たとえ、世界を滅ぼしても ~第4次聖杯戦争物語~ 作:壱原紅
閲覧は自己責任となり、気分が悪くなった、精神的に不快感がする。
等の症状につきましては、作者ではどうする事も出来ませんので、どうかご了承くださいませ。
※注意
こちらの小説にはオリジナルサーヴァントが原作に介入するご都合主義成分や、微妙な腐向け要素が見られますので、受け付けないという方は事前に回れ右をしていただければ幸いでございます。
尚、しっかりとこの場で警告をさせていただいているので、受け付けないという方は無理に入る必要はございません、どうかブラウザバックしてくださいませ。
今回はアインツベルンの森のお話、その③。
ドラグーンの咆哮を聞いた各陣営パート1と、ドラグーンの独白が混じったお話。
短くてすいません(/_;)
一度抱いた祈りを捻じ伏せ、持ちかけていた希望を見切り、それでも望まずにはいられぬ【
さりとて、その望みを嘲笑う様に運命はなおも歯車を回す。
染まりしは、母なる大地。
流れしは、命の色を讃えし血潮。
失われ逝く幼き心、救いの手は届く事なく、嘆きと悲哀に満ちながら崩れ去った。
その叫ぶ声が、聞こえる。
その衝動に、駆られる。
■したい、■してやりたい。
赤と金の双眸が押し殺せない憎悪を湛えて夜を舞う。
その咆哮は聞き届けたモノに何を感じさせ、そして何を想わせたのか。
――――――さぁ、君の嘆きを響かせてくれ、その慟哭こそ君のハジマリなのだから。
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<SIDE/アイリスフィール>
アイリスフィールは、目の前の水晶球に映し出されているセイバーの姿に息が詰まる思いだった。
おぞましい触手をもつ怪魔の群れは、キャスターの命に従ってセイバーを襲っている。
その一体も、彼女に触れる事が出来ず完全に防ぎきられている状態ではあるが、やはりセイバーが本調子ではない事を考えると時間の問題だろう。
ランサーの宝具によって傷付けられた彼女の左手。
万全の状態で戦えないのでは、持久戦には耐えられない。
水晶球越しに伺う表情からも、彼女の思うように戦えない歯痒さを感じられた。
「まだ、他のマスターが森に侵入してきた反応はないのか?」
「―――」
そんな自らのサーヴァントの窮地が目に入らないのか、淡々と背後から問い掛けてきた切嗣の声にアイリスフィールは憮然とする。
彼がどんな気持ちでこの戦いへ望み、どのような不安を抱えているかを理解したとしても、それをセイバーとの関係に持ち込むのはおかしいと、セイバーに好意を抱いている自分としては少なからず不満を抱いてはいたからだ。
己の顔が強張っているのを理解しながら振り返ると、夫は自身の装備を装着し、武器の準備を整えていた。
(…!切嗣、貴方…)
その中に、彼自身の礼装である魔銃が混ざっている事に気付いた時、アイリスフィールは切嗣の覚悟に気付いた。
夫もまた、この戦いに全霊をかけているのだと直接目にした事で、感じていた不満は薄れていく。
…一撃で魔術師の全てを破壊する魔銃、ソレを持ち出す程の戦いが起こるという不安は増したが。
「舞弥、アイリを連れて城から脱出を、セイバー達とは逆方向に。」
「!?…切嗣、ここにいては、駄目なの?」
「セイバーが離れた場所でキャスターと戦っている以上この城ももう安全とは言えないんだよアイリ。僕と同じように考えている奴だっているだろうからね―――だから、逃げろ。」
確かに、セイバーが傍に居ないマスターを狙う者がいないとは限らない。
漁夫の利を企て、キャスターが倒されたと同時にセイバーのマスターを殺害するのも手段として思いつく者はいるだろう。
だからこそ、偽のマスター役のアイリスフィールは絶対に狙われてしまう。
切嗣はそこを考えて、彼女に舞弥という護衛を付けて逃がそうとしているのだと。
………しかし、アイリスフィールはそれ以上に、目の前の夫と再び別行動を取る事に不安を感じずにはいられなかった。
それは、自分が彼と離れたくないという思いと、彼の隠している不安定な心理状態を知ったからこそ。
しかし自分が今夫と一緒にいても足手まといにしかなれないのだという事も、理解していた。
(…馬鹿ね、私…こんなの言い訳だわ。)
けれど、自分自身の思いを冷静に考えてアイリスフィールは自嘲する。
不安の元は切嗣との一時的な別れではなく、舞弥と共に行動するという事に対する不満からなのだと。
