たとえ、世界を滅ぼしても ~第4次聖杯戦争物語~ 作:壱原紅
閲覧は自己責任となり、気分が悪くなった、精神的に不快感がする。
等の症状につきましては、作者ではどうする事も出来ませんので、どうかご了承くださいませ。
※注意
こちらの小説にはオリジナルサーヴァントが原作に介入するご都合主義成分や、微妙な腐向け要素が見られますので、受け付けないという方は事前に回れ右をしていただければ幸いでございます。
尚、しっかりとこの場で警告をさせていただいているので、受け付けないという方は無理に入る必要はございません、どうかブラウザバックしてくださいませ。
今回はアインツベルンの森のお話、その⑥。
ドラグーン乱入によりセイバーとランサーはキャスターを追い詰める。
果たしてキャスターの運命は?そしてこの先にどんな展開が待ち受けているのか―――
ほんの一瞬の迷い、ソレは時として取り返しのつかない過ちを引き起こす。
すり抜けるように逃げていく敵は己が主の機転にほくそ笑む。
その事態はある意味で必然だった―――歪なれど絆を育む者達はいるのだと、育めぬ騎士は苦汁を呑む。
―――一瞬の惑いで人は機会を失うモノ。
多くの事態は一度に襲い掛かってくる時もあり、対処する事が難しい時もある。
それは不測の事態であろうと、予想の範囲内であったとしても、出来るか出来ないかは別の話なのだ。
だが
もし、それが【故意に】引き起こされたとしたら、どうなるのだろう?
悪意の意思を持つ者が、無意識にでも手伝うような事をしてしまったのだとしたら?
その責任は果たして追及するべきなのだろうか、それとも無意識故に不問に処すべきなのか?
それもまた、【運命の悪戯】というべきなのか。
どうか、間違わないでほしい、騎士達よ。
【今】、貴方達が優先しなければならない事は何なのかを、忘れないでくれ―――
その怒りと焦りの矛先は、一体どこへ向かうのか。
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<SIDE/雨生龍之介>
――――ある下水道の奥深く、その惑いの声は響き渡っていた。
「ど、どうしよう…旦那が、旦那がピンチだよ…やばいって!」
1つの水晶球を覗き込みながら、心配そうで不安そうな顔をして、心から悲痛な色を宿して青年が叫んでいた。
誰が知ろうか、その青年こそ此度の聖杯戦争最後のマスター、キャスターのサーヴァント、『ジル・ド・レェ』のマスターである。
名を『雨生龍之介』という彼は、キャスターを己の芸術の師として仰ぎ、何よりも同じ狂気を持ちながらそれを理解しあえる【
まさに、キャスターと出逢えたことこそ運命であり、己の人生最大の幸運だと信じている。
そんな、己の師であり、誇りであり、心から信頼に値する相手が未曽有の危機に瀕している―――!
龍之介にとっても、これは見過ごせぬ一大事であった。
こうなると分かっていたのならば、無理にでも一緒に行けばよかったと歯噛みする。
「今宵は、我が
「ちくしょう!旦那、旦那ぁ!!逃げてくれよ!そいつらから逃げてくれ!!あんたが殺されちまうなんて嫌だ!!」
何も出来ない。
水晶球に叫んだところでコレが声を伝えてくれる事はなく、ただ覗き見する事しか出来ないと知っているからこそ、龍之介の声は悲痛さを増した。
「なぁ神様!!旦那は俺の特別なんだよ!アンタは旦那に嫌われてるみたいだけど、俺と旦那を合わせてくれたんだっ!!お願いだ、もう一度【奇跡】を起こしてくれよぉおおおおおおおおおお!!!!!!」
水晶球に映るキャスターが追い詰められていく。
あと少しすれば、自分が見たくもない光景を映すと気付いてしまう。
恐怖する、だから龍之介は腹の底から力強く叫んだ、手を振り上げ嘆くように天を仰いで。
己とキャスターを巡りあわせた【神】へ。
