いくぞ読者殿! ブラックの貯蔵は充分か?
―――こうでしたっけ? そ、それではどうぞー!
前回の睡眠からやはり三日目。寝込むというより伏せるというより、むしろ半植物状態なのではないだろうかという不安が顔を出すような学院生活を送っている。やはり屋敷の方が健康によいのだろうか。シエスタがいるとつい肩を借りてしまうので、最近一人で歩いていない気がする。
うむ。ここは一つ今日からできるだけシエスタの肩を借りずに過ごそう。いや、その、ちょっとシエスタがシエスタに見えないというか、むしろ肩を借りづらくなってしまったわけでは断じてない。
すでにテーブルに着くまでに体を拭いてもらい、着替えを手伝ってもらい、髪を手入れしてもらい、肩を借りているのだが、起きた時は俺にとって悪くない体調が、すでに活動水準ギリギリを彷徨っている。むしろ、最初から屋敷からメイドさんを連れてきた方が早かったのではないだろうか。
しかし、屋敷からメイドさんを連れてくるとこの紅茶が飲めなくなるのか。シエスタはもはや紅茶兼側室候補で屋敷から介助のメイドさんを連れてくるか? いや、そうすると何かシエスタの仕事を奪ってしまいそうなのでダメだな。父上も婚約式のときに理由があるみたいなことを言っていた気がするし、俺がシエスタに慣れた方が良さそうだ。ふむ。今まで自然に暮らしてきたのだ。そ、側室候補になったとはいえだな……。危険なので考えないようにしよう。うむ。
シエスタは紅茶を入れてくれたあと、モンモランシーに知らせるため部屋から出て行った。そういえばクラウスとまだ話があった気がする。まぁあまりよく思い出せないので大した事ではないだろう。
むしろ、前回のモット伯との交渉の行方の方が気になる点がなくはない。いや、アレでシュヴァリエ貰ったらぶっちゃけ気が咎める。よく考えたら、手柄を譲った相手である本来貰うはずの人間が規定で貰えず、そのお零れで推薦された俺が貰ったら気が咎めるどころの話ではない。むしろ何の言い訳も思いつかず、会うのも辛くなるかもしれん。
まぁ冗談の類だろう。実際、演劇調だったわけだし、それを見ていた俺の反応くらいきっとクラウスもモット伯もわかっているだろう。ふむ。からかわれていたのだろうか。まぁシュヴァリエをこの交渉で貰ってしまうよりは、からかわれたくらいの方がまだ気が休まる。モット伯もなぜか妙に怖がっていた気がするし、クラウスが「兄さんは怖い人間じゃないよ」とからかって見せて誤解を解きつつモット伯と仲良くなった程度だろう。
確かにモット伯は“若いメイドを学院から引き抜き囲う”という趣味がなければすばらしい人物に思える。王宮の勅使というエリート職についており、交友関係も広くカスティグリアの戦力もどこからか情報を得てはいたのだろう。ただ本当かどうかわからなかったといったところか。
俺との交渉、そしてクラウスとの交渉も最初はひどかったが、最後は本来の勘を取り戻したかのようにすばらしい交渉だったと言えるだろう。クラウス劇場に乗ってしまうようなユーモアのセンスも抜群だし、名俳優モットとしてもシエスタが惹き込まれるほどであるし、今から思えば俺としても見ごたえがあった。
なるほど、考えてみればみるほど、懇意にしておいた方がよい方のように思えてきた。それを全て見ていたクラウスが、モット伯のすばらしさを見抜き懇意にしようと歩み寄った彼の判断はさすが次期当主と言える。原作の知識からおぼろげに相手を判断している俺には備わっていない機能かもしれない。うむ。さすが自慢の弟クラウスである。
あとはモット伯の平民の若い女性好きさえなんとかなれば彼の欠点は消滅し、まさに非の打ち所がない理想の貴族となるのではなかろうか。しかも、平民の若い女性に関しても、もし平民のメイドを引き抜く際、相手の同意があればむしろそれは救済になる可能性もある。シエスタのようにカスティグリア、モンモランシの面接を経て俺が手を出すのを待つ人間がいるくらいだ。需要はあるだろう。
ふむ。よく考えたら実際このカスティグリアモンモランシ方式の側室選定法は後々問題の起きにくい、すばらしい規定ではなかろうか。
引き抜かれるであろう本人の意思も尊重され、モット伯がさっさとしたいと思われるトリガーが最後に設置されている。問題はモット伯に妻がいるかどうか、そしてそのモット夫人がこれを了承するかによるが、そもそも最初の段階で夫人が選定に入っており、婦人がイヤと言えばその後の選定はなくなる。シエスタの場合、一年以上かかっているわけだからして、その間に夫人が許可を出すかどうか決められるだろう。
ふむ。モット伯にこの選定手順をオススメしてみるか。もし夫人がいないようであれば個人的に少し心当たりもある。モット伯にとってもお相手にとってもトリステインにとってもいい話であるはずだ。婚約の仲介か……この俺が婚約の仲人か! 悪くない、悪くないぞ!
