ゼロの使い魔で割りとハードモード   作:しうか

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本日二つ目のお話になります。前話読んでない方はご注意ください。

活動報告に主人公の使い魔についてのアンケートを載せました。
よろしければご協力お願いします。


12 クロアの弱点

 そして、モンモランシーを含めたカスティグリア家族会議の一つの議題が終わった。いやまぁ、俺がただ状況説明と原因を推測して発表しただけだが……。

 

 ちなみに今回の俺の睡眠期間は7日だったらしい。やったね! クロア君新記録更新だよ! 

 ―――決闘後にオスマンの前で血を吐いたときよりモンモランシーの方が長かったのか。

 

 あの婚約締結式のようなものは俺が倒れた後も続いたらしい。そして最後の束にあった安全保障関連項目に後ほど追加する旨が書かれ、俺以外が全員サインしたらしい。つまり、今俺がそれにサインすれば締結なのだが、良いのだろうか。いや、俺はむしろ願ったり叶ったりなのだが……。

 

 「カスティグリアにも負担があると思われますが、本当に構わないのですか? いえ、俺はモンモランシーと婚約できる事はまさに夢のようなことなのですが……。」

 

 そう最後に父上に尋ねると、真面目な顔で深くうなずいた。

 ―――うむ。では婚約しようか。ささっとサインして父上に渡すと、

 

「うむ、確かに預かった。では今後のことはモンモランシー嬢、そしてクラウスやルーシアと話し合いなさい。」

 

 と言って、母上を連れて部屋を出た。ああ、えっともしかして時間押してましたかね? これからトリスタニアですか? いえ、すごいくだらない事で待たせてしまってすいません。

 

 しかし、これで恐らく俺はモンモランシーと婚約したことになるだろう。ふむ。これからどう接すればいいんだろうね? と、三人を見回すと、三人で何か相談してあったようで、お互いうなずいていますな。ええ、なんか蚊帳の外な気がします。少し顔を赤くし、ちょっと上目遣いで照れ隠しのように少し笑顔を浮かべてモンモランシーが話し始めた。

 

 「クロア。ええと、これからもよろしくね? 私の未来の旦那さま。」

 

 ごふっ、こ、これはきつい。ああ、なんかもう無理かもしれん。さらば原作……。

 と、思った瞬間モンモランシーがテーブルの向こうからヒーリングを掛けてくれた。

 

 「ヒーリングありがとう。こ、これからもよろしく。モンモランシー。未来の俺の愛しの妻。」

 

 と、何とか返すとモンモランシーが少し眉を寄せた。おおう。もしかしてちょっとどもったのが不味かったか? 装飾語が足りなかったか? うーむ。奥さん? 正室? 正妃? やばいですな。俺の語彙力も足りないかもしれん。思考の海に沈みそうになったところをクラウスの声が引き揚げた。

 

 「兄さん。兄さんがモンモランシー嬢にベタ惚れで初心なのはこれではっきりしたね?」

 

 「う、うむ。しかし、そうはっきり言われるとだな……。なんというか、その、恥ずかしいのだがね?」

 

 と、なんとか取り繕ってみたが何か俺のモンモランシーやカスティグリア家での評価が下がった気がするのですが……。

 

 「と、言うわけで、皆で相談した結果。兄さんが結婚するまでに必要な能力を身に付けるため、訓練プログラムを用意したんだ。ああ、モンモランシー嬢も当然その話し合いに参加してるから気にしないでね。」

 

 そう言って真面目な顔でクラウスが羊皮紙の束を差し出した。

 ふむ。差し出された羊皮紙を上から順番に目を通す。題名は「クロア・ド・カスティグリアの特定状況での耐久力向上プログラム初級編」とある。その下にある概要に目を通してちょっと目の錯覚を疑いました。ええ、貴族の仮面もスパーンと抜ける鮮やかさです。

 

 概要

 クロア・ド・カスティグリアは女性に興味のないフリをしつつ実は初心なのではないかという憶測のもと、このプログラムはうんぬん。

 