夫に、今もっとも必要とされている女性に対する意識が、自分には不快感と苦手という感覚を示しているのだから。
とはいえ、アイリスフィールはそんな私情で夫の方針に異を唱え、困らせるつもり等なかった。
我儘な子供ではない、彼を支え、その願いの為に生きて死ぬと決めたのだから、当然の答えだった。
「分かったわ、貴方も気を付けて切嗣。」
毅然として頷いた、その時―――――
「っ…!」
彼女の魔力回路が、新たな警告を告げた。
森の監視結界からの、警鐘が鳴り響く。
揺れる一瞬の視界に、いくつかの影が見えた。
黒い鎧と、それに担がれる様にしている誰かの、主従。
青いコートを纏った男、付き従っている槍兵の、主従。
そして―――声が、聞こえた気がした。
胸を突く、咆哮が。
セイバーを警戒させた、あの声が。
痛みを訴える声、押し殺し切れない怒りを込めた声が、聞こえた気がした。
「アイリ?」
「来たわ、切嗣…貴方の言っている他のマスターと…そして、新しいサーヴァントが。」
「!」
【聖杯の担い手は自らの望んだ所有者へ微笑む、迫りくる脅威に怯む心を、隠したまま。】
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失われた命の為に、この魂が叫びました。
この胸の内に、確かに残った傷があります。
■せと叫ぶ衝動が、思い出された感情に煽られる。
それでもまだ、まだだと堪える意思がある。
どうか早く、この身が憎悪に焼かれる前に。
その声を、この愚者へと伝えてください。
もう――――――自分の【願い】なんて、祈らないから。
血に塗れた銀が、夜の森を駆ける。
赤く染まった両手、その瞳はただ怒りを宿し燃える。
(ただ―――それ以上に、その胸中は荒れていた。)
真っ赤に染まった無残な命の残骸を、掻き抱いて叫んだ。
胸の痛みが止まらない、思い出した激情は軽くこの身を突き動かす。
早く、速く引き裂いてやりたい、断末魔の悲鳴を上げさせてやりたい。
【この腕の中に抱いていた、息絶えてもはや幼子にすら見えぬ亡骸を連れて行けぬと、森へと捨てた。】
分かっていた、解っていたのだ。
拾い上げられる者は限られていて、全てを救える筈もないと。
世界は残酷で、世界は冷酷で、いつだってカミサマは自分の好きなモノしか拾わない。
(それでも―――【夢】を、見たかっただけ。)
少しでも、その夢に触れてみたかった。
叶わない願いだと、気付いていたのに望んでた。
今更何を言い訳したかったのか、この身が呪われているのは当たり前だったのに。
【謝罪は出来なかった、捨てた亡骸に一体何を謝ればいいのか、なんの言葉も出てこなかった。】
「…ごめん、な。」
そうして、亡骸を捨てたその行為の、後に。
やっと、遅すぎる至極普通の謝罪が口から零れた。
淡々とした口調で、零れ落ちた言葉――――今更過ぎるソレが、ただ、哀しかった。
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<SIDE/間桐雁夜>
――森全体に響いたのではないかという咆哮に、聞き覚えがあると感じたのは、間違いではないのだろう。
「っ―――ドラグーン…?」
雁夜はその耳に届いた声に、表情を強張らせた。
バーサーカーに抱き上げられたまま、そのもう1人の従者との繋がりへ意識を向ける。
何があったと、問い掛けようとして聞こえたパスからの【声】、思わず息を呑んでしまった。
『――どうして―――嫌だ―――ゆる、せない――』
パスを通じて伝わってくる、その深い感情に。
一度も聞いた事の無かった、彼の怒声に。
その中に混じっている、苦痛に似た悲しみに、息を呑んだ。
ずきり、と胸が痛んだ。
倉庫街で、バーサーカーが自分へ逆流させた憎悪とは違う。
ただ、ただ感じるのは、どうしようもない遣る瀬無さと胸へ迫る感情の声。
まるで、どこかでその結果を受け入れているようで、拒んでいるような、嘆きが聞こえた気がした。
同時に【何か】があったと、嫌な確信が雁夜の中で確定する。
あの青年が、怒りに我を忘れるような、不吉な事態が起こったのだと。
「っバーサーカー!頼む、俺も堪えるから出来るだけ急いでくれ…早くセイバーのマスターのところへ…!」
「は、イ…ます、ター」
一定の速度で移動していた風景が、一気に速度を上げて流れ出す。
まだ蟲達は雁夜の中では暴れていない、しかし―――――
(ドラグーン、無理するな…すぐに、俺達もそっちに行くからな…!)