ククク、この恋愛という戦場に立つたびに戦力外と通告され、心の奥深くに隠蔽していたモンモランシーに対する片想いすらクラウスに見透かされ、全て整った上でモンモランシーからプロポーズされるという貴族男児として恥ずかしい思いをしたこの俺が! 他人の縁談を俺がお膳立てする機会がやってきたのだ!
「ふはははは。これは、もはやモット伯にとっても悪い話ではないはず。この戦い、以前恋愛では完全に戦力外と通告されたこの俺が支配させてもらおう! そう、これはモット伯でもクラウスでもモンモランシーでもなく俺だけの戦場! 俺だけの戦いだ! あーはっはっはっは!」
「に、兄さん? 入るよ?」
脳内のクロアモット伯劇場で俺が盛り上がっていると、そっとドアを少しだけあけクラウスが顔を出した。
も、もしかしていつの間にか声に出ていたのだろうか。脳内劇場の音が部屋の外まで聞こえてたのだろうか。ま、ままままさかそんなことはあるまいて。そ、それにノックの音には敏感に反応できるはずだ。とりあえず何もなかったことにしよう。そうしよう……。
いつの間にか立っていたので音を立てずそっと椅子に座り、何事もなかったかのように、紅茶に口をつける。
「んんっ。うむ。入るが良い。我が自慢の弟よ。」
咳払いしたあと威厳を込めてクラウスに許可を出すと、クラウスがそっと入ってきた。ドアまでの距離が俺にとっては遠いのでまだ顔がぼやけていて表情は見えないがきっとキリッとした真面目な顔をしているはずだ。うむ。俺は病弱だが彼に相談されるほどの頼りがいのある兄であるからして。
「兄さん。そのね? うーん。えーっと。その、今ちょっと外まで聞こえていたのだけど、聞かなかったことにしておいた方がいいよね?」
「ごふっ」ごんっ
「に、兄さん!? モンモランシー嬢! 兄さんが!」
「ちょっ、大丈夫!? クロア、しっかりして! 細かいことは気にしなくてもいいのよ! 私はあなたがどんなことをしても全て受け止めてあげるわ!」
うおおおお、キツイ。これはきつい。クラウスだけでなくモンモランシーにまで聞かれていたとは……。
「あの、クロア様。大丈夫ですか? 私も気にしませんから! 私も受け止められますから!」
シ、シエスタまで……だと……!?
なんか生きているのが辛くなってきた。ここはそっと埋葬していただけないだろうか。モンモランシー、ヒーリングはもういいよ。うん。このままそっとだな……。
「失礼する。モンモランシー嬢、この『波濤』のモット、これでも水のトライアングルだ。私もご助勢仕ろう。」
モ、モット伯もいた……だと……!? な、なんという罠だ! これはまさしく生き馬の目を抜くような所業だ!
