たとえ、世界を滅ぼしても ~第4次聖杯戦争物語~   作:壱原紅

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※注意

こちらの小説にはオリジナルサーヴァントが原作に介入するご都合主義成分や、微妙な腐向け要素が見られますので、受け付けないという方は事前に回れ右をしていただければ幸いでございます。
尚、しっかりとこの場で警告をさせていただいているので、受け付けないという方は無理に入る必要はございません、どうかブラウザバックしてくださいませ。

今回はZEROでも仲の悪いセイバー陣営のお話。
分かり合えない主従であるがゆえに、亀裂は深まるばかりです…;


錯綜主従(信心軌裂)

何度も叫んだ、何度も語った。

なのに相手は何も言わない。

 

どうしてこちらを無視するのか、私が何をしたというのだ。

まるで自分の事を存在すらしていないとでも言うかのように、主たる男は彼女を否定した。

 

冷酷な魔術師殺しとして―――――――――自分の気持ちしか考えられない、幼子のような態度で。

 

 

 

【信じる】という事は、難しいモノだ。

 

 

相手の気持ちを理解して、初めて繋がれるモノがある。

己の意思を伝える事は、どんな状況でも必要不可欠といえる。

 

 

――――――そう、どんな理由があろうとも。

 

故に、この主従は繋がらない。

互いに相手を受け入れないなら、尚の事。

 

その【結末】は、足音を立てて近付いていくだろう、どんな形であっても、必ず。

 

 

**********************************

 

<SIDE/セイバー>

 

――――冬木市内から離れた【森】には、おとぎ話に出て来るような、それは大層なお城があるという。

 

勿論、コレはただの噂話だ。

街の人間が、ふとたまに口にする、暇つぶし程度の噂話。

まさか、それが本当の事だとは、誰も気付きはしないだろう…………魔術師、と呼ばれる者達以外は。

 

この森の真の名は、アインツベルンの森。

そして、冬木の【アインツベルン城】。

それが、この古めかしい要塞の名だと、セイバーはアイリスフィールから聞いた。

 

そのアインツベルン城の一室、サロンにてセイバーは自らのマスターである衛宮切嗣、その弟子だという久宇舞弥、アイリスフィールと共に作戦会議を行っていた。

……もっとも、その会議にセイバーが参加しているとは、いえないのだが。

 

「…はぁ」

 

小さく零れる溜息に、セイバーは気遣わしげな視線をその主に投げかける。

 

(アイリスフィール…)

 

どこか憂鬱な表情で、苦痛を感じているような様子。

サロン内に立ち込める重苦しい空気、原因の一片が自分にあると分かっているからこそ、セイバーには彼女に申し訳ないという気持ちがあった。

 

「―――疲れてきたかい?アイリ。」

「いいの、何でも無いわ、先を続けて切嗣。」

 

問い掛けられて、すぐに微笑を浮かべて先を促す姿もどこか無理をしているようにも感じる。

セイバーとしては、「誰のせいで彼女が苦痛を感じていると思っているのだ」と、言ってしまいたかった。

 

「円蔵山には頂上の柳洞寺を基点として、

強力な結界が張られているせいでサーヴァントは参道からしか侵入できない。

セイバーを使う上では、留意しておいてくれ。」

 

(何故、それを私に直接言わないのですか、マスター。)

 

一度も自分を一瞥する事無く、ただアイリスフィールを介してしかこの男は関わろうとしてこない。

かの冬の城、この身が召喚されたあの雪の国の頃よりも、露骨になっているような感覚すら気のせいでは、ないのだろう。

 

「――――このいずれかを拠点として、制圧しておかなければいけないのね?」

「そうだ、地勢についてはこんなところだが、質問はあるかいアイリ?」

「……セイバー、貴女は何か不明な点はあるかしら?」

(アイリスフィール…そんな辛そうな顔をしないでください、貴女は悪くないのです。)

 

徹底した拒絶を隠さないマスター、その態度に自分も自然と硬くなっているのを何とかしたいのだろう。

自らの方を振り返って問い掛けてきてくれる女性に、小さく微笑むとセイバーは頭を振る。

 

「いえ、これといって特には問題ありませんアイリスフィール…十分な説明でした。」

「そう…」

 

