たとえ、世界を滅ぼしても ~第4次聖杯戦争物語~ 作:壱原紅
閲覧は自己責任となり、気分が悪くなった、精神的に不快感がする。
等の症状につきましては、作者ではどうする事も出来ませんので、どうかご了承くださいませ。
※注意
こちらの小説にはオリジナルサーヴァントが原作に介入するご都合主義成分や、微妙な腐向け要素が見られますので、受け付けないという方は事前に回れ右をしていただければ幸いでございます。
尚、しっかりとこの場で警告をさせていただいているので、受け付けないという方は無理に入る必要はございません、どうかブラウザバックしてくださいませ。
今回はアインツベルンの森のお話。
――――狂気が歩いて嗤ってる、子供を連れて歩きながら、彼女に会えるのが楽しみだと嗤う。
「楽しみですねぇ、楽しみです。貴女はどんな顔をしてくれるのでしょう?」
黒いローブを翻し、男は嗤って後ろを見る。
「ねぇ坊やたち、大丈夫ですよ、あと少しで付きますからねぇ。」
その笑顔は優しげだ、たとえ―――――――その先に、子供たちの命が、どうなったとしても、構わないと思っているのだと、しても。
殺しあうべき存在。
奪いあうべき存在。
我等は互いに一つの【奇跡】を巡って争うモノ
だが、全てがそうだとは、限らない。
今ここに来るは災禍の種。
意味無き殺戮のみを齎すモノ。
嘆きの悲鳴が響き渡り、騎士は憤怒に眼を染める。
―――――――それぞれの邂逅の時は、近い
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<SIDE/セイバー>
―――予想よりも、ずっと早くアインツベルンの森に戦の風は吹き荒れようとしている。
サロンで話し合いが行われた後、セイバーは城内の警戒に当たっていた。
そんな中、突然アイリスフィールからの連絡を聞き、すぐさまサロンへと踵を返す。
そこには、既に切嗣とアイリスフィール、そして舞弥の姿があった。
「何事ですか、アイリスフィール。」
「セイバー…落ち着いて聞いてね、今このアインツベルンの森に侵入者が現れたわ。」
「――!敵、ですね。」
厳しい表情を隠さない彼等に、セイバーもまた険しい表情に変わる。
このキャスター討伐を任じられている状態で、他陣営が攻めて来るとは考え辛い。
ならば、十中八九相手は絞られる事になる。
「キャスター…!こんなにも早く、自ら攻めてこようとは。」
「確実とは言えないの、でもすぐに見つけられるわ。」
セイバーの声に、アイリスフィールが返す。
その彼女の手元に在るのは、アインツベルンの森を監視する結界を把握する水晶球だ。
その水晶に、アイリスフィールが手を翳す。
彼女は結界が反応した位置にすぐさま感覚を広げると、捉えた侵入者の映像を投影し映し出した。
そこにいたのは――――まぎれも無く、あの夜自分達の前に現れた黒きローブをまとった不吉な面持ちの男。
キャスターのサーヴァント、『ジル・ド・レェ』であった。
「…こいつが、例のキャスターのサーヴァントか。」
「ええ…でも、何のつもりかしら?子供なんて連れて…」
初めてキャスターの姿を確認した切嗣の言葉に、アイリスフィールが頷きながら返事をする。
しかしその表情と声色には訝しげな色が宿っている。
それもその筈だ。
奴は何故か、十数人の子供達を背後に引き連れている状態で現れたのだから。
しかも、皆その様子が著しくおかしい。
まるで夢遊病か何かのように、瞳に意志の光が無い、あれでは人形か何かの扱いだ。
きっと彼等が、教会でも言われていたキャスターの被害者。
誘拐された幼子達は、キャスターの魔術によってその身体を操られているのだろう。
(年端もいかぬ幼子に、何という事を―――――!)
