たとえ、世界を滅ぼしても ~第4次聖杯戦争物語~ 作:壱原紅
閲覧は自己責任となり、気分が悪くなった、精神的に不快感がする。
等の症状につきましては、作者ではどうする事も出来ませんので、どうかご了承くださいませ。
※注意
こちらの小説にはオリジナルサーヴァントが原作に介入するご都合主義成分や、微妙な腐向け要素が見られますので、受け付けないという方は事前に回れ右をしていただければ幸いでございます。
尚、しっかりとこの場で警告をさせていただいているので、受け付けないという方は無理に入る必要はございません、どうかブラウザバックしてくださいませ。
今回はアインツベルンの森のお話、その④。
ドラグーンの咆哮を聞いた各陣営パート2と、セイバーの独白、そしてランサーが参戦するお話。
ここからセイバー陣営とバサドラ陣営に大きな動きを齎す切欠が出てきます…
その前にお知らせです。
この度、皆様のおかげでこの小説が300お気に入り登録達成しました!!ありがとうございますm(__)m
今回は、そのお礼もさせていただきたいので、リクエストを受け付けようと思っています。
本編でこうしてくれ!キャラアンチしてくれ!等のリクエストは物語の進行上無理があるのでお断りさせていただきますが、【聖杯戦争後の平和ENDを迎えた後の後日談】や、【こんな話を読んでみたい!(例:5次のサーヴァントに何故かバサドラ陣営が逢えたとか)】というご意見をお待ちしております。
一応締め切りは「5月22日(水)まで」といたします。皆様の感想およびリクエストお待ちしております。
これからも【たとせかシリーズ】をよろしくお願いいたしますm(__)m
※追記 リクエストについて
今回応募しているリクエストについてですが、1人の方が頼む数が多すぎると他の方の分が書けなくなるかもしれません。
その為、リクエストの際は【お一人様1つ】という条件でお願いいたします。
感想欄、メッセージにて受け付けておりますので、どうかご協力をお願いいたします。
認められない認めない。
その存在が赦せない。
目の前から消えてほしくてたまらない、怒りが心を焼き尽くし理性を壊して駆け出しそうだ。
だから剣を向けなくてはならないと彼女は視線を向けながらその相手へと叫びをあげた。
(―――――――――――――――――――気付いてはいけない、その相手が、私の■■を終わらせるかもしれない存在なのだと。)
それは、決して受け入れる事の出来ない存在だった。
視界に入る赤と金。
怪魔の体液が撒き散らされる中で。
目線があったと同時に背筋を凍らせた【感覚】は。
私にとって、【ソレ】が【脅威】に成りえたる証だった。
だから、叫んだ。
それが、今は間違いだったとしても。
狂える魔術師よりも、左手を預けし槍兵よりも。
この場の誰よりも、彼の者だけは真っ先に排除せねばならないと。
自身の直感が、相手を【敵】と認識していた。
後に、私は悔いる事になる―――――それが【どうして】なのかを、私は何故、その時に理解しようとはしなかったのかを。
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<SIDE/セイバー>
――――戦闘は、苛烈さを増しながらも、その醜悪さを増していた。
怒りの咆哮を上げ、戦い続けるセイバーは今、キャスターの手によって追い詰められつつあった。
一撃一撃によって怪魔を討ち伏せていくにつれ、彼女はその敵の異常性に気付かされたのだ。
何度斬り倒しても減らない敵、その数が増え続け、キャスターの魔力の減りが遅い事。
その原因でもあるモノに、気付く事によって、自身が完全に嵌められたのだということに。
(まさか、あの宝具は…)
怪魔を倒す彼女の視線の先にあるのは、キャスターの手の中の本【
その本の最も恐るべきところは怪魔の召喚ではない、それ【単体の力で術を行使できる大容量の魔力路】を保有している事だ。
キャスターは自分の力で怪魔を呼び出しているのではない、あの宝具が呼び出し維持しているのだ。
キャスターは、ただあの宝具を発動させるだけの魔力の供給をし、怪魔を使役するだけでよかったのだから。
(不覚だった…だが、そんな事で退くわけにはいかない!)
