最近友達の一色いろはがあざとくない件について   作:ぶーちゃん☆

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最近はいろはすの出番を少なくしてゲストキャラやら過去編に尺を使ってしまっていたので、一応の最後と言う事もあり今回は思いっきりいろはす全開にしてみました!
たっぷりといろはすを堪能して頂けたら幸いです。


とにもかくにも私の友達はせんぱいが大好き過ぎる【後編】

 

 

思いがけない葉山先輩の登場に一瞬だけ戸惑ういろはだったが、次の瞬間には飛びきりの笑顔を張り付けた。

 

「葉山せんぱーい。どうしたんですかぁ?」

 

ててっと葉山先輩のもとへと駈け寄るいろはに、クラス中が注目していた。

 

比企谷先輩の事があったから皆忘れていたけど、葉山先輩こそがいろはの想い人なんだって事は、一応皆知ってることだしね。

 

 

元々サッカー部のマネージャーになったのだって葉山先輩目当てなのは明らかだったし、生徒会役員選挙の時だって応援演説を買って出てくれたわけだしね。

 

 

正直私も……いや私達もずっと気になってた。お互い口にはしなかったけど。

 

葉山先輩に振られて、比企谷先輩と仲良くなり、楽しげな会話を目にし耳にし、今はもう比企谷先輩に気持ちが向いているんだろうなとは勝手に思ってはいたけど、実際そうなってからいろはが葉山先輩と対峙するのを直接見るのは初めてな訳だしね。

 

前に比企谷先輩が訪ねて来た時のようにクラス中が静まり返る中、2人の会話が始まる……。

 

 

× × ×

 

 

「やあ、いろは。すまないね」

 

「いえいえ、それでどうしたんですか?わざわざ葉山先輩が訪ねてくるなんて」

 

「ああ。今週の土曜日に相手方の学校に赴いての練習試合があるだろ?それにいろはが参加出来るのかどうかが聞きたくてね」

 

「あ、わざわざすみません…。えっと、たぶん生徒会のお仕事が大変な時期なんで、遠慮しておこうかな…と。大丈夫ですか?」

 

「了解だ。いろはも色々と大変だな」

 

「いえいえ!わざわざすみませんでした!でもそんな事ならメールか何かでお知らせしてくれれば良かったのに」

 

「俺もこう見えて一応主将だからね。部の仲間にはこういう事はちゃんと直接確認を取りたいと思ってるんだ」

 

「そうなんですか。流石は葉山先輩ですねっ!わざわざありがとうございました。それでは!」

 

「ああ。時間取らせてすまなかったね」

 

 

 

 

………………………え?

 

 

以上?

 

 

ただの業務連絡の上、想い人が訪ねてきてくれたハズのいろはの方から「それでは」ってあっさり話を切り上げたよ!?

 

あまりにも淡々としすぎた憧れの先輩との会話に、クラス中が絶句してるよ……!

だって、こないだの比企谷先輩の時は、もっと…こうさ!

 

 

ビックリしているクラスメイト達の間をすり抜け、やっぱりビックリしている私達のもとへと戻ってきたいろはは、私達の表情を見てキョトン顔。

 

「あれ?どうかした?」

 

不思議そうに首をかしげるいろは

 

「う、ううん?別にー?」

 

と、特になにも言えずにいる私達だった。

葉山先輩相手に態度が冷め過ぎじゃねっ?なんて言えるわけないじゃん!

 

 

結局何事も無かったかのように私達は昼食を進めていたのだが、そんな時またまた視界の端の扉んトコに、これまた良く見覚えのあるいろはへの来客が現れたのが見えて、思わず吹き出しそうになってしまう。

 

今日は来客の多い日だなぁ…、と思っていると、その来客がうちのクラスの地味男(あいつ名前なんてったっけ?……てかいい加減名前覚えてやれよ!私っ)に話しかけようとするのが見えたから、今回は私の方からいろはに教えてやった。

 

「いろは、またお客さんだよ!」

 

するといろはは「またぁ…?」って顔をしやがったので、そのお客さんの名前をニヤリと告げてやった!

 

「比企谷先輩が来てるよっ」

 

 

するといろははキラッともグルンっともする事も無く…………、いや、正確にはキラッともグルンっともする間もない程、瞬間的に一直線に比企谷先輩のもとへとパタパタ掛けていった!

 

 

なにこの差(笑)

 

 

もちろんクラス中の視線が集まる中、いろはと比企谷先輩の長い長い会話が始まった……!

