たとえ、世界を滅ぼしても ~第4次聖杯戦争物語~   作:壱原紅

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※注意

こちらの小説にはオリジナルサーヴァントが原作に介入するご都合主義成分や、微妙な腐向け要素が見られますので、受け付けないという方は事前に回れ右をしていただければ幸いでございます。
尚、しっかりとこの場で警告をさせていただいているので、受け付けないという方は無理に入る必要はございません、どうかブラウザバックしてくださいませ。


それでも見てやろう!という心優しい方は、どうぞ閲覧してくださいませ。

今回は再びバサドラ陣営のお話、雁夜おじさんとバーサーカー、そして桜ちゃん―――それぞれが歩み寄って、運命に挑むお話です。


主従契約(清願忠誠)

貴方を傷付けてしまった私がいます。

貴方の叫びを理解できない私がいます。

 

この心は狂気に触れて、その現状こそを望んだのは自分自身で、それなのに。

貴方の声が、貴方の祈りが、貴方の涙が私の狂った意思を揺らすのです。

 

 

貴方の事を知る度に、この胸には募るモノがあるのです。

 

 

だから声を聴きたいと願いました。

だから言葉を伝えたいと願いました。

 

 

お願いです、この声を聴いてください。

この【私】の言葉を聞いてください。

 

 

――――――――――――――――どうか、この狂った私の声を、聞いてください。

 

 

ただ、知りたい

 

 

 

        貴方は【何】を、望んでいるのですか――――――――――?

 

 

*************************************************

 

<SIDE/間桐雁夜>

 

―――――眼を開ける、薄暗い屋敷の中で、窓に近いベッドの上に僅かにかかる冬の日差し。

 

 

そこで、間桐雁夜は目覚めた。

一体今が何時なのかも分からない程、長い時間を眠っていたようだ。

 

蟲に巣食われてから、まともな休息を取った事が無かった雁夜にとって、それは久しぶりの睡眠だった。

………そのせいもあるのだろうが、動きはいつも以上に遅かった。

 

 

「ん…」

「っ桜ちゃん…」

 

 

きゅ、とパーカーの裾を握る手に気付く。

視線を下に向ければ、そこには何よりも代えがたい少女の姿があった。

 

頭を撫でてあげると、少しだけ笑みを浮かべるその寝顔。

昨夜の悲しい声を思い出して、雁夜は胸が締め付けられる感覚に陥った。

 

 

『置いてかないで、桜を1人にしないで』

 

 

あんな声で悲しませたかった訳ではない、涙こそ流して無くても…いや、流せなくても、桜は確かに悲しんでいた。

雁夜(自分)を案じて、不安になって、あの姿を見て、傷付けてしまった。

 

 

(……ごめんね、桜ちゃん…)

 

 

傍にいる温もり、自らの腕の中にいる桜を起こさないように、

ゆっくりと起き上がりベッドに寝かせて、自らはベッドに腰掛ける形になった。

 

 

 

「……【夢】、か……」

 

 

 

そうして、雁夜は呟いた。

目を覚ます直前まで、自らが視ていた【夢】を。

寝起きのぼやけた思考で、その確信と共に、目を伏せて思う。

 

 

 

(………アレ(・・)は、やっぱり普通の夢じゃないのか…)

 

 

 

森と、湖。

銀の髪と、紫の髪。

立てる栄光と、背負う罪。

 

 

見つめているしかなかった、物語。

最後までは語られてはいなかったけど、きっと【アレ】は、既に終わってしまったモノだ。

 

壊れてしまった【彼】と、嘆いていた【彼】―――――――『彼等の記憶』だ。

 

 

だからこそ……雁夜(自分)がソレを盗み見てしまったようで、気分が悪かった。

勝手に相手の思い出に、土足で踏み込んでしまったようで、どこか罪悪感が湧いた。

 

しかしそれ以上に………

 

 

「っ……!」

 

 

ぎり、と歯を噛みしめる。

雁夜は、その【夢】に、腹立たしさすら感じていたのだ。

 

正確には、【彼等】を追い詰めていった、【運命】に。

 

 

(何でだよ…何で、アイツ等があんな目(・・・・)にあわないといけないんだよ…!)

 

 

理不尽な夢だった、悲しい夢だった、怒りを抱いてしまう夢だった。

 

 

ただ苦しくて  (だって彼等は傷付いていて)

ただ嫌でしかなく  (視ているしか出来ない自分)

ただ哀しかったんだ   (それはどうしようもない祈り)

 

 

だから――――――――間桐雁夜は、怒っている。

 

 

(何で、何で、何で――――――――!)

