最近友達の一色いろはがあざとくない件について   作:ぶーちゃん☆

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今回でエリエリ視点終了でーす。
ラストなので、エリエリワールド全開で駆け抜けたいと思いますっ♪





【番外編ラスト】最近宿敵の一色いろはがとっても気になっちゃう件っ④

 

 

 

ちゃぽんっと、つま先からゆっくりと湯船に入っていく。

身体が冷えきってるこの時期は、この最初にお湯に入る瞬間が熱すぎて地獄なのよね……喉元過ぎれば熱さ忘れるじゃないけど、この最初さえ耐えきればあとは極楽なんだけど。

 

「ぐ、ぐぅ〜っっ……ぬぬぬっ……あひぃ〜」

 

私は変な声を出しながらゆっくりと肩まで浸かると、最後に気の抜けた声をあげてようやく落ち着いた。

まだ少し動くとお肌がピリピリしちゃうんだけど、ふぅぅぅ〜……極楽極楽♪

 

 

お湯に浸かりながら、そっと瞼を落として今日学校であった出来事に思いを巡らせてみる。

 

ここ最近では恒例となったストーキング行為……いろはグループの観察はまぁいつものことだけど、放課後は香織ちゃんに拉致られてお説教?なのかな……アドバイス?なのかな……を受けて、そしていろはちゃんとナントカ先輩と遭遇(ノゾキ)

 

───あれは甘ったるかったなぁ……勢いでケーキをホールで食べきっちゃった時くらいの胸焼けを起こしちゃったもんね。ケーキのホール食いなんて2〜3回くらいしかしたことないですけど。

 

でも……あのやりとりだって、香織ちゃんとのお話が無かったら、私はただ素直に見ていられたのかな。

やっぱり穿った見方になっちゃってたんじゃないかって思う。

 

───いろはちゃんは、なんでこんな男と仲良くしてあげてんの?って。

でもあのやりとりが胸焼けしちゃう程に甘く見えちゃったって事は、私もちゃんと真っすぐな目で見られたって事なんだろうな。

 

 

知りもしないくせに、噂だけを鵜呑みにしてあれだけ一方的に嫌悪してた先輩だったけど、今日ちゃんと真っすぐな目で見てみたら、あることに気付いちゃったのだ。

それは、学校一の嫌われ者な最低の奴であるはずのあの男がいろはちゃんに向けてたあの眼差し。

それは、最低と言われるような人間の眼差しなんかじゃ決してない。

 

だって私は、あんな眼差しに見覚えがあるから。

 

 

× × ×

 

 

自室に戻った私は机の上の写真立てを手に取り、その写真に写った人物を見ながらベッドへと腰掛けた。

ナントカ先輩のあの眼差しは、まさにこの人を連想させるに足るものだったから。

 

あの先輩がいろはちゃんに向けていた眼差し……それは、とても優しい眼差し。

いろはちゃんに小馬鹿にされたり、わざとらしいあざとさでからかわれたりしながらも向ける眼差しは、心底面倒くさそうで心底呆れたような、まさに『やれやれ』っていう目だった。

 

ただでさえ腐ってるかのような淀んだ目がさらにどんよりと淀んで、とてもじゃないけど優しさなんか感じられなさそうな目のはずなのに、それなのに不思議と温かさを感じる眼差し。

やれやれなんだけど、ただのやれやれじゃない。

 

『やれやれ、まったくコイツはホントしょうがねぇな。ま、コイツだし仕方ねぇか』

 

って、大切な存在の頭を呆れた優しい笑顔で撫でてるお兄ちゃんのようなママのような、そんな慈愛に満ちた眼差しに見えた。

 

 

私はそんな呆れたような面倒くさそうな優しい眼差しを知っている。この写真立ての中で微笑んでいるその人とおんなじ目だ。

そして私の脳裏には、その人のこんな優しい台詞がふわりと浮かんできたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『海老名、鼻血拭けし』

 

 

 

 

そうなのぉっ!

ホントだったら三浦様とあんな男を重ね合わせるのなんて嫌で嫌でしょうがないんだけど、いつの日か偶然目撃しちゃったあの大切な心のアルバムの1ページと悔しいけど重なっちゃったの!!

 

お友達の海老名先輩が発狂して鼻血を吹き上げた時、三浦様は『やれやれ』って顔をしながらも、大切なお友達を優しく気遣うように、ママのような眼差しでポケットティッシュを差し出してたっ……!