怒りで意志がぶれそうになるのを堪える。
急ぎ助けに行きたいが、まだマスターでもある切嗣は何の指示も出していない。
勝手な行為は出来ない、セイバーは、怒りに震える自らを諌めて何とか冷静さを保とうとした。
「アイリ、奴は今どの辺りにいるんだい?」
「城から北西に2キロ、そこから少し離れた位置にいるわ―――キャスターはアインツベルンの結界の境界線に気付いているのね…これ以上踏み込んで来ようとしてないもの。」
アイリスフィールと切嗣の会話を聞いている限り、キャスターはやはりそのクラスに相応しく卓越した魔術の使い手なのだろう。
結界の外で、その傍を巡る様にうろついているだけだ。
森の結界に踏み込まないという事は、これ以上踏み込めば罠があると気付いているからだ。
事実、奴が結界の深部に踏み込んで来れば、そこで戦闘になったとしてもアイリスフィールがその結界の能力で味方の支援を行える機能が携わっている。
「……奴は確実にこちらに誘いをかけている状態です、私が出ない限りずっとあそこに居座る可能性があります。」
ギリ、と奥歯を噛みしめてアイリスフィールにそう発言する。
だが何よりも、セイバーはキャスターの迎撃に向かいたかった。
その心中を察したのだろう。
アイリスフィールもまた、その瞳を翳らせ水晶に映る子供達の姿を見つめる。
「ええ、そしてあの子達は確実に人質として連れてきたのでしょうね…」
「此方の結界に踏み込んできたとしても、罠を発動させればあの子達も巻き添えです。
そうなっては意味がありません、私が直に出向いてキャスターを倒し、救い出さねば彼等の命が危ない。」
「……でもセイバー、貴女の左手はまだ…」
その言葉に頷いてセイバーはそう進言するも、アイリスフィールは不安そうにそう呟く。
勿論、それもセイバー自身分かっていた。
不安はある。
事実手負いの身で戦闘に赴くのに不安を感じていたのは自分だ。
しかし、動かねば幼子達に【あの】キャスターが何をするか分からない。
ならば、危険があっても向かわねばならないのだ。
一国を収めた王として、民を守る騎士として、彼女は向かわねばならない。
【何があっても、苦しんでいる弱者を守る。】
――――それが、セイバーこと、【アーサー王】という英霊の覚悟だった。
(しかし、その決意を嘲笑うように、【運命】はその歯車を回す。)
「っ!?」
「アイリ?どうしたんだい。」
急に水晶球を視ていたアイリスフィールの身体と表情が強張った。
そのただならぬ様子に、切嗣が怪訝な表情をして問い掛ける。
だが―――その答えは、すぐさま返される事になった。
『昨夜の約定通り、ジル・ド・レェ罷り越してございます。』
「―――!」
水晶球の表面が振動し、監視先の景色で拾った音声を伝達する。
その声に、その場の全員が絶句した。
―――キャスターのサーヴァント、ジル・ド・レェが水晶球からこちらを視ているかのように慇懃な仕草で腕を巡らし一礼してきていた。
キャスターのサーヴァント、奴は、アイリスフィールの監視を気付いていた。
ソレを理解した上で、今こうしてこちらに向かって視線を向けて話しかけてきている……!
その事実に、セイバーも内心困惑している中、キャスターは更に語り掛けてくる。
『我が麗しの聖処女ジャンヌに、今一度お目通りを願いたい―――』
(まだそのような戯言を―――――――!!)
彼女を未だ別人と判断もつかず、その思い込みのままに行動して子供達をこんな危険な所にまで連れてきた。
キャスターの一人芝居の様な行動に、こちらを嘲るような態度に、セイバーの怒りは煽られる。
アイリスフィールへ視線を向け、セイバーは小さく頷いた。
それだけで、きっと彼女は自分の覚悟を分かってくれると、信じていたから。
そんなセイバーの表情に、アイリスフィールはどこか気遣わしげな戸惑いを見せる。
まだ、セイバーを向かわせる事に迷いを捨てきれないのだろうか。
だが、その様子を視えていない筈なのに、キャスターの声が響き続ける。
『おお、私もジャンヌにお会い出来るのであれば気長に待たせていただくつもりですので急がなくても結構ですよ?
それなりの準備をしてまいりましたので―――なあに、他愛も無い児戯ですとも…少々、お庭の隅をお借りいたしますがね。』
パチン、とキャスターが指を鳴らした。
『……あ、あれ…?』
『どこ、ここどこ…?パパ、ママ…?』
『ぼく…なんで、森にいるの…?夢なのかな…?』
『う、う……へんな、ひとがいる…やだよ、こわいよお…!』
すると、それまで大人しく付き従っていた少年少女がオロオロと、一体どうして自分達は此処にいるのだと怯えだした。
(――!子供達を、正気に戻した…?何を企んでいる!?)
セイバーの中で、一気に嫌な予感が膨らんだ。
そんな彼女の視線を感じているのか、キャスターがローブの中から手を伸ばすのが見えた。
『さぁさぁ、坊や達聞いてくれないかな?これから鬼ごっこを始めますよ。
難しく等ありません、ただ私から逃げ回ってくれたらいいのです!!そう、さもなくば―――』
手が、伸びる。
ゆっくりと、幼い少年に向かって。
キャスターの手が、1人の子供の頭に乗った。
「やめろ――っ!」
セイバーが叫んだ、その次の瞬間。
―――――ゴシャァッ!!