セイバーは己を一喝した。
己の意志と誇りを胸に立つ騎士ならば、キャスターのような暴虐を行う邪悪を前にして引く事等許されない。
それでは彼女の最も誇り、武器としているモノを手放してしまう事と変わらないからだ。
失われた命を想い、己の剣の正義を信じ貫く心を。
理想を謳い、民草を守りその安寧を誇る騎士道を。
セイバーの、アーサー王の、ブリテンの騎士王としての祈りを。
「ああまだ諦めないのですね、流石ですジャンヌ!多勢に無勢の窮地でも貴女はいつも輝いていた。
多くの敵兵に襲われても皆を励ましひたむきに勝利を信じて疑わなかった。
やはり貴女は変わらない!その貴き魂の在り様と誇り高く気高い意志こそ貴女がジャンヌたる証!!」
そんな彼女の様子を見つめながら、恍惚と叫ぶキャスターの姿にセイバーは怒りを再び湧き起しかける。
だがそれを押し込めて目の前の怪魔を斬り払い吹き飛ばす―――相手の口車に乗り、喜ばす必要などないからだ。
「それなのに!何故ですジャンヌ!!何故目覚めてはくれぬのですか!?貴女は未だ神の加護を信じているとでもいうのですか!!??ああなんと嘆かわしい!この窮地も奇跡が貴女を救う等とおっしゃるおつもりですか―――貴女を地獄へ突き落とし、神の罠と異教徒共の手によってあれほどの辱めを受けたその傷を背負って尚!貴女は神の操り人形へ甘んじるというのですかジャンヌ!」
黙らせたい、下らぬその妄想で幼子の命を弄んだ事を購わせたい。
そうセイバーの心が叫び、怒りを訴えてもその剣がキャスターへ届かない。
数多の触手を持つ怪魔の群れが、その進撃を阻み壁となって邪魔をする。
「…くっ!?」
その時、セイバーの背後からその首に向かって触手が絡みついてきた。
首を締め上げらる前に引き離そうとするが、負傷した左手ではどうあっても引きはがす事が出来ない。
そうしているうちに、彼女の周りを怪魔が取り囲もうとしてくる、このままでは押し潰されてしまう…!
(再び魔力放出で―――だがこの量では―――!)
まさに絶体絶命、その時だった。
閃く赤と黄の稲妻が、怪魔の群れを切り裂いたのは。
「どうしたセイバー?もっと魅せる剣でなくては騎士王の名が泣くではないか。
初戦で俺を昂ぶらせた剣筋を、この外道相手に披露するのがもったいないとでも言うのか?」
戒めを解かれて膝をつき大きく息を吸い喘ぐセイバーの目の前に、若草色の装束を纏った長身の背中が割って入った。
涼やかな視線、甘い微笑み、罪作りな程の美丈夫が彼女へ向けて艶やかなウインクを送る。
その双槍の苛烈さを感じさせない、しかしかの倉庫街の戦いで彼女を認めた騎士。
セイバーを庇うように立ち塞がったのは、此度のランサーこと【ディルムッド・オディナ】
――――キャスターに立ち向かう彼女の窮地を救ったのは、彼女自身の左手を封じた
「ランサー?何故貴方がここに…」
呆気にとられたセイバーが声を漏らすが、その驚きは敵であるキャスターの方が上回っていた。
「何者だっ!?誰の許しを得てこの私と彼女の逢瀬の邪魔をするか!」
「笑わせる、ソレはこちらの台詞だ外道。」
激昂するキャスターを冷ややかに見据えると、ランサーは槍の切っ先を突きつける。
「貴様こそ誰の許しを得ての狼藉か、そこなセイバーの首級は我が槍の勲である。
横合いから図々しくも掻っ攫おう等とは、戦場の例を弁えぬ盗人の所業と心得るがいい!!」
「たわけ、たわけたわけたわけぇぇぇぇぇ!!!!!」
凛とした一喝を浴びせるランサーの言葉に、キャスターは頭を掻きむしり目を剥いて狂声を上げる。
「私の祈りが!私の聖杯が!私の愛がその女性を蘇らせたのだ!!彼女は、ジャンヌは私のモノだっ!その血肉の一片から一滴まで全て!その魂に至るまで私のモノだっ!!我が聖処女との邂逅を!この逢瀬の邪魔をするなあああああああああっ!!!」