恐ろしい。恐ろしい罠を自ら踏んでしまったようだ。今後、この世界に中二病という言葉があるのか定かではないが、俺は体が病弱なだけではなく中二病全開の痛いヤツとしてこのハルケギニア中に名が広まってしまうのだろう。モット伯は勅使だ。どこにでも足を運ぶ機会があるに違いない。
これからは『中二病』のクロアとか『思春期』のクロアとか『逝かれ』のクロアとか言われてしまうのだろうか。そしてそれが俺の二つ名になってしまうのだろうか。さっさと二つ名を決めておけば良かったかも知れない。そして、これは俺を生み出したカスティグリアや俺を迎える予定のモンモランシに汚名を被せてしまうのだろうか。
それだけは、それだけは止めねば死んでも死に切れん! 彼には悪いがここはモット伯だけでも亡き者にしておこう。そしてそのあと俺も埋葬されよう。
「モット伯、ククク、すまないね。聞いてもらっては困ることをお耳に入れてしまったようだよ。さぁ決闘しよう!
なに、痛みを感じる間もなく灰にすると宣言しよう。気楽に決闘に望みたまえ。
うむ。なぜ決闘になるのかわからないといった顔をしているね? 理解する必要はない。此度の決闘であなたが灰になった後、俺も自ら灰になり、あなたの後を追うと始祖に誓おう! ただちょっと俺もあなたも運が悪かったと思ってくれたまえ。」
そうキリッと告げると、
「いや、クロア殿。恥ずかしがることはない。私にも覚えがあるとも。誰でも一度は通る道。そして通った人間にしかその苦しみはわかるまい。そう、わかるまいて……。
ここまでの人間に知られたのは少々、その……同情の念に耐えんが、もし
彼も自身が歩んでしまった道で受けてしまったであろう心の痛みを思い出し、その痛みを今まさに感じているのだろう。悲しい顔をしたモット伯に慰められてしまった。
モット伯にも覚えがあるのか……。もしかして、心の友だったのだろうか。しかも同じような痛みを感じながらも同情の念に耐えないとは……、俺の痛みを解ってくれるそんな人間がこんなところにおり、そのような方に俺は決闘を吹っかけてしまったというのか! な、なんという悲劇!
「モ、モット卿! 俺の痛みをわかってくださると言うのか! なんという、なんという懐の深い。どうか、先の決闘の件、忘れていただきたい。本当に、本当に申し訳ない事をしてしまった。後悔の念に耐えませぬ。
もしお許しいただけるというのであれば、このクロア・ド・カスティグリア、できることならばモット卿のお役に立ちとうございます。」
席を立ち彼の前で跪き、そう彼に謝罪すると、
「おお、クロア殿。あなたの深い苦しみと後悔。このモット、受け止めきるのが辛いほどよくわかりますぞ。何、そのような誤解は良くある事。私は気にしていないとも。ささ、どうぞ立ち上がってくれたまえ。そのように跪くほどのことではない。
そう、役に立っていただくという話も私にとっては望外の喜びではあるが、このようなことでそのような言葉をいただいてはこちらの心が痛んでしまう。
そうですな、できることであれば、これからはそう、同じ志を共にする友と思っていただければ光栄だ。」
と、彼は俺にヒーリングをかけるために出していた自分の杖を仕舞ったあと、鍛えられた大人が持つ力強さで軽々と俺の両脇に手を入れて俺を立たせ、笑顔でお許しの言葉を発し、友と思ってくれと言ってくれた。
俺の友と言えばギーシュやマルコだろう。このような方が友とは……、いや、もはや友では済むまい。彼をただの友や心の友と呼んでは俺の沽券に関わる。むしろ俺にとっては先達。そう、この黒い覇道の先を突き進んで恐ろしく経験を積んだ先達と言えるだろう。
「モット卿……。そう思っていただけるのは嬉しいのだが、俺にとっては友では足りないようです。できるならば……伯父、―――そう、できるならば伯父と呼ばせていただけないだろうか。」