 

いっそ叫んでしまいたい程の気持ち、それでも、傍で眠る少女を起こしたくなかったから、シーツを右手で握り締めて顔を歪めた。

溢れだしてしまいそうなその感情が、雁夜の中で暴れていた。

 

 

 

『……スタ…………』

 

 

 

 

その時

 

 

声が、聞こえた。

 

 

 

『……マ…ス……―』

 

 

 

空耳ではないと、雁夜は顔を上げて見渡す。

 

 

 

(呼んでいる、誰を?)

 

 

 

 

『………マス、ター………」

 

 

 

目の前に黒い靄が渦巻く、それは一瞬で輪郭を為して。

 

 

 

(この、低く、何処か歪な声で、自分を呼ぶのは………)

 

 

 

 

 

「バーサーカー…か?」

「…………マスター」

 

 

 

 

黒い甲冑を纏って、ベッドの横に現れた、バーサーカーのサーヴァントだった。

 

 

 

「は?ちょ、何で…俺はちゃんとバーサーカーを呼んだ筈…」

 

 

有り得ない。

その言葉が頭を回る。

だって、狂っている筈だ。

 

なのに、ソレが話している!?

 

 

突然の事態に、久しぶりに慌てるという感情を表に出した雁夜がオロオロしていると、おもむろにバーサーカーがその前に膝を附いた。

そのまま雁夜に対して、深く頭を下げるその姿は明らかに理性を持っている行動だった。

 

 

 

「え、何して…「マスター……ドウ…カ」……バーサーカー…?」

 

 

 

何をしていると、声を上げる雁夜の言葉すら遮る様に続くバーサーカーの声に、眉を顰める。

 

確かに【話せる】のだと納得するしかないだろうが、様子がおかしい。

会話が出来るのは予想外だったが、別に声に出す必要は無い。

ドラグーンがしていたように、念話で会話も出来るだろう。

 

なのに、バーサーカーは【声】で話しかけてきた。

雁夜の前に現れて、その前に膝まづいて、頭を下げてまで。

 

 

 

(……【何か】を、伝えたいのか?)

 

 

 

漠然と、そう思った。

よく分からないけど、そう感じた。

 

本来なら、止めさせるべきなのだろうと思う。

魔力だって無尽蔵にあるわけじゃない、むしろ使わない方がいいと分かる。

 

バーサーカーのサーヴァントが、自らの意思で動くなんて有り得ない筈だから。

そんなの、先日の暴走の時ぐらいだったのだから。

 

それでも、その行動を止めなかったのは――――――――

 

 

 

 

『――――言えば、よかった。』

 

 

 

 

――――――あの【夢】で、聞いてしまった、小さな悲しみが忘れられないからだろう。

 

 

 

 

 

「……マスター………メイ…を………ダ……さ…………ワタ………カナ……まも……マス……マスター……………シリ………たい………なた…を」

「っ…?」

 

 

その黙っている雁夜に、バーサーカーは構わず声を上げる。

意味をなさない言葉の羅列、一言一言が意味を持っているのかも分からない断片的な【音】。

何を言いたいのか、雁夜は所々ノイズが入っているような掠れた部分があるのに、意味も無く苛立ちながらそれでも聞くのを止めなかった。

 

 

(――――――『知りたい』、そう言った気がする。)

 

 

何故かは分からない、それでも、そう思った。

意思疎通なんて期待していなかった、それでも、バーサーカーは話している。

 

俺に、マスター(間桐雁夜)に何かを伝えようとしている。

 

 

 

「…バーサーカー」

「……………」

 

 

右手を伸ばす、黒いフェイスヘルムに触れる。

冷たい感覚、それすら気にならない、目元に見えるのは赤い光。

それが――――――――酷く、悲しいモノに思えたのは、何故なのだろう。

 

 

 

「言えよ、ちゃんと……最後まで聞いてるから。」

「………マス、ター…」

 

 

 

(なら、ちゃんと聞いてやらないと、マスターにサーヴァントが伝えたい事なんて分からないけど…)

 

 

 

 

【俺】は、【コイツ】の(気持ち)聞きたい(知りたい)から。

 

 

 

 

「……マス、ター……どう……カ…………」

 

 

途切れた音が、声になる。

何故か、先程よりもノイズが少ない気がした。

 

 

「メイ……れ……を………わた…シ……ハ……」

 

 

聞こえる、理解出来る。

今なら、分かる気がするんだ。

 

 

「……マモリ……たい………アナ……た………を」

 

 

震える、声が。

耳に響く、その声が。

 

 

「……しり……たい………マス、ター……あな……たを…」

 

 

 

 

―――――――雁夜の心に、確かに届いた。

 

 

 

 

「バーサーカー…お前…」

 

 

 

呆然と、雁夜は自らのサーヴァントを見つめる。

 

 

今、このサーヴァントは、何と言ったのか。

 

 

『守りたい』と、言ったのか。

【知りたい】と、言ったのか。

 

 

 

誰を?……雁夜(おれ)を?