―――それはまさに、気が触れている故の気迫だった。
眼は血走り口から泡を吐かんばかりの勢いで言い募るキャスターはその敵意の眼差しをランサーへと突きつける。
視線で人が殺せるならば、ランサーは恐らく500ぐらいは殺されていてもおかしくは無い程の憎悪が確かに、キャスターの視線には込められていた。
だが、そのキャスターの狂気に飲まれる事もなく、ランサーは呆れた様に深く溜息を吐くと肩を竦めた。
「いいか?セイバーの左手を負傷させたのはこのディルムッド・オディナだ。
よって、彼女のその傷というハンデに付け込んでいいのも、傷を負わせた俺だけなのだ。
この権利は貴様等に譲ってやるつもり等毛頭ない。
なぁキャスター、俺は別に貴様の恋路を邪魔する気などないさ。
是が非でもセイバーを屈服させ奪いたいというのなら好きにすればいい、だが―――」
ゆるり、と左右の槍が上がる。
その穂先を持ち上げたランサーは、構えを取りセイバーを庇うようにキャスターの前に立つ。
笑みを浮かべている艶貌の戦士の双眸に、凄絶な闘志が宿り燃え盛る。
その瞳は強くキャスターを射抜くと、最後にこうランサーへ言い切らせた。
「―――今、このディルムッドを差し置いて、【片腕しか使えぬセイバー】を倒すというのは断じて許さん!尚も貴様がこの場を退かず彼女を狙うというのなら、これより先は我が槍がセイバーの左手に成り代わる!」
―――セイバーがこうして、ランサーの背を見るのは2度目だった。
昨夜のバーサーカーの猛攻を退けている時も、彼は躊躇う事無くセイバーを救うかのように割って入った。
その意志は、その全ては、ただ一度剣を交えたセイバーとの決着を潔く全うする為なのだと。
セイバーは改めて、この目の前の戦士が誇り高き騎士なのだと認識するに至った。
「ランサー、貴方は…「勘違いするなよ、セイバー?」…っ」
思わず声をかけたセイバーの声を遮るように、ランサーが釘を刺す。
「今宵、俺がマスターに仰せつかったのは【キャスターを倒せ】という命令のみ。
お前を倒せ等という指示は受けていない、ならばこの場は共闘が最善と見做すが、どうだ?」
涼しげな流し目でそういうランサーの言い分を聞き、思う事はあったがセイバーは何も追求しなかった。
むしろ口元に笑みすら浮かべて頷くと、彼のその右横へ進み出る。
剣の構えは右へ、もはや左に隙などないのだから―――この身には、今は限りなく頼もしい【左腕】がある。
「断っておくがランサー、私なら―――左手一本であの雑魚共を軽く100は潰すぞ?」
「ふ、その程度造作もない事だ。今日のお前は左利きになったつもりでいるといいぞセイバー!」
互いに軽口を交わして2人の騎士は群れ成す怪魔の壁へと突き進む。
不可視の聖剣と2本の魔槍が触手の束を薙ぎ払い、怪魔の群れを瓦解させる。
「赦さぬ、許さぬ許せぬ許さんぞ!思い上がるなよ匹夫めがアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!」
キャスターの咆哮に応えるように、その手の中の魔導書が不気味に輝き脈動する。
途端に怪魔の出現数が倍加し、まさに木々を呑みこまんばかりの怪魔が溢れだし、その群れがセイバーとランサーへ卒倒していく。
―――より苛烈に、より過激に、戦いはひたすらに激化していく。
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<SIDE/ケイネス>
―――事は数十分前まで遡る。
ケイネスはその夜、敵のマスターとサーヴァントを捜索し町を歩んでいた。
(ソラウと私を襲い、ホテルを倒壊させたのはアインツベルンのマスターに違いない!奴らは先日町を探索していた―――どこかに潜伏している可能性もあるな。)
そう考えて、まずは地理の把握も行おうとしていたのだが…そこで信じられないものを見つける事となったのだ。