セイバーは少しでも自らを気遣ってくれるアイリスフィールに、これ以上の負担を与えまいと返事をする。

たとえ無視されている状態でもセイバーは耐えていようと思うぐらいには、マスターよりアイリスフィールを優先していた。

そう……その一言が、聞く者によっては随分と皮肉に満ちたものである事に気付かない程に。

 

「しかし、教会も随分と面白いルール変更をしてきたものだ。

キャスターのサーヴァントを優先して倒す…コイツは好都合だ、僕らには既に奴の真名を知っているというアドバンテージがある。

よりにもよって、かのジル・ド・レェ伯とはね。

セイバーをジャンヌ・ダルクと勘違いしているのも、こちらには有利といえる。

僕らはキャスターを追い立てる必要が無い、ただこの城で待ち構えて網を張っていれば勝手に相手が罠にかかるというわけだ。」

「っ――――マスター、それでは足りません!」

 

しかし、切嗣のキャスターに対する考えと対策を聞いた瞬間、セイバーは凛とした声で異を唱えずにはいられなかった。

 

 

「あのキャスターの行動を見守っていては、罪なき人々が犠牲になるだけです。

奴は命を弄んでいる外道だ!これ以上被害が広がる前にこちらから討ち果たす必要があります。」

「アイリ、この森の結界の術式は把握できたかい?」

「…ええ、大丈夫…結界の綻びも見当たらない、警鐘も捜索もちゃんと機能するけれど…」

「今回この城を使う予定はなかったが、キャスターを誘き寄せる為にも暫くここに籠城する事にした。

結界にも充分注意しておいてくれ。」

 

だが、セイバーの声がまるで聞こえていないように、切嗣はアイリスフィールに話を進めていく。

そのアイリスフィールの声が若干震えているように聞こえたのは、セイバーの勘違いではないだろう。

 

(何故ですか!?何故私の言葉を聞いてくださらないのですマスター!!貴方は一体何のつもりでキャスターを放置するのですか!!)

 

怒りで胸の内が焼き切れそうになりながら、セイバーは義憤に震えた。

あの狂気を剥き出しにして嗤っていたキャスターは、今も民草の命を奪っているのだというのに。

何故このマスターはそれを許すというのか、彼女は本気で理解出来なかった。

 

「―――ねぇ切嗣、貴方がロード・エルメロイの拠点を破壊してから随分と立つけどセイバーの左手は治癒していないわ。

あの槍の呪いが消えていないということは、ランサーはいまだ健在だという事よ。

今はキャスターに対して万全の状態で挑むためにも、先にランサーを倒さなければいけないんじゃないのかしら?……それに、私達が確認しているサーヴァントの中で、8体目かもしれない【イレギュラー】という不安要素もあるから、尚更よ。」

 

セイバーの状態にどう感じていたのか、アイリスフィールが異を唱えた。

その言葉に、セイバーもまた考えを同じくとする。

確かにランサーを倒さなければ、傷付けられた左手は癒える事はない。

でなければ、セイバーは自らの聖剣を開放する事も出来ないのだ。

この言葉なら受け入れてくれるのではないかと、内心期待したが―――

 

「いや、キャスターが現れても正面から戦う必要なんてないよ。

君は地の利を最大限に活かして、セイバーを逃げ回らせてキャスターを攪乱してくれ。」

 

―――――その言葉に、怒りで眼を見開いた。

 

(何を、この男は何を言っている!?)

 

「セイバーを、キャスターと…戦わせないの?」

「キャスターは他のマスター全員が狙っているんだ、わざわざ僕らが手を煩わせる必要なんてないよ。

むしろ、そのキャスターを狙っている連中を、僕が叩く。

キャスター狩りに熱を上げている最中に、まさか自分が襲われるなんて露ほどにも思ってはいないだろうからね。」

 

それは、あまりにも非人道的な考え方の、戦い方だった。

教会も、街の事も、何一つ考えていない。

セイバーという、騎士でもある少女には、決して認められないその戦い方は。

 

「マスター、貴方は……どこまで、どこまで卑劣に成り果てるつもりですか!!」

 

衛宮切嗣という――――傭兵(魔術師殺し)にとっては、当たり前である、敵の殺し方であった。

 

 

「切嗣、貴方は私を、英霊を侮辱している!