 

 

× × ×

 

 

「せーんぱいっ!今日はどうしたんですかー?可愛い後輩に会いたくて我慢出来なくなっちゃいましたか〜?」

 

あらあら嬉しそうなことで!さっきと差がありすぎだよっ!

皆、目ぇ丸くしてるじゃんっ。

 

「うぜー……」

 

「ちょっ!?第一声がうざいって酷くないですか!?ホント先輩の中でのわたしの扱いがひどすぎですー」

 

「はいはいあざといあざとい。そんな事よりとっとと体育館行くぞ」

 

「体育館?いきなり体育館裏に呼び出して告白ですか?もっとムードってものを考えましょうよー」

 

どんなダイナミックな告白なんだよ。そこまで大胆なら、もうこの場でしてるよ…。

 

「なんで告らにゃなんねえんだよ。仕事だよ仕事。教室で昼メシ食ってたら副会長に呼ばれたんだよ……。なんかこれから体育館で保護者の懇談会があるらしくてな。その用意は午前中に手の空いた教師達がやっとく予定だったらしいんだが、なんかトラブって順調に進まなくて、昼休み中に済ませちまおうって生徒会となぜか奉仕部にお呼びがかかったらしい……。ったく迷惑な話だ」

 

「まーた仕事のお話ですかー…。ホントつまんないですね、先輩って」

 

「いやだからなんで俺が責められちゃうんだよ?大体なんで俺、生徒会にナチュラルにパシらされてんの?百足譲って平塚先生の豪碗で奉仕部としての強制労働ってのならまだしも、なんで俺一色係みたいになっちゃってんのかね」

 

「そんなの先輩がわたし担当の奴れ……、小間使いなんだから当たり前じゃないですかー。用件があったら直接わたしの所に来る!それが先輩の役目ですよっ」

 

うふふー。葉山先輩にはメールかなんかでいいのにって言っといて、比企谷先輩には直接来い!……ねぇ。

 

「それって俺の役目なの?……あと言い直した意味無いからね?それ。この際奴隷も小間使いも変わんねえよ」

 

「とにかく先輩はわたしに対して責任取るのが義務なんですからね☆」

 

えへっとウインクしてとんでもない問題発言だよっ!

 

「マジであらぬ誤解を生むような発言はやめていただけませんかね…」

 

「そんな事より」

 

そんな事なの!?

 

「先輩が教室でお昼なんて珍しくないですか?居場所あるんですか!?」

 

酷いっ!

 

「いや酷くない?今日は昼前から雨降り出しちゃったろ。いくら俺でも雨の日に外では食えないからな。クソッ……雨さえ降らなきゃ副会長に発見される事もなく、今日も平穏無事に戸塚を愛でられたってのによ。それに俺が昼に教室に居ると、まわりに気を遣わせちゃって申し訳ないし。つまり居場所は無いな」

 

やっぱ無いんだ……。それにしてもどんだけ天使大好きなのよ。

 

「そういう時はわたしのトコに来れば一緒に食べてあげますよっ。生徒会室で一緒に食べましょうよ〜」

 

「生徒会室を思いっきり私用で使うんじゃねえよ…」

 

「まあまあ、いいじゃないですかー!ところで今日もまた購買のパンですか?いつもそんなんじゃ栄養偏っちゃいますよ?」

 

「まぁいつもそうだしな。栄養はちゃんと夜摂ってるし大丈夫だろ」

 

 

「……わたしってお菓子作り得意じゃないですかー?」

 

「は?どんだけ話飛んでんだよ……。大体初耳なんですけど……。知ってること前提で話進めないでくんない?」

 

「は?全然飛んでませんよ?ちゃんと人の話聞いてくださいよ!」

 

「あれ?なんで俺怒られちゃうの?」

 

「でなんですけどぉ、ここ最近お料理の方もちょっとずつ始めてみてるんですよ〜。毎朝自分のお弁当作ってるんで、もし良かったら先輩のお弁当も作ってきてあげましょっか!?」

 

おっと!キラキラした目で比企谷先輩を覗き込むいろはす!つまりは生徒会室で2人で私の作ってきたお弁当食べましょうよって大胆な提案だね?今日はなかなか攻めますねっ。

 

「なんで?なんか怖いんだけど…」

 

「なんでって、そんなの葉山先輩の練習台に決まってるじゃないですかー。せっかくだから葉山先輩には最高に美味しいお弁当を渡したいし!あれ?もしかして勘違いしちゃいましたか?はっ!毎日お弁当作ってもらってその勢いで毎朝俺の味噌汁を作ってくれとでも言いだすつもりだったんですかちょっと気持ち悪いですいくらなんでもまずはお付き合いからですよねもうちょっとだけ待ってくださいごめんなさい」

