東京レイヴンズ~神の契約者~   作:エンジ

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第二章 再会と祭り

 

「えーっと……なんでこっちにいるんだ?」

 

「……今日から夏季休暇だから」

 

「ああ、それで帰省したのか」

 

「うん……」

 

淡々と話す二人の間には、何か深い溝のようなものがあった。それは、きっとこの三年間によって、生まれてきたものなのだろう。

真はなんだか気まずくなり、とっさに呟く。

 

「……入るか?」

 

「……うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天道家分家に祭ってある観音様が二人を見据えているような感覚だ。

二人の周りには、大量の畳が敷いてあり、その広さは七十畳ほどだ。

ここは、普段宴会などに使う大広間であるのだが、どこに連れていけばわからずにここへ来てしまった。

 

向かい合って座る二人の間には会話がない。静寂だけが二人を包んでいく。

今の二人にとっては、痛い静寂だ。

すると、真がその静寂を破って口を開く。

 

「……こっちにどれくらいいるんだ?」

 

「……一週間くらい」

 

「そうか。やっぱり陰陽塾は忙しんだな。休暇が少なくて大変じゃないか?」

 

「いや、そんなことは……ないよ」

 

「そ、そっか」

 

再び会話が途切れる。

真は何か話題がないかと、必死に考えをめぐらすが、残念ながら何も浮かばない。いつもなら、ぽんぽん出てくるのだが、いつもの調子で話せないのは二人の間にある隔たりが原因なのかもしれない。

 

対して流華は、体育座りをしながら、畳をじっと見つめていた。その表情は心なしか怒っているようにも見える。

真はそんな流華の容姿をまじまじと見つめる。三年前よりも、成長しているのが一目見ただけでわかった。

誰が見ても美少女と思わせる彼女は、はっきり言って男子に人気があるだろう。だが、それはあくまで外見の話だ。

その美しい容姿とは裏腹に、ものすごい努力家で、怠けている奴がいたら絶対に許さないような、善く言えば正義感が強い、悪く言えば自分勝手、というような少女なのだ。

 

「陰陽塾はどうだ?」

 

「……うん、大変だけど楽しいよ」

 

「そうか。それは良かったな。……クラスメイトは知ってるのか?流華が十二神将だってこと」

 

「うん、知ってるよ。でも、私の力は倉橋さんに封印されてるから、実力は普通の塾生と同じだけどね」

 

「そっか、大変なんだな。まあ、国家一級陰陽師様なら楽勝か」

 

真は笑い出す。しかし、そんな真とは対照的に流華はやはり少し怒っている。

その理由はなんとなく真にもわかっていた。

 

「えーっと、陰陽塾には慣れたか?……って、その様子じゃ慣れてるに決まってるか」

 

「……うん。陰陽塾は問題ないんだけど、『しきたり』が……」

 

その言葉を聞いた瞬間、真は心臓の鼓動が早まるのを感じた。

天道家本家においての『しきたり』。それは、分家の者を式神にするということだ。真以外にも分家の人間はたくさんいるのだが、その人たちの要望を何故か流華は拒み続けている。

きっとそれは、昔にした『約束』を守っているからなのだろう。

真は早まる鼓動をおさえながら、口を開く。

 

「……そのことなんだけど、なんで俺にこだわるんだ?」

 

「え?」

 

「だってさ、俺はなんちゃって見鬼だしさ、呪力も全然強くない。ほかの分家の人なら優秀な人がたくさんいるし、それに今のお前の実力にも合ってると思うぜ。もし、子供の時の約束がお前のブレーキになってるんなら、それは忘れたほうが有益なのはお前が一番わかってるだろ?」

 

真は正直な気持ちを流華に伝える。

真の言っていることは、正直正しい。今の流華は陰陽塾塾生だが、同時に国家一級陰陽師でもある。

国家一級陰陽師は、日本の国民のために活動している。つまり、実力がなければだめなのだ。すなわち、天道家分家の落ちこぼれである真ではなく、そのほかの優秀な分家の者を式神にするのが日本国民のためであり、何より自分のためになる。それを、『昔の約束』という理由で受け入れないということは、人間としては正しいのかもしれないが、陰陽師としては失格だ。

 

真は流華を見据える。だが、一瞬で息をのんだ。

なぜなら、流華が明らかに怒っているからだ。彼女は彼女自身の何かがプツンと切れたように、その場に立ち上がる。

真は何が何だかわからなかった。

流華は真を上から見据えると、冷ややかな嘲笑を浮かべて口を開く。

 

「そうだよね。君みたいな意味のない日々を送っている落ちこぼれよりも、私のために尽くしてくれる優秀な人のほうが、何百倍も有益だよね」

 