―――きっと、いつか必ず、あの時と同じ苦痛を背負わないといけない時は訪れる。
【狂気の騎士とその主は森を駆ける、己が従者の1人が託したその【一手】を得る為に、今はただ闇夜を駆け抜ける。】
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――――紅いソレに、胸の中で怒り以外の何かが起きていく気がした。
無意識に魔力の消費を抑えて、その状態で全力で駆けているのは、まだ自分がマスターを優先出来ているからだろう。
彼を死なせたくない、彼を傷付けたくない、こんな頭が怒りで沸騰している状態で、まだ考えられる事実にどこかで嗤う自分がいた。
視界を木々が通り過ぎ、一気に後ろに遠ざかっていく中で、血の臭いを追って走り続ける。
もうすぐ着くだろう、そしたらあの惨状を作った奴がいる、だから■そう。
腕を破裂させたのなら、破裂させられる覚悟はあるだろう。
足を微塵に引き裂いたなら、引き裂かれ踏みにじられる覚悟はあるだろう。
戦に立つという事は、転じて、その命を懸けるという事実以外に他ならないのだから。
だから同じ思いをさせたってかまわない、それぐらいされる覚悟があったから、■したんだろう?
そうだ、ソイツの、キャスターのサーヴァントのせいだ。
だってソイツのせいなんだから、ソイツが子供を苦しめたんだから。
だから、■したって構わない…!!!
ああ、でも
――――――やっぱり、俺のせいだ。
また、俺のせいで死んだ。
俺が、もっと早く動けばよかった。
(知ってたのに、子供が犠牲になる事を知ってたのに。)
どうして、俺のせいで人が死ぬんだ。
何で、俺が一度でも拾いたいと思った相手が死ぬんだ。
(嫌だ、嫌だ、止めてくれ、死なせないで、そんなの彼等のせいじゃない。)
ごめんなさい、思い上がってごめんなさい。
マスターを助けたいなら、他を見捨てれば良かった、割切ればよかった。
(ただ、それでも、泣いてる子供が【我が子】に重なってしまったんだ、だから嫌だったんだ。)
一度だけ助けられたのは、本当に偶然だったと思い知らされた。
あの赤毛の子供は、俺の力じゃなくて、あの子自身の幸運で生き延びたのだ。
(そうだ、でなければ、あの子だってあの場所で死んでしまっていたに決まってる、俺には無理なんだから。)
何て、無様で思い上がった自己満足、救いようのない自己陶酔だったろう。
生前で思い知った筈だったのに、そんな【ユメ】に縋り付いた結果を俺は知っているのに。
(だからこそ、俺はマスターの【願い】しか望んではいけないのに、俺自身の【願い】なんて思ってもいけなかったのに!!)