『…ランサー』
『はい、此処におります。』
『私の眼は正常だと判断した故に問おう―――アレは、何だ?』
『は…キャスターの、サーヴァントだと思われます…』
―――そこは夕暮れ時の住宅街、たまたま通り道として通りすがった其処に、時代錯誤な漆黒のローブが歩いていた。
そのあんまりといえばあんまりな光景に、思わずケイネスが話しかけるのも嫌な筈の、霊体化させていたランサーに問いかけたのも無理はないだろう。
挙句、そのサーヴァントが通りすがりの車を捕えてドライバーを操り、背後に連れいていた幼い少年少女を乗せて自動車を発進させたのを見届けてしまっては、追いかけるという以外の選択肢などあり得なかった。
『何という事だ!本当にここまで錯乱しているサーヴァントだったとは!神秘の秘匿もあったものではない!!奴のマスターはいったい何を考えているのだ?まさか本当に魔術の欠片も理解していない愚か者がキャスターを召喚しえる程のマスターだったというのか…!?』
『主!このままではあの子供達が…』
『分かっている!キャスターは討伐せねばならん…追うぞ!』
教会からの指示の理由をこうして目にしてしまっては、ケイネスとしてもキャスターを放置するわけにはいかない。
あくまでも魔術師として、【神秘の秘匿】を守る為にケイネスは行動を開始した。
―――もっとも、そこには引けない理由もあったのだが。
(…とにかく、キャスターは必ず私が仕留めねばならない。
既に消費してしまった令呪を再び取り戻さねば、これから先の戦いに支障をきたしてしまう…!)
監督役が提示したキャスター討伐の報酬。
それこそ、今のケイネスにとって喉から手が出る程に欲しいモノだ。
消費した理由を、悔いるつもり等毛頭ないが、それでも補充できるというのなら何としても手に入れたかった。
だからこそ、どの陣営よりも先にキャスターを倒さねばならないと判断したのだ。
しかし、そのキャスターを乗せた車が市街地を外れて山奥へと分け入り、その行き先がアインツベルンの森だと気付いた時は躊躇わずにはいられなかった。
(アインツベルンのマスターの本拠地だと…?奴らがこの国に土地を所有しているのは知っていたが、キャスターはまさか奴らに挑むつもりか…?子供等何の役にもたたんだろうに、一体何を考えている?)
魔術師の領土であり、かの御三家の本拠地。
相応の結界や備えが十分にある、まさに要塞である場所に部外者が有利に戦いを行うのは難しい場所だ。
そこにキャスターがノコノコと踏み込んでいく事にも驚かされたが、ケイネスにもその目的がアインツベルンのマスターとサーヴァントに挑む事だというのは明白だった。
意を決すると、ケイネスはランサーを伴い森の結界へと侵入する事にした。
そして、予想通りに戦いが始まった。
キャスターの子供達を連れてきた理由も、単独行動も、その錯乱した言動で既に暴走状態だという事は分かった。
使い魔を向かわせ、その様子を伺いながらもいる筈のセイバーのマスターの姿がない事にケイネスは考える。
恐らく、己の領地である以上、奴らもサーヴァントの傍に居なくても良しと判断し、後方の拠点で高見の見物を決め込んでいるのだろう、と。
『何という、惨い事を―――!』
そんな中、パス越しにランサーの怒りの声が聞こえた。
マスターであるケイネスからの視覚共有で、ランサーにもまた子供達の末路は視てとれたのだろう。
使い魔越しとはいえ、幼子達の悲鳴と惨劇はこのお綺麗な騎士様には許し難い事だったらしい。
…ケイネスとしては、【魔術師】としては、キャスターの魔術式は興味深く、そして効率は良いと思っていた。
しかし、無駄に一般人を巻き添えにして騒ぎを起こす愉快犯のような事をするのは赦し難いとも思っている。
