たとえ、世界を滅ぼしても ~第4次聖杯戦争物語~ 作:壱原紅
こちらの小説にはオリジナルサーヴァントが原作に介入するご都合主義成分や、微妙な腐向け要素が見られますので、受け付けないという方は事前に回れ右をしていただければ幸いでございます。
尚、しっかりとこの場で警告をさせていただいているので、受け付けないという方は無理に入る必要はございません、どうかブラウザバックしてくださいませ。
今回は昼ドラことランサー陣営のお話。
原作から乖離しつつあるこの陣営、果たしてどこに行きつくのか…
それは、ほんの小さなミスだった。
頼まれたから探しに来たのに、足が何かに刺さってしまった、とても痛くて動けない。
<痛い、痛いよ…>
苦しいと何度も叫ぶ。
仲間は近くにいない、そもそもこの痛さはまともなモノではなかった。
このまま死んでしまうのは嫌だ―――――――――――
だからこそ、その手の主の事を、優しいヒトだと思ったのかもしれない。
<助けてくれて、ありがとう。>
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何気ない行動には、意味が無いという人がいる。
意味が無いなら、する必要が無いという判断も出来る。
けれど、【本当に】意味が無い行動とは、あるのだろうか――――――?
つまらないと、言う人もいるだろう。
くだらないと、切り捨てる人もいるだろう。
それでも【彼】が拾い上げた【命】、拾い上げられた【命】は、此処で確かに関わった。
ならば、その【出会い】には、どんな意味があったのだろうか……?
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<SIDE/ランサー陣営>
「…この辺りの筈だが…」
―――キャスターの討伐命令が出てから数分後の廃工場付近の雑木林で、
ランサーことディルムッド・オディナは何かを探していた。
その表情は強張り、どこか緊張している面持ちだ。
その理由は至極単純なモノだ。
彼のマスターである、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトからパスで連絡があったからだ。
『ランサー、この付近に張っている結界に侵入者の気配があった。
直ちに確認に向かい、敵であるならば報告すると共に迎撃せよ。』
この命令に従い、速攻で現場に向かったディルムッドだったが、敵と呼べる者の姿は無く。
むしろ異常と呼べるものはいない事に、違和感を感じていた。
(おかしい、敵ではないというのならば使い魔か何かかというのだろうか?
しかしケイネス殿の指示ではこの付近にいる筈なのだが…移動するにはそこまで時間も経っていないというのに。)
と、その時。
ディルムッドが立っている場所から少し離れた茂みから、ガサガサ、という音が響く。
「っ!そこか!?」
ザッ!と音を立てて地面を蹴る。
正体が分からない以上、油断は禁物とばかりに二槍を取り出し構えて茂みに飛び込んだ其処には――――
―――ピィ
――――其処にいたのは、一羽の小鳥だった。
敵の使い魔かと疑うも、魔力のようなモノは感じられない為、ディルムッドは即座にただの野鳥だと判断する。
「…ただの小鳥か…ん?」
ただ、地面で何故かもがいている様子に眉を顰めた。
よく見ると、小さく細い足からは血が流れ、何かが巻き付いている―――それは、【糸】のようなモノに見えた。
「何だこれは……完全に足に食い込んでいるではないか、これでは飛び立つ事も…」
ディルムッドは知らなかったが、小鳥の足に絡まっているのは釣り糸などに使われるワイヤーだった。
小鳥はこの廃工場に来た時に、足にその釣り糸が絡まり、怪我を負ってしまったのだ。
【人間の不法投棄】、それこそ現在当たり前のように行われている被害が、
こうして野生動物に襲い掛かったが故の事故だったともいえる。
「…大丈夫だ、すぐに外してやる。」
ディルムッドは両手に持っていた槍を消すと、小鳥の傍に近寄り、その小さな体を抱き上げる。
出来る限り痛みを感じさせないように、絡まり食い込んだ糸を外していく。
だが、ディルムッドに出来るのはそこまでだ。
彼には小鳥の傷を癒す事など出来ない。
そのような能力は、彼は持ち合わせていないのだから。
「―――ケイネス殿なら…」
―――本来なら、このような些末は無視してしまうべきなのだろう。
主の命令には、余計な事をする必要は無いという意思を感じていたなら、尚更に。
たかだか一羽の小鳥の怪我など、気にする必要性は何処にもなかった。
…だが、目の前でピィピィと苦しそうに鳴いている姿が、何故か酷く痛々しく映ったのだ。
【助けて】と、聞こえもしない声が、聞こえたような気がする程に。
