今回はひなビタ♪のSSを書かせていただきました。
お楽しみいただければ幸いです。
私、春日咲子は今、心の奥底にある感情が理解できないでいた。
いや、頭では理解できているのだ。彼女...和泉一舞が好きで、私は彼女を愛しているという事を。
だが、女性が女性を愛してもいいのだろうか?私と彼女は友達という関係にある。しかし、私が彼女に告白したらどうだろうか。その友達という関係は良い結果に転ぼうが、悪い結果に転ぼうが、その関係は崩壊してしまうのだ。
もっとも、滅びに美を求める者は、それで良いのかもしれないが。
だが、私はそうは行かないのだ。彼女へ想いの全てをぶつけて、先に進みたい。
でも、もし嫌われたら?そんなのおかしいって言われたら?
そうなってしまったらもうどうしようもないだろう。
ふと、自室に飾ってあるクロユリの花に目をやる。
そういえば、どこかの伝説でこんなものがあるのを思い出した。
「愛する人、恋する人がいたら、愛を告げる前に密かに心をこめたクロユリをその人のそばに置く。もちろん名も告げず、こっそりとである。このクロユリに気づいた相手が手にとってくれれば、思いが通じる。そしていつか必ず二人が結ばれる。」
私はこの伝説を思い出して、明日このクロユリを、彼女に渡して、そして想いを全部ぶつけようと決心した。
窓から、月を見上げ願った。
「このクロユリのように、私の恋の花も咲けますように。」と。
翌朝、いつものように、私と彼女とまり花の三人で学校に向かった。
向かう途中に横を向いて彼女の横顔を見た。
綺麗な金色をした髪、整った顔立ち、彼女の横顔を見ているだけだというのに、体が熱くなっていく。
「どうしたの、咲子?」
ふと、彼女が私に声をかけた。
私は思わず肩を強張らせてしまった。
「あ、えっと、その、な、何でもないです...」
「...?」
イブちゃんの横顔が綺麗だったから見とれてしまった。なんて素直に言えればどんなに幸せなことか。
でも、全て伝えると決めたんだ。この月に願いをかけたクロユリとともに。
彼女とはクラスが別なので、しばしの別れとなってしまう。だが、授業を受けているときも彼女のことが気になって少し...というかかなり授業が身に入らなかった。
やがて昼食の時間となった。
私たち三人は各々昼食をもって屋上へと上がった
私は弁当と...クロユリを持って。
私たちはこの昼食の時間を謳歌した。
二人会話に夢中になっているときに私は彼女のそばにそっとクロユリを置いた。
「私たち、次体育だから、少し早めに戻るね!」
まり花がそういうと彼女は
「じゃああたしはもうちょっとここでゆっくりしていくんだし!」
と答えた。
その言葉を聞いたのち、私たちは屋上から撤退した。
クロユリ、気付いてくれてるといいな。
「...ん?」
ふと下に目をやると、クロユリの花がそっとそばに置かれていた。
「この花、中々イケてるんだし!もらっておくんだし♪」
そのクロユリを持って、一舞は屋上から撤退した。
放課後、帰ろうと靴箱を開けた時、一舞は一枚の紙を見つけた。
そこには、
「体育館裏に来て下さい。お話があります。 咲子」
と少し震えた字で書かれていた。
「...咲子、どんなことを話すんだろう...」
一舞は紙に書かれていた通りに体育館裏へと足を運んだが、そこに咲子の姿は無かった。
するとそこへ
「お、お持たせしまってごめんなさい...」
と咲子がやって来た。
「そんなことはいいんだし!それより咲子、話って...何?」
一舞が切り出すと、咲子はいつになく真剣な顔になった。
そんな咲子の表情を見て、一舞の顔も自然と真剣な表情になる。
「イブちゃん、これからいう事...ちゃんと聞いてくれますか...?」
「わかった。一言一句聞き逃さないようにするしっ。」
了解の言葉を聞いた後に、咲子は一舞に向けてこう言った。
「私、春日咲子は、和泉一舞の事を、愛しています。」
「...!」
一舞は驚いた。
ずっと好きだった。だけどきっとずっと友達のままだと思っていた相手から、告白をされたのだから。
頭の中で色々な考えが巡って動くことができない。
「そう...ですよね。女の子が女の子の事好きになるなんて、おかしい...ですよね...」
咲子は涙を目に浮かばせそう言った。
一舞はその言葉を聞いてハッとした。
「そ、そんなこと絶対にないんだしっ!!」
「え...?」