何故、この男は【情】等でそこまで憤れるのかが理解出来ない―――――そう、思った、その時だった。
「っ―――――あ゛ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
その頭を揺らすような、凄まじい咆哮が響いたのは。
「っ…なん、だと…!?」
思わず息を呑んだ。
耳を貫かれんばかりの怒声と絶叫に、こちらがその怒りの対象にされたのではないかという感覚すら覚えた。
森全体を揺らがすのではないかと錯覚する程の、深い怒り、そして殺意。
こんなモノを、少なくともケイネスは、知らない。
『我が主よ!お気を確かに!!』
『っ…ランサー、貴様はキャスターを討伐せよ。
奴を生かしておく事は出来ぬ、宝具の開帳も赦す…全力をもって潰せ。』
『っしかし…主、今の声の主については…』
『ふん、恐らくは倉庫街の時と同じ輩だろうが…貴様が戻るまで下手に動くつもり等ない、それよりもさっさとキャスターを倒して来い!』
『!…はい、お任せください話が主よ!必ずや奴の首級を主へ捧げましょう!』
念話越しに命じると、ランサーは雄々しくそう声を返してキャスターに向かっていった。
これでいい、ランサーはキャスターを討伐する事に全力を注ぐだろう。
…先程の咆哮は、まだ森の外の方からだった筈だ。
なら今行動せずしていつ動くのか、セイバーのマスターに対する屈辱を晴らし、キャスター討伐の褒章を独りで独占する為に。
全ては勝利と婚約者の為、ケイネスは森の中枢部へと移動を始めた――――
《それはただ、あの声の主に会うのを恐れただけではないと、目を伏せるように》
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<SIDE/ランサー>
―――もはや、これは永遠にすら続くのではないかと錯覚しかねない混沌だった。
英霊達の戦場はもはや泥沼状態であった。
際限なく表れては斬り捨てられる怪魔の群れ。
折り重なる死肉の山から敵がまた現れるのだから当然だが、散らされる臓腑と体液は混じり合い地面を汚す。
腐臭よりなお悪い怪魔共の臓物臭が充満する空気、もはや瘴気でしかないソレは、常人では耐える事も叶わないだろう。
「全く、無駄に長引く戦等誇らしくもなんともないというのに…こいつ等は不死身か何かか?」
疲労の色は視えないものの、うんざりとした様子のランサーは横から伸びてきた触手を斬り捨てながら吐き捨てた。
英霊であるからこそ周囲の瘴気と怪魔の波を堪え切れるランサーでも、視界の不快感は否めないし延々と続く怪魔の猛攻に嫌気が指すのも無理はなかった。
そのランサーの声にセイバーもまた怪魔を斬り倒しながら答える。
「奴の手にある魔導書がその原因だランサー、恐らくアレを破壊しない限り奴らは消えないのだろう。」
「成程、アレが奴の宝具という事か…しかしあの青瓢箪の手から本を叩き落とすのは至難の業だぞセイバー?何せ奴を守ろうとこの雑魚共が溢れているのだから、なっ!」
ザンッ!と音を立てて怪魔を二槍で貫くランサーの返答に、セイバーも怪魔を2体纏めて両断しながらキャスターを睨みつける。
この異形の怪魔共には死の恐怖も痛みすらもないのだろう、理性的な動きを見せる事無く本能のままに動き回る怪物だ。
それこそ斬られるのを幸いと言わんばかりに攻めてくるのは際限がない。
そして、セイバーとランサーという2人の英雄を相手にしながら持久戦を維持するキャスターは何らかの勝機があるからこそ引かないのだろう。
絶対の勝利の確信がある故の、ある種の慢心を見せながらも宝具を持続させるのは忘れてはいない。
もはやキャスターの宝具が発揮する魔力は無尽蔵と考える他ないようだった。
「―――ランサー、どうだろう?この辺りで賭けに出る気は?」
「ふ、根負けするようで癪だがこいつ等と遊び続けるのも芸がない―――良いぞ、その賭けに乗ったぞセイバー。」