真は、自分から言い出したくせにカチンと来ていた。思わず立ち上がる。

 

「相変わらずの性格だな。昔となんも変わってない」

 

「そう、でも事実でしょ?」

 

「……さすがは天才さんだな。言葉に重みがあるぜ」

 

「事実を口にするのは天才も凡人も関係ないと思うけど。それに、何の努力もしないで生きてきた君が、どうこう言う権利なんてないよ」

 

頭一個分ほどの身長差でお互いの視線がぶつかり合い、見えない火花を散らしていた。だが、分が悪いのは真の方だ。

いくら正論を言ったって、約束を破っているのは真側であり、何の努力もしないでのうのうと生きてきたのは、真自身だ。

 

「そうか……だったらこれで、お前と会うことも無くなるな」

 

だから、苦し紛れに毒づいた。

しかし、てっきり流華は「それはこっちのセリフ!」と怒鳴ると思っていたが真の予想した反応を大きく裏切った。

その言葉を聞いた流華は、何故か大きく目を見開き、目元を赤くしたのだ。

 

「………うそつき」

 

「え?」

 

流華はそのまま、廊下を走っていく。

かろうじて聞き取れた少女の言葉は、真の心に深く突き刺さっていた。

小さくも、鋭い刃。

真はただ茫然とその場にたたずむことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日は花火祭りに相応しい快晴になった。

祭りの場所は、市のはずれにある神社とその裏にある河川敷だ。立ち並ぶ屋台と祭りの客の熱気で、日中から続く暑さに変化がない。途切れ途切れだが、微かに祭囃子が聞こえてくる。

 

「……半年ぶりと三年ぶりに出くわした、本家の天才児と口喧嘩ねえ」

 

石塀に寄りかかったまま、冬児は半分あきれ、半分おかしそうに言った。

三人は朝補習の帰りに待ち合わせ場所に来ていた。時間に厳しい北斗だが、まだ顔を見せてはいない。

北斗が来る間に、真と春虎は昨日の出来事を冬児に話していた。もともと、二人は話すつもりがなかったらしいが、二人の様子の変化に冬児が見抜いたのだ。また、このさぼりマスターは他人から話を引き出すのがうまく、気が付けば二人は過去に起きたことまで全部喋らされていた。

 

「正直どう思う?」

 

「お前らダサいな」

 

「「はぁ~」」

 

「ナンパの時はお前らを外そう」

 

冬児は冷ややかに笑う。このさぼりマスターは気持ちのいいくらいにストレートに言ってくる。二人は忌々しく見上げた。

 

「そりゃあ、最後は大人げなかったけど……先にふっかけてきたのは向こうの方だぜ?」

 

「俺は……どっちもどっちだったかな」

 

「どっちが先だろうと関係あるか。女と口でやり合ってる時点でアウトだ」

 

涼しい顔をしている冬児は容赦なく言い放つ。二人には弁論する気力さえ残っていなかった。

 

「にしても、さすがは旧家だな。お前らの家に生まれてこなくてよかったぜ」

 

うなだれている二人を余所に、冬児は皮肉っぽく呟く。

式神とは陰陽師の操るしもべ。その意味は術者が意のままに使役する鬼神というものだ。

 

「お、待てよ。てことは、夜光にもいたわけか?そういう式神が」

 

「さあ?まあ、いたんじゃね?知らねえけど」

 

「じゃあ、お前ん家は?」

 

「俺も知らないな。でも、俺ん家は代々土御門に仕えてきたんだし、たぶん昔にそれを習って、同じようにしたんじゃね?」

 

そうかと冬児はつぶやく。そんな中、春虎が口を開く。

 

「てか、人間を式神にするってどうよ?人権無視してんじゃん!てか、人間として扱ってないし!」

 

式神は呪符を用いる符術と並び、陰陽師の代表的なパートナーというイメージがある。パートナーといえば聞こえはいいが、悪く言えば下僕や奴隷あるいは<道具>ですらある存在だ。

 

「人間を式神にするなんてよくあることさ」

 

「「適当なことを言うな!」」

 

「まあ、式神なんて今で言えば、スポーツチームの監督と選手だって似たような関係さ。……ま、絶対服従ってとこが少し違うが」

 

「何が少しだ!そこ、超重要だろっ!?」

 

真の脳裏に昨日のやり取りが浮かぶ。キレた時の冷酷な態度の流華。そんな流華に絶対服従?あんなのに服従したら、命が何個あったって足りない。

 

「「………」」

 