英霊は、サーヴァントは流血の代行者、聖杯を求めて無用な血が流れないよう最小限の犠牲で済ませる為に呼ばれるモノ!なのに、何故貴方は戦いを私に委ねてくれない!貴方のサーヴァントである私を!信じてくれないのは何故ですか!」

 

切嗣は応えない、その声に、そのセイバーの叫びすら聞こえないように冷淡な表情を保ち続ける。

ここまで徹底している態度に、辟易していないといえば嘘になる。

アイリスフィールや舞弥の存在もある以上、これ以上は無意味かもしれないと、諦めそうになる。

 

「っ私の話を聞いてください!マスター!!

アイリスフィールも先程言っていたイレギュラーのサーヴァントはどうするのですか!

アレは私も気付いていました!明らかに異常だ!!聖杯戦争に召喚されるのは私も含めて7人のサーヴァントだけです!8人目がいる時点で、その事実を教会に伝えるべきだ!!」

 

 

しかしそれでも、彼女にはキャスター以外に、告げなければならない事があった。

この冬木の地に足を踏み入れてから感じている、違和感の事。

違和感の原因であると思われる、第八のサーヴァントの存在の可能性。

そして何よりも――――――認めたくはないが、セイバーにとって、そのサーヴァントが自らの【脅威】となりうる存在だと確信している事だ。

彼女が生前より培ってきた為に発現しているスキル、【直感】は既に未来予知のレベルに近しい。

 

「そのイレギュラーがキャスターと同じ事を今もしていたらどうするのですか!

貴方はそれでも町の人間達を、キャスターの被害者同様に見捨てるつもりだとでも言うつもりなのですか!?答えてください、マスター!」

 

倉庫街に響き渡った咆哮、バーサーカーの怨嗟と憎悪の籠ったソレとは違う、【何か】を込めて響き渡った声。

姿を見る事無く逃げ去った、その背後で何が起こっていたかなど分からない、それでも――――――――

 

セイバーの直感が告げているのだ、【アレ】とまともに戦うな、と。

 

多くの敵の中で、あの存在だけが彼女のナニカを揺らがせる【声】を響かせた。

だからセイバーは、姿も分からぬそのサーヴァントが恐ろしく思っていた。

もし、もしも、この目の前にソレが姿を現す時が訪れるなら……それは。

 

「貴方は何を考えているのですか!?キャスターを放置する等、罪も無い子供達が今も苦しんでいるというのに!

先のホテルの爆破もそうだ!下手をしたら死者が出ていたと本当に分かっていたのですか!!何人…何百人犠牲になるところだったか!

ランサーとは正々堂々戦う事を、私達は誓い合っていたというのに!キリツグ―――――――貴方は、自分が巻き添えにして奪おうとした彼等の命を何だと思っている!?」

 

 

きっと――――――この自分とマスターの関係が修復出来ない程に悪化している時だ、と。

 

 

 

「……アイリ、僕はイレギュラーについてはまだ確定しているとは限らないと思う。

死んだ筈のアサシンが生きていたりしている以上、もしかしたらそれは誰かの手駒だった可能性もある。

焦る必要は無いよ、まずはキャスターのサーヴァントを餌に、他のマスターを叩こう。」

「――――――っ」

 

 

けれど、その悲痛ともいえる叫びすら、

決して届く事の無い相手もいるのだと、再認識するだけに留まったのは――――どうしてなのだろうか。

 

「…監督役が提示した内容はどうするの切嗣、キャスター以外とは休戦状態の筈よ、戦ったら何か指摘されるかもしれないわ。」

「構わないよ、監督役は罰則を設定はしなかった、難癖付けられたところで知らぬ存ぜぬを切り通せばいいのさ。

それに今回の監督役は信用できないね、アサシンのマスターを匿うような奴である以上、遠坂とも繋がっているだろう―――下手に信用すると、痛い目を見る事になりそうだ。」

 

セイバーには何一つ返答しないのに、アイリスフィールにはすんなりと答えを返す姿を見ながら、怒りに震えながらセイバーは思う。

 

(……貴方は、私の事を何一つ信じてはくれないのですね、マスター。

 分かりました、私も貴方の行動に期待等しません、それでいいのでしょう――――私達は、分かりあえない。)

 

 

 

確かに生まれてしまった、亀裂は。

 

己と彼が歩み寄らない限り、決して埋まる事はないだろう。

 

 

 

そして、質問をしていたアイリスフィールと己の沈黙を、会議の終結と見て取ったらしい切嗣は、傍に居る舞弥に指示を与えると席を立った。

テーブルの上の資料と地図を片付けて、サロンを出ていく――――――最後まで、ただの一度も、己のサーヴァント(セイバー)を見据える事も、視線を合わせる事も無いまま。

 