名前も聞けなかった、幼い命の抜け殻を森へ捨てた、【彼】はただ呟くしかない。
「少年―――――――ごめんな、俺が、君を見捨てたんだ。」
死ぬ間際の幼子へ、告げられなかった謝罪は、ただ虚しく虚空へ消える。
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<SIDE/言峰綺礼>
――――胸を揺るがすその叫び、再びこの耳にするとは思わなかった。
「っ…!?」
森に侵入して城に向かって駆けていた足を止める。
怒りを孕み響いた咆哮に、聞き覚えがあった。
『綺礼様、ドラグーンが…』
『分かっている、奴がこの森に来ているのか?』
『はい、今の声を辿って、1人が追跡しております。』
『そうか…』
パスを通じてアサシンと念話をする。
その内容に、自分の勘違いではないのだという事を悟った。
キャスターのサーヴァントが、セイバーのいるアインツベルン城を攻めようとしている。
数時間前のアサシンの報告に、言峰綺礼はすぐに行動に移った。
衛宮切嗣、彼の人に会い、彼が得ただろう【答え】を聞き出す為に。
しかし、まさかこの森にドラグーンが訪れていたというのは予想外だった。
そして、今の今まで隠れ潜み、動こうとしていなかった彼が今、怒りに叫びキャスターを探している―――
(…ドラグーンのマスターが、この森に来ている、ということか?それともマスターがキャスターに攫われたのか…?ただ命令されて討伐に来ただけにしては、奴らしくない。
アサシンを葬った時の事も考えれば……っ!?)
そこまで考えて、言峰は唐突にその思考が固まった。
今―――自分は、何を思ったのか?
【奴らしくない】、等。
何故深くも知らない相手の事を、知った様に思ってしまったのか。
《【俺】と同じとはいかないけど、【似てる】》
困ったような微笑を浮かべて、そんな事を、彼は言っていた。
【似ている】から、思ってしまったのだろうか。
《俺のマスターを助けてくれるなら…また、こうして話をしたいと思うよ》
声が、聞こえる。
逢いたいと、言った声が。
戸惑っていた視線、淋しそうな表情だった。
もしかしたら、叶わないと思っていたのだろうか。
《――――――またな、キレイ》
またな、と言われた。
どんな顔をしていたのか、彼は。
あの、読めない笑顔のままだったのだろうか。
それとも、あの淋しそうな表情で言ったのだろうか。
――――見る事が出来なかったその顔が、どうしてこんなにも気になるのだろう。
『綺礼様。』
『っ…どうした?』
『はい、城からホムンクルスの女と、護衛らしき女が脱出したという事です。』
はっ、と深みに嵌まり込みそうだった思考を浮上させる。
走りながらも念話に集中すると、衛宮切嗣の傍に居る女達の情報を伝えられる。
『―――すぐに其処に向かう、キャスターとセイバー、そして他にも侵入しているだろうマスターとサーヴァントを監視しろ。』
『分かりました、全てのマスターとサーヴァントの監視を続行します。』
止めていた足を再び動かす。
目指すはアインツベルンのマスターとその護衛、女達には衛宮切嗣について聞かねばならない事がある。
胸の内の躊躇を振り払うように、言峰綺礼は走り出す。
……その心に、一抹の疑念を抱きながら。
【黒き代行者は駆ける、己の迷いを晴らす為に――――銀への惑いと、狙撃手への邂逅を望むままに。】
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其処へ辿り着いた時―――血の臭いが、完全に周囲を包んでいた。
バシャリ、と足を赤い水溜りが濡らす。
それだけで、嫌な興奮が心を揺さぶるのを感じた。
(■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ■せ!!!!!!!)