幼い子供の、その頭部が、粉々に砕け散った。
「―――っ!!」
アイリスフィールが、真っ青になって口元を抑えた。
切嗣や舞弥ですら、その表情を強張らせている。
スローモーションのように、その瞬間が彼等に映し出される。
真っ赤な血が、白い骨の破片が、弾けた脳症が、まあるい眼球が飛び散っていく。
その悪夢の光景は、サロンにいる全ての存在に、恐ろしい程の印象を残して脳裏に焼き付けた。
『ひ、う、あああああああああああああああああっ!!??』
『やだ、やだああああああああああ!パパ、ママぁぁぁぁぁっ!』
『きゃああああああああっ!!だれか、だれかぁっ!お兄ちゃぁん!』
『くるな、くるなよぉ…っ!?たすけて、助けてえええええええええええええええええ!!!』
その直後に、悲鳴が響く。
赤い血飛沫と肉片が転がる中。
子供達が、絶望を目の前にして逃げ惑う。
痛ましい悲鳴の響く中、キャスターは楽しそうに嗤いながら叫んだ。
『さぁさぁ!お逃げなさい惑いなさい!100数えたら追いかけますからねェ!!
ふふふ、あはははは!お待ちしておりますよぉ聖処女!貴女の姿を目にするまで!私も気長にお待ちいたすと言いました!ええ!けど―――ジャンヌ?私が全員捕まえて、
「セイバー!キャスターを…倒して!」
「はい!」
その狂声が響くのに耐えられないと言うかのように、アイリスフィールの悲鳴交じりの声が響く。
彼女の言葉に対して、セイバーは最短の返答を返して一気に場外へ向かって駆けた。
―――――――――彼女の胸に在るのはただ一つ、怒りを超えた憤怒の感情。
一筋の疾風となったセイバーが駆ける。
蒼い魔力を迸らせながら、その眼にただ堪え難い激情の色を携えて。
キャスターは、今、ブリテンの王こと【騎士王アルトリア】の逆鱗に触れた。
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<SIDE/ドラグーン>
―――ソレは、余りにも予想外の事態だった。
夜の闇を駆けて、セイバーのいるであろう拠点のある森の入口まで辿り着いた。
ここから先は相手にも気付かれるだろうと、気を付けて周辺を警戒しつつ降り立つ。
だが――――目的の場所に辿り着いた時、既に幾つかの気配がある事に気付いた。
「……これは。」
<―――みんなが【へんなのがきた】っていってる、くろいへんなのがこどもをたくさんつれてきてたって>
ここまで案内してくれた【協力者】が、一度離れてこの森の付近にいる仲間に聞いてくれた事を伝えてくれる。
その内容は、あまりにも最悪で、そして予想が当たってしまっていた事を示していた。
「―――っ!雁夜、起きてくれ。」
「う…っ?何だ、どうしたんだ?」
「…キャスターが、この先に在るセイバーの拠点に攻め込んだらしい。
それも、攫った子供達の一部を連れて…きっと人質として使うつもりだ。」
「何だって!?」
腕に抱えていた雁夜を起こす。
その姿に申し訳ないと思いながらも、すぐさま状況を説明する。
此方の言葉に一気に覚醒したのか、その眼を驚愕に見開いて声を上げる姿に落ち着いてくれと言った。
「大丈夫だ、まだ奴が侵入してからそこまで経っていない。
今から救出に向かえば間に合う筈だ、まさか人質として使うのにいきなり殺す事はないだろう。」
「そうか…そうだよな、そんな事したら人質としての意味がなくなるしな。」
「だが、奴がそこまで考えているか…其処も不安だ、奴の精神状態は異常だから油断できない。」
戦において人質は、相手の性格を考えて使うモノだ。
少なくとも、あのセイバーは幼い子供達を見殺しに出来るような女ではなかった。
騎士道――――弱者を助け、その誇りを持って戦う者。
そんな相手に人質として突き付ける以上、無意味に傷付ける事はないだろう。
(………だが、何故だ…嫌な予感がする…!)
しかし、この胸の内でざわめく不穏な感覚に眉を顰めずにはいられなかった。
あからさまに血の臭いを漂わせ、その精神は既に破綻し狂喜の悦楽に浸っている。
まさに異常、まさに狂人、【アレ】に真っ当な戦の理論を追及するのは不味いと、この感覚がそう言っている―――!
