最近友達の一色いろはがあざとくない件について 作:ぶーちゃん☆
どうも!あざとくない件バレンタイン編本編も、今回で4話目になります。
というわけでどうぞ!
……あー、身体痛ったい……
んだよもー……ダルいから今日会社、じゃなかった。学校休んじゃおっかなー……
大っ体さぁ……上司がアレじゃ下はいつまでたっても着いて来ないっつの。
部下のミスは上司のミスでもあるわけじゃん?部下がミスしたらさぁ、上司であるアンタも責任感じて、そのミスを一緒になって補っていこうよ、部長ー。
……友達とちょっと気になる先輩のイチャイチャちゅっちゅ(ちゅっちゅしてたとは言ってない)をウヘヘと覗き見してた挙げ句、それにより部活に大幅遅刻してお仕置きを受けたことを、居酒屋でめんどくさいOLのように愚痴るどうも私です。
すみません部長。あまりにも自業自得すぎて、一緒になって補える点なんてどこにもありませんでしたねっ!テヘ☆
そんなことを考えながら今まさに通学中の私は、今日はまた違う上司からの呼び出しがあるのかと思うと、軽く血を吐きそうな気分だった。
ま、今日の上司の呼び出しに関しては、カウンターとしてフラッシュアイデアを用意してあるからノープロブレム!
あらやだ用意してあったらフラッシュアイデアじゃないわね。
そして、私はふぅぅ〜……と深く息を吐き出し、教室の扉を開くのだった。
× × ×
おかしい……
登校してからしばらく経つのに、ヤツからの接触が一切無い……
朝のSHR前から各休み時間に至っても、いろはが全く寄ってこない。てか目さえ合わそうとしないのですよ。
なんなの?女子特有の、恋敵に対する突然の手のひら返しなの?敵認定からの疎遠→シカトなの?
なにそれ私泣いちゃう!私達の友情はその程度のもんだったの!?
女って恐い!別にこの私は恋敵とかじゃないんですけど!?
この私ってなんだよ。私3人目かなんかなのん?
紗弥加達も「今日いろはどうしたのー?」なんて、明らかに私を避けているいろはの事を疑問に思って聞いてくるんだけど、「さ、さぁ?」としか答えようが無いんですよね。
そんなモヤモヤした気持ちのまま時は過ぎていき、気が付けば四時限目終了のチャイムが校内に鳴り響いていた。
さて、どうしたもんか。
まぁもっともここ最近は、アイツ休み時間も昼休みもとっとと生徒会室行っちゃうから、このランチタイムの心配をする必要は無いんだよね。
ちゃんと誤解は解いておきたいけども、どうせすぐ生徒会室行っちゃうだろうし、ここはいつも通りに我がグループで席を囲みますかね、と立ち上がろうとしたその時、頭上から声が掛かったのでした。
「……ねーねー香織ちゃーん!たまには二人で生徒会室で食べなーい?」
「!?」
なん……だと?
つい今しがたチャイムが鳴ったばかりだというのに、いつの間にか敵に囲まれている……だと?
囲まれるもなにも敵は一人なんですけれども!
恐る恐る私の席の隣に立つ人物を見上げてみると、そこにはきゃるんっとした笑顔で私を見くだしている一色いろはの姿があったのでした。
きゃるんとした笑顔で人を見くだせるってすごいよね!(遠い目)
× × ×
「……あ、い、いろはさんチィーッス……」
あはっ!恐くてつい舎弟みたいになっちゃいましたー。
いやほんとマジでちゃん付けとか恐いだけなんでやめていただけませんかね。
「挨拶とかいいから早く行こうよー。時間無くなっちゃうから」
さ、殺戮にはそれ相応の時間が必要って事を暗に示唆しているのでしょうか……?
「え!?なになにぃ?いろはちゃんと香織ちゃん生徒会室でランチするのぉ?私も行きた〜いっ」
「うん。恵理ちゃんはいらない」
「……はい。申し訳ありませんでした……」
襟沢ぁぁ!
ああ……襟沢が目じりとお腹を押さえてトイレに直行しちゃったよ……
いろはさん!目に輝きを宿してください!
「ほらほら香織ー、早く行くよー」
もう香織ってば!逃がさないんだからねっ☆と言わんばかりに、先ほどから私の腕は掴まれっぱなしなのであります。
ふむ。どうやら朝から避けてたのは、一旦話始めちゃったら、先日の概要を聞かずにはいられないから接触を我慢してたみたいな感じらしいですねっ!
良かった♪やっぱ私といろはの友情はこの程度で避けあったり無視したりする程度のもんじゃ無かったみたい!
深い仲だからこその闇ってのも世の中にはあるんですよ……(白目)
「……あっはい」
食べられるかどうか分からない弁当の入ったカバンを手に取った私を、紗弥加と智子が憐れな物を見るかのような目で見つめていました……
ドナドナって、こんな気分なのね。
× × ×
カチャリ……と地獄の扉(生徒会室)が開かれると、そこはコキュートスでした。寒いよぅ……
おかしいな。地獄に足を踏み入れたばかりだというのに、もう最下層なの?