 

昨日のあの先輩の眼差しは、悔しいけど三浦様と一緒だった。

──あんな眼差しをいろはちゃんに向けられるような人が、噂通りの最低な人間なはずがないっ……

 

 

いくら私でも知ってる。

実は三浦様も、一部の人間からは腫れ物扱いされてるってこと。

圧倒的なカリスマ性を持つが故に、お姉様には敵いようのない二番手三番手辺りの女子グループが、我儘女王様だの恐怖政治だのと裏でコソコソと悪く言ってるってことを。

 

でも、あんな低レベルなやっかみ連中が言ってるような人じゃないのよお姉様は……!

私も最初は、ただ美しくて強くて格好良い所だけに憧れてたけど、お姉様はそれだけじゃないのっ!強くて気高くて、そして大切な物を守る優しさも兼ね備えた完全無欠の女王様なの!

 

だから私は裏でお姉様をコソコソと言ってる女共を見る度にこう思ってた。

 

『なんにも知らない癖に』

 

って。

なんにも知らないやっかみ女ごときが、お姉様を悪く言うんじゃないわよぉ!って。

恐いから決して口には出しませんけどね!?

 

 

だからあの先輩といろはちゃんのやりとりを見て思ったの。

そんな、私がお姉様に対して想う心が、お姉様を悪く言う女共に対して思う気持ちが、今度は自分に返ってきたんだなぁって。

 

 

私にはまだあの先輩の魅力とか全然分かんない。

正直、あの腐った目とかネクラそうなトコとか、やっぱりキモいとかって思っちゃう。

でも…………もう一方的な逆恨みとか嫌いなんて気持ちは無くなったの。なんでいろはちゃんがあんなにも怒ったのかは、しっかりと理解できたと思う!

 

 

「決めた!明日、いろはちゃんにちゃんと謝ろうっ」

 

 

私は写真立てに飾られた、数ヶ月前に盗さ…………こっそりと撮影したお姉様の写真を惚れ惚れと眺めながらそう誓うのだった。

 

 

× × ×

 

 

「いろはー、そういえば昨日の撮影だの取材だのは順調に進んだの?間に合いそうな感じ〜?」

 

「ん〜、まぁそこそこ?納期ギリギリではあるけど、上手く使えばなんとかなるかなっ」

 

「使うってお前……」

 

「ホントいろはって腹黒だよねー」

 

「智子にだけは言われたくないからー!」「智子が言っちゃうのかよ!?」「お前が一番恐ぇっての……」

 

「酷いっ!?」

 

今日もいろはグループは仲良くコントやってるなぁ。香織ちゃん曰くうらやまけしからんってヤツなのかな?

 

でも香織ちゃんの間に合いそうかどうかの問いに対して、まぁまぁとか言いながらもあんなにニヤニヤと楽しそうないろはちゃんを見ると、そのギリギリ感さえも楽しんでるんだろうな、一緒にお仕事出来るから。

 

一限の休み時間に、そんな楽しそうにお喋りしているグループを見ながら、私はさっきからずっと及び腰になってる……

謝ろうって決心したはずなのに、やっぱり恐いぃぃぃ……!

 

───私は決めたの!謝るんなら堂々とって!

香織ちゃんにお願いしていろはちゃんだけを呼び出してもらって、場所を変えての謝罪も考えちゃったりもした。

でも私の誠意を認めてもらうにはそんな風にコソコソするんじゃなくて、堂々と教室で、みんなの居る前で頭を下げるのがベストだって判断したの!

クラスで浮いちゃってる私の反省してますって誠意を、クラスのみんなにも分かってもらいたいし!

…………誠意どころか打算まみれなようにも見えるかも知んないけど、そ、そんなんじゃないもんっ!

 

 

うぅっ……でもやっぱりみんなの前で謝るって、恐怖心と羞恥心とプライドが邪魔するのよねぇ……

これはやっぱり次の休み時間に回そうかな?それとも三限?いやいやここはやっぱり昼休みがベストよね!

 

 

 

……………………ダメよ恵理!結局そうやって先延ばしして逃げて、今日も明日も言わずじまいで終わっちゃうんじゃない!

私はそんな自分を変えて憧れの三浦様みたいになりたいから、自分を変えられたいろはちゃんの元で修行したいんじゃないの!?

ここで逃げたら女が廃るの!根性見せて!?恵理っ!

 

そして私は立ち上がる!

目指すいろはグループをしっかりとロックオンして真っ直ぐに目的地へと突き進む!

そう!トイレへと…………

 

 

だってやっぱり無理ぃー!