 え、ええ、はっきり初心って言われましたね。確かに言われました。別に興味ないフリなんてしてませんが、そう見えましたかね? ざっと目を通しましたが、俺がモンモランシーと結婚するにあたり、モンモランシーに早期に慣れないと死ぬのでは? ということらしい。いや、うん。そう思う。今まではイベントや、授業、文通くらいしか接点ありませんでしたからね。ここまで近いとその、ちょっと恥ずかしいというか。

 

 しかし、クラウス。こんなプログラムも真面目に資料にするとは恐るべし。どんな教育を受けているのだろうか。恐らくプログラム化と資料化は俺の平静さを保つためだろう。いや、資料の作り方は俺のものを真似た可能性もなくはないが……。しかし、なんか全てクラウスに見透かされている気がしてならない。さすが伯爵家の次期当主……。

 

 「ねぇ、クロア。結婚するために一緒にがんばりましょう? 私もあなたのためにヒーリングの練習をしてるのよ?」

 

 ごふっっ、ちょ、ちょーっとモンモランシーさん。ハードル上げすぎじゃないですかね? このプログラムの初期は「気軽にお話してみよう」とか「手を繋いでみよう」とかなんですが……。あ、ヒーリングありがとうございます。

 

 「あ、ありがとう。モンモランシー。俺のためにヒーリングを練習してくれるなんて、とても感激だよ。そうだね、一緒にせいか……ごふっっ」

 

 くっ、ちょっとモンモランシーと一緒に生活することを考えただけでコレだと!? どうなっているんだ、俺の身体。虚弱ってレベルじゃない気がするんだが……。

 

 「ヒーリング。ク、クロア大丈夫? クラウスさん、どうしよう?」

 

 「に、兄さんとりあえず落ち着いて!?」

 

 「クロア、実はすごい初心だったのね……。今まで取り繕ってたの? 病弱以外の意外な弱点発見ね。」

 

 ひ、ひどい言われようだ。しかもルーシア姉さんはちょっと楽しんでるような――き、気のせいですよね? しかしまぁ確かにそう取られてもおかしくない、そう、おかしくないかもしれん。だがな、外に出るようになったのもここ四ヶ月ほどのことなのだよ。もっと段階を踏んでだな。

 

 「だ、大丈夫だよ。まだちょっと慣れてないだから。学院に通い始めてようやく外に出たほどだからね。多分、慣れれば大丈夫さ。モンモランシーも協力してくれるのだし、俺は出来るだけ早く君と結婚したいからね。がんばるよ。」

 

 と、資料を読むフリをしてテーブルの手前に目を落とし、何とか取り繕って言う事ができた。いや、顔は赤くなっていそうだがそこはしょうがない。

 しかし、なんとなく手を繋ぐくらいなら余裕な気がしなくもない。大体、メイドさんに13年間介護され、姉さんに補助されたこともある。学院ではシエスタに肩を借りたり、たまに着替えを手伝ってもらっているほどだ。女性に対する免疫は出来ていてもおかしくないのだが、なぜモンモランシーにだけこんなに過剰反応するのか疑問だ。

 

 「クロア……。」いうモンモランシーのつぶやきが聞こえたので目を向けてみると、彼女ははにかみながら席を立って、母上が座っていた隣の席へ移動した。お、恐らく訓練プログラムが開始したのだろう。しかし、いくらマニュアル化されたとはいえ、―――はっ!