「邪魔者が入ってこないように鍵掛けとこっと♪」
ガチャリ。魔王からは逃げられない。
成る程さすが世界を統べる魔族の王は、防犯(逃走)の為の施錠は怠らないんですね。そりゃ勇者パーティも逃げ出せないわけだわ。
「香〜織っ!ホラここ座ってここ!」
ひとつの席を引かれて、そこに座るように促される。
どうやら床に直で正座という危機は回避出来たみたい。
「……えと……い、椅子の上に正座とかじゃなくてもいいんだよね……?」
「…………は?」
「ひっ!なんでもないですごめんなさい!」
大人しく席に着くと、いろはは会長席にある自分の椅子をいそいそと持ってきて、私の正面に鎮座した。
あれれ〜おかしいぞ〜?一緒にランチとか言っといて、いろはと私の間には机とか置かないのかな〜?膝と膝が触れ合いそうな距離しかなくて、お弁当とか置く隙がどこにもないよ〜?
と、コナン君みたいに疑問が沸いてきた。とりあえず近い近い。
「で?」
まさかの一文字である。
にっこにこにーで発する「で?」の衝撃まじぱない。
「で……とは……?」
するといろはの笑顔がより一層強まった。ちなみに言うまでもなく目は笑ってない☆
「だからー、香織ってば、いつの間に先輩と仲良くなったのかなー?って。わたし全然知らなかったよー、香織と先輩があんなに仲良さそうにしてるなんてさー。ねぇねぇ、あんなに楽しそうになに話してたのー?オタク的なキモい話とか?あー、なんか香織と先輩ってなにげに趣味合うもんねー。なに?もしかして香織って先輩のこと狙ってたりするの?もしかして香織って先輩のこと好きなの?もしかして香織って先輩と」
恐い恐い恐い。まさかリアルな世界でヤンデレに迫られるとは思って無かったっす!
振り芸並みの勢いと早口でまくし立てられると私チビッちゃいますから!
「ま、待って待って!?」
「……なに?」
どうしよう。どうしたら私は生きてこの地獄から抜け出せるのかしらん……
なぁーんちゃってぇっ!
ふはははは!一方的に蹂躙されると思った?残念!
私がなんの秘策も無しに、大人しくこんな地獄の一丁目まで連れて来られると思っていたのかね!?
秘策という程のもんでも無いんですけどね。
「あんたさ、あのとき私と比企谷先輩がなんの話してたか知んないんでしょ?」
そう、教えてやんよ!この世の真理ってやつをさぁ!
「あのとき私達が話してた事はねぇ」
まぁ本来なら言わない方が比企谷先輩の為……ってか、比企谷先輩的には恥ずかしいだろうから言われたくは無いはずなのよね。
「それはね?」
でも生憎口止めはされてないのよねー!そりゃ口止めされてれば言わなかったかも知んないけどさっ。
だから私は言っちゃうの!ふひひっ、我が身を守る為なら容易く先輩を生け贄にだってしちゃうのだ♪
比企谷先輩ごっめーん!
いろはすちゃん?この最強のカードを使って、あんたを丸裸にしてやんよ!
ここからはずっと私のターンッッッ!
「いろは、あんたのこと話してたから、比企谷先輩はあんなに楽しそうにしてたワケだし、だからこそあんたになんの話をしてたか聞かれて、あんなに照れくさそうに誤魔化してたのよ?」
「…………へ?………ふぇ?」
いやあんた私の前でまでわざわざあざとく言い直さなくてもいいから。
× × ×
ふふふ、実は最初から勝負なんてついてたのよね。
だって秘策もなにも、ただ本当の事を言っちゃえば、いろはが作り出す極寒地獄ごとき、一瞬でポカポカな常夏リゾートに変わっちゃうんですもの。それはもう常磐ハワイアンセンター(旧名)並みの陽気に。
常夏リゾートじゃなくて室内じゃん。
ソースは目の前のいろは。
さっきの私のセリフ程度で、そわそわと聞き耳を立ててらっしゃいますよ?
もしもいろはの耳が猫耳だったのなら、これからの私の一言一句を聞き漏らすまいと、ピクッピクッと動いている事でしょう。
猫耳いろはす。やだ!商売の香りがするわっ?Youねんどろっちゃいなよ!
「で?で?で?どゆこと?」
餅つけいろはす、あんた食い付きすぎよ?