「……ま、一度の失恋でくよくよするな。女なんていくらでもいる」

 

「なんでそうなる!」

 

「誰が失恋したって?」

 

「誰が失恋したの?」

 

「うわっ!?……なんだ、北斗か」

 

冬児がにやにやと笑い、しゃがんでいた春虎は慌てて立ち上がる。

しかし春虎は、ぽかんと目を丸くした。

なぜなら、北斗が、あの小学生みたいな性格をした北斗が、浴衣を着ておしとやかにしていたからだ。

はっきり言って、美人だ。

春虎と北斗が珍しくぎくしゃくした感じで会話していた。そんな二人を見かねたのか、冬児が口を開く。

 

「さて。北斗も到着したことだし、そろそろ屋台でも冷やかしてみるか」

 

「そうだな、行こうぜ」

 

春虎も北斗もコクリと頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ♦♦♦♦♦♦♦

 

残念というべきか、おしとやかな北斗は開始三分で崩壊した。

今や、いつもの小学生がそのまま高校生の容姿になったような北斗だった。はっきり言ってはしゃぎまくりである。

 

「……去年もこうだったのか?」

 

「去年はこんなもんじゃねえよ」

 

「まじかよ……」

 

北斗の後に続きながら春虎は苦笑する。すると、そのまま何かを考え始めた。

真と冬児が顔を見合わせると、無言の春虎に声をかける。

 

「……春虎?」

 

「大丈夫か?まさか、熱中症とか―――」

 

「ああっ、そんなんじゃねえって。俺は大丈夫だ」

 

春虎はそう言って笑うと、普段通りの春虎に戻った。

すでに太陽は沈み、屋台の裸電球や提灯があたりを照らしている。もう少しで花火のプログラムが始まる。

と、そのとき、しゃがみこんで金魚とにらめっこしていた北斗が勢いよく立ち上がった。

 

「あ!あれ何?初めて見る!」

 

「お、射的か。懐かしいな」

 

そう春虎が言い終わる前に北斗は射的屋の前に駆け出して行った。

春虎は慌てて後を追い、二人もそれに続く。ちょうど大学生ぐらいのカップルが挑戦していたところで、北斗はその横から真剣に観察していた。

 

「……そうか。あのオモチャの銃で並んでいる景品を倒せばいいんだ?そしたら、倒した景品がもらえる、と……」

 

「おっ、珍しく察しがいいじゃん」

 

「珍しくは余計だー!」

 

真の言葉に北斗が食い掛かる。だが、すでに二百円支払ったようで、店主から銃を受け取ると、真とのやり取りを忘れ目の前の景品に意識を集中し始めた。

 

「よし。いいか、北斗。こういうのは大物を狙っても無駄だ。当たらないし、当たったとしても重くて倒れない。だから、手前に並んでいる軽い景品を狙うのがセオリーで――――」

 

「あ、外れた」

 

「最後まで聞けよ!」

 

春虎の言葉を無視した北斗は、そのあとも外しまくった。無謀にも最上段の棚にある、リボンのかかった箱を狙ったのだ。

冬児はいつの間にか買ってきたイカ焼きをかじりながら高みの見物をしている。醤油の焦げた匂いが何とも香ばしかった。

 

「悔しい!掠りもしないじゃん!」

 

「だから言ったろ。大物を狙っても無駄だって」

 

「もう一回!」

 

「諦めろよ」

 

「やっ!あれが欲しいのっ!」

 

地団太を踏み続ける北斗にしびれを切らしたのか、真が三人の前に出た。

 

「ふっ、ここは俺に任せろ。この『ドジ男サーティーン』の異名を持つ俺が、すべてを撃ち抜いてやるぜ」

 

「おお!なんだか頼もしいぞ!」

 

「行ってくる」

 

真は親指を三人に向けると戦場(射的)に向かって行った。

 

 

 

 五分後

 

「ふっ、なかなか手応えある相手だったぜ。今日はこの辺で勘弁してやるよ」

 

真は立ち上がると、三人に振り向いた。その手には大量の商品が――――――あるわけもなく手ぶらで戻ってきた。

 

「結局二千円も使って、収穫ゼロかよ!?」

 

「あれだよ、あれ。あそこだけ強風が吹いてて軌道が変わるとか――――

 

「んなわけあるかぁぁ!!」

 

真は見た目は平然を装っているものの、内心では激しく焦っていた。

 

―――やべぇよ!二千円も使って商品を取るどころか、掠りもしてねえよ!?これじゃあ、俺はただのアホ田サーティーンじゃねえか!……恥ずかしいっ!