 

 

 

雁夜は、そこで、やっと気付いた。

自分自身の勘違いと、その【事実】に。

 

 

――――そう、明らかに目の前のサーヴァントは、狂っていながら理性がある。

何て中途半端、半人前にも満たないマスターが、こんな形で呼び出してしまったサーヴァント。

 

酷い状態だろう。

きっと恨まれている。

狂いきれない狂戦士(バーサーカー)

だからこその暴走だと。

そう思っていたのに………

 

 

それなのに、自分を【守る】と言ってくれたのだ。

それでも、自分を『知りたい』と望んでいたのだ。

 

 

ああ、なんて―――――――思い上がりだったのだろう。

 

 

勝手に相手の気持ちを決めつけて、それが正しいのだと自己完結してた。

臓硯に言われた言葉に納得して、自分が悪いのだと諦めてしまっていた。

 

 

……バーサーカーは、喋れたのに話さなかった。

 

 

それは、マスター(雁夜)バーサーカー(狂戦士)を望んでいたからではないのだろうか?

 

ドラグーンとの会話、アレをバーサーカーが欠片でも理解していたのだとしたら?

マスターがサーヴァントとの対話を、望んでいない(・・・・・・)と判断したのだとしたら?

 

 

【ノイズ】なんて、最初からなかった。

一方的に壁を作って、相手の声を無視した。

自分が、聞きたくないと耳を塞いでいたから。

その声は届かなかった、ただの雑音になってしまったのだ。

 

 

 

サーヴァントは雁夜を否定したわけでも、恨んでいる事も、見下して等もいなかった。

マスターである自分の意思を汲んで、だからそのクラスに徹していただけにすぎなかった。

 

逆だった………サーヴァント(バーサーカー)を拒絶してしまっていたのは、マスター(雁夜)の方だったのだ。

 

 

 

「っ……ごめん……な……俺……【お前の気持ち】なんて、考えてもなかった……」

 

 

 

それに気付いた、気付いてしまった雁夜の内に酷い罪悪感が満ちた。

酷い事をしてしまったのだと、後悔が湧き上がる。

 

この屋敷で過ごして失った筈の、人間としての感情が、溢れ出す。

 

 

「ごめんな、バーサーカー…俺、お前を……道具みたいに……こんなの爺と同じだ……!」

 

 

何故思い違い等してしまったのか、彼等は確かに、人間ではないのだろう。

 

それでも、此処にいるのだ。

 

【生きて】、いるのだ。

 

何かを考えて、何かを感じて、ちゃんと喋って、それなのに。

 

都合のいいモノ扱いしかけていた、自分の意に反したら追い出して、黙って言う事を聞いてればいいと。

自分が嫌っていたその考え方、利用するだけ利用して、相手を踏みにじる人でなしの行動。

そんな一方的な思考を、押し付けていた。

 

 

違う、そんなのは違う。

 

 

自分は何を願った?自分が毛嫌いする魔術師としての行為をしたくて彼等を呼んだのか?力さえ寄越せばそれでいいと考えてたのか?

その力で遠坂時臣を殺したい、ソレが目的だったか?

 

 

『貴方がしたいのは人殺しですか?貴方がしたいのは人妻の略奪ですか?それとも――――――』

 

 

声がする、あの時の問いかけが頭をよぎる。

そうだと、肯定しそうな衝動を無理矢理胸の内へと押し込み頭を抱えた。

 

違う、違うだろう。

思い出せ、何を願った?あの1年前の夜に。

誰の為に、何の為に、自分はこの蟲の屋敷に戻ったのだ?

 

ソレ(・・)自分(間桐雁夜)の一番叶えなければならない【願い】なのだと………!

 

 

(違う!俺は、俺はただ……桜ちゃんを助けてあげたいんだ……!)

