最近友達の一色いろはがあざとくない件について 作:ぶーちゃん☆
こちらは9月20日発売最新刊のネタバレを多分に含んでおります。てかむしろネタバレしかない。
ですので、まだ最新刊を読んでいない読者さんは読まないでください!
さて、どうもご無沙汰しております!まさかの短期連載再開です!
そしてもうひとつ注意点が。
今作は『そして私の友達が本物のバレンタインを迎えたら』の続編となっております!つまり香織が八幡LOVEではない方のお話の続きです。
それではどうぞ!
「だんしんくいーん、んーふふー、んふー、んーふーーふー」
あのバレンタインデーでの、哀しくも盛り上がってしまった女子カラから二日が過ぎた三連休明け。
来年から私たちの可愛い後輩になるであろう若者たちの入試が無事終了し、やる気! 元気! 寝起き〜……で、今日からまた学生生活がんばりまっしょい! と、意気揚々と登校すると、なんかいろはが頭ふりふりご機嫌なご様子でアバの名曲を口ずさんでいた。
もう完全に歌詞とかガン無視。だんしんくいーんしか歌詞言ってないし。
……い、いやいや、確かにカラオケは盛り上がったよ? なにを血迷ったか、オーラスでダンシング・クイーンもみんなで合唱しちゃったし。もちろんだんしんくいーん以外の部分はみんな「んふふ」だよ!
でもさ? あんたカフェんとき、あんなに不満げにサガりまくってたじゃん。それはもうロマンシングもかくやってほどサガってたね。
それなのにその連休明けでそのご機嫌っぷりってどうなの? 三日前に「ぬるま湯のあいつら(奉仕部)ムカつくー! ムッキー!」って激おこだった人物と同じ人物とは思えないんすけど。
「……やっべ、今日のいろはす超ご機嫌じゃね?」
「鼻歌とか超かわえぇ」
ホラホラいろは? 元いろはす教の信者共が、ゆめかわっなあんた見て興奮しているよ? せっかく最近のあざとくない態度で離れていってくれたんだから、また信者に絡まれないように気を付けなさい?
そして──
「……」「……」「……」
三バカ(紗弥加たち)が、教室に踏み入れたばかりの私の姿を見咎めると、まるで助けを乞うかのような眼差しで私を呼ぶ。目と目で通じあう視線だけで。んー、色っぽい。
紗弥加達には心の中で激おこのかしこま☆をかましながらも、仕方ないので声を掛けますかー……
「お、おっはよー……」
ああ、朝からめんどくさいよぅ……。なんか最近、面倒くさい時のいろはの世話係りにされてる感があるよわたしゃ。
なんかあいつら、ああいうあからさまにめんどくさそうないろはだと認識すると、自分たちからは話し掛けず、すーぐ私に相手させようとしてくんのよね。
決して三バカを会話に交ぜると書くのが面倒くさいとかいうメタな理由ではない。ないったらない。……ないんだからね!
「あ、香織おっはよー♪」
うわぁ……、コレもう聞いて欲しいオーラを発しまくってるやつだよ。
待ってましたとばかりに、なんか机に豆腐みたいの置いてスタンバってるし。
「ど、どしたの? なんかえらいご機嫌だけど」
聞きたくはない。だって面倒くさいし。
でも聞かないわけにはいかないの。悲しいけど、これって戦争なのよね。
「え? 別にそんなことも無いけどぉ……、え、気になっちゃうかんじー?」
うっわ殴りたい。めっちゃ殴りたい。なにそのツラ腹立つ。
「あ、そんなこともないんなら別にい──」
「じゃーん、わたし、コレを使ってプロムクイーンになるんだー!」
え、こいつマジなに言ってんの? もう意味わかんなすぎて、いろはの話を拒絶しようとした私を無視して勝手に話しだしちゃってる件については目を瞑っちゃう!
「は? なに言ってんのいろは。豆腐使ってなんのクイーンになんの?」
と、ここまで尋ねて気が付いてしまった。
──ハッ!? めんどくささが天元突破しすぎて聞くのやめようかと思ってたのに、つい自分から聞いちゃったわ!?
お、恐るべしいろはす。どこまで計算ずくなんだこの女。……はい。単に私がツッコミ体質なだけですわかってます。
「は? 豆腐なわけないじゃん。豆腐を裸で机に置いておくわけないじゃん。え? バカ?」
超真顔で返されちゃった。
「これプロジェクターだから。DVD、コード、セット、OK?」
なんで英語喋れない人が外人に説明するときみたいな片言なのよ。しかもジェスチャー交えて。
アレかな? 香織は別世界の住人なの? っていう揶揄なのかな?