「ああ、私が道を開く、一度きりのチャンスだランサー…
「む…フッ、成程、造作もない。」
セイバーの視線が怪魔の群れを睨み据えているのを見ながら、ランサーは彼女の言葉に一瞬惑った。
だが、その意図をすぐに悟ると不敵な笑みを浮かべる。
一度だけとはいえ刃を交えた相手。
その技をランサーもまた覚えていた。
騎士王たるセイバーが披露したその剣技。
彼女が一度だけ見せた【技】が、その言葉と一致していた。
「何をぼそぼそ囁いているのです?さては末期の祈りですかな?それとも逃亡の算段ですかねぇ?」
にやにやと嫌な笑みを浮かべてこちらに問いかけてくるキャスターは自分の勝利を疑っていないのだろう。
明らかに自分は戦いに参加せず、観客面して野次を飛ばしてくるのは敵の神経を逆なでするのに充分だ。
「さぁ恐怖なさい、絶望なさい!己の武功の程度だけで覆せる「数の差」には限度というモノがある事を!アハハハ!屈辱的でしょう?ここまでの怒りもないでしょう!栄えも誉れもない怪魔達に押し潰されて、惨めにも窒息し死ぬのです!英雄にとってこれほどの恥はありますまい―――!」
愉快だと、滑稽だと笑い飛ばすキャスターの声等、セイバーにもランサーにも聞こえてはいなかった。
セイバーの右手が上がる、その手に携えられているだろう黄金の輝きを今再び眼にするだろう事に、ランサーは確信していた。
そして、その手が振り下ろされんとした時―――――
(む…っ?)
――――何かが、キャスターの背後に、見えた気がした。
「っ!?―――――――誰だ、貴様は!!」
「セイバー!?」
瞬間、迸った怒号にランサーは息を呑んだ。
冷静さを失っていなかった筈のセイバーの表情に、確かに浮かぶ激情の色に驚愕する。
同様に、キャスターもまたその表情にハッ、として咄嗟にその場から身を翻していた。
「ひぃぃっ!?」
その次の一瞬に、見えたのは翻ったキャスターのローブを切り裂いた腕だった。
全く気付いていなかったその【敵】の攻撃に、キャスターも自らの危険を悟らされたのだろう。
急いでその場から離れると同時に、怪魔の群れが【敵】とキャスターの間に割って入る。
―――そうして、その青年の姿が、彼等の眼前に晒された。
…………ソレは、今までにあった事のない、サーヴァントだった。
肩口ぐらいまでの銀の髪、その表情はこちらを向いていないからこそ視えないものの、朱い血が所何処についた白い装束に眉を潜めた。
明らかに自分のモノではないだろう、まだ真新しい鮮血は誰のモノなのか?その身体を包むように湧き上がっているのを感じさせる【感情】が、眼に見えるような気がした。
そしてランサーは気付かされる、この青年こそ、あの【咆哮】の主なのではないのかと。
そんなランサーの思考を遮るように、青年は苛立たしげに舌打ちすると、静かにその場に立ち背後のセイバーへ向けて吐き捨てた。
「…あと、少しだったのに…邪魔をするな。」
「っ…黙れ!」
そのセイバーもまた、青年を明らかに警戒していた。
キャスターを襲った事から見ると、彼はまだセイバーに敵意を向ける事は無いというのに、何故ここまで過剰に反応しているのか。
「セイバー落ち着け!今はキャスターが先だろう!?」
「っランサー…しかし…!」
歯を噛みしめ喰いしばる様子に、彼女と青年が因縁でもあるのかと思いそうになるが、【誰だ】と聞いた時点でそれはないのだろう。
ランサーもこのある意味四つ巴になりそうな状態をどうすればいいのかと、思ったその時―――
「お、の、れぇぇぇぇ……………………!」
キャスターが、憎悪に目を見開きこちらを見据えている事に気が付いた。