小さな命の、小さな悲鳴が、ディルムッドの耳を打って離れなかった。
「…すまない、少しだけ我慢してくれ、今俺の主に頼みに行くからな。」
小鳥をそのまま掌に包み込むと、急いでディルムッドは廃工場まで駆けて行く。
小鳥を落とさないように霊体化する事も出来ない為、そして負担がかからないように走る姿はどこか優しい。
…ケルト神話にその名を連ねるディルムッドは、生前緑の多い豊かな国で生きていた。
生い茂る青々とした緑、自然の恵みによって、人々が命をつないでいた時代に。
だから余計に、その小さな命を見捨てるのが出来なかったのかもしれない。
人と自然が共存していて当たり前の頃、ドルイド達に時々こうして頼んだこともあったのだから。
そうこうしている内に、ディルムッドは廃工場へ辿り着いた。
足早に【
その気配はすぐに見つかった、無事だった魔道具の調整を大きな部屋しているようだ。
「我が主よ、お話があります。」
「何事だ、ランサー…貴様には周囲の警戒を命じていた筈だが。」
「現在、周囲に異変は発生しておりません、しかし先程結界内に侵入したモノに付きまして確認してまいりました。」
「…報告はパスで出来る筈だが?…何だそれは。」
ディルムッドは後ろで膝を付き声をかけるが、ケイネスが振り返る様子はない。
徹底した拒絶の態度に内心傷付きながら、それでもディルムッドは報告をする。
その内容に訝しげに振り向いたケイネスの視線に飛び込んできたのは、ディルムッドの手の中にいる小鳥の姿だった。
「はっ、侵入者と思われたのはこの小鳥でした。魔力の痕跡は発見出来ませんでしたが、念の為にと考え…」
「――ふん、貴様でも少しは考えたようだがどうやら懸念だったようだな、それはただの野鳥ださっさと外に捨ててこい。
今ソラウにキャスターの調査を任せているところだ、彼女が使い魔で奴の居所を少しでも把握出来れば打って出る。
それまでこの周辺の警戒を続けていろ。」
「お、お待ちください主よ!何とぞこのディルムッドの願いを聞いていただきたい!この小鳥の治癒をお願いしたいのです!!」
「何だと…?」
「勝手な事とは分かっております!しかしこの小鳥は心なき人間の手で傷付けられているのです、何とぞ主の慈悲を…!」
「ふざけるなっ!サーヴァント風情が何様のつもりだ!?たかだか野鳥如きに私が治癒を行う必要性がどこにある!そんなくだらない事の為に!貴様は持ち場を離れてきたというのかっ!?」
「主よ…っ!それでも、どうか慈悲を…どうかお願いします…!」
「貴様…っ」
ディルムッドの言葉に、ケイネスは一気に眉間に皺を寄せると否定と罵倒の言葉を投げつけた。
掌の中で震える小鳥の身体が、その怒号に怯えたのか震えの酷さが増したような気がしてディルムッドの胸が痛んだ。
だからこそ、何とか食い下がる。
少しでもこの命を見てほしいと、分かってほしい、どうか分かってほしいと叫ぶ。
忌々しいと言いたげに顔を歪めるケイネスへ、更に言い募ろうとした―――その時。
「ちょっとケイネス、一体何事…?」
話し声が聞こえたのか、自室でキャスターの討伐に向けて作戦を考えていたソラウが出てきていた。
「っソラウ。」
「ソラウ様…」
「どうしたのケイネス、それにランサー?周辺の警戒をしていたのではないの…あら小鳥?怪我をしているの?」
「はい……何かが結界内に侵入してきたようなので確認に向かったところ、この鳥がいたのです。」
「そう…敵の使い魔、ではなさそうね…魔力の痕跡はみられないし、ただの野鳥ね。」
「ソラウ、君が意識を向ける程の事ではないだろう、使い魔でもないただの野鳥など、さっさと捨ててしまえばいいのだから。」
訝しげにしていたその視線が、ディルムッドの掌に収まっている小鳥に向けられる。
その気遣うような行動に、ケイネスは不機嫌そうにそう返すが、それにソラウは呆れたような視線を返した。
「ちょっと…いいじゃないケイネス、ただの小鳥でしょう?其処まで神経質にならなくても大丈夫よ…ランサー、私が見ましょう。」
「ソラウ様…よろしいのですか?」
「構わないわ、今はキャスターに対する対策を考え続けて気が滅入っていたし…ちょっとした気まぐれ程度にはなるでしょう。」
ピィピィ、と弱弱しく
だがそれを遮るようにケイネスが叫んだ。
「っ待ちたまえ!たかだか野鳥如きの為にソラウの魔力を消費する必要は無い…私がやる!」
…そう叫んでから、はた、とケイネスは少し固まった。
どう見ても、これでは小鳥に自分が嫉妬したようではないか、と思って。
「本当ですか主よ!どうか主の御慈悲をこの小鳥にかけてやってください!」
「あら…そう、ならお願いするわケイネス、貴方が治癒してあげるなんて…珍しいわね。」
しかし、その様子に気付く事無く小鳥を差し伸べてくるディルムッドと、