「うっさいな、知ってるっつの、豆腐じゃないことくらい」
むしろ本気で豆腐と思ってたら重症ですわ。
まぁプロジェクターとは思わなかったけどね。
「あー良かった。ガチで言ってんのかと思って心配しちゃったよー」
そりゃすいませんね。心配していただき痛み入ります。
「でー、コレはもしかしたらいつか使うかもしんない可能性もなきにしもあらずと思って、ちょっと前に生徒会の経費で落としといた備品なんだけどー──」
使わない可能性が超絶高そうなモノを経費で落とさないで! 予算を余らせたくないからって、なんでもかんでも経費で落としちゃえばおっけー♪な風潮、どうかと思います。
にしてもあまりにも使う可能性が低すぎワロタ。でもまぁこうして使う機会に恵まれたわけだし、結果オーライかな。……なんたらクイーンとかいう、ワケわからん用途ではあるけど。
「ふっふっふ、なんとコレとこのDVDを奉仕部に持っていくことによって、あわよくばプロムが開催できるかもって寸法なんだー」
だからプロムってなに? 私あんまガンプラに興味はないのよね。フィギュアは好きだけど。それはプラモやろ! ってね☆
× × ×
プロムとはプロムナード、つまり舞踏会の略称。天下一を決める武道会ではない。
アメリカンなイケイケウェイウェイハイスクールスチューデント達が開く、なんともイケイケウェイウェイなダンスパーティーのことである。
ちなみに、冬休みに初めてプロムの説明をされて、「ああ、バックトゥザフューチャーで、マーティーが若い頃のママンと危ない関係っ! になりそうになった時みたいなやつのことね」って納得したら、なんかいろは達からすっごく残念な目で見られました。解せん……
ちょ、ちょっとチョイスが古かったかな? かな?
てか私ってば思いっきりプロム知ってんじゃん。
なぜ知ってるのかと言うと──
「こないだみんなで集まってGlee観たじゃん? でー、今日の放課後、奉仕部でプロジェクター使ってみなさんと一緒に観ようかと思ってるんだー」
そう。まぁこないだと言っても冬休みにだけど、いろはんちに集まって海外ドラマのGleeってやつを観たからなのだ。
いっやー、アメリカンな若者達の青春群像劇ってのは、我々日本人の慎ましやか〜で大和撫子〜なノリとは全然違いますよね。
でも女同士のドロッとした裏側とかは世界共通☆
「はぁ。……いやいやちょい待って? 話が全っ然繋がらないんだけど。それといろはがプロムクイーンになるのと、なんの繋がりがあんの?」
「あ、うん。だから奉仕部のみなさんと一緒に観て、あいつらのプロム熱を盛り上げようかと思って」
みなさんって言ったりあいつらって言ったり忙しいなこいつ。
「んで、もしも話に乗ってきてくれたら、来月の卒業式のあとの謝恩会でプロムっちゃおうかなーって」
なんだよプロムっちゃうって。そんなジャニーさんみたいに軽く言えるような内容じゃないでしょうが……
「ちょっと待って!? いくらなんでも無理すぎない? あと半月くらいしかないじゃん! 無理無茶無謀すぎんでしょ……。てか、なんでそんな発想になっちゃったの!?」
そう。コレはどう考えても無理筋すぎる。なにが無理筋って、まずあんたがプロムクイーンになる事は絶対ないだろ。クイーンになれんの三年生なんだから。
そもそも日本人気質丸出しの高校生にあんなウェイウェイなノリが合うとも思えないし(ごく一部は除く。決して戸部先輩とかって固有名詞は出さないゾ!)、大体アレってかなり規模がデカイんじゃないの……?
パーティー会場は……これはまぁ体育館を使えばどうとでもなるにしても、派手な装飾品の飾り付けやらダンスに使用する音楽やらパーティーに欠かせない豪華な食事やら、さらに言えばドレスとか、ね。
もしマジでプロムやりたいんなら制服とかジャージ、私服でさえも問題外。だってそれじゃただの謝恩会だし。
舞踏会の名がつく以上、飾り付けやら食事やらはある程度でよくても、やはりドレスアップは最低条件なはず。
どう考えたって時間とか足んないでしょ……。あとゼニ。そしてマネー。そんでもってお金。
「……うん、それは分かってるんだけどさー」
するといろはは先程までの浮かれた表情から一転、どこか決意じみた表情で私を見据える。いや、私だけじゃなくって、さっきから私にいろはの相手をさせっぱなしのみんなの顔も。
てかあんたらいつの間に居たのん? 一言も発さないから、さらに五人分の会話を書くのが面倒くさい疑惑が持ち上がっちゃうじゃない!