「あ、あたしだって咲子の事好き...ううん、世界で一番愛してるんだし!」
そういって、咲子をぎゅっと抱きしめた。
「あたしね、咲子とずっと同じ思いだった。きっと咲子も、嫌われたらどうしようとか、そう思ってたんだよね?」
「はい...」
一舞の問いに、一舞の胸にうずまった咲子が答える。
「今までずっと戸惑ってたんだよね。私も、何度も何度も想いを伝えなきゃって思ってた。だけどその度に足踏みして、泣きじゃくったりしたの。でも、咲子はこうやって私に想いをぶつけてくれた。それがうれしくてうれしくて。これからも咲子と一緒に居たい。そう思った時にね、分かったの。あたし咲子の事愛してるんだって。でね、今ね、それが叶うんだと思って凄い嬉しいんだけど、同時に、謝らなくちゃいけないなと思って。」
「え...?」
「咲子、勇気の無い私のせいで辛い思いさせてごめんね... あたしね、咲子の泣いてる顔は見たくない、と思って抱きしめたんだけど、ダメみたい。あたし...涙が...」
「今二人で泣いたら、きっととってもとってもスッキリすると思いますよ?」
「うぐっ...さきこ...ごめんね...でも...ありがとう...う、うわああああああああああああ...」
「イブちゃん、ずっと...一緒に居て...くれますか...?」
「えぐっ...もちろんだしぃ...ひぐっ...」
「いま...とってもとっても...嬉しい...です...」
二人とも、目を真っ赤に腫らして、心の底から、想いを伝えて、泣いた。
「ねえイブちゃん?」
少し落ち着いた頃、咲子が問いかけた。
「どうしたの?」
「その...キス...しませんか...?」
少しの沈黙の後、
「OKなんだし!咲子にファーストキス奪われるなら、本望なんだし!」
「そう言ってもらえて、嬉しいです!」
「じゃあ...イブちゃん...」
咲子が目を閉じ、顔を少し前に近づけた。
「さきこ...」
一舞もゆっくりと咲子の唇に唇を近付け、やがて二人の唇が重なった。
「ん...」
「ん...ふっ...」
二人の数秒の間のくちづけ。
たった数秒だった。
けれど二人にとっては永遠のような時間だった。
「はぁ...」
「ふぅ...」
くちづけをした時と同じように、ゆっくりと互いの唇を離した。
「キス...しちゃいましたね...」
「なんか...少し名残惜しいんだし...」
「イブちゃん、寂しがりやさんですね」
「うっ...そんなこと...ないんだし...っ」
図星を突かれて、少し一舞は動揺した。
「ねえイブちゃん?」
「なんだし?」
帰り道、咲子が一舞に問いかける。
「今度...イブちゃんの家...泊まっても...いいですか...?」
「今度なんて言わないで...今日にでも泊まってほしいんだし!」
「それと...」
「?」
一舞がカバンからクロユリを出した
「...っ!」
「...これさ、咲子がくれたんだよね?」
「...」
予想外の質問に、咲子は思わず口をつぐんでしまう。
「思い出したの。クロユリの伝説。告白された時、思い出して。伝説通りになったなと思ってね。」
「...はい。私が置きました。」
「このクロユリ、とっても綺麗で気に入ったんだし!でも...」
「?」
すっと、一舞が咲子に顔を近づけた。
「咲子の方が、何倍もきれいなんだし...」
そういうとまた二人の唇を重ね合わせた。
どのくらいの時間だったのだろうか
唇を離したとき、二人の頬は赤く染まり、蕩けた表情をしていた。
「また...しちゃいましたね...」
「うん...」
そうこうしているうちに、一舞の家の前まで来た。
「また明日も...会えますよね...?」
不安げな声で、咲子が訊いた。
「当ったり前だし!明日も、明後日も、その先も、ずーっと会えるって、約束するんだし!」
「今、とってもとっても、嬉しいです!また明日、必ず!」
「わかったし!」
そうやって二人は手を振って見送った。
夜、一舞は花瓶にクロユリを生けた。
一舞は、クロユリが向く月明かりの方に目を向けた。
そのころ咲子も、クロユリに導かれ、月明かりに目を向けていた。
この月明かりの向こうに、想い人がいるような気がして。
心を通わせた、相手と向かい合ってる気がして。
そんな気持ちに包まれながら、二人の一日は終わりを告げた。
お楽しみいただけたでしょうか?
まだまだ未熟なところも多々ありますが、お付き合いの方、何卒よろしくお願いします。
それでは。