 

「安心しろお前はただのアホだ」

 

「人の心を読むなっ!」

 

二人が謎のコントをしている間に、春虎は射的で例の箱をとったらしく、北斗がはしゃいでいた。

それから北斗は何かを思い出したように、はしゃぐのを止めると、三人に「待ってて」と言い残して走って行ってしまった。

 

「なんだあいつ」

 

「「さあ」」

 

三人は首をひねったが、こんなところで待っていても仕方がないので、北斗の後を追って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?」

 

確かにさっき春虎と冬児と一緒に走っていたはずだ。だが、今は周りがたくさんの人に囲まれていて、二人の姿はどこにもない。

そこから導き出される答えはただ一つ。

 

「俺、この歳で迷子ォォォォ!?」

 

真の叫びは、周りの通行人を驚かせたが、通行人すぐに何もなかったように祭りを楽しみ始めた。

 

「しかたない。ここは、俺の勘に頼るしかないようだ」

 

とりあえず、真は神社に足を運んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

神社にたどり着くと、春虎と冬児が黒いスーツ姿の男に連れていかれるところだった。あいにく、北斗の姿はどこにもない。北斗のことが心配だったが、こっちはこっちでなんかやばい空気を漂わせていたため、尾行をすることにした。

 

二人はフランクフルト屋の前に連れていかれると、一瞬にして姿を消した。

 

「!?結界か!?」

 

真は少し迷った後フランクフルト屋の前に走った。すると、目の前に春虎と冬児が出現する。

 

「やっと来た。あんた尾行が下手すぎっ」

 

金髪のツインテールの髪型をした少女がケラケラを笑い出す。

春虎と冬児は真の乱入に少々驚いていたが、すぐに硬い表情に戻すと、春虎が口を開く。

 

「……それで?用ってのは?」

 

「簡単よ。ちょっとあたしの実験に付き合ってもらいたいの」

 

「実験?いったいなんの?」

 

「ん、そうね…」

 

ツインテールの少女は、フランクフルトをかじりながら、歩き出す。

そのあいだに、冬児から状況を説明してもらった。

 

目の前の少女の名は<大連寺鈴鹿>。『陰陽Ⅰ種』に合格している最年少の『十二神将』であり、二つ銘は『神童』。

鈴鹿の狙いは土御門家の土御門夏目らしく、今は春虎を夏目と勘違いしているらしい。十二神将が絡んでいるとなると、なかなか複雑なことが起こると思われる。だから、春虎は夏目のふりをして鈴鹿の話を聞いているらしい。

真がしばらく考えている間に話がどんどん進んでいく。

 

「……あんた、実験に付き合えって言ってたよな?それは、じゃあ……」

 

春虎が確認するように尋ねると、鈴鹿は悠然と首肯した。

 

「あんたに付き合ってもらいたいのは、あたしが復活させた魂の呪術。でも、ビビることないわよ?素直に言うことを聞いてくれれば、乱暴なまねはしないから」

 

その言葉は、誰がどう聞いても脅迫以外の何物でもなかった。

本能的に三人は後ずりさる。

その瞬間夜空に花火が輝いた。そして、その影に飛来するものも視界に入る。

対峙する両者の間へ滑り込み、歓声を無視してぴたりと空中に停止し、ホバリングする。

蒼いツバメ。

 

「―――ソコマデダ!大連寺鈴鹿。陰陽法ニ基ヅキ、貴様ノ身柄ヲ拘束スル!」

 

そのツバメがしゃべり始めた。そして弾けた。

広げた翼の風切り羽が、爆発するように伸びる。そしてそれが複数の鞭と化して、目の前の鈴鹿を包み込もうとした。

 

「なっ、なんっ―――」

 

「捕縛式か!?」

 

「まじかよ。初めて見るぜ!」

 

唖然とする春虎の隣で冬児と真は叫んだ。

一方、ツバメに襲われた鈴鹿は、口元に不敵な微笑を浮かべていた。「ふん」と鼻で笑いながら手に持っていた、ポリ袋を投げ捨てる。直後、彼女をとらえようとしていた鞭が空中で食い止められた。

それと同時に彼女の背後から、ぬっと現れる歪な人影。

何もないところから出現したそれは、異次元の扉をくぐり抜けたかのようだった。

身長二メートル、左右に三対の長い腕を持つ、針金のように細かい人外。

 

「ま、また式神かよ!?」

 

式神の頭部は仮面に覆われ、表情が読めない。生物というよりも機械といったほうが正しいのかもしれない。

その式神は、掴んでいたツバメを引きちぎると、そのツバメにラグが発生し、式符に姿を変えて地面の上に落ちた。

 