 

長い……。この2人っていつもコレやってるよなー…。しかもよくよく聞いてみるといろは断ってねーし。

 

「俺お前に一度も告白した事ないのにもう何敗目なんだよ……。戦ってもいないのになんかすげえ敗北感なんだけど」

 

「ふふっ、先輩なんてこの先ず〜っと!一生わたしに負け続けるんですよ〜♪……で?どうします?こんなに可愛い後輩の手作り弁当なんて、お昼休みが先輩の寂しい人生のオアシスなっちゃいますね〜」

 

にっこにこ笑顔で挑発するいろは。よっぽど比企谷先輩にお弁当作ってあげたいのね☆

でもこの先一生って、ずっと比企谷先輩の傍に居ますよ?って事なんですかね。

 

「結構です」

 

ありゃ…。

 

「なんでですかー!わたしの手作り弁当ですよ!?絶対みんな欲しがりますよ?」

 

「自分で言うなよ…。まあお前って見た目は良いしモテそうだから、そりゃ欲しがるやつも沢山居るだろうけどな」

 

「へ?………なっ!?きゅ、急にそういう事をさらっと言うところがズルいんですよっ……。先輩って…」

 

見た目が良いしモテそうって事は、つまりは比企谷先輩も少なくともそういう目で見てるって事だもんね〜。

いろはってあざとい自分を演出して先輩をからかってるから、思いがけない急な展開に弱いのよねっ。

頬染めてもじもじしちゃってもーっ!

 

「は?何がズルいんだよ?意味分からん。大体急に手作り弁当作ってくるとか言われてもなんか怖いし。また何か企んでんじゃねえの?」

 

「ううんっ!うんっ!ふぅ…まったく。………怖いわけないじゃないですかー。なんにも企んでませんよっ?」

 

立ち直ってきゃるんっと笑ってるけど、きゃるんっとするいろはって……、ホント信用度ゼロなのよねぇ…

 

「そのムカつくあざとい笑顔が怖いんだよ…」

 

「せんぱいひどいですー…」

 

あざとく落ち込んだフリをするいろはに面倒くさくなったのか

 

「分かった分かった。じゃあ練習台になってやるから、たまに持ってきてみろよ」

 

「ふふんっ!最初っから素直にそう言えばいいんですよ、まったく!ほんっとに素直じゃないんだから…。……………あ、でー、そのー…アレなんですけどー…」

 

「お?おう…どうした?」

 

 

「さ、さっきわたしお菓子作りが得意って言ったじゃないですかー?……最近ちょっと色々と練習してて、結構凝ったものも作れるようになってきたんですよねー…。なので…、ついでにお菓子も作ってこようかなー…っと。……ホラ先輩って甘党じゃないですかー」

 

なんでこんなにもじもじしてんの?この子。

 

「お、おう…。甘いもんは大好きだからな。そっちも練習台になってやるぞ?」

 

「ホントですかー!?良かったです!………で、先輩ってどんなのが好きなのかなー?と…。えーっと例えばですね〜…」

 

と、人差し指を顎に当てて斜め上を見ながらう〜ん…と、あざとい『わたし考えてます』ポーズを決めるいろは。

 

でもなんでだろう?耳をまっ赤にして、空いてる方の手でスカートの裾をギュッと握ってる…。

 

「例えば…、その…ガ、ガトーショコラっ、とか…トリュフ…とか……。フォンダンショコラとか…ザッハトルテ…とか?…………。そんな感じので食べたい物って、あります……?」

 

ゴクリと喉を鳴らし、とても不安げな上目遣いで比企谷先輩の様子を伺っている……。

うわっ、いろは…。それって……

 

「…………。あー…、一色、悪りい…。」

 

 

謝る比企谷先輩に、え…?と哀しそうな驚いたような潤んだ瞳を向けるいろは。

 

 

「確かに俺は甘党なんだが、そんな小洒落た名前のもんを羅列されても、いまいち良く分からん。なんかこう分かりやすくプリンとかクッキーとかって言われた方がしっくりくるんだが。まあ強いて挙げるとするなら、最も最高の甘味はMAXコーヒーだな」

 

 

不安げに潤んでいた瞳は次第に落胆に、そして呆れ果てた半目に変わっていく…。それに比例するように頬っぺたもぐんぐん膨らんでいく。

 

「ほんっとに先輩って残念さんですよねー…。はぁ〜…こんなに残念な人って世の中にホントに存在するんですねっ……はいはい!それじゃあMAXコーヒーでも練り込んだクッキーでも作ってきてあげますよ!」

 

パンパンになった膨れっ面と、この世の呆れを全て集めたような表情で諦めちゃったよ……。

 

「………は?なんで急に怒ってんの?俺なんかした…?」

 

 

比企谷先輩……。そりゃ怒りますよぉ……

今日は何月何日だと思ってるんですか、あなたは…。

 

 

 

さっきいろはが挙げたお菓子、全部チョコレート菓子なんですよ……?