よーしっ!ここは一先ず大好きなトイレでクールダウンしてから、次の休み時間へれっつごぉ♪

 

 

× × ×

 

 

「いろはー、今日もすぐ仕事行くの〜?」

 

「まぁねー。早く行って早くこき使ってやんないと終わんなくてヤバいからね〜っ」

 

「おーおー、セリフとは裏腹に楽しそうなことでっ!」

 

「ねーっ!」

 

「う、うっさいなー……」

 

……なんということでしょう。

気が付いたら放課後じゃないですか……。次の休み時間へれっつごぉ♪とか思ってたあの頃が懐かしいよぅ……

 

これはマズい。なにがマズいってマジマズい。

これは気が付いたら今日が終わって二月が終わって三学期が終わって一年生が終わっちゃってるヤツだよ!

そうやって焦ってたら、またお腹痛くなってきちゃったよぅ!

 

「それじゃわたしもう行くねー」

 

「行ってらー」「んじゃね」「ばいばーい」

 

ダメよ……!いろはちゃんが行っちゃうっ……

たぶん今日が無理なら永遠に言えない。

そんなの……やだっ!

 

香織ちゃん達に手をふりふり、自分の机から離れていこうとするいろはちゃん。

 

私は……私はっ……今度こそしっかりと立ち上がる!

そしていろはちゃん達の方へと身体を向けながら大きな声を出して呼び止めるのだった。

 

「い、いろはちゃん!お話があるぶべぇっ!」

 

震える足でいきなり立ち上がった挙げ句に急に反転したもんだから、椅子に足が絡まり顔からべちゃっと床にキスしちゃいました☆

それはもう両手を綺麗に上げてグリコのポーズの如く豪快に!

 

 

あまりの恥ずかしさにしばらくそのまま固まっていると、優しく肩にそっと手が添えられました……

 

「……えっとー……恵理ちゃん?だ、大丈……夫?……んで、なんか用……?」

 

……恵理っ……まだ泣いちゃダメぇっ……激しく打った鼻から鼻血が出なかっただけでも儲けもんなんだからぁ!ふぇぇっ……

 

 

× × ×

 

 

「いろはちゃん!本当にごめんなさいっ……!」

 

不様に床を舐めたことがまさかの功を奏しちゃって、今私はついにいろはちゃんに謝罪する事が出来た。

 

どこら辺が功を奏したかというと、たぶん通常ならキツく当たってくるであろう紗弥加ちゃんと智子ちゃんが、あまりの情けなさで涙目になっちゃってる私の謝罪をとりあえず大人しく聞いてくれてるトコかな。

 

「……えっと、なにが……?」

 

頭を下げてる私に、いろはちゃんは訝しげな視線を向けてくる。

そりゃそうだよね。いきなり謝られてもね。

 

「……アンチいろはの件とか生徒会長の件とかいろいろとあるんだけど……でも、ちゃんと一番に謝りたいのは……比企……比企……」

 

「……襟沢、比企谷比企谷……」

 

コソッと耳打ちしてくれる香織ちゃんありがとお!!

へー、比企谷って言うのねあの人。

 

「……比企谷先輩のことを悪く言っちゃったことっ……」

 

私は頭を下げたままスカートをギュッと握る。ぶっちゃけ恐くて上を向けない。

そしていろはちゃんは、予想通りの返答を返してきた。

 

「……あー、うん。別に気にしてないからいーよー」

 

……たぶんいまのいろはちゃんの表情は、なんの感情も籠もってない笑顔なんだろうな。

だから恐くて恐くて顔を見れない。

 

でも私が求めてた許しはこういうのじゃないからっ……!

だから、無表情の笑顔は恐くて見たくないけれど、それでも私は顔を上げた。

 

「違うの……!いろはちゃんっ……私が言いたいのはっ……」

 

「あのさー、襟沢。いろはがいいっつってんだからもう良くない?」

 

「そうだよ恵理ちゃーん。いろはも今忙しい時だしさぁ。もういいじゃん」

 

うぐっ……やっぱり止められたぁっ……

 

「……まぁまぁ、紗弥加も智子もいいじゃん。言いたいことくらいは言わせてやんなよっ」

 

香織ぢゃぁ゙ぁ゙ぁ゙んっ!

突然香織ちゃんが私の味方をしたもんだから、紗弥加ちゃんも智子ちゃんも、いろはちゃんもビックリ顔!

 

「ホラ、襟沢。言いたい事あんでしょ?とっとと言っちゃいなっ」

 

バシッと背中を叩いてくれる香織ちゃんマジ男前!

これで残念じゃ無かったらなぁ、勿体ない。

ヒィッ!なんか睨まれまちゃったっ!