 

 「愛しのモンモランシー、すまないが少々時間をくれないだろうか。クラウス、解決策に繋がるかもしれん考えが浮かんだ。それについて少し相談したいことがある。できれば二人で。」

 

 と、クラウスに真面目な顔で要請すると、

 

 「わかった。すまないね、モンモランシー嬢。少し席を外していただいていいかな? 話したことはちゃんと後で伝えるから。」

 

 と、二人の席を外してくれた。モンモランシーは少し考えたあと、笑顔で「わかったわ!」と言って姉さんと一緒に部屋を後にした。俺よりカスティグリア家の姉弟の方が仲がいいような……。いや、むしろ嬉しいことですな。

 

 「で、兄さん。その解決策というのはなんだい?」

 

 と、クラウスは一度テーブルを離れサイドテーブルに積んである俺の資料用の羊皮紙と筆記用具を取り、聞いてきた。

 

 「うむ。冷静に考えてみたら、女性との接触はモンモランシーが初めてというわけではないのだ。いや、キ、キキキスは初めてだが……、そ、そのだな。んんっ。そう、この屋敷ではメイドさんとの接触が一番多いし、姉さんにもたまに補助してもらっている。しかしこのようなことは起こらんだろう?」

 

 ふむ。やはり正しいかもしれん。ようやく落ち着いてきた。

 「確かにそうだね」と言って羊皮紙に言った事を逃さないようサラサラ書きながらクラウスは俺に続きを促した。

 

 「接していた期間が長いからとか姉という親族だからという理由と捉えることもできるが、学院ではシエスタ嬢の介助を受けている。当然、肩を貸してもらったり、肩を担がれたり、着替えを手伝ってもらったりという接触はある。」

 

 「ふむ。シエスタ嬢を例えに上げるという事は、兄さんが初心で双方の恋愛感情の有無を意識していることが原因ではないと?」

 

 くっ、いいところを突いてきた。恐らくこの資料を作るときに原因を追究したに違いない。いつからこのプログラムの作成が開始されたのかはわからんが、恐らくここ2~3日というわけではないだろう。いや、ありうるのか? しかし、7日間の気絶はクラウスも計算外だったはずだ。いや、平均から彼らに3日と考えられている可能性も否定できんのが辛い。

 

 「まぁそれもあるかもしれん。恥を忍んでこの際だからはっきり言おう。恐らくだが要因は二つだ。一つは確かに双方の恋愛感情の有無だと考えられる。しかしな、クラウス。二つ目が問題だったのだよ。」

 

 そう、恐らくだが……。ここまで虚弱なのはさすがにおかしい。どう見てもアレしかない。

 

 「クラウス。例の俺がモンモランシーへの想いを正直に書き綴った羊皮紙を読んだろう? むしろかなり研究したのではないか? まぁそのことに対して何か思うところがあるというわけではないのだ。クラウスが俺のためにしてくれたということはわかっている。」

 

 そう、アレに書かれていたモノが原因だ。クラウスは「わかってもらえて嬉しいよ」と笑顔を見せた。しかしだね……、いくら我が自慢のクラウスと言えどもだね……。

 

 突然変わった雰囲気を感じたのだろう。クラウスが少し身構えた。しかし、ここは追求せねばなるまい。確かに! 確かに嬉しかったのだがね! なんというかだね。

 

 「ただな、クラウス。確かに嬉しいのだがね? ――――クラウス……、モンモランシー嬢のあのドレスはメイド服とドロワーズを基本とした俺が当時考えうる俺の最高の趣向を参考にしたね? た、確かに嬉しかったよ。これ以上ないくらい、そう、俺にとって考えられないくらい似合っているのは確かだよ。

 だが、いきなりハードルを上げすぎではないかね? アレは本来最上級編だと思うのだよ。ターンされていたら危険だったかもしれないよ?」

 

 と、言うと、クラウスはようやく気づいたような顔をして、

 

 「ああ、なるほど。確かにそうかもしれないね。いや、兄さんの趣向を辱めたかったわけではないことは理解して欲しい。ただ、兄さんにとって最高のものを用意したかっただけなんだよ。

 というか、アレは姉さんの発案をモンモランシー嬢が掬って二人で盛り上がった結果なんだけどね? 最初は本当にアレに書かれているものを用意してターンしてみようっていう話もあったんだけど、改案しておいてよかったよ。

 ああ、安心してくれ。一応、無いとは思われていたけど兄さんが本当に即死する可能性があるということで、あの衣装のときはモンモランシー嬢もターンしないと約束している。」