そうして
それがまっとうな神かどうかはさておき――――――――――――祈りは届く事となる。
「っ!?いっつぅ…!」
その瞬間、龍之介の右手に痛みが走った。
見れば、その手に刻まれた3つの刻印の1つが光を放っている。
「…?こ、これ…光ってる…?」
赤い光、強い輝きが語りかける。
【望みを叫べ】と、その望みを叶える【力】がここに在ると。
「――――っ!粋な演出してくれるぜ神様!そうこなくっちゃ!!」
深い理屈等考えず、龍之介は笑みを零した。
これはきっと神様が自分とキャスターへくれた【奇跡】なのだと。
疑う事無くそう信じると、その【奇跡】を使うべく龍之介は―――――
「旦那ああああああああああああ!ここは戦略的撤退だぁ!【俺の所に戻ってきてよ】!!!」
―――――――――誇らしげに、高らかにその
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<SIDE/ランサー>
追い詰めたキャスターへ槍の穂先を向ける。
歯を喰いしばり、ギリギリとこちらを睨み据えるその表情には明らかな焦りがあった。
それも当然だろう。
自身の宝具を完全に破られ、3体のサーヴァントに追い詰められているのだ。
この状況でまだ笑っているのならば完全に気が触れているのだと思ったが、どうやら状況を把握出来る程度にはキャスターは正気だったらしい。
「覚悟しろキャスター、ここでお前の首を取る。」
「おのれ…おのれぇっ!ジャンヌ、ジャンヌを救う手立てがこのような形で潰えるだと…!?貴様ら如きにジャンヌの救済を邪魔されるなどぉおおおおお!!!」
「ふ…笑わせる、まだ騎士王をジャンヌ・ダルクと間違っているのか?セイバーはブリテンを治めた王だと何回言わせれば気が済むのだキャスター。」
怒りにその顔を歪めて睨んでいるセイバーへ手を伸ばしながら、今も世迷言を口にするキャスターに辟易する。
自分の近くにいる銀のサーヴァントも、冷たい眼をしているがその顔は呆れきったモノになっている。
この期に及んで、最期までセイバーを人違いしたままとは、ある意味感服モノだ。
――――――だが、どうやら彼等はキャスターへのトドメを槍を突きつけている自分に任せるつもりのようだ。
(主、ご命令頂いたキャスター討伐、このディルムッドが果たします!)
ならば躊躇う必要はどこにもない、目の前で未だ錯乱しているキャスターになす術はない。
【
<―――――ッ!!>
「!………ある、じ?」
――――その、声なき悲鳴に、ほんの一瞬だけ手が止まった。
「な―――ッ!あ、主ッ!?」
同時に、己の主が危機に陥っているのだと気付いてその方角をバッ、と振り仰ぐ。
パスによる声も何もしないが故に、ケイネスが自分の戦いを監視しているとばかり思っていた。
それなのに、ケイネスは自分が気付いていないその時に他の敵と戦っていたのだと、やっと気付いたのだ。
その、致命的な隙をランサーが見せたと同時に、ソレは起こった。
――――――――――――カッ!!!
強い光がキャスターから放たれる。
視界を染める白い光、その光はキャスターを包み込んでいく。
「!?これは…」
「令呪―――!?キャスターのマスターか!!」
「くっ……逃がさんぞキャスターぁあああ!!!」
自分の見せてしまった隙を悔いるが遅い、セイバーと銀のサーヴァントの声が響くのを聞きながら、全力で消えゆくキャスターに槍を突き出した。
だが、それを甘んじて受けるようなキャスターではなかった。
「くくくく……!龍之介、今戻りますよ――――!」
キャスターの手の中の【
そして、よりにもよってその宝具から生じる魔力を一気に暴発させた。
「ぐっ…!!」
制御されないまま爆発的に放出された魔力が、大地を染める血溜りに干渉して一気に溢れだす。