鈴鹿の結界も敗れたのか、騒ぎに気付いた客が悲鳴を上げ、一斉に逃げ出す。屋台の店員も慌てて店を放りだし始めた。

 

だが冬児はこんな状況でも楽しい口ぶりで叫ぶ。

 

「あれ、陰陽庁製の人造式だぜ?多目的型の汎用式、『モデルM3・阿修羅』」

 

「ツバメの方は!?」

 

「『モデルWA1・スワローウィップ』。ウィッチクラフト社の捕縛式」

 

「じゃなくて、操ってる術者の方!」

 

「冬児、お前楽しそうだな!?」

 

真が叫ぶと、スワローウィップを操っていた術者がすぐに現れた。

 

「そこまでだ!すでに周囲は包囲した。投降しろ!」

 

鈴鹿を囲むように現れたのは、十人ほどの拳銃を持った男たちだった。中には呪符を持っている者もいた。

 

「なんなんだいったい!?」

 

「あいつら呪捜官か?」

 

「見た感じ、それっぽいな」

 

呪捜官というのは、呪術犯罪捜査官のことだ。呪術者による犯罪を捜査し、取り締まる陰陽師だ。対人呪術のエキスパート。祓魔官が呪術界の消防士なら、呪捜官は刑事に当たるものだ。

 

「でも、なんで呪捜官が?あいつ『十二神将』なんだろう?仲間じゃねえのか!?」

 

「警察官が犯罪を犯したらそれを逮捕するのは、仲間の警察官だろ?おそらくそんなことだと思うぜ」

 

すると、呪捜官の言葉にイラついたのか鈴鹿が叫んだ。

 

「――――やっちゃえ」

 

鈴鹿が命じると彼女の周りにいた、紙でできた獅子、蛇、鷹、豹が一斉に動き始める。その数はおよそ五十。

 

「冗談――――!?」

 

三人はとっさに鉄板の下に身を伏せる。たちまち、式神の群れが屋台を襲い、台を飛び越えつつ、さらに駆け抜けていく。

それはまるで、鈴鹿を中心として広がる生きた雪崩のようだった。

 

呪捜官たちも即座に応戦する。だが、あまりの数の多さに対処しきれていない様子だった。

 

「てか、なんでおれら、呪術戦に巻き込まれてんだよ!?」

 

「さすがだな春虎。驚きの運の無さだ」

 

「安定の不幸だな」

 

「おれか?おれのせいか!?」

 

三人は騒いでいるが、正直この状況はよろしくない。冗談抜きで生死に関わる。

 

「どうしたんですか、先輩方ぁ?式神で勝てないなら、呪符で試してみますぅ?」

 

鈴鹿は呪捜官の狼狽っぷりを見て、ケタケタ笑っている。そして、ポシェットから呪符を一枚取り出した。

 

「今日は暑いしねー」

 

と笑いながら、取り出した呪符を投じる。

五行符の一つ、水行符。

呪符が輝き、そこから大量の水流が発生し、呪捜官だけでなく真たちにも襲い掛かった。

だが、まったく濡れない。本物の水ではなく、呪術の水なのだ。

 

「い、歪な水気を堰き止めよ!土剋水っ。オーダー!」

 

呪捜官の何人かが、水中で呪符を使い対抗する。

足元の土行符をたたきつけると、たちまち地面が隆起して水流を押し止め、同時に呪術の水を大地に呑み込んでいく。

やっとのことで水流は相剋されるが、その間も鈴鹿はにやにやと笑っていた。

正直素人が見ても、呪捜官側が劣勢だということが明らかだった。

 

「……大分まずそうだな!春虎、真、隙を見て逃げるぞ!

 

「ああ!」

 

「わ、わかった!」

 

冬児の提案に真も春虎も賛成した。

冬児と真が何かないかとあたりを見渡し始めると、いきなり声がかけられる。

 

「じゃあな、二人とも」

 

「「な―――――」」

 

唖然とする冬児と真を置いて、春虎は一人先に屋台を飛び出していった。

 

「おい、春虎!」

 

「待て、春虎!」

 

冬児と真が必死に叫ぶが、春虎には止まる様子が見られない。春虎はそのまま屋台を駆け抜けて行って、ついには見えなくなってしまった。

 

「あの、バカ」

 

「とりあえず、動かないほうが得策だな」

 

「ああ、納まるまで待つか」

 

真と冬児は、動ける状況ができるまでひたすら待ち続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




中途半端なところで終わりました!すいません。

なんか、真が主人公って感じがしませんが彼はこれから活躍していくので、温かい目で見てやってください。

これからもこの作品をよろしくお願いします!!
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