 

 

自分の傍で、今尚眠り続けている少女。

そうだ、この子の為に、彼等を呼んだのだ。

この少女の幸せの為に、この子の未来の為に、自分は戦いを挑んだというのに―――!

 

 

「くそっ!何でだよ!?何で俺は……!」

 

 

たった一回の戦闘で、その気持ちを、忘れかけていた。

時臣に対する憎悪が、桜を助けたいという気持ちを、消してしまいそうになった。

 

ただそれが悔しくて、自分自身を赦せなかった。

最初に願ったのは少女の幸福、それすら無視してしまいかけた。

 

暖かい場所で、大切な人達と、また一緒に笑いあえるようにしてあげたいだけだったのに。

 

右手で目元を覆って、ギリギリと歯噛みをする。

もういっそ消えてしまいたい程の、凄まじい自己嫌悪が雁夜を責める。

引き攣った左の顔と同じように、感情をまだ表せる右側の表情も歪んでいた。

 

 

 

「………雁夜おじさん……泣いてるの…?」

 

 

 

ふと、温かい温もりが、肩に触れた。

 

 

「っ…桜ちゃん。」

「大丈夫?またお爺様がおじさんを苛めたの?」

 

 

いつの間に目を覚ましたのか、桜が雁夜の傍に寄り添っていた。

どこか虚ろな瞳、そこに感情の光が微かに宿っていた。

 

その言葉に、やっと雁夜は自分が泣いていた事に気付いた。

けれど、その理由を間違っても気付かれたくなくて、思わずゴシゴシと目元を擦る。

 

 

「っ違うんだよ、まだちょっと眠かったから、あくびが出ちゃっただけなんだよ。」

「……本当?」

「…………」

「そう…ねぇバーサーカー、お願いがあるの。」

「……?」

 

 

少しだけ伺うような桜の視線は、そのままバーサーカーの方へ向けられた。

コクリ、と頷いたバーサーカーに、桜は納得したように頷くと、そのまま…静かな声で、言った。

 

 

 

 

「雁夜おじさんを――――――絶対に、守って欲しいの。」

「え…」

 

 

 

 

その言葉に、驚きみてくる雁夜の視線を気にする事無く、桜は言葉を続ける。

 

 

「ドラグーンが、バーサーカーがおじさんを守ってくれるって言ってた。

 でも『バーサーカーからも聞いておけ』って、言ってたの。

 だから【約束】して………雁夜おじさんを苛める怖い人達から、おじさんを守ってくれる?」

 

 

幼い少女の瞳と、赤い光に隠されたサーヴァントの視線が絡まる。

バーサーカーの右手が、その胸にスッ、と構えられ【騎士】のように少女へ言葉を返した。

 

 

「……ワタシ……は……マスター……ヲ……【カリヤ】…を……マモル……【サクラ】……」

「……ありがとう…バーサーカーは、優しいね…」

 

 

その小さいながらも、強い願いが込められた声に、バーサーカーの歪な声が、響いた。

それは【守る】という、確かな誓いの声。

 

決して軽々しい口約束ではなく、誓約としての言葉に、桜は嬉しそうに微笑んだ。

そして、桜はその光景を唖然として見ていた雁夜に、ぎゅっ、と抱き付く。

 

 

「さ、桜ちゃん…急にどうしたの…?」

「……桜は、雁夜おじさんが大好きだよ。」

「…桜ちゃん?」

「……ドラグーンに聞いたの、雁夜おじさんは、ずっと桜を守ってくれてたんだよね?

 桜の事、助ける為に怖い人達と戦うんだって、お爺様に言われたんだって聞いたの。」

「ドラグーンが…!?」

 

 

どうしてそんな事を教えたんだ、と、雁夜は思わず声を荒げる。

だが、次に言われた事に、雁夜は息を呑んだ。

 

 

「教えてくれたの、桜が、【聞きたい】って言ったから。

 

 お父様も、お母様も、お姉ちゃんも助けてくれなかった…おじさんだけが、助けてくれた。

 おじさんが、桜の事…大切で好きでいてくれるから守ってくれるんだって…本当に嬉しかった…。

 

 だからおじさん、桜も手伝いたいの。

 おじさんだけ、ボロボロになるなんて、やだよ。

 

 おじさん―――――――――雁夜おじさんは、1人じゃないよ。

 桜もいるよ、ドラグーンもいるよ、バーサーカーも【守る】って約束してくれたよ……だから」

 

 

 

 

「おじさん、お願い………私を、独りにしないで……一緒にいてよ……いなくなったら、遠くに行ったら、嫌だよ……!」

 