たちまちに辺りをドス黒い血霧が染め上げ、視界を遮る様に森の中へと充満していく。
セイバーや銀のサーヴァントも視界を封じられて身動きが取れない。
当然、ランサーも同様に視界が塞がれ槍の軌道がキャスターを外してしまっても、もうその姿を捕えられない。
「………逃げられて、しまったか…!おのれ、どこまでも卑劣な奴め。」
苦々しげに呟くセイバーの声がしたと思うと、一気に視界が清涼な風によって払われる。
彼女の宝具が、辺りの血霧の穢れを周囲から吹き払っていくのに数秒もかからなかったが、その場のサーヴァントの視界が回復した時にはキャスターの影も形もなかった。
そうして―――――捨て台詞も何も残さないまま、キャスターは己のマスターの機転によってまんまと逃げおおせてしまったのだった。
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<SIDE/セイバー>
――――――まさか、あそこまで追いつめておきながら逃がしてしまうとは。
狂気の笑い声をあげながら、最後に勝ち誇った声で己のマスターの名を呼んで消えたキャスターに対する苛立ちを隠す事無く、ギリッ!と手を握り締めた。
辺りに広がっている血溜りに、自然と助けられなかった幼子達の泣き声を思い出させる。
だが、それを悔いる前に確認しなくてはならない事があった。
あのタイミングで、ランサーがみすみすキャスターを取り逃がした事が気にかかった。
「ランサー、どうかしたのか?貴方の主に何か…」
彼の血相を変えて叫んだ言葉を問い掛ける。
明らかに何かがあったのだと、一目瞭然な行動が気にかかったのだ。
その声に言いにくそうにすると、ランサーが言葉を返す。
「…我が主が、危機に瀕しているようだ―――どうやら、俺を残してそちらの本陣へ切り込んでしまったようだ。」
この言葉に何が起こったのか理解した。
自分のマスター、切嗣がランサーのマスターを襲ったのだ。
(結局、全て切嗣の思い通りに事が運んだという事ですか―――)
正直不本意だった。
そのような事をしなくても、自分とランサーは一対一で戦うと誓っている。
確かに切嗣の戦い方を全て否定するつもりは自分にはない、だが、彼が行う罠はどうあっても認められない。
それは、自分が持つ、騎士としての信念からの想いだった。
「……ランサー、それは私のマスターの仕業だ。私に構うな、急ぐがいい、己が主の救援に向かい速やかに救ってくるといい。」
「!…セイバー…」
「………」
躊躇う事無くそう言い切った。
ランサーの眼が見開かれるのと、銀のサーヴァントが少し驚いたような顔をするのを毅然と見つめる。
彼等が言いたいのも分かる、これはどう考えようと自分のマスターへの造反も同然だと。
ランサーのマスターが殺されるなら、それを是として足止めをするのが本来の役割だと。
だが
ならばランサーが自分を助ける理由など、どこにあったというのだろう?
彼は自分が愚かだとは言わないだろう、そして、自分もまた彼に道を譲るのが愚かだとは思わない。
その想いを、ランサーは解ってくれたのだろう。
「騎士王、忝い。」
「良い、我等は騎士としての決着を己の誇りに誓った、共にその意思を貫こう。」
ランサーはその言葉に頷くと、霊体化して姿を消した。
彼の気配が一気に城の方へ向かっていくのを感じ取ると、視線をもう1人のサーヴァントへ向ける。
驚いていた顔は、既に無表情に近かった。
その穹色の眼が、ただ何とも言えない感情を宿しているような気がした、その時。
「何故ランサーを行かせた?お前はそれで自分のマスターが殺されてもいいのか?」
こちらを見据えながらかけられた、訝しげな問い掛けに苛立った気持ちが刺激された。
「どういう意味だ…貴方には関係のない事だ。」
「どういう意味も何も、ランサーがマスターに命じられてお前を裏切らないと思うのか?
