帰還命令を出した。 これ以上の戦闘に意味は無く、後は話し合いで何とか出来るだろうと彼は考えていたのだが、それは甘い見通しだった。

 

 

闇の書の最深部、最悪の邪神は守護騎士を通して伝わる情報に内心で舌打ちを打っていた。 今の彼はただの残留思念、肉体は無く、闇の書のデータの一部、外界に直接干渉する為には肉体が必要不可欠であり、彼は闇の書の完成によって取り込まれた八神はやてを乗っ取る事で復活を果たすつもりであった。

 

幸いな事に愚かな人形共が自発的に闇の書を完成させようと奔走していた為、彼は時期が来れば何の問題も無く復活出来ると楽観視していたのだが、完成まで後一歩の所で気付かれた、このままでは永遠に復活する事が叶わない。 直接八神はやてを乗っ取ろうにも闇の書の意思による妨害が凄まじく、中々思うように行かない。 闇の書の意思とは常に存在を喰い合っていると言う状況で、此奴を排除しない限り最悪の魔物は復活出来無い、無理に喰いに行けば不死の英雄に勘付かれてしまう、彼を恐れる最悪の邪神はそれだけは避けたかった。

 

だがこのままではどの道復活する事は出来無い、故に最悪の邪神は強硬手段に出る。

 

今まで緩やかな浸食速度だったのが一転、最悪の邪神は恐ろしい速度で闇の書の意識を喰らい始め、八神はやての身体の自由を一時的に乗っ取る。 闇の書の意識は直ぐさま主導権を握り返しに来るだろうが、それまでに闇の書を完成させれば問題は無い。

 

自分達の行動がもたらす未来にショックを受けていたシャマルはワンテンポ遅れて主人の異変に気が付き、シャマルが無人世界に居る三人に帰還するように指示を飛ばす。

 

幽鬼のように立ち上がる八神はやて、彼女は意識だけは残されており、勝手に動き出した自分の手足と、頭の中に響く不愉快な声に混乱していた。

 

 

『あの男に勘付かれてしまうかもしれんが、最早これまで。 奴へ復讐心を滾らす人間の居場所も特定している、万一奴が再び我を討とうとした場合、その者をあてがい、戦闘している隙に深淵を纏えば良い、未覚醒の闇の書の力では完全に乗っ取れぬが、体を貰うぞ小娘』

 

 

男のような、女のような、子供のような、大人のような、青年のような、老人のような、そんな不思議な声が聞こえたのだが、はやてはそれが何か悍ましい物に思えてならなかった。

 

自由の奪われた身体は彼女の意思に反してシャマルへと飛び掛かる、その速さはフェイト・テスタロッサのリンカーコアを蒐集したおかげか、彼女に匹敵する速さであり、弾丸の様な拳がシャマルの身体をくの字に曲げ、壁に叩きつける。 元々支援型の彼女は壁に叩き付けられた衝撃で呼吸を乱し、隙を晒してしまう。

幼子の細腕からは考えられない力を持ってシャマルの首を締め上げるはやて。 彼女は首を振り、必死で自分の身体を止めようとするも、その焦燥感や自分の身体を使っている誰かに対しての怒りが最悪の邪神の糧となっていると言う悪循環。 監視や追跡を無視し、シグナム達が一直線で帰還した瞬間、シャマルの首から何かが折れる音が聞こえ、彼女の首が力無く垂れ下がる。

 

その場に居た全員、何が起きたのか理解出来ずに呆然としていた。 だが、最悪の邪神はそのまま容赦無くシャマルのリンカーコアを心臓ごと引き抜き、ソウルを砕くようにそれを握り潰しながら無理やり闇の書の頁を埋める。 残り三人、完成まで秒読みの状態だからこそ出れる強引な手段、人間の負の感情が血となり肉となる邪神は、ここぞとばかりにはやてへと絶望を与えて行く。

 

八神はやての意識を残す事により、守護騎士達の攻撃の手を止めさせ、無抵抗な彼らを一方的に殴り殺しながらリンカーコアを蒐集する。

 

かくして闇の書は完成し、家族をこの手で嬲り殺したショックで心が折れたはやては闇の書の中へと飲み込まれていった。

 

 





……………………前に、ダークな面はなりを潜めるとか言ってたような気がするな〜(震え声)

邪神様が一旦復活、けどまだ完全じゃありません、リィンフォースの必死の抵抗で完全復活は妨害されてます。
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