謎の無人機?を撃退し、その後警戒を続けたが、簪からシステムの解放の知らせを受けた俺と師匠は捕まえた部隊の男達を織斑先生に引き渡し、シャルロットたちが電脳ダイブを行っていた部屋に向かった。
「……で、私たちはその『ワールド・パージ』という能力にまんまと騙されたという訳か。しかもただの時間稼ぎとは――腹立たしい」
箒は簪から説明を受けて納得したようだ。
「でも……どうして、箒には……簡単に解除されたかは……謎」
簪の言葉にセシリア、鈴、ラウラ、シャルロットがギクリとしたように思えた。
「結局その『ワールド・パージ』ってどんなだったの?」
「うん。なんて言うのか、敵は……ダイブしていたみんなの精神にアクセスして……その心の奥底に秘めた願望、渇望する夢を見せることで外界と遮断、精神に何らかの影響を与えていたみたい」
「へ~」
師匠の問いに簪が答える。
「ちなみにみんなの見てた世界ってどんなだったんだ?」
俺はダイブしていた五人に訊く。が、五人は慌てたように口早に言う。
「そ、そんな!別に大したことはありませんでしたわ!」
「そ、そうよ!あたしたちの見てた世界なんて、そんな話して面白いものじゃなかったわよ!」
「そ、そんな願望と言うほどのことはなかったぞ!」
「ま、まったくだ!」
「う、うん!そうだよ!」
焦る五人を俺と師匠は首を傾げながら見る。
「なんかそう言われると逆に気になるな。なぁ、シャルロット、さわりだけでいいから教えてくれよ」
「む、ムリ!絶対いや!」
いつになく本気で嫌がるシャルロットの姿に俺の好奇心はムクムクと膨らむ。
「なぁ簪――」
「颯太には絶対教えない」
「なんでさっ!?」
「な、なんでも……」
食い気味で答える簪に訊くが、そっぽを向かれてしまう。
「あぁ~なるほど……もしかして――」
横で何かを察した師匠がシャルロットと簪に何かを耳打ちする。
「っ!?」
「だいたいそんな感じ……」
師匠の耳打ちにシャルロットは顔を赤く染め、簪は頷く。
「OK、理解したわ。――それにしても一夏君起きないわね」
「ちょっと待ってください。なんで俺だけ除け者?師匠に言えて俺には言えんのか!?」
「「「言えない」」」
俺の言葉に三人が頷き、他の四人も何かを察したのか頷いている。
「で、ホントに一夏君起きないわね」
師匠が咳払いとともに気を取り直して言う。
「もしかして、わたくしたちと同じように罠にかかったのでは?」
セシリアがそう言うと、簪が首を振る。
「それはないと思う……。システムはもう、解放されたから……」
「じゃあなぜ起きないんだ?」
箒が不思議そうに言うと、何かを考え込んでいたラウラが顔を上げて真剣な顔で言葉を漏らす。
「――キスだな」
ものすごくキリッとした声だった。
『はああああっ!?』
ラウラと師匠以外の全員が声をあげ、俺と師匠は面白いことになりそうだ、とお互いに笑みを浮かべて顔を見合わせた。――簪もそこそこ大きな声を出していた。
「キスって、アンタねえ、何考えてんのよ!」
「む。知らないのか、愚か者め。昔から眠れる嫁を覚ますのはキスだろう……と、副官がさっき言っていた」
「その副官、クビにしなさいよ……」
げんなりとする鈴に対して、セシリアがずずいっと前に出た。
「ちょっとお待ちになって!確かに、試さずに否定するのは間違っていると思いますわ!」
「はぁ?セシリア、アンタ何を言って――」
「そこにいくと、このわたくし!セシリア・オルコットは由緒ある貴族の出自ですし、一夏さんと言う王子の目を覚ますには適任かと思われます!」
と、鼻息荒く語るセシリア。
「ご、ごほん!まあ、なんだ、人工呼吸的なものだな、人工呼吸的な……ならば私も立候補しよう!」
ビシッと手を上げる箒。その視線は一夏をちらちらと見ている。
「そういうことならあたしだってするわよ!はいはいはーい!」
鈴もムキになって手を上げる。
「ええい、貴様ら!私の出した案に乗るな!これは私の提案だぞ!」
ラウラも声を荒げる。
「お前ら、そういう積極性をもうちょっと本人の意識のある時に見せろよ」
「「「「お、大きなお世話だ(ですわ)!!」」」」
俺がぼそっと呟いた言葉が聞こえていたらしく、四人にギロリと睨まれる。
その後四人は言い争いから取っ組み合いのけんか寸前まで発展し、教室ほどの広さの部屋の中を縦横無尽に走り回っていた。
そんな四人を止めたのは織斑先生の登場だった。