 

その場に共に残されたアイリスフィールが、そっと肩に手を触れてくれる。

彼女なりの慰めなのだと知りながら、セイバーは思わず口を開いていた。

 

「…アイリスフィール、私には、切嗣の考えている事が理解出来ません。

敵のマスターを倒す為とはいえ、罪なき人々の生活すら無駄に脅かし恐怖に突き落として、彼は一体何がしたいというのですか…」

「そ、それは…」

「無理に答えてくれなくてもいいのです、しかし…貴女に負担になると分かっていて、このような状況を意図的に作り上げているのが理解出来ない。

彼は、切嗣は―――――アイリスフィール、貴女の不安を取り除こうともしないではないですか。」

「……セイバー、貴女が信じられないと不安になるのは分かるわ。

でも、切嗣も何も考えていない訳ではないの、だから―――」

「…アイリスフィール。」

「っ…」

 

美しい表情を翳らせて、アイリスフィールは俯いていた。

きっと、何と言えばいいのか分からないのだろう。

……彼女を困らせたい訳ではなかったが、どうしても聞きたかったのだ。

何の為に、あそこまで徹底して彼が自分を視界に収めようとしないのかも。

どうして、ホテルを爆破などして、無関係の人々を巻き込むような事をしたのかを。

イレギュラーやキャスターを放置して、それでも他のマスターを狙うような事をするのかを。

 

 

――――――――そこまでしなければいけない、衛宮切嗣の【願い】を、セイバーは知らないから。

 

 

「…すみません、私も貴女に負担になるような事をしてしまいましたね。

暫く頭を冷やします、アイリスフィール、貴女も今夜は疲れている筈です…少し、休んだ方がいいでしょう。」

「…ごめんなさい、セイバー。」

 

その謝罪は、一体何に対してのモノだったのか。

アイリスフィールはそう口にすると、出て行った切嗣の後を追うようにサロンを出て行った。

 

 

そうして、1人残されたセイバーは目を伏せる。

 

今も、悲鳴を上げて救いを求めているであろう、幼き命に

助けにいけない事に、何も出来ない事に、巻き込んでしまった事に。

届かぬと分かりながらも、小さく謝罪の言葉を口にする。

 

 

「ごめんなさい…」

 

 

セイバーは苦痛を耐えるように両手を握り締めると、暫くその場に立ち続けていたのだった―――――――

 

 

*************************************************

 

 

 

相反する主従。

交わす想いと、交わされぬ言葉。

己が意志を貫く為に、選ぶ選択肢は人それぞれだ。

その為に他者を犠牲にし、己の心を優先するも【人間】である。

 

 

―――――しかし、忘れるな、己が【業】はいずれ自分自身へ帰ってくる事を。

 

 

正義とは、なんだろうか?

味方とは、なんなのだろうか?

 

涙を流し傷付いているモノに、【数】を求めるのは正しいのでしょうか。

犠牲となっている者達に、【未来】を優先しろと言うのは傲慢ではないのでしょうか。

 

 

今この時に【救い】を求める者の声を切り捨て、ただ先の【理想】のみを追い求める者よ。

 

 

 

―――――いずれ、問おう。

 

 

 

その【正義】の果てに、最後に【誰が】救われるのかを。

 

NEXT




【後書き】

先生、一児の父親が、すごく反面教師です…
確かに、サーヴァントを人間扱いするのは魔術師としてはおかしいのかもしれませんが、
だからといってシカトし続けるのも大人げないというか、明らかに子供だよね、と思いますね。

さて、セイバーと切嗣の関係は悪くなる一方です。
この場面のセイバーの方の心象描写がなかったため、
完全に作者のオリジナルとなっていますが、皆様はこの時セイバーはどう考えていただろうと思われるでしょうか…;

作者としては、これだけ無視されたらいい加減見切りをつけたくなりますね。
そんなに一人がいいなら勝手にすれば?とも思います。
作者は優しい人間ではないので、余計にそう思うのかもしれません。

人間は一人では生きれない、生きている以上誰かと必ず関わりが出来る。
その事実を、本当に【衛宮切嗣】は分かっていたのでしょうか。


今回のBGMは、【「因果流転」Fate-stay night A.OST】でした。

※感想・批評お待ちしております。
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