そう少しうつむきながら考え、目を見て懇願すると、彼は驚愕の顔を見せたが笑顔で俺の量肩に手をかけ了承してくれた。
「ああ、構わないとも! クロア殿、私にとってこれほどの喜びはないとも! ぜひ私を伯父と呼んでいただければ大変光栄だ!」
「おお、モットおじさん。これからもよろしくお願いします。」
そう笑顔で彼に告げると
「おじさん? いや、伯父上とかじゃないのか? おじさん? いや、それでもまぁ構わないと言えなくもないがおじさんか……。」
と、モットおじさんは明後日の方を向いてちょっとつぶやき出した。ええ、おじさんの方が親しみがあっていいと思います。
「さて、クラウスよ。取り乱してしまってすまない。もう大丈夫なようだ。何か話があったのかね?」
そういうと、クラウスは何かを思い出したように再起動を果たし、
「あ、ああ、えっと兄さんに話があってね。一応順番も決めてあるから相談に乗って欲しいんだけど構わないかな?」
「ああ、構わないとも。」
すると、クラウスがディテクトマジックを使い盗聴などの探知をしたあとモットおじさんが壁にサイレントを掛けて回った。その間にシエスタが紅茶のおかわりを注いでくれ、俺の対面の席にも紅茶のカップを用意して注いだ。カップの数は一つ。つまり最初は一人か。準備が出来たようでクラウス以外は退出し、クラウスがロックを掛けた。
「最初は僕に譲ってもらったんだ。まぁあとはそれほど機密性が必要な話に思えないからね。それで、この前聞いた話の続きを聞きたいんだ。もちろん兄さんが出した条件で誓うよ。」
ふむ。この前の話か。なんの話だろうか。もはや地雷は存在しないと思うがここで話題を間違えると少々この下がりきり傷つきすぎた兄の沽券が砕け散る可能性も否定できない。ここは素直に聞いておこう。
「ふむ。何の話か少々判断ができない。何の話か教えてくれないだろうか。」
そういうと、クラウスは少々考えてから教えてくれた。ああ、ルイズ嬢の虚無の話か。それならば問題あるまいて。誓いの内容もほとんど覚えていないが問題あるまいて。
「そうか、誓ってくれるのであれば問題ない。ルイズ嬢なのだがね。彼女の系統は虚無だ。知っていたかね?」
そう教え、知っていたか尋ねるとクラウスは驚愕の顔よりもいぶかしむような、信じていないような顔をした。
「初めて聞いたよ。でもその話は本当なのかい? その考えに至った経緯を教えてくれないだろうか。」
ふむ。確かに理由も何もまだ導入部なのだが、クラウスもわかってて上手く誘導してくれているのだろう。
「うむ。まず彼女が召喚した使い魔の左手、アレは神の左手たるガンダールヴだよ。聞いたことがあるだろう? そう、アレさ。彼の身体能力は基本的にそれほど高くない。しかし、彼が武器を手にし、恐らく感情が高ぶるか、主人が関係すればまさに人間離れした身体能力を発揮する。この身体能力の高低に関してはギーシュも同じ意見だ。しかし、彼はまだガンダールヴに関しては思い至っていないがね。」
まずそこまで話すと、クラウスも少し納得したように「なるほど」とつぶやいた。
「そして、次にルイズ嬢だが、彼女は王家の血筋が色濃く流れている公爵家に生まれている。しかし、そのような家系に生まれながら信じられないことにサモン・サーヴァントとコントラクト・サーヴァントしか成功したことがないそうだ。後は全てどんな魔法でも爆発するらしく、『ゼロ』と呼ばれているのだそうだ。
そう、火の爆発ではなく、本当に爆発なのだそうだよ。しかも爆発する確率がほぼ100%とは系統魔法を使うメイジには考えられない。周りはタダの失敗魔法と呼んでいるらしいがね? しかし、クラウス。失敗して爆発などしたことがあるかい? 他に見たことがあるかい?