 

私は冷や汗かきつつ香織ちゃんからすい〜っと視線を逸らしいろはちゃんをしっかりと見た。

するといろはちゃんは居住まいを正して、ジッと私を見てくれた。

なんか、初めてちゃんと向き合えた気がする。

 

いろはちゃんは特に声を発するわけでも無く、視線と頷きだけで私に発言を促してきた。

 

 

───よしっ!いろはちゃんのその無言の視線は恐いけども!紗弥加ちゃんと智子の視線も恐いけども!クラス中の視線が痛いけども!

でも、ここが勝負っ!

 

 

「わっ、わたしぇはぁ〜〜っ」

 

壮絶に裏返っちゃいましたっ。

嗚呼……トイレに走っちゃダメかしらっ……!?

 

 

× × ×

 

 

お腹痛いぃぃぃ!

か、顔が燃え上がりそうに熱いけど、一旦落ち着いて私っ!

そして私はふぅ〜と息を吐くと、んん!っと咳払いして気持ちを整える。

 

「えっと……私はね?」

 

「うん」

 

「正直言うとやっぱり比企谷先輩の事なんか全然分かんない。あのゾンビみたいな目とかネクラそうな猫背とか、なんか急にニヤッとするトコとか、ぶっちゃけキモいって思っちゃう」

 

うぅ……謝ろうって思ってるのに、こんなんでいいのかなぁ……

でも、正直な気持ちぶつけなきゃ気持ちなんて伝わらないって香織ちゃんに言われたもんっ!

 

「でも……ちゃんと自分が間違えてたってことは分かったのっ……なんにも知らない癖にくだらない噂だけ信じて人を馬鹿にすることが、どんだけしょーもない行為かってこと、自分の経験則と重ね合わせたら良く分かったの。私だってあれだけ他人のそういう行為を蔑んでたくせに、いざ自分の立場になると全然見えなくなっちゃうものなんだなぁって」

 

いろはちゃんは、私の目を窺うように覗き込んで黙って聞いている。まるで品定めでもされてるみたい。

 

「でも、良く分からないけど、キモいって思っちゃうかも知んないけど、少なくとももうくだらない噂だけを鵜呑みにして一方的に嫌ってたりはしないっ……!だから、そのっ……この間は本当にごめんなさいっ」

 

今度こそ本当に本当の意味でペコリと頭を下げた。

結局キモいとかなんとか色々悪口言っちゃったけど、ちゃんと伝わったんだろうか。

 

すると顔を下に向けたままの私の頭上で、低く、うっすらと、こんな声が聞こえた気がした。

 

「……へぇ〜……」

 

ビックリして顔を上げた先で、いろはちゃんはニコニコしながらこう言うのだった。

 

「だからさー、さっきも言ったけど、もう全然気にしてないからいーよー」

 

──全然気にしてない──言われた言葉はさっきと一緒。

でも、そのニコニコ笑顔はさっきまでの無表情な笑顔なんかでは決して無かった。

届いたんだっ……!

だから私は今度こそ素直にこう言えた。

 

「ありがとぉ!」

 

って。

 

 

 

謝罪もきっちり済んで、私はさらに踏み込む。

さすがにちょっと早計すぎるかも知んないけど、こういうのは勢いが大事なのだ!

 

「……で、なんだけどぉ、いろはちゃん」

 

「……ん?どしたの?」

 

「あ、あのぉ、わ、私と友達になってもらえないかなぁ……?」

 

緊張でついつい笑顔が卑屈になってしまう私はやっぱりまだまだ修行が足りないようです……

さんざん酷い事をしてきて、謝罪し、許諾されたばかりだと言うのに、早くも友達申請を提出した私に、いろはちゃんは勿論のこと、香織ちゃんも紗弥加ちゃんも智子ちゃんもちょっと呆れ気味にポカンとしてる。

や、やっぱりもうちょっとお互いに自然な流れで情を育んでから申請すべきだったのかしらっ!?

 

「……う、うん。まぁいいけど……」

 

「ほんとにっ?」

 

「てかまぁ今までも一応クラス“メイト”だったワケだし、特に変化する関係性でも無いと思うしねー」

 

「やったぁ!じゃ、じゃあこれからもよろしくねぇ」

 

そっか!今までだってメイトだったんだもんねっ。

なぁんだ、私達ってなんだかんだ言って友達だったんだぁ!

 

「う、うん……」と私を歓迎してくれてるいろはちゃんの手をとって、熱く友情の握手を交わす私達。

すると「あ、そだ。じゃあせっかくだから……」と、いろはちゃんが親友になったばかりの私に、圧とかの具合がそっくりなモノマネを交えて親切にアドバイスをしてくれた。

 

「恵理ちゃんさ、前々からずっと言いたかったんだけど、三浦先輩リスペクトすんのはいいんだけど、そのヘアスタイルは逆効果だよ?なんなら『……なんでコイツあーしと同じ髪型してんの?マジ不愉快だし』って人睨みされて終了まであるよ?」

 

「………………」

 

な、なんですって……?