ケンカの過程で鈴がセシリアに向けて放った飛び蹴りをセシリアが交わし、それが運悪く部屋に入ってきた織斑先生のお腹にヒットした。
まあ織斑先生自身はノーダメージだったが、四人は仲良く引き摺られていった。
〇
「――アハハハハハハハッ!そっかそっか!四人はそんな内容だったわけか!」
「笑い事じゃねぇよ。なんでよりにもよって全員俺が相手なんだよ……」
夕方。事件解決から少しして、学園内の医療室に移動した一夏は数十分後に目を覚ました。
ちょうど手の空いていた俺が事後報告と言うことで今回の件のあらましを軽く一夏に説明した。
そして、俺はみんなが教えてくれなかった『ワールド・パージ』の内容を知っているであろう一夏に訊いた。
一夏は少し困ったように笑いながら教えてくれた。――教えてくれたのだが……
「で?要約すると、
鈴は中学時代に戻って一夏と付き合ってて、二人は一線を越えかけていた。
セシリアは会社の社長として、自分の執事兼幼なじみの一夏に体を洗わせていた。
ラウラは一夏と夫婦で、裸エプロンでイチャイチャしていた。
箒は一夏と一緒に篠ノ之神社と剣道場を切り盛りしていた。 と?」
「まあそんな感じだ。まあ本当はもっとすごかったけどな」
一夏が俺の言葉に頷きながらため息をつく。
「なんだってみんな、あんな変な内容の世界を見ていたのやら……」
一夏は心底わからない、と言いたげな顔で首を傾げている。
逆にこれでよくわからないよな、こいつは。
ヒントは十分にそろっているというのに。
「まあいいじゃん。なんだかんだで四人のあられもない姿見たんだろ?役得じゃん」
「箒は見てないから!」
「でもおっぱい揉んだんだろ?」
「んぐっ!」
「地獄に落ちろ、一夏」
俺の指摘に口籠る一夏に俺はため息まじりに言う。
「あ!そう言えば、シャルロットは?あいつのはどんなだったんだ?」
俺はふとまだ聞いていなかったシャルロットの『ワールド・パージ』の内容を訊く。
「あぁ…シャルロットも他の四人とあんまり変わらない感じだったな」
「へ~……」
俺は一夏の言葉に少し驚きを感じていた。
シャルロットも他の四人と同じような内容だったってことは、つまりそれはシャルロット本人が自覚しているか、無自覚かは知らないが、シャルロットにもあの四人のように思いを寄せる人物がいるということだろう。
普段そんな様子が見られないシャルロットもちゃんと乙女していたようだ。
「で?その相手って誰だったんだ?お前?」
「いや、シャルロットだけは俺じゃなかった」
「へ~、じゃあ誰?犬塚さんとか?」
「犬塚さんってあの、前にCM撮影の場に連れてってくれた人だよな?あの人じゃなかったぞ」
「じゃあ貴生川さん?」
「いや、貴生川さんでもなかった」
一夏の言葉に俺は少し考える。
一夏の反応的に一夏の知らない人物と言うことはなさそうだ。
一夏も知っているシャルロットの周りにいる男、この時点でだいぶ絞られる。というか指南の人間はほとんど除外されるだろう。
一夏が面識のある指南の人間は犬塚さんか貴生川さんくらいのものだ。
「ん~……誰だろう?俺の知ってる人?」
「おう。って言うか、知ってるも何も――」
俺の問いに一夏が口を開く。
一夏の言葉の途中であけていた窓からふわりと風が舞い込み、カーテンと俺の髪を揺らす。
「――シャルロットの『ワールド・パージ』の相手って、お前だったぞ、颯太」
一夏……お前……なんておもしr――じゃなかった、なんてめんどくさいことをしてくれたんだよ!( ´艸`)
さて、第八回質問コーナー!
今回の質問はnaviさんからいただきました!
「颯太に質問です。カラオケに行った時に歌う持ち歌ってありますか?あればその理由もお願いします。」
ということですが
颯太「持ち歌か……持ち歌かはわからないけど、必ず歌うのは『Brave Love, TIGA』かな。ウルトラマンで一番好きなのがティガだし。なにより盛り上がる。あと同じように盛り上がるからよく歌うのが『オリオンをなぞる』『BLOODY STREAM』かな。どっちも盛り上がるからよく歌うな」
へ~
なるほどなるほど。
颯太「あと中学の時に卓也たちと四人でカラオケ行ったときにネタとして毎回歌ってたのは『DANZEN!ふたりはプリキュア Ver Max Heart』だな。俺が歌って三人が「MaxHeart!」って合いの手いれてさ」
だそうです!naviさん!
そんなわけで今回の質問コーナーはここまで!
また次回!