「こないだ凹んでるときにカラオケに連行されて、みんなでバカみたいに騒いで、みんなでバカみたいに笑って、みんなで冬休みに観たGleeでかかったダンシング・クイーンをみんなで歌って、で、そんときに思いついたんだ。あ、コレいいかもっ、て」
……私たちの顔を真っ直ぐ見据えて語りはじめたいろはの表情は真剣そのもの。
ぶっちゃけ言ってることはまだ要領を得ないままだ。だって、無理無茶無謀を押し通す理由にはなってないんだから。
それでもいろはの瞳から目を逸らせない。だって、こないだと違ってめっちゃ生き生きしてんだもん、いろはの瞳。
そしていろはは核心に迫る。なんでいきなりこんなバカげた妄言を吐き始めたのかの核心へと。
「……香織のおかげで、わたし、決心が付いたからだよ……? 確かにかなり難しいと思うけど、確かに無茶かもしんないけど、出来る可能性が少しでもあるならやりたいって。……香織が言ってくれたんじゃん」
『そりゃ色々と複雑かも知んないけどさ、なんか私が知ってるあんたなら、あれは本物だけどこれは本物じゃない! とかいちいち考えないでさ、どんなカタチであれ「最終的にわたしが本物になってれば勝ち♪」ってイメージなんだよね』
『なんかさ、恋が盲目過ぎて自分を見失ってんじゃね? ……ワガママ言いまくって振り回しまくってあざとく迫りまくって、めんどくさがられながらも、最終的にハートを強引に捕縛しちゃうぞ? ってくらいの方が……ひひっ、あんたらしいじゃん?』
「……って」
ああ、そういえばこないだそんなこと言ったっけ。
体感的には一年以上前に言ったイメージだけど、てへ!
「だからさ、やりたいと思ったことはがんばろっかなって。今やるしかない、今始めれば間に合うかもしれない、だから難しくても失敗しても、次の一手の為の布石を打たなきゃって……!」
そこまで聞いても、結局の所まったくもって“無理無茶無謀を押し通す理由”への要領は得られなかった。
でも気持ちだけはガンガンに伝わってきたよ。ガンガンに受け取ったよ。
なんでそこまでしてやりたいのかは分かんないけど……、問題山積なのはどうしようもないけど……、でもこないだの私のセリフで気持ちが動いたって事は、それはつまり奉仕部に……比企谷先輩達のムカつくぬるま湯な関係に、一色いろはらしくばちこーん☆と風穴を開けてやろうって決心したってことでしょ?
だったら私はこう言ってやるしかあるまいて。
友達らしく、友達の背中をばっちーん! って叩いてやる為に!
「ホントあんたって後先考えないよね。……ま、どうせ言いだしたら聞きゃしないんだし、しゃーないかぁ。よっし、よく分かんないけど、私たちが目一杯応援してやんよ! なんか必要なことがあったら、遠慮なくなんでも言ってきてよね!」
そう言って、ちらと周りに目を向けると、紗弥加達も大きく頷いてくれた。ちなみにここまでセリフは一切なし。泣けるッ!
「ん、ありがと香織! ありがとみんな!」
こうして、一年生生徒会長一色いろはとしての最後の大仕事が幕を開けるのだった。
しかしこの時の私はまだ知らない。
なんでも言ってね! なんて気軽に声を掛けちゃったばっかりに、あとあと私たちがドレスアップさせられ、スポットライトとミラーボールの煌びやかな光の中、スタンダードナンバーに乗ってウェイウェイと踊り狂う羽目になるということを……
──え、三年生の謝恩会なのに私が踊っちゃうのん?
つづく
完全に放置状態ではありましたが、また読んで下さりありがとうございました!
ようやく二年ぶりに発売された最新刊。ぶっちゃけ、読んでも書く意欲が湧くかどうか分からなかったんですが、いざ読んでみたらいろはすが「わたしのためです!」と程々の胸を張って勝ち気に笑っていたので、なんかいろはすが格好よくて仕方なかったんで、思わず書いてみたくなっちゃいました(^皿^)
10.5巻や11巻で背中を押す役回りになったかと思ったのに今回は好き好きオーラ全開で、しかも諦めずに頑張るわたし☆を宣言してくれたので、めちゃめちゃ可愛くて格好よかったですね♪
現在昔みたいにスラスラと筆が進まない状態なので、次回はいつの更新になるか分かりませんが(コレだけは最新刊読了後に二時間くらいで書き上げられましたがw)、ではでは後編でお会いいたしましょう!