 

「う、嘘ぉっ!?」

 

「いやマジで」

 

な、なんということでしょうかっ……

尊敬しています憧れていますを全面に押し出そうと敢えてしていた髪型がまさかの逆効果だなんてぇっ……

 

 

私は親友のいろはちゃんのアドバイスに従い、その日の学校の帰り道にその足で美容院へと走ったのでした(涙)

 

 

× × ×

 

 

四時限目終了のチャイムが校内に響き渡り、今日もお昼ごはんの時間が始まる。

 

「ところでさー、今度の日曜日に千葉に買い物でも行かない?なんとか金曜の夜までにはフリペの作業が終わりそうだからさ、息抜きとご褒美でお出掛けしたいんだよねー」

 

「おー、いいねぇ。私もちょっと服とか見たかったんだぁ」

 

「あ、私はパース。日曜は兄貴にアキバに付き合ってくれって泣き付かれちゃってんのよねー」

 

「私もパスー。とも君とお台場行くんだー♪」

 

「えぇ!?私絶対行く行くぅ!やばい今から超楽しみなんですけどぉ」

 

「……」「……」「……」「……」

 

「……どぉしたのー?みんなー」

 

紗弥加ちゃんが恐る恐る口を開く。

 

「え、襟沢さぁ……ずっと疑問に思ってたんだけど……」

 

「?」

 

「なんでアンタ普通に一緒に弁当食ってんの……?」

 

「えー?だって昨日友達になったしぃ」

 

あれぇ?なんでそんなに愕然としちゃったのぉ?

すると智子ちゃんが信じられないものを見るかのような目で私を見つめて一言。

 

「恵理ちゃんさ……、と、友達になったのとグループに入るってのはちょっと違くない……?」

 

「なんでぇ?友達は一緒にお弁当食べるものでしょぉ?」

 

あれぇ?智子ちゃんまでどうして驚愕の表情で固まっちゃうのぉ?

そして香織ちゃんがとってもシラ〜っとした目を向けてくる。

 

「……ヘタレの癖に図太いとか、ウザ過ぎてタチ悪すぎんでしょこの女……」

 

え?なんですって?

ごめんね香織ちゃん。声が小さすぎて全然聞き取れなかったよぉ?

 

 

 

 

 

 

……………………ホ、ホントはちゃんと分かってるんだからぁぁぁっ……!

だって……みんなの冷え冷えした視線が突き刺さりまくって、お腹が痛くてしょうがないんだものぉっ……!

でもでも、こんな無茶してでさえも無理矢理にでも輪に食い込まないとグループに入れて貰えなさそうだから、さっきからトイレにも逃げずに、極力目を合わさないようにして私とっても頑張ってます!

喉元過ぎれば熱さ忘れるじゃないけど、この最初だけを血反吐を吐きながらでも耐えきれば、あとは極楽なはずだもんっ!

 

 

「……はぁぁぁ……ま、まぁいいんじゃない?……えっと、ざ、材木……?木材……?も、木材屋?みたいな枠だと思えば、そのうち慣れるんじゃない……?」

 

……へ?

 

「……へ?」「……へ?」「……へ?」

 

急に木材がどうとか言い出したいろはちゃんに、私達はまたもシンクロしちゃいました。

うん!やっぱり私はこのグループと息が合ってると思います!

 

 

 

 

相変わらず愕然と驚愕と冷え冷えとした視線を無遠慮に向けてくるグループの仲間達から必死で目線を逸らしながら、冷や汗かきかき「んー、おいしー♪」とママの作ってくれたお弁当を心行くまで堪能する私は、総武高校一年C組に所属する花の16歳の女の子!

 

学年でもひときわ目立つ一色いろはグループの襟沢恵理を、今後ともよろしくお願い致しまぁす☆

 

 

 

終わりっ

 

 






そして本編の千葉駅の喫茶店読書回に続く…………といった感じで締めさせて頂きました(^ω^)


そして皆々様、長い間のご愛読、誠にありがとうございました!
これにてあざとくない件は完結とさせていただきます!(あー、ハイハイ)



てか12巻っていつ出るんですかね?
まさか11巻からこんなに開けるとは夢にも思いませんでしたよ(白目)


というワケで(どういうワケで?)次は香織達にいつ会えるかは分かりませんが、また、この【最近友達の一色いろはがあざとくない件について】で皆さんとお会い出来る日を夢見て生きていきたいと思っております☆(完結宣言どこいった?)




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