小さく微笑むソラウの姿に気付かれていないと内心安堵する。
ならばさっさと済ませるに限る、と小鳥を受け取り安定したテーブルの上に横たえると、治癒魔術を発動させた。
薄緑色の淡い光が小鳥を包む。
優しい光が、傷口を塞いでいく。
数分もしない内に完全に塞がったのを確認すると、ケイネスは2人に声をかけて光を消した。
「……治癒は施した、もう飛べるだろう。」
「流石ね、神経の方も特に問題なさそうだわ。」
「ありがとうございます、主よ!―――よかったな。」
ソラウとディルムッドの声を理解したのかしてないのか、
ぽてぽて、とテーブルの上を恐る恐るといった様子で歩く小鳥に、少しだけケイネスの眉間の皺が緩まる。
「…ふん、日本人共はこれだから困る。
このような野鳥の類でも、しっかりと躾ければ立派な使い魔になるというのに。
魔術師でもない俗物どもはともかく、冬木の御三家ならばそれくらいできるであろうが…っ?」
自らの治癒魔術が完璧だったことに満足しながら、日本の魔術師の程度の低さに文句を呟いていたケイネスだが………ぽふっ!とテーブルについていた左手に、何かがぶつかった感触に言葉を詰まらせた。
それとなく視線を落とすと―――――――小さな
「…何だ。」
その様子に、思わずケイネスは何となく小鳥に問い掛けるという、妙な行動をしてしまった。
最初はバランスを崩して転んだ先に手があったのかと思ったが、そういう訳ではないようで。
小鳥はケイネスの手の甲に引っ付いて、じーっ、と彼を見上げているようだった。
どことなく、小さな眼が、キラキラしているような……
――ピィ!
パタパタ、と羽根をはばたかせて、【元気になったよ!】とアピールするようにそう鳴くと。
小鳥はそのまま飛び上がり、ケイネス達の上を旋回し、最後にもう一度だけ元気に鳴き声をあげて外へ飛び立っていった。
「……ねぇケイネス、あの鳥何だか貴方に懐いていたみたいだけど。」
「は、馬鹿な…ソラウ、アレはただの野鳥だ、人間に対してこんな短時間で好意なんて持つ筈が無い。」
「主が手当てをしてくださったのだと、感謝していたのだと思いますが…」
「ありえん!そのような事ある筈が無い!――それよりもだランサー!今後はこのような雑事は持ち込んでくるのではないぞ!!私は動物医ではないのだからな!!」
「はっ…申し訳ございません、主。」
「今夜中にキャスターを討伐する!それまで警戒に戻れ、いいなっ!」
ソラウの言葉に戸惑いながらも、ディルムッドに怒鳴りつけると、急いでケイネスは自分の部屋に戻っていく。
…ケイネスは気付いていないだろうが、ソラウの眼には明らかにその表情が照れているように見えていた。
「…ふふっ。」
ソラウの中でも、ケイネスに対する印象が僅かばかりに変化した。
小鳥の治癒もしたくないというから、てっきり心の狭いのだと思い込んでしまっていたが、ああしているとただの照れ屋にしか見えない。
実際、ソラウの治癒を妨害したのも、焼きもちからなのだということくらい彼女は気付いていたから、尚更その態度が面白かった。
(意外と優しいんじゃない、ケイネスったら……小動物の好意くらい、素直に受け止めればいいのに。
しかも、あんな小鳥に嫉妬するなんて…意外と可愛い人ね。)
ソラウの笑い声にディルムッドが首を傾げる。
「ソラウ様?どうされました?」
「いいえ、ただ、ね…ランサー、多分もうないでしょうけど―――また怪我をした小鳥がいても、連れてきて大丈夫よ?ケイネス、あれは多分照れているだけだもの。」
「照れている…?主が…?」
「ええ――――ランサー、全て理解しろとは言わないけれど、貴方はもう少し【ケイネス】の事を見るべきだわ。
私も彼の事を全部分かっている訳じゃないけど、貴方と彼は【主従】なんだからもっと分かりあうべきよ。
少なくとも、私との仲を邪推されるような態度や、彼に騎士道を押し付けるような行動はとらない事ね。」
「そのような事は――」
「貴方にはなくても、ケイネスは他人には厳しいもの。
言わなくても伝わるなんて、そんな都合のいい事なんてないわ…今回のキャスターの討伐が終わったら、少し時間を作ってでも話し合うべきよ。」
「……」
(初戦の時もそう、この2人の間の溝が危険だと判断したけど、令呪まで使おうとしたのは予想外だったわ。
何とかしないと、敵だってまだ誰も脱落してない以上、この隙は付け込まれる事だって予測できる……私だって
顔を伏せて考え込むディルムッドの姿に、ソラウは内心溜息を吐くと最後にこう締めくくって部屋を後にした。
「―――ねぇランサー、貴方の悪いところは自分の事を話そうとしないところよ。
小鳥の事に関してはあんなにハッキリ言えたのに、どうしてその気持ちをケイネスに伝えないのかしら?