 

 

あの日まであと数日なんですよ?

 

 

まったくもう!感付かれるの覚悟で勇気を振り絞って聞いてたのにぃ……

 

いろはの一番の強敵って、雪ノ下先輩でも由比ヶ浜先輩でも大天使先輩でもなく、この人本人なんじゃないだろうか……。

ま、いつまでも葉山先輩をダシに使って誤魔化してるいろはもいけないんだけどねっ!

 

 

× × ×

 

 

「はぁ〜…まったく。……あ!忘れてたぁ…。ああ…もう!すっかり仕事の事忘れてましたよ……。もう!いつまでも無駄話してないで、ほら!時間が勿体ないからとっとと行きますよー」

 

頬をぷっくりと膨らませ、不満げなアヒル口で比企谷先輩の袖を引っ張って体育館に向かおうとするいろは。比企谷先輩は慌てて

 

「だー!こんな所で引っ張んじゃねえよ。目立っちゃって恥ずかしいじゃねえか…。てか無駄話してたのはお前だろ…」

 

と手を引き離そうとすると、離してやるもんかっ!とでも言わんばかりに力強く袖を握り締めながらふふんっとこう言った。

 

「先輩なんて美少女生徒会長の尻に敷かれてる情けないせんぱいだって、また学校中で悪い噂が立っちゃえばいーんですよーだ」

 

 

舌をちょこっと出してべーッとするいろはは、さっきまでの膨れっ面はどこへやら、とびっきりの悪戯めいたあざとい笑顔に変わっていた。

それはもう、ほんのちょっと前まで、アンタあざとさ封印したの!?…なーんて思うような事があったのなんて嘘だったんじゃないの?ってくらいの満面さでね!

 

 

そんな様子を見ながらふとまわりを見渡すと、なんかクラス中があったかい目でいろはを見守ってるような雰囲気な事に気が付いた。

隣の襟沢にしてもそうだけど、いろはの心情の変化って本人だけじゃなくって、まわりのいろはを見る目も変えてるんだなぁ…

 

男とあざとくイチャついてるいろはなんて、ちょっと前なら殆んどの女共が忌々しげにしか見てなかったってのに…。

ま、男共は羨ましげで悔しそうに見てるんだけどね。

比企谷先輩!爆発させられちゃわないように気を付けてくださいねっ(笑)

 

 

いろはの変化がこんなに心地いい空気を生みだすなんてね〜。へへーっ!なーんかいい感じっ!

 

 

× × ×

 

 

「一色…マジで離せって…」「知りませーん!乙女の心を弄んだ罰ですよー」「だから意味分かんねえっての…」

だんだんと離れていく比企谷先輩といろはの声を聞きながら、私達は顔を見合わせて苦笑い。

 

 

「まったくぅ…。私の友達はどんだけせんぱいが大好きなんだかっ…」

 

 

比企谷先輩に夢中になりすぎて、すっかり忘れ去られているいろはの食べ掛けのお弁当をいそいそと片付けながら、呆れながらも思わずプッと吹き出してそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

初めての本気の恋に戸惑ったり興奮したり、泣いたり笑ったり転んだり、時には間違うことだってあるだろう。

それでも前を向いて一生懸命歩き続けてる一色いろはに向けて、私家堀香織はこんな言葉を贈ろうと思う………

 

 

 

 

 

 

 

たった一度っきりの青春なんだもの!たとえ間違っていようとなかろうと、思う存分青春ラブコメを楽しんじゃえっ!!

 

 

 

 

おしまい

 

 

 

 






と、言うわけで、これで一旦の幕引きとなります!

たったひと月弱の間でしたが、誠にありがとうございました!


今後はオマケやら11巻の内容如何によって、不定期で短編をあげられたらなぁ…なんて考えてますので、もしこの『あざとくない件』という作品を憶えていてくださったら、たまにチェックしていただけると嬉しいです!


ついに今週にはアニメ二期でもいろはすが登場しますね!

動くいろはす。しゃべるいろはすを脳内再生出来るようになったら、『運命の国のいろは』共々、もう一度この作品をご覧頂けたら本当に嬉しいですっ!

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