その感覚に引きずられそうになる思考を何とか押し留め、ドラグーンは雁夜に視線を合わせて言葉を投げた。
「雁夜、俺がキャスターを当たる。
その代わりに、お前がバーサーカーと一緒にセイバーのマスターであるあの女に接触してくれ。
彼女がこちらに協力してくれれば、キャスターを倒すまで共闘してくれるだろう。」
「俺が…?」
「ああ、俺がキャスターと戦っている間に、雁夜はバーサーカーを連れて彼女に協力を申し入れるんだ。
その時にこちらに敵意が無い事を言えばいい、最悪この森の中だけお互いに不干渉を約束すればいい。
俺達の目的はキャスターだ、セイバーを倒す理由が無い以上、そのマスターを殺す必要もないだろう。
それにセイバーが傍に居ないのならマスターはバーサーカーに対処出来ない、それで脅すのもありだ…汚い手だが、そこも考えておけ。
最もあちらに令呪を使われれば話は別なんだがな……その時は無理せず、バーサーカーと一緒にこの森から撤退しろ。
俺も出来る限りキャスターを倒してみようとは思うが子供達の命と引き換えには出来ないし、彼等の救出を優先しないといけないからな。
何とかして奴らの拠点を吐かせれば、攫われた子供達の居場所も分かるだろう――――――――――バーサーカー!聞いているんだろう?」
「―――■■■」
自分達の背後にそう言うと、黒い英霊が実体となって現れた。
その雰囲気を視ると、やはりこちらも何かを感じるのか、纏っている空気が張りつめていた。
その様子に、内心不安を少し感じるも任せるしかないと決める。
自分が雁夜達に追随しても、それではキャスターに逃げられるかもしれない。
(それに………もし、最悪の事態が起こった時、雁夜は傍に居ない方がいい。
きっと、コイツには辛いだろうから。)
そんな、他のサーヴァントからすれば【甘い】と言われてしまうような感情を、抱いたから。
「…それと、キャスターはこの先に前進しているようだ。
同じ場所から侵入すればキャスターに捕捉される危険性がある、だからお前達は森の反対側から侵入してくれ。
少し遠回りになるが、その方が奴に狙われない可能性が高い…そこからセイバーの拠点に近付いて、こちらの意図を伝えればいい。」
「分かった、お前がキャスターを足止めしている間に、セイバー達と同盟を結べばいいんだな?」
「あくまでも一時的のな、【子供達の救出】という一点だけが俺達の優先順位だからソコさえ押さえれば問題ない。
だが必要以上に信用するなよ、相手も【敵】なんだ…不意打ちとか、何をしてくるかは分からないからな。
無理には戦うな、下手にバーサーカーも戦闘に移ればお前の身体が持たない、何かあったらすぐに逃げろ。」
「分かった…肝に銘じておく。」
そのまま雁夜をその場に降ろすと、傍らに歩み寄ってきたバーサーカーへ視線を向ける。
そうして―――パスを通して、雁夜には聞かれないように、語り掛けた。
『バーサーカー、【雁夜を頼む】。
お前が、セイバーのマスターと無事に引き合わせてくれ。
だが、雁夜を死なせるなよ…それだけは、【何があっても】優先しろ―――たとえ、俺に何かあったとしても、退避しろ。』
『―どら――グーン――』
『俺達のマスターは雁夜だ、彼が死んだら全てが終わる。
だからお前が雁夜を守れ、俺はその為になら何だってする……最悪、子供達は助けられないだろう。
キャスターを逃がすつもりはないが、お前と雁夜が殺されそうなら、放ってくるつもりでもあるからな。』
『……………わか、ッタ』
その【言葉】に、バーサーカーが了承の意思を伝えて来るのを感じると、ドラグーンは最後に2人の姿を目にして。
「―――頼む!」
そう叫んで、霊体化して森の中へ飛び込んでいった。
「よし俺達も行こう、バーサーカー…頼む、俺に力を貸してくれ。」
「は、い―――ます、ター」
その姿を見送った後、雁夜とバーサーカーも移動を開始する。
こうして主従は行動を別にし、それぞれの目的の為に駆けだした―――――――
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全ての【運命】が、今歯車の上に科せられた。
暴走する魔術師、義憤に駆られる騎士王、宵闇の森を疾走する竜殺し、主君を守る狂戦士。
そして、彼等の意思によって行動を始めるマスター達。
己が目的の為に、夜の森の中でそれぞれの思考が交差する。
――――――――今ここに、アインツベルンの森攻防戦が幕を開けた。
NEXT
【後書き】
皆様、お待たせして申し訳ございませんでしたm(__)m(←待ってくれてる人いるのか?)
アインツベルンの森キャスター強襲編スタートです!
勿論、ドラグーンやバーサーカー、雁夜おじさん達も急いで駆け付けました。
果たしてどうなるのか――――次回をお楽しみに。
(今回は、グロ要素が入りましたが……大丈夫かなコレ、人を選ぶ内容だった気もする。)
今回のBGMは、【「決闘/one-on-one」魔法使いの夜】でした。
※感想・批評お待ちしております。