俺がランサーのマスターなら、お前が傍にいないセイバーのマスターなんて【今が好機だ!】と言って攻撃させるぞ。」
「ランサーはそのような事はしない、彼は騎士だ!」
「【ランサーは裏切らない】、か…だが、あの倉庫街でランサーに令呪で命令しようとしたマスターが、【また】そうしないと何故言い切れる?ランサーがいくら拒もうと、令呪を使われれば抵抗しても無意味だぞ。」
「っ…それ、は…」
正論だった。
確かにランサーは違っても、そのマスターは好機と考える可能性が高い。
だが、その意見を聞くのは、今まさに自分が選んだ選択を否定されているのを認めるようなものだった。
「―――貴方には、関係ありません。
私とランサーが騎士の誇りを持って決着をつけると誓い合っている以上、それに嘘は許されない。
私達は裏切らない、ランサーのマスターとて自分を助けに来たランサーを無下にする必要はないでしょう。」
「………………それが、お前の答えか。」
「っ!?待ちなさい、何処へ行くのです。」
静かに、こちらの返答へそう返すと【彼】は踵を返す。
そのまま足を進めようとしている先に、思わず声をかけた。
そのサーヴァントが行こうとしているのは、ランサーが走った方角と同じ―――――アインツベルン城だった。
「?……おかしな事を言う、私が何処に行こうとしているかなど、それこそお前には関係のない事だろう。」
「ふざけるな!その方角はランサーが向かった…私のマスターのいる方角だろう!」
「―――だから?それが何か問題があるとでも言うのか?私が【自分のいるべき場所】へ戻ろうとしているだけだろう。」
「っ…まさか!?」
そして悟らされた。
このサーヴァントは明らかなイレギュラーである、だからこそ、そのマスターもまたいる筈なのだ。
なら、このサーヴァントがこの森にいるのはキャスター討伐の為、そして、ランサーのマスターと同じような事を彼のマスターもしていたのだとしたら―――
(彼のマスターもこの森に…っ、切嗣を2人のマスターが襲撃しているというのか…!)
―――自分はランサーをそのマスターの元に行かせただけではなく、このサーヴァントのマスターの手助けをしてしまいかねない行動をしてしまったのだ。
もし、切嗣がランサーが来た事に気を引かれて、もう1人のマスターに襲われれば無事ですむ可能性は低くなる。
確認しようにも、切嗣は自分とのパスでの会話をしようとしない。
無視されるだけで意味がない為に、この手段での確認が出来ない。
なら――――――――今自分がするべき事は、このサーヴァントを足止めするか倒すのみ!!
「――成程、それなら余計に貴方を行かせる訳にはいきません。」
「…何?」
こちらの不穏な空気を感じ取ったのか、顔だけでこちらを振り返る姿に剣を構える。
「貴方のマスターが私のマスターを狙っているかもしれない状態で、みすみす見逃す理由等ないと言っているのです。このままこの場を立ち去れるとは思わない事ですね、イレギュラーのサーヴァント。」
「正気か?お前の左手は使えないんだろう…それに私よりもキャスターとランサーを優先するべきじゃないのか?」
「―――いいえ、貴方は正式なサーヴァントではない、貴方もこの聖杯戦争を乱す存在と見做せます。
何より、貴方はキャスターよりも危険だ……私はそう判断する。」
「冗談は止めてもらおうか―――私に、お前と戦うつもりはない!」
その声と同時に、目の前のサーヴァントが動いた。
こちらに向き直ったかと思うと、正面から突っ込んでくる。
「っ!戦う気が無いといいながら―――!」
迎撃する為に構える。
真剣な表情をした銀の英霊に、その穹色の瞳を睨む。
目の前に迫る姿に剣を振り下ろそうとして―――――――
ひょい、と真横を通り過ぎられた。
「……………え?」
避けられた、それはいい。
だが、そのまま気配が立ち去ろうとするのに気付いて、胸の奥で怒りが膨れ上がった。
「き、さま――――逃げる気か!!!」
バッ!と振り返り追いかけだす。
霊体化しようとする背中へ全力で追いすがる。
怒りに任せて一撃振り下ろそうとすると、霊体化するのを諦めて逃げるのに怒りが募った。
(戦いを拒否した挙句逃げ出すなど―――!)