 

 くっ、モンモランシーが盛り上がって着たのなら、いや着てくれたのならクラウスを攻められない。むしろクラウスに感謝すべきだろう。もしかして俺が気付かないギリギリを見極めたのか? それともドレスとして問題ないレベルに落とし込んだのだろうか。すばらしい追求能力と言わざるを得ない。

 

 そしてモンモランシーの俺への愛に感激だ。まさか受け止められるとは思わなかった。軽蔑されると思っていたのだが、彼女の包容力は本当に深海より深いのだろう。しかし、それを受け止めきれない俺の虚弱さが辛い。

 

 「じゃあ、ちょっとモンモランシー嬢に着替えてもらってみるね。少し席を外すよ?」

 

 できるだけバレないように悶えていると、クラウスはあっさりと席を外した。ど、どんな服装になるんだろう。それはそれで……。いやいかん。今想像するのは危険だ。冷静になろう。とりあえず、平静になろう。

 

 しかし、クラウスに俺の恫喝が平然と受け止められるとは……。俺の貴族の仮面は壊れたのだろうか。どこへ修理に出せばよいのだろうか。いや、話題のせいだと思おう。これがないと俺は貴族としてだな……。しかし、やはりクラウスは次期当主としてすばらしいな。こんなことも平然とこなすとは。

 

 と、しばらく貴族の仮面の修理をしていると三人が戻ってきた。クラウスとルーシア姉さんはテーブルの向かいに座ったが、モンモランシーは隣の席に歩いてきた。ドアの近くにいたときはまだボーっとしか見えなかったが、近づいてきて詳細がわかるようになってくる。

 

 「クロア、どうかしら?」

 

 と、少し照れた様子でモンモランシーが聞いてきた。今の彼女の服装は白い生成りのワンピースで、袖口は肘のすぐ上にあり、丈も膝丈で、全体的にはふんわりした体型を感じさせにくいものになっている。そして、袖口や襟元などの縁の部分は赤いレースで豪華に飾られており、腰には赤色のサッシュを巻いている。そして、彼女の顔の向こうに見えるリボンはサッシュに合わせたような色の大きなリボンでそれにもレースの縁取りがしてある。

 まるでお人形さんかと思ってしまうくらいにかわいい。

 

 「モンモランシーとても似合っているよ。君は本当に何を着ても似合うね。お人形さんかと思ってしまったよ。」

 

 「そ、そう……。ありがとう。」

 

 思った事をそのまま口に出して彼女を褒めると、彼女は一瞬でパッと赤くなってお礼を言ってから少し顔を逸らして隣の椅子に座った。

 

 これはこれでかなり厳しい気がするが、やはりあのドレスが原因だったのだろう。むしろ制服とかなら多分なんとか……。しかし、もしかしてあのドレスには魅了の魔法でもかかってるのか!? 決闘や戦争なら体調が良ければ早々負けないとは思うのだが、アレはダメだ。耐え切れる自信がない。貴族として死ねるなら問題ないのだが、アレはダメだ。アレを着たモンモランシーを見て悶死とかシャレにならん。

 

 原作でギーシュが確か「貴族なら名誉の方が大事」と言っていたのが身に沁みる。いや、彼が言っていたのは家名を守る方が大事ってことだが、「カスティグリア家のクロアは婚約者のターンを見て悶死」とかどこかの記録に残されでもしたら化けて出てでも消去せねばなるまいて。コルベール先生に自分に関する資料の消し方をご教授してもらっておいた方がいいだろうか。

 

 ふむ。しかし、あれらを余裕で乗り越えられるであろう才人はもしや超人か? 彼に黒歴史はないのだろうか。恥というものがないのだろうか。もし彼が召喚されたら調査してみよう。うむ。

 

 「ふむ。兄さんの言ったとおりあのドレスが原因だったみたいだね。」

 