これは彼女自身が虚無の系統であると認識しておらず、虚無の系統だけの特別な魔法の使い方があり、まだそれを知らず目覚めていないだけだと考えれば君でも納得できるのではないだろうか。
ちなみにこのことに思い至り、ルイズ嬢が虚無の系統であることと彼女の使い魔がガンダールヴであると知っているのは、今のところオールドオスマンとコルベールしかいない。以前オールドオスマンが訪ねてきた件はこちらがメインだったようだよ。
彼はこのことを秘匿したいらしくてね、それでクラウスと父上以外に知らせることはしないと約束したのだよ。俺もあまり広めない方が良いと思うしね。彼女達が虚無を下らないことに使うことしか思い至らない連中に見つかり、使い潰されるのは忍びないからね。
しかし、『
そこまで言って紅茶に口をつけると、クラウスも一度息を呑んだあと、紅茶に口をつけた。そして少し考えたあと、
「なるほど、それで兄さんは近々彼女が虚無に目覚め、本格的に活動すると考えているのかい?」
と、真剣な表情で聞いてきた。理解し、納得したのか、その時に決定すればいいと思ったのかは解らないが一応飲み込めたようだ。
「そうだな。全くの勘だがね。もしかしたらあるかもしれない。恐らくどの程度長い期間かわからないが、少なくとも数十年、数百年トリステインに虚無が現れなかったことを考えると、六千年前から伝わる何かキーになるものが必要なのかもしれないな。」
とりあえず始祖の祈祷書と水のルビーに関してはヒントだけ与えた。まぁすぐわかることだろう。もし原作との乖離があった場合、カスティグリアに必要ならばクラウスが渡るようにしてくれるだろう。
「なるほど。勘か。兄さんのその辺りの勘はするどいからね。期限に関しては一応ということになるけど僕個人としては信じるよ。
それで次の王はアンリエッタ姫かルイズ嬢になるのか。でももし、ルイズ嬢が女王になったらガンダールヴが王配になるのではないかい?」
ふむ。確かに虚無と神の左手の間を裂こうとしたらルイズ嬢の王位が認められる理由も薄くなる。方や始祖の直系として認め、方や始祖の使い魔ではなくタダの平民と認めることになるからだ。
「そうだね、もし仮に今のままルイズ嬢が女王になるのに何の妨害もなくなるようなら、ガンダールヴが王配になるだろう。しかし、今のところまだ様々な道や問題があるのはわかるね? もし、仮にだがね。俺が王配を狙うのであれば……。」
そこまで言って紅茶を飲みつつクラウスを観察する。すると少々身を乗り出した。想像はついているだろうが聞きたいらしい。
「まず使い魔君に女性を宛がい、無理やりにでも始祖に誓って貰い結婚してもらう。これで相手はルイズ嬢、アンリエッタ姫のどちらでもよくなる。あとはマザリーニ枢機卿と交渉してアンリエッタ姫に近づき、彼女を王位に据えて王配に就くか、ルイズ嬢にワルド子爵の婚約を破棄してもらってエレオノール嬢の事を告げ、婚約までもって行くか……。まぁどちらも厳しそうだが、ルイズ嬢が使い魔君に懸想しないうちに動くことが必要だね。」
「ふむ。なるほど……。でもエレオノール嬢を引き合いに出したらヴァリエール公爵に伝わって逆に意固地になりそうだね。でも使い魔君か。」
そう言ってクラウスは思考の海に沈み紅茶を飲んだ。実際今のところサイトのお相手と言ったらキュルケくらいだろう。しかし、彼女はヴァリエールの天敵であるツェルプストーだ。恐らくルイズ嬢は良しとすまい。となると、誰だろう。原作ではアンリエッタ姫やティファニア嬢、あとはタバサ嬢くらいか? ティファニア嬢が一番無難な気がするが、問題は出会う可能性が現在低くなりつつあり、しかもアルビオンとの戦争の終わり際になる。
あとはカトレア嬢やなんか酒場に胸の大きいシエスタの親戚の女性がいた気がするが、カトレア嬢は身を引きそうだし、しかも、カトレア嬢は俺と同じく病弱だとは言え公爵家の次女だ。身分の差でダメだな。シエスタの親戚は……、ぶっちゃけよく覚えてない。トリスタニアにいることしか知らない。アレ? この前ちょっとトリスタニアデートの事を考えていたときに思い出していた気がする。まぁいいか。自然に出会うだろう。