 

 

 

一息に紡がれた声は、その想いは、確かに少女の叫び声だった。

声を荒げて叫んだのではない、泣き声でもない、それでも……

 

 

 

泣かないでと、私の為に傷付かないでと、1人は駄目だと、貴方が大好きですと――――――――確かに、今、桜は自分の気持ちを叫んだのだ。

 

 

 

(――――ああ、この子は、なんて強くて、悲しくて、優しいのだろう。)

 

 

 

上手く動かない身体で、雁夜は桜の縋り付いてく体を抱き締める。

 

その小さな祈りに、応えたいから。

置いてかないでと、泣いている声へ。

 

 

 

 

「…………ごめんね、ごめんね桜ちゃん…っ!おじさん馬鹿だから、気付いてあげられなかった……!」

 

 

 

 

自分の胸元に、顔を押し付けている桜、その表情は分からない。

しかし、桜のその体が小さく震えているのは、分かる。

 

 

不安だったろう、誰にも言えないまま、ずっと抱えていたのだろう。

自分の味方が、自分の知らないところで傷付いているのだと、分かった時。

 

 

『私のせいだ』と、賢いこの子は、どれだけ自分を責めたのだろう?

 

 

それでも尚、こうして離れないでくれるのは、きっと―――――――

 

 

 

 

「……っバーサーカー」

 

 

 

ずっとその場に跪いて、こちらを見ている己のサーヴァントに、雁夜は顔を上げて声をかける。

 

 

 

―――――――もう間違わない、絶対に、この願いだけは何があっても忘れない。

 

 

 

 

「頼む、力を貸してくれ…お前に酷い事した、こんなマスターだけど。

 俺は、桜ちゃんを助けたい…!俺だけの力じゃ無理だ、アイツに話さないといけない、だから…力が必要なんだ。

 この願いを叶えてくれるなら、その為に俺はお前の願いも叶えられるように手伝おう。

 その為になら俺はお前を――――――――――【お前達】と一緒に、この戦争を勝ち抜いて見せる!!」

 

 

 

 

この身に縋り付き、流す事の出来ない涙を流す少女()の為に、命をかける。

 

 

 

1年前に願った原初の祈り、失われた筈の【人間】としての心で紡ぐ、清らかで尊い願い。

それを告げた雁夜の顔には、今までにない誇りと、そしてサーヴァントへの信頼が宿っていた。

 

 

 

「マスター―――――――この、イノチ…アナタのために。」

 

 

 

その願い、その【知りたかった願い】に、

黒き騎士(バーサーカー)は再びその右手を己の左胸へと構えた。

 

 

それは―――――――己のマスターへの、確かな忠誠の証だった。

 

 

 

*************************************************

 

 

 

 

少女は祈りを告げ

主君は己の願いを告げる

 

 

 

その願いを是であると認め、戦士は忠誠を誓った。

 

 

そして………騎士は、己の願いを彷彿する。

 

 

 

【どうか、この身に■の裁きを――――――――】

 

 

 

この願い、この祈りを叶えると、主君(マスター)は告げた。

……信じよう、その言葉を、今や狂気の意思は【彼の人】からは消えた。

 

 

ならばこの願いも、きっと叶う。

 

 

 

(……ますたー……かりや………わたしは…)

 

 

 

そして、この願いが叶ったなら、この身は。

 

 

 

(…………………ただ、貴方の為に。)

 

 

 

――――――約束の時は訪れる、祈りは遠く、願いは儚くとも――――――――――必ず。

 

 

NEXT




【後書き】

…雁夜おじさんとバーサーカーと、桜ちゃんのお話でした。
それぞれの気持ちが通い合う、そしておじさんは正気に戻りました!
バーサーカーも会話をする気が出てきた様子…さらに、桜ちゃん行動フラグが経ちました!

ここからバサドラ陣営がどうなるのか、お楽しみに…!


そして次回は再びドラグーンへ…

崩壊と爆破のハイアットホテル!
さようなら、ケイネス先生の魔術工房(笑)!貴方の事は忘れない!
そして巻き添えになるモノ達…その姿に、彼らは何を思い、何を感じるのか?

更に邂逅するドラグーンと一つの命。



「少年、お前は何故此処にいる?」
「……にいちゃん、誰だ?」



燃えるホテルからの脱出劇!
無事に命を守り通せるか!?


次話を、お楽しみに・・・


今回のBGMは、【子守唄-ユカウラ-(うたわれるものBGM)】でした。

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