 と、クラウスが俺の状態を観察したあと、次の話題に移った。アレ? プログラムはどうしたんでしょうね? せっかくのチャンスですよ? ああ、これ以上肉親のイチャイチャは見たくないと……。いや、その気持ちはわかるが、やはり楽しんでいたのだろうか。

 

 「それで、モンモランシ領に置く戦力だけど、父上が今トリスタニアで調整している。恐らくそのまま通ると思うんだ。」

 

 と、真面目な話が始まった。

 ただ、カスティグリアの戦力をそのまま全て移動させるわけにはいかないので、現地雇用も含めて、独自戦力も視野に入れるらしい。その辺りの資金は両家で出すそうだが、元々モンモランシ家は以前、干拓事業に失敗して大きな借金を抱えていたのだが、今回の俺の婚約の結納金で一括返済してもお金が余るそうだ。

 

 いくら払ったんだ、カスティグリア! というかカスティグリアの立ち位置がマジで不明だ。

 

 ただ、本当に戦争になるか今のところ不明なので、まず空軍の拠点を確保し、ガリアからの侵攻には防御用の要塞を置く予定だそうだ。まぁその辺りは相手の出方次第だし、この世界の戦争まだ知りませんからな。時間がかかりそうなものから早めに着手しておく感じですかね。いや、個人的に空軍基地は欲しいが!

 

 「それでいくつか問題があってね」というクラウスの発言から問題点が語られた。

 

 まず何よりカスティグリアからモンモランシが遠すぎるということだ。まぁフネでも数日あれば着くのでは? という距離だそうだが、まだ試行中らしい。風任せなところもありますからね。

 そこで、モンモランシにも兵器工場や造船所、それに風石の発掘も兼ねて先に提案したファンタジー版空対空ミサイルのテストもしたいらしい。新兵器の開発関連に関してはカスティグリアが金を出すのだが、問題は情報統制なのだそうだ。現在カスティグリアの情報統制はかなり高いレベルを維持しており、情報漏れを防ぐためのセキュリティは前世の知識を資料にしたものを使っている。

 いや、アレマジでやってるの? IDカードとか指紋認証とか目の光彩とかファンタジー風味に書いてあったと思うんだけど。と思ったらなんかマジックアイテム一個作って簡単にできたそうだ。ファンタジーェ

 

 ただ、その辺りの教育というか規律をモンモランシ領側のメイジや貴族に受け入れられない可能性が今のところ高いのでカスティグリアから送るのだが、そこで少し反発があるらしい。当初は前に出た「カスティグリア総合研究所モンモランシ支店」の一部を使う予定だったのだが、新たに設置する必要性がありそうだということで、現在候補を絞っている段階だそうだ。

 

 「ふむ。空軍基地を作るのだろう? そこにこっそり併設しておけばよいのではないか?」

 

 「まぁ兄さんならそういうと思ったけどね。今のところそれが一番有力だよ。」

 

 くっ、さすがクラウス。何か俺いらないんじゃ……。モンモランシで隠居生活をですね。と、思っていたら課題の本質を教えてくれた。

 

 「ただ、モンモランシに作る空軍施設に侵入を制限する区画をどうやって作るかというのが課題なんだけど。」

 

 ふむ。確かにそれはありうる。モンモランシ領の空軍施設のトップが誰になるかはわからんが、もしモンモランシ側の貴族で秘密区画を作る事に同意した覚えはないと後で言われても困る。というか「秘密です!」とか言った時点でダメだろう。つまりこっそり作る理由が欲しいと。このもはや詭弁の天才となりつつある俺の言い訳が欲しいと! まぁ前世の知識もありますし余裕ですな。

 

 「ふむ。風竜隊の訓練のため、戦技指導のために敵役(アグレッサー)として特殊部隊を作ろう。当然敵役だから味方からは隠蔽されていないと意味がない。小規模でいいから専用の基地も作るのはどうだ? 通常任務は戦技指導だが、そこの施設で開発を行い、アグレッサー部隊への補給品として配備し、それをカスティグリア所属のフネに渡し、そこをテスト拠点にすればよいのでは?」