しかし、エレオノール嬢に関しては確かにそうかもしれない。ふむ、やはり恋の戦場では戦力外なのだろうか。この調子だとモットおじさんという戦場も危ういかもしれない。クラウスに相談すべきだろうか。しかしだな、このデビュー戦をプロとはいえ弟に手伝ってもらうのはいかがなものだろう。
ぶっちゃけモットおじさんの相手にエレオノール嬢を考えていた。ルイズ嬢の獲得作戦で使えないのであれば、即こちらの戦場に導いても良いのではなかろうか。うむ。折角名前が挙がったんだ。クラウスに聞いてみよう。
「時にクラウスよ。モットおじさんはすでに結婚しているのかね?」
「いや、していなかったと思うよ?」
突然の俺からの問に、クラウスは思考の海から浮上した。ふむ、やはり好機。
「もし今誰もエレオノール嬢を獲得する気がないのであれば、モットおじさんに彼女を宛がうのはどうだろうか。年齢も近そうだし、彼女は一度伯爵家に断られているのであろう? それならば、次は子爵家あたりに声をかけるしかあるまい。そう考えればあの若い女性を囲っているモットおじさんでも囲ったまま結婚できないだろうか。」
そして、俺が結んだ側室選定法の契約書の話をし、その利点がモットおじさんの今後の修羅場を回避するということを、恐らく製作に関わったクラウスに改めて説明した。
「ふむ。なるほど。それはそれで面白そうだね。で、さっき言ってた戦場というのがそこなのかい?」
クラウスに笑顔で出来たばかりの古傷を抉られた。
「ぐっ、ク、クラウスよ。う、うむ。確かにその通りだ。しかしだな、もし良いというのであれば今回は俺もその、戦場にだな、赴きたいと思っているのだが、構わないだろうか。」
「それは構わないけど、本当は兄さん一人で戦いたかったんじゃないのかい? 聞いてしまったからには不安だから最低限僕は相談に乗らせてもらうけどね?」
ふむ。やけに傷を抉ってくるな。はっ!? まさかクラウスはエレオノール嬢を狙っていたのだろうか。あ、ありうる。ここは良き兄として弟がエレオノール嬢を攻略できるよう、手助けすべきかもしれん!
「もしかしてエレオノール嬢を狙っていたかい?」
「いやいやいやいや、兄さん。いくらなんでもそれはないよ? カスティグリアとしてどうかと、聞かれるならまだしもだね。彼女とは十歳以上離れている上に、彼女の性格は噂に聞いているよ? それはもう、かなり有名だからね。僕にとっては地位しか良い所がなく、他は欠点ばかりじゃないか。さすがに兄さんといえど、恋愛音痴には限りがあると思うよ!?」
れ、恋愛音痴だと!? 婚約者がいて側室候補のいるこの俺が恋愛音痴だと!? ―――あ、うん。そうかもしれない。両方ともクラウスが関わっている節がありましたな。しかも戦力外通告受けて普通に納得してますしな。
ま、まぁ本当にクラウスがエレオノール嬢をなんとも思っていないのであれば問題ないか。
「ふむ。そうか。ならば自慢の弟よ。納得できるよう、どのような女性が好みか教えてくれたまえよ。」
そう、紅茶に口をつけながら弟に恋バナを振ってみる。ふむ、他人の恋バナに口を突っ込むのはギーシュ以来か。ギーシュのときは後ろめたさもあったが、クラウスならば純粋に聞いてみたい気もする。
「うーん、そうだね。あまり考えた事がなかったけど、少しくらいお転婆でもいいけど最低限、取り繕うくらいのお淑やかさは欲しいかな。後は比較的整っていて、会話が楽しめる女性がいいね。でも、もし結婚するなら地位も男爵以上は必要だからね。好みとは言いづらいかもしれないけど、その辺りだと思うよ。後は相手が現れてみないとなんとも言えないさ。とりあえず、あまりに身分が違ったり、歳が離れていると先の事を考えて恋愛も無理だと思うよ。」
クラウスは真面目に答えてくれた。「なるほど」と言って紅茶をつける。しかし、その条件だとかなり的が狭まるのではないだろうか。というかその条件だとルイズ嬢は無理と……? 現れてみないと、と言っていたしな。となると狙うならアンリエッタ姫が濃厚か?