頭の中を、真っ黒な感情が染め上げるように声を荒げる。
一方的な蹂躙を、踏み躙るべき相手がいるからこそ湧き上がる激情を。
他者の存在意義を、その価値観を、その生存理由を、根こそぎこの手で壊せと叫ぶ。
よく分かっている、コレは自分の生前、いつも頭を過っていた事。
戦場で【敵】と相対した時、相手を確実に葬る為に必要だった
躊躇いは己の死を招く、故に一撃で必殺を、その息の根を確実に止めろ。
興奮する身体を落ち着ける、己の持ち得る【経験】と【技】を使う為に気配を■す。
意識するのはその瞬間のみ、真正面から突撃する等愚の骨頂、これより挑むのは戦場である。
戦争で、己の意思を持って戦うのは、【彼】にとってはただの狩りの延長線上でしかなかった。
それに色を付け、意味を付け、誇りと呼ばれるべきモノを持たせる相手は、本当に少なかった。
―――――いつだって、【彼】が真正面から向き合ったのは、自らへ恐れなく挑む【誇り高き戦士】だけであったが故に。
ほんの僅かに、心の隅に顔を覗かせた感傷は直ぐに消え去った。
それを気にする事無く、足音を消すように泥濘に逆らわず流れる様に沿って歩む、剣戟の音と狂喜と怒号の声のする方へ、向かう。
(■せ■せ■せ■せ■せ■せ!血塗れにして■せ腕を削ぎ落として■せ足を切断して■せ肉体を引き裂いて■せ四肢を砕いて■せ頭を握り潰して■せ指の先から壊して■せ脳髄の中までぶちまけて■せその存在を破壊しつくして■せ!■せ!■せ!■せ!■せ!!!)
―――――――黙れ、こんなに騒いだら、気付かれてしまうだろう。
激しく叫びその【敵を■せ】と指図する衝動へ、幼子の亡骸を思い出した理性が冷静に指摘する。
言われなくてもそうするのだ、なら黙ってその結果だけを視ていればいい、たかだか狩りに熱くなりすぎるな。
「―――いた。」
そうして、見付けた。
黒いローブ、その先に槍兵と剣士。
2人の騎士を襲っているのは、魔術師の使い魔である怪魔だ。
無駄に戦場で興奮して損をするのは、こちらだけではない。
完全に、魔術師は【俺】に気付いていない。
だからこそ、呼び出した怪魔を目の前にいる相手にしか向けてない。
これなら、こちらが襲い掛かってその首を圧し折ってやれば全てが終わる。
怪魔が近付かないギリギリのライン、魔術師―――キャスターの背後の茂みへと音を立てずに潜む。
狙いを定める。
意識を集中する。
(好機は一度きりだ。)
気付かれるな。
一撃で仕留めろ。
(獲物は目の前にいる。)
静かに息を呑む。
鼓動の1つすら煩い。
(あと少しのタイミングで。)
殺気は出さない。
それは奇襲には不要。
(この目の前の敵を、【■す】!!!)
その衝動が叫ぶ。
最後の数を数える。
そして
その場へと【彼】は踏み込んだ。
完全な死角からの奇襲を、行った。
距離にして、怪魔は気付かない位置。
それ故に距離はあるが、しかし問題等ない。
サーヴァントなら、後2歩でその背後へと迫れるから。
振り返るには遅すぎる、その【2歩】をキャスターは埋めれない。
こうして脱落するだろう、キャスターのサーヴァントへ【彼】は駆ける。
【一撃必殺】を完遂する為に、己が主に勝利を捧げる為に、幼子への弔いの為に。
ただ、【死】を与える為に。
―――――――――それなのに、何故か。
「っ!?―――――――誰だ、貴様は!!」
その距離を台無しにしてしまう、凛とした声が、響いてしまったのだった。
NEXT
【後書き】
皆様こんにちは、駄作者ですm(__)m
今回は、咆哮を聞いた各陣営の様子パート1をお送りしました。
ごめんねラストに顔だけでたランサー陣営!あとセイバーも…次回はちゃんと喋るからね!!
そしてドラグーンの奇襲スキル発動しましたー…しかし、最後の最後に何故か誰かに気付かれるという事態が発生。
簡単にキャスターが退場しないのはやはり、その場の者達のステータスにも原因があったりとか…orz
ランサーはいつ、セイバーに合流したのか?そしてケイネス先生は?
ドラグーンが参戦するまでの間の内容を、次回に一緒にお話します―――
次回、その状況までの陣営パート2と、そこからの泥沼R-18G空間続行になっていきます。
作者のSAN値もガリガリ削られていきますが頑張ります、それでは閲覧ありがとうございました!!
今回のBGMは、【「「空の境界」傷跡「ピッチアップ版」」ニコニコ動画より】でした。
※感想・批評お待ちしております。