 

 まぁ兵器ロンダリングですがね。アグレッサーかっこいいよねー。という前世の記憶がだな……。ふむ。確かにかっこいいかもしれない。しかも、効果が望めるはずだ。いや、むしろテスト部隊も兼ねた方がいいのか? しかしそれでは注目も集めるだろう。別口にすべきだな。

 

 「ああ、ついでにテスト部隊も作った方がよいかもしれん。大体はそちらに目が向くだろう。」

 

 というと、ようやくクラウスは納得したらしい。今さらだがモンモランシーがここにいるのは問題だろうか。いや、しかし未来の妻だしな。夫が……、問題じゃね? すっごい機密ダダ漏れですよ!?

 

 「ああ、クラウス君。すごい今さらなのだがね。」

 

 「なんだい? 兄さん。」

 

 「モンモランシーも聞いていたが大丈夫なのかね? 秘密は知ってる人間が少ない方がよいと思うのだがね?」

 

 と言うと、「ああ、そんなことか」という顔をして

 

 「ははは、本当に今さらだね。兄さん。でもモンモランシー嬢なら大丈夫さ。理由は伏せるけど、将来夫婦になるんだから彼女に秘密はなしだよ?」

 

 くっ、ま、まぁそうなのだが、いやいいのか? 夫婦とか関係ないのでは……。まぁ理由を伏せているのだからきっと理由があるのだろう。ここは次期当主殿に任せよう。

 

 「そうだな。愛しの未来の妻よ。君を疑うようなことを言って申し訳なかった。すまない。」

 

 と隣のモンモランシーを見て言うと、

 

 「大丈夫よ。クロア。あなたの言いたいこともわかるわ。でも安心してちょうだい。私の全てをあなたにあげたのだから。」

 

 と、モンモランシーはこちらをまっすぐ見つめながらテーブルに置いてる俺の手に彼女の手を重ねて顔を真っ赤にした。

 ごふっ、す、全てって確かにそうなのだが……。ド、ドレスだけじゃない……だと……!?

 

 「だ、大丈夫!? ヒーリング。」

 

 「すまない。ありがとう。そうだったね、俺の人生を捧げた人。」

 

 ホント、締まらないなぁ……。まぁいいのだが。

 

 結局クラウスはその案を採用するらしい。手詰まりだったのだろうか。しかし、風竜の

特殊部隊(アグレッサー)か。かっこいい。うん。かっこいい! これは新型装備を作るべきではなかろうか。

 何かないだろうか。確か今のところ無誘導爆弾と空対空ファンタジーミサイル関連の構想くらいだったはずだ。できればペイントもしたい。ううむ。確かクルデンホルフには空中装甲騎士団とか言うのがあったようななかったような。

 

 確かほんのかすかに残っている原作知識では竜にフルプレートだかでフル装備した重量級の騎士が乗るとかそんな感じだった気がする。重くて竜を降りるとそれが障害になってギーシュたちに負けたとか、うーん。しかしそれもアリではあるが、あまり意味がない気がする。カスティグリアの風竜隊は機動性重視だ。

 

 ふむ。機動性か。風竜隊に協力してもらって補助翼を竜につけるというのはどうだろうか。確か竜には尾翼がなかったはずだ。尻尾にでもつければいいだろう。おおお? い、いけるのではないかね? そこに部隊のマークとか夢がひろがりんぐですね!