貴方達が話さなければ、私だってこれ以上は何も言えないのよ、私は【貴方じゃない】のだから―――」
ソラウの後姿を見つめながら、ディルムッドは最後に部屋に1人残される。
言われた言葉が胸に突き刺さった気がしたのは、何故なのか。
その言葉を理解しなければいけないのに、どこかで耳を塞いでいるのは、気のせいではないような気がした。
「俺、は―――」
ディルムッドは、戸惑いながら視線を小鳥が飛び立っていった大空へ向ける。
不安に揺れる胸の内とは裏腹に、青空は何処までも澄み切っていて、美しく広がっていた―――――
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<SIDE/【???】>
―――――――バサバサと、音を立てて一羽の鳥が舞い降りる。
その鳥は、静かにあげられた腕に降り立つと、腕の主に開口一番にこう告げた。
<ねぇ!たすけてくれたのがいるんだ!はなしをきいて!>
「……助けてくれた?」
鳥の突然の言葉に、【彼】は視線を動かすと、先を話せと口にした。
その声に、鳥は次々に自分の身に起こった事や、その時に助けられた事、そしてそれが【誰なのか】を【彼】に伝えていく。
<―――たすけてくれたの、いたいのを、なおしてくれたの。
だいじょうぶって、すぐなおるって、みどりの【へんなの】がたすけてくれたよ。
くるしいのを、【きんぱつ】がなおしてれた、【あかいかみ】のヒトもなでてくれたよ…アイツは、あのヒトたちはちがうのかな?きみといっしょで、いいやつなのかな―――?>
「…そうか。」
すっ、と白い指で【小鳥】を撫でながら、【彼】は穹色の瞳を街の方へ向ける。
「……【助けてくれた】、なら――――こちらも一度は助けるべきだろうな。
伝えてくれて感謝する、お前の【望み】、確かに承ろう……それと、もう怪我するなよ?」
<うん、ありがと!きをつけるー!>
バサッ、と音を立てて小鳥は飛び立つ。
薄い茶色の羽根を広げて、小鳥は街の方角へ飛び去っていく。
その姿が消えていくのを見つめながら、【彼】は――――――――
「………1つ【貸し】が出来たなランサー、そしてその主よ。
あの子の【お願い】くらいは、きっちり【命のお礼】をさせて貰うとしよう。」
――――――――ドラグーンは、微笑んだ。
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ほんの小さな出来事だと、見過ごされてしまう欠片の様な【想い】。
それでも―――その【想い】に、返される【心】があるとしたら?
<ありがとう。>
<痛いのを、治してくれた。>
<助けてくれて、ありがとう。>
そんな、くだらないと一笑されてしまうような、小さな感謝を。
貴方が助けた小さな【命】の、精一杯の【恩返し】を、受け取ってほしい。
大空を駆けた小鳥が、銀へ唄う。
己が命を救ってくれた存在への、感謝の唄を。
聞き届けられた唄は、すべからくその役目を果たすだろう。
想いに大小等ある筈なく、唄い手が無垢故に裏切り等ある筈もない。
だから、きっと――――――――ソレは、貴方達への助けとなると、信じてほしい。
NEXT
【後書き】
ケイネス先生、アニマルセラピーは如何ですか?なお話でした(えっ!?)
完全に崩壊しつつあるランサー陣営(笑)作者は彼等を何処に向かわせたいのか・・・;
ここまで原作から乖離すると大丈夫かな、と逆に思います。
でもソラウ様がちゃんとフォローに入ってくださっているので、昼ドラ化はしない予定です!
もう一手、誰かが行動すればケイネスも変われる筈です…さて誰でしょうね?(笑)
それでは、今回も閲覧ありがとうございました。
今回のBGMは、【「光の旋律」Kalafina】でした。
※感想・批評お待ちしております。