絶対に、たたっ斬る。
そう決めると、使えない左手をそのままに、右手に剣を握り締めたまま全力で疾走しだした―――――
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<SIDE/ドラグーン>
――――――よりにもよって、相性の悪い相手に追い回される羽目になるとは思わなかった。
そう内心で舌打ちをしながら、最初の一撃を躱したドラグーンは全力で森を疾走していた。
その背後から少し離れつつも、引き離す事が出来ないセイバーが追いかけてくる。
雁夜達の様子を見に行こうとして、幾つか会話をしたら突然襲い掛かって来る等想像もしていなかったのだ。
もし、セイバーが自分の女マスターを優先するのなら、先に拠点に戻るのだとばかり思っていた予測を完全に外されて正直驚いた。
だが自分の発言の何が、そこまでセイバーを刺激したのかは今一分からない為に、今は逃げるしかない。
本来の自分なら彼女をいなすぐらいは出来るのだが、魔力も足らない状態で最優のサーヴァントと当たるつもりなどドラグーンには端からなかった。
……だが、この状態は長くは続かない事を、お互いに分かっていた。
「っ!」
不意に生じた嫌な感覚を信じて、そのまま振り返らないで跳ぶ。
その横を、振り下ろされた剣が過ぎ去るのを見ながら、また走る。
(……まずいな、雁夜の魔力を使いすぎたくないから俺は【本気】で逃げれない。
だがセイバーはマスターが健在だし、魔力の消費にそこまで気を遣わなくていい――――このままだと、その内斬られる。)
幾度か、背中を狙う様に振り下ろされる剣。
まるで親の仇でも追っているかのような殺気に焦る。
セイバーは明らかに、自分を逃がすつもりがないのだろう。
騎士である筈の彼女が、逃げる相手を追い回して背中に剣を振り下ろそうとする等、相当な事態だと分かる。
しかしこれでハッキリした―――――どうやらセイバーは、逃がしたキャスターよりも自分をどうしても殺したいらしい。
(…理由に、心当たりがないわけではないんだがな…!)
逃げながらも必死に頭を回転させる、その理由についても些か雑にだが纏め上げる。
あの女剣士と自分の共通するであろうモノ―――決して、簡単に持ち得れる事は無いモノ。
間違いなく、彼女と自分は【同じモノの魔力回路】を有している。
ソレがどういう訳か共鳴でもしているのか、お互いに威嚇でもしているのか、嫌な衝動として急かしているのだろう。
【殺せ】と、【アレは敵だ】と。
同じ力を持つ者同士、ある種の同族嫌悪とでもいうのだろうか?
その衝動にセイバーは確実に呑まれている、自覚がないのだから防ぎようもないのだろうがコレは予想外だった。
霊体化すればいいのだろうが、ソレを見逃すような相手ではない。
一瞬の動きを止めるような行為を行えば、一息に踏み込んで斬り伏せようとしてくるだろう。
――――たかが一撃、と受けるのはいいのだろうが、それでは後々【面倒くさい事】になりかねないのも、ドラグーンの決断を遅らせていた。
「逃がさない!」
「っ…!」
考えながらも、再び声と同時に振り下ろされた両手剣を避ける。
肩を狙った一撃は、間一髪で躱す事が出来たが、すぐに距離を離そうと逃げるも追いかけて来る為に振り切れない。
(……もっとも、この女の様子からするとそれだけでもなさそうだが…正直このままだと雁夜達の所まで付いて着かねないのが面倒だ!何か手は無いか…何か…!)
思いつく手段は限られており、今のままでは限界が訪れるのも近いと分かっている。
だからこそ、もう堪忍してわざと一撃を受けて霊体化するべきなのだと、頭では分かっているのだ。
(…っもう、どうしようもないのか…っ)
歯を喰いしばり、背後から付いてくるセイバーを後ろ眼に睨むと覚悟を決める。
それしかない、受け入れるしかない。
たとえそのせいで…………【己の正体】に気付かれる事になるのだとしても。
共にこの森に来ている、雁夜とバーサーカーまで巻き添えにする訳には、いかないから。
そうして、そのまま振り返ろうとドラグーンが足を止めようとした、その時――――
<やめろ!!>
――――空から急降下してきた黒い影が、セイバーの頭上を目掛けて襲い掛かった。
「っな…!?」
突然の上空からの攻撃にセイバーの足が止まる。
その視界を遮るように周囲を旋回し飛び回る影が、彼女の視線を奪う。
「くっ!こ、これは…!?退きなさい!」
払いのけようとしているが、その正体に驚いているのだろう。
当然だ、相手は先程の怪魔共とは違い、【何の魔力も纏っていない】のだから。
魔術と無関係の相手が、突然サーヴァントに向かってくるなど予想外でしかないだろう。
セイバーとしても、一体何が起こったのか理解出来ていない。
剣で払いのけるという訳にもいかないのか、足を止めてその行動に戸惑っている。
そして、同時に生まれたソレは、自分が待ち望んでいた【一瞬の隙】だった。
<はやくきえろ!>
「っ!お前も逃げろ!!」
セイバーの気が逸れた、その一瞬。
彼女には聞こえる事のない、その影の声が促すままに霊体化する。
その際に叫んだ声に気付いて、セイバーがこちらを見るがもう手遅れだ。
こちらが霊体化して完全に見えなくなると、影もセイバーから離れて全力で空へと逃げ出していく。
「待て――――っ!?」
それでも追ってこようとしたのか、
セイバーがこちらの気配を辿って走り出そうとするも、
何かに気取られたように足を止めたのが、ドラグーンの最後に見えた光景だった。
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――――振り下ろされた剣に、その邂逅は幕を閉じた。
分かり合えないのは、何故なのだろう。
分かろうとしないのは、何故なのだろう。
分かりたくない――――――――それは、果たしてただの嫌悪からだったのか。
お互いの言の葉に、きっと間違いはない筈なのに、思いはすれ違うばかり。
真意を告げるのを躊躇うのが怠慢だというのなら、全てを話す事が義務なのだろうか?