ふふ、まぁ仕方ないよね。
「いろはさ、最近イベント準備が忙しくて、全然奉仕部に顔出せてないじゃん?」
「……うん」
「だからさ、比企谷先輩が恥ずかしそうに聞いてきたのよ。一色のやつ、ちゃんとやれてっか?ってねー」
「……嘘!ガチで!?あのせんぱいが……?」
「ガチガチ!んで、私が比企谷先輩はホントいろはを可愛がってますよねー、って言ったら、「ただのめんどくせぇ後輩だっつの」なーんて、超照れくさそうにそっぽ向いて頭がしがししちゃってさぁ」
「〜〜〜っ!」
ふひっ、いろはってばぁ。もう表情が崩壊寸前じゃないのよぉ。
嬉っしそうに頬を桃色に染め上げて、にまにまヒクヒクしちゃってるよ。
あの人が照れくさそうに頭がしがし掻いてる姿って、ホントすぐ想像出来ちゃうもんね〜。
「たぶんそれがいろはから見たらデレデレしてるように見えたんじゃないのー?でっさー、せっかくその事をからかってやろうかと思ってた所にちょうどあんたが来ちゃったから、先輩ってば気まずくなっちゃったみたいなんだよねー」
ホントはからかってやろうじゃなくて、萌えちゃったから狙っちゃおうかな?なんて思ってたんですけど、その真実は墓場まで持っていく所存であります。
「ふ……ふ〜ん、へー」
大して興味ないですけどなにか?みたいな返事してるけど、笑いを堪えちゃってるからなのか、声震えてるからね?あなた。
「どうやらあの人、いろはが遊びに来ないと調子出ないみたいなのよね〜。ふふっ!そろそろ部室の方にも顔見せに行ってあげたらぁ?」
勝利を確信した私は、俯いてだらしない顔を上手く隠せてるつもりになってるいろはに、ニヤニヤしながらそう提案してあげた。
するといろはは俯いていた顔を上げ、嬉しさと楽しさで紅潮した顔をわざとらしくニヤリとさせて、まぁほぼ予想通りのこんな一言を口にするのだった。
「…………しょ、しょーがないなー。マジあの先輩わたしが居ないとダメよねーっ。何度振っても全然懲りないしさー!仕方ないから今日辺り久々に顔出してあげよっかなー!」
はいはい!もうそれでいいわよっ。
比企谷先輩に対しては、バレバレの好き好きオーラを発しまくりながらも、無駄に素直に認めないで、何かしら理由つけて振り回してる方があんたらしいもんね〜っ。
「よっし決めたー。どんなの作るかは書記ちゃんと話し合って材料発注しようかと思ってたけど、せっかくだから雪ノ下先輩に聞きに行こーっと!えへへ〜」
こうして私は無事に難局を乗り越えたのでした〜。
ふぅ……ナイスファイト私。グッジョブ私。
× × ×
「いやー、これからついにお料理教室ですな〜」
「ふふっ、色々がんばっちゃったから、ちょっと感慨深いよー」
あれから数日経った日の放課後。
私達は、これからコミセンへと向かういろはのお見送りしていた。
「ど?いろは、上手く行きそ!?さすがにこんなイベントじゃ告白までは出来ないにしても、気合い入れたのあげちゃうんでしょぉ〜?」
「ふっふっふ、超気合い入れたのあげちゃうよー!他の連中が悪戦苦闘してる中、わたしは一人女子力発揮しまくりでパパッと何種類も作って、豪華焼き菓子セットにしちゃうんだー。邪魔者の雪ノ下先輩は、手間の掛かる由比ヶ浜先輩と三浦先輩の相手が忙しくて大したもん作れないだろうし、女子力勝負はわたしの一人勝ちでしょー!へっへ〜、わたしの見事な手際の良さに、絶対女の子を意識しちゃうよ?あの人ー!」
いつから女子力勝負になっちゃったのよこのイベント。
てかあんた、自分のお菓子作りの余計な手間にならないように、雪ノ下先輩一人に面倒全部押しつける気かよ。
にしてもさすが男ウケの為にお菓子作りを趣味と謳ってるだけあるぜこの子。
作ってる姿さえもアピールに使うだなんてねー。
これはアレじゃね?「せんぱーい、ちょっと味見してみてくださいよぉ〜」とか言って、ちゃっかり間接ちっすとか狙っちゃってんじゃね?
「おっと、んじゃ用意とかあるからもう行くねー」
「行ってらー」「頑張ってね〜」「三浦さまぁぁ……私も行ぎだぁぁい……」
襟沢……お前……
「いーろはっ!楽しんできてねー!」
「うん!楽しんでくるよー」
……満面の笑顔で去っていくいろは。
この時私は、このイベントの成功といろはの奮闘を信じて疑わなかったのだ。
あんなに頑張ってたんだもん。報われるはずだよね!って。
でも……翌日登校したいろはは、いや、それからの数日間のあいだこの子は………………ず〜っとむくれていた……
な、なにがあったのん……?
続く
4話目でしたー。ありがとうございました!
あれれぇおかしいぞ〜?最初、前中後編って言って無かったっけぇ?
でもようやく次で終わりますね♪
ではまた次回です!