「おのれええええええええええええええええええぇぇぇぇっ!!神め!ジャンヌと私の逢瀬を邪魔するに飽き足らずこの命を奪い再び私達を引き離そうとするとは!赦さん!絶対に許さんぞこの神の先兵めが!!私が彼女と結ばれるのだ!ジャンヌは私が救うのだ!私が彼女を今度こそ守り愛し慈しみ貴様らの手に何ぞ渡さんぞ神め!一度ならず二度までも私からジャンヌを奪うというのか!神めええええええええええ!!!!殺してやる殺してやる貴様ら全員ジャンヌから離れろ!!!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!死んでしまぇえええええええええええええええええ!!!」
爆発するかのような絶叫に呼応するように、今までの怪魔の屍から新たな数の怪魔が溢れかえった。
その数はもはや数える事も億劫だ、いや、数えている暇などない。
「セイバー!来るぞ!!」
「くっ…!」
逆上したキャスターは完全に我を忘れているようだ、ランサーやセイバー、そして青年のサーヴァントに仕向ける怪魔は互いを押しのけるようにして襲ってくる。
「神…?はっ、笑わせるな……俺だって、神様なんて大っ嫌いだ。」
そんな中、新たに表れたサーヴァントはただ見下すようにそう嗤ったのだった―――――――――
*****************************************
出逢ってしまった2匹の竜。
怒りに震える心は同じモノを敵として見ていた。
されど、その根底にあるモノは、決して相容れる事は無い。
その【衝動】が、心と理性を凌駕する。
しかしそれ以上に、自身が相手を認められない。
片方が相手を願いの脅威と見做し、排除したいと拒絶するなら。
片方は相手に受けれられぬ意志を持ち、その在り方を否定する。
ああ、なんて哀れな似た者同士、けれど決して同じではない。
どんな形であれ、必ず出会えばその結末は――――――――
(……その感情の片隅にあるのは、きっと、相手に対する■■だけ)
NEXT
【後書き】
皆様こんにちは、駄作者です。
今回は、咆哮を聞いた各陣営の様子パート2をお送りしました。
ケイネス先生出撃&出逢ってしまったドラグーン&セイバー(+ランサー)のお話。
完全に初対面最悪のセイバーとドラグーン、ぎすぎす空間に巻き込まれたランサーはマジ幸運Eです。
キャスター?彼は最初から誰とでも(龍ちゃん以外)好感度低いから問題ないですよ。正気でもないしね!
なんでドラグーンの奇襲がバレタのか?それはセイバーは直感スキルがあるからです。
そして、ランサーは?といえばこれはもう……幸運何て時の運だよね、ぶっちゃけDもEも大差ないよね。
結局ドラグーンも冷静さ欠いてたし、本来のステータスじゃないから影だけでも見つかったら意味ないよね!てな理由でした。
まぁキャスターに気付かれたのはセイバーのせいですが。
次回、セイバーとランサー&ドラグーンのキャスター討伐ルート突入。
しかしキャスターは完全に本気で来てるからオリジナルよりも血みどろ空間です、見る人はご注意を!
そろそろ雁夜おじさん達も活躍させないと…人妻と愛人?今頃麻婆と戦ってると思うよ。
それでは閲覧ありがとうございました!!
今回のBGMは、【「金色の夜想曲 Golden Noctune」片霧烈火】でした。
※感想・批評お待ちしております。
オマケ
作者は色々とバサドラ陣営にイメージを持っています。
その中に唄やら花言葉やらあるので、ちょっとご紹介します。
今回はイメージに合ってる花です。
とはいえ、今の物語の展開もあるので、終盤で変化するかもしれません。
花言葉を探してみると、面白いかも…?
・間桐雁夜
●竜胆
●ニゲラ
●アマドコロ
・バーサーカー
●トリカブト
●マツムシソウ
・ドラグーン
●彼岸花(曼珠沙華)
●クロユリ
皆さんもこれじゃないか?と思うのがあるようでしたらご意見もらえると嬉しいです。
もしかしたら、番外編とか短編に出るかも…?