けれど、だからと言って【真実】を全て語る事は不可能だ。
(いつだって、真実が貴いモノとは限らないのだから。)
彼等の間にある溝は、決して軽いモノではなく。
お互いの背負う【意思】故の違いでもあるからこそ、重い。
―――――――――今はただ一時の幕引きを、いずれ再びぶつかり合う時に、その真意は交わされるだろう。
NEXT
【後書き】
こんにちは駄作者です。
今回は、咆哮を聞いた各陣営の様子パート3をお送りしました。
キャスターに逃げられてしまったドラグーン&セイバー+ランサー。
キャスターに逃げられるしランサーとはあんま話せないしセイバーに追い掛け回されるしドラグーン本気で散々な眼にあってますね(汗)
次回、少し時間が戻って、雁夜おじさん&バーサーカーのお話。
果たして同盟は出来るのか!?しかしセイバーのマスターだと思ってる人は城にはいないぞどうする!?
負けないで、ケイネス先生!貴方の魔術回路が大ピンチ…このままキリッツグにセダーンされてしまうのか?
【第一回、アインツベルン城攻防戦――(彼の決断)】お楽しみに。
それでは閲覧ありがとうございました!!
今回のBGMは、【Verite et Mensonge ~嘘つきナレットの優しい暗殺者 feat_片霧烈火】でした。
※感想・批評お待ちしております。
オマケ
前々回の話にも書いてましたが、今回は作者のバサドラ陣営のイメージソングを掲載。
一度聞いてみてもらえると嬉しいです。
・間桐雁夜
【さやかのテーマ (魔法少女まどか☆マギカ)】―――切ない旋律が悲しい程一致しています、色んな意味で。
【ワタシのタメのセカイのアリカタ (片霧烈火)】―――最初から最後まで、叫んでいたのはなんだったのか。
・バーサーカー
【後宮のタイヨウ (片霧烈火)】―――愛した女性は王の妃、狂気の底へ堕ちる、結局望んでいたのは何だろう?
・ドラグーン
【Lacrimosa (Kalafina)】―――彼の人生の印象にピッタリすぎて鳥肌モノですので、是非一度どうぞ。
【Colors of the Heart (UVERworld)】―――祈りは遠く、願いは悲しく、かつて抱いたのは1つの夢…
・バサドラ陣営全体
【茨の海 (鬼束ちひろ)】―――間違っていても構わない、という男達の歪な意地と覚悟のカタチの唄。
【夢遥か(Duca)】―――その先に行きたい、終わりが穏やかであるのを祈り、明るい未来へ。
・この【たとせかシリーズ本編全体のイメージソング】
【Red Moon (Kalafina)】―――彼等の行く末は何処なのか、絶望かそれとも……な唄です。
【Lunatic Tears (11eyes)】―――戦いの夜は続く、走り抜けた先に在るのは、未来だろうか?
皆さんのイメージソングってありますかね?また教えてくれる方がいると嬉しいです。
それではー