 

 機動性が上がるなら新型の鞍も必要か? いや、今どんなの使ってるのか知らんが、まさか素乗りではないだろう。いや、素乗りなのかね? とりあえず、パイロット、いや、ええーっと? 騎手か。騎手の安全性と体勢保持や高機動下での耐久性を上げるよう提案しよう。

 

 むしろフネも原子力空母のように甲板を2枚にだな……だな……。いや、空を飛ぶにはアレじゃダメだろう。多分。今のところ、直線甲板の物を提案してあった気がするが、うーん。うーん。そうだ! アルビオンがいいね。そう、空飛ぶ島じゃなくてロボットアニメに出てくる強襲揚陸艦の方。あの船は本当に好きだった。あのアニメ史上最高の物ではないだろうか。せっかくのファンタジーだ。ガワだけでも再現せねばなるまいて。

 

 しかし展開式のカタパルトとかミノフスキーエンジンとか武装は無理だろう。いや、展開カタパルトを展開させるだけなら恐らく行けるが、ん? カタパルトもいけるのか? いけるかもしれんか? 一応蒸気の動力は提案してある。いや、危険が一杯だが一応書いておくか。会った事はないし、俺の資料が山盛りにあったとはいえ異常なくらい急速に工業技術を発展させたんだ。カスティグリアが生み出したマッドファンタジーサイエンティストが作ってくれるかもしれん。

 

 だがまぁあまりこの形に拘る利点は少ない。そう、ぶっちゃけほとんどない。むしろ欠点だらけな気がしなくもない。しかしだな、ロマンがだな……。うーむ。シレっと書いておこう。

 この形のフネの設計はちょっと骨だが工夫次第では行けるはずだ。リストに載せておこう。それに、追加武装次第ではかなり使えるはずだ。大きさもあそこまで大きくなくてもよいだろう。「ちょっと変わったフネ一隻作ってみない?」とか「おれのかんがえたかっこいいフネ」って感じでテスト用に提案しよう。

 

 あとは緊急用や吶喊用にロケットブースターをつけるとか、あー、でもこれは死人、いや死竜が出るかもしれん。大丈夫だろうか。ふむ。下から限界を見つつという感じで安全重視で行けばいけるか? ちょうどファンタジーミサイルにも手を付けるのだし、ロケット関連はきっとだれかが開発するだろう。いや、してくれないと困るんだが……。

 

 コルベールを引き入れるべきだろうか。しかし、今のところ彼は極度の平和志向で防衛用と言っても納得してくれない可能性が高い。これだけのために説得しても信用されないだろう。説得に失敗するようならこちらの考えていることを知られるのもあまりよくない気がする。もし、原作が始まって空飛ぶへび君が使われ、それでも開発ができていないようなら考えよう。

 

 と、三人がいるのも忘れて手が勝手に先ほどクラウスが持ってきていた羊皮紙とペンに伸びてカリカリとひたすら資料リストを作っていると、

 

 「モンモランシー嬢。すまないね。たまに兄さんはこうなるんだ。」

 

 「ええ。意外な一面ね。でも何かに没頭するクロアもステキね。見れてよかったわ。」

 

 という声が聞こえてきた。ハッとして顔を上げて見回すと、ちょっとすまなそうな顔をしているクラウスと呆れた顔のルーシア姉さんと、ちょっと赤くなり目をキラキラさせたモンモランシーがこちらに注目していた。は、恥ずかしい。

 

 「あ、えっと、すまない。少々考え事をだな。」

 

 と、言い訳になるかならないかわからないようなことをなんとかひねり出すと

 

 「兄さんの悪い癖かもしれないね?」

 

 と言って笑われた。くっ。

 

 そして、結局その後は解散になり、モンモランシーはモンモランシ領に帰ることになった。

 「見送りがしたいのだが……。」と言ったら、風竜隊が俺の部屋の前をフライパスしてくれるそうだ。まぶしくてほとんど見えないが、独特の風を切る音が聞こえてきたのできっとモンモランシーが乗っているだろう。すぐ近くの壁の上を一匹の風竜が飛び去るのが見えたので手を振っておいた。見送りできただろうか。誰にも確認できないのがなんとも……。

 

 と、とりあえず資料作りに没頭しよう。そうしよう。

 

 

 

 




ストックのラストです。ええ、ストック切れました。
というわけで不定期になるかと存じます。

げ、原作が近いね? だがまだだ! まだ半年ある! 

次回もおたのしみにー!
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