ふむ。確かに彼女なら問題はない気がする。ちょっと気が多いのが問題だが、クラウスなら何とかしてしまいそうな空気を持っている。それにアンリエッタ姫の思い人であるアルビオンの王子様も確か金髪だったはず。もしかしたら脈ありか!? しかし相手が王族となると気軽に話に出すのは止めておいた方がいいかもしれん。まぁ恋愛のプロに任せて観戦の準備だけしておこう。
「ふむ。確かに勘違いだったようだな。では、その戦場に俺も導いてくれたまえよ。」
「ふぅ、誤解が解けてよかったよ。とりあえず、ルイズ嬢とモット伯のことは考えてみるね。」
そう、クラウスが心底安心したといった雰囲気を体全体から発露させ、この話は終わった。
そして、シエスタが側室候補になったことに関しての話が始まったのだが、これはもうすでにモンモランシーとシエスタを含め三人で話してあるらしい。シエスタには介助の仕事も含まれているため、一応彼女からのアプローチはある程度制限しているので安心してくれと言われた。よくわからないが安心しよう。まぁ後の扱いは書類に記載されているらしく、その取扱説明書のような書類を渡された。
パラパラとめくって読んだのだが、これを書いたクラウスの精神力には恐れ入る。むしろこういうのはモンモランシーや父上、母上あたりが書くべきものではなかろうか。筆跡が完全にクラウスなのが恐ろしい。ここまで淡々と書けることが、彼の未来の夫婦生活に影を落としてしまわないだろうか。いや「何事も初めてはモンモランシーから」とか「正室と側室の違いについて」とか「役割と序列の示し方」とかそんなのだけどね。
しかし、この取扱説明書にもモンモランシーとシエスタのサインが入っているのが恐ろしい。特にサインにゆがみはなく、さらっと気軽に書かれたキレイなサインだ。俺なら恐らくゆがんでしまうだろう。しれっと彼女たちにこの書類を見せ、彼女たちもしれっとサインをしたのだろうか。さすが恋愛のプロたちであると言わざるを得ない。
とりあえず、質問するような事はなかったので、了承した。と言って書類をテーブルに置くと、クラウスも話が終わったようで、今度はモンモランシーやモット伯、シエスタを部屋に入れ違う話を始めるらしい。
シエスタに書類をサイドテーブルの書類を入れているところに入れて貰うよう頼むと、モンモランシーが書類を片付けてくれた。
ブラック少な目でしたね。ええ、前から比べれば普通でしょう。
か、感想に書いて貰ったからやってみようとググってやってみたのだよ! 貯蔵を補充と間違えてたよ。フェイト見たことないんだYO;;
くっ、また私の黒歴史が一ページ……。
シエスタとの恋愛描写期待していた方、まだお待ちください^^
ええ、あの罠引っかかると厄介ですからね^^;
次話あたりからヒーリングふえr(ぇ
あ、すいません。私風邪ひきました。ええ、昨日起きたらひどい寒気と頭痛が襲いまして、頭痛薬と風邪薬飲んで様子みながら書いてますorz
季節外れの寒い日が続きますね。皆様はどうか無理なさらぬよう。お体にお気をつけてお過しください。
次回おたのしみにー!
追記:ちょっとおかしいところ修正しました。なんで何度も何度も誤字やおかしいところ探してからアップしているのに、アップしてからの確認で気付くんでしょうかね? ホントすいません。