ゼロの使い魔で割りとハードモード   作:しうか

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 注:今回は糖分がほとんど控えられておりません。ご都合主義な内容がいつもよりかなり含まれております。ご注意ください。
 前話に穴があったので6日に後半ちょっと追加されています。未確認の方は確認の方よろしくおねがいします。ついでに前話が35話目になっていたのに気付いて先ほど34話目に修正しました;;

 それではどうぞー!



35 惚れ薬

 タルブ村防衛戦から五日後、俺は学院のベッドの中で目覚めた。そう、あの後寝ている間に輸送されたようだ。そして、起きた後、戦闘後の処理に関して簡単にだが、クラウスから届けられた隠蔽魔法付きの報告書を読んだ。まず、タルブ村防衛戦の戦勝パレード、つまりアンリエッタ姫殿下の戦果をトリスタニアに住む者たちに見せ付ける行事は四日前にすでに終わったらしい。

 

 捕虜になったアルビオンの軍人の中でも貴族や士官は捕虜宣誓を行い、それなりに自由に暮らしているらしい。原作通り、その士官の中にはでもトリステイン空軍の顧問になったりアドバイザーになったりする者が現れるのだろう。水兵なども強制労働の代わりにトリステインとして戦う事になるかもしれない。

 

 あと、ルイズ嬢がついに虚無に目覚めたようだ。特に戦闘中というわけではなかったのだが、始祖の祈祷書と水のルビーはアンリエッタ姫の結婚式での詔を頼まれていたらしく彼女の手にあった。恐らく戦争の開始で危機感が募り必要に応じて読めるようになったのだろう。

 

 ちなみに、ルイズ嬢はなぜか目覚めた時に学院でエクスプロージョンをぶっ放し、コルベール先生の実験室にあった秘薬が消失したらしい。サイトが何かしてしまったのだろうか。まぁ、被害が少なくて良かったと思うしかあるまいて。むしろ、デルフリンガーやサイトも同じ場所にいただろうから特に問題は無かったのではないだろうか。

 

 情報の出処はアンリエッタ姫で、フクロウが俺に手紙を届けてくれたのだが、クラウスに転送しておいた。ルイズ嬢が彼女に面会を依頼し、虚無に目覚めたことを告白し、アンリエッタ姫に虚無を捧げたらしい。原作のルイズ嬢は疑問に思いつつもアンリエッタ姫に肯定されてようやく確信したのだが、今回はクラウスや父上がすでに知っており、なんらかの手を打ってプレッシャーをかけたのかもしれない。

 

 そしてすでに明日に控えた虚無の曜日にはアンリエッタ姫の戴冠式がトリスタニアで行われるのだが、戴冠式のお祝いとして、新しいトリステイン女王の力として俺の忠誠を示すため、カスティグリア諸侯軍の観艦式をトリステイン上空で行うそうだ。いや、俺の軍ではないのだが、カスティグリアとしては“カスティグリアが曖昧に恭順を示すにはいい機会”と、捉えたらしい。

 

 それに関して、クラウスに最高指令官として出席するか伝書フクロウに運ばれた手紙で聞かれたが、断りの手紙をささっと書いてそのフクロウで送り返しておいた。これから続く戦争に対して逃げるわけではない。伴う痛みも覚悟の上だ。決して最高指令官の座が怖くなったり、交渉などが面倒になったわけではない。

 

 ただ、それ以上に重要な、王国や観艦式なんぞより重大な問題が発生しただけだ。

 

 そして、その問題の解決方法を色々と考えた結果。ここはファンタジー方式の解決方法に頼ることにした。そう、その解決方法を選択するにあたって、今のこの時期が最良だと判断したにすぎない。幸い、モットおじさんからクラウスが以前もぎとった金もあった。それを小出しにし、少ない人脈をフルに生かし、それぞれが想像できないであろう細かさで材料を集めた。

 

 彼ら全員が一つの疑問を持ち、それを持ち寄らない限り露呈することはないだろう。

 

 そしてその集大成は今この手元にある。そう、トリスタニア王国ではご禁制である惚れ薬の作成に成功したのだ。惚れ薬自体の研究は以前モンモランシーの聖戦に備えるため、かなり詳しく研究していたし、その時に密かに作成した資料もこの部屋に存在する。そして、それを現実のものにすべく、以前アルヴィーズの食堂にいたギーシュやマルコの友人たちをギーシュに紹介してもらい、後で彼らをそれぞれ呼び出し、ギーシュも含め、金と引き換えに材料をそれぞれ俺が指示して別々に集めてもらった。

 

 材料自体は『水の精霊の涙』以外、特に問題になるものが含まれているわけではないので皆快く引き受けてくれた。水の精霊の涙に関してはギーシュと交渉して闇屋で入手してもらった。そして、惚れ薬を作れるであろう水メイジで心当たりがあるのはモンモランシー、モットおじさん、ルーシア姉さん、マリー先生くらいだったため、以前読み漁った本の中の項目にあった媒体をそれぞれに適当な理由をつけて依頼したり、望む対価を支払って作成してもらった。

 

 そして、最後は特に魔法が必要なわけではなく、ただ単純に分量と温度に気をつけて混ぜていくだけだったため、惚れ薬の密造に成功した。ただ、水の精霊の涙が一回分しか手に入らなかったのが難点だが、その分全てを注ぎ込んだため強力で長期間効果の見込める物が出来たはずなので特に問題はない。

 

 しかし、自分の権謀術数が恐ろしい。まさか本当に密造に成功するとは思っていなかった。当然、ひそやかに進行できるよう、クラウスが俺の代わりに最高指令官としてパレードの準備に忙しく、戦勝の後始末に追われているこの時期に遂行できたのが一番大きいだろう。

 

 後はモンモランシーを呼んで彼女の前で自然にこれを飲み下すのみ……。

 

 「シエスタ、すまないがモンモランシーを呼んできてもらえないだろうか。」

 

 そろそろ午前中の授業が終わるはずだ。シエスタにそう頼み、彼女が部屋を出て行くと俺は紅茶を飲み干したあと、そこに試験管に入れられた惚れ薬を注いだ。この絵の具のように思いっきりピンク色で透明感のない液体を飲み下すのは少々勇気が必要だ。開発した人間はもっと色を変えることはできなかったのだろうか。まぁ、入れてみた感じでは粘度はほとんどないように見えたし、香りもほとんどしない。色さえ気にしなければなんとかなりそうだ。

 

 あと、一応劇薬に指定されるだろうから機会が出来たら外に出たときに試験管は焼き溶かそう。試験管はキャップを付けて元々隠していた場所に戻した。

 

 しばらくすると、授業が終わったらしく、シエスタがモンモランシーを連れてきてくれた。作戦の誤爆を防ぐため、シエスタには新たに紅茶を淹れてくれるよう頼んだ。紅茶を淹れるにはまずお湯を沸かすところから始まる。その間に事を済ませてしまえば問題ないはずだ。少々リスクはあるが、他に違和感のない方法が思い浮かばなかった。

 

 普段の学院での生活では当然のことながら彼女は制服を着ている。白いブラウスに黒いプリーツスカートをはいている。基本的にこの制服スカートの丈は原作通りマイクロミニなのだが、婚約した辺り、つまりアノ俺の想いが綴られた羊皮紙を見られた辺りから膝丈になっている。彼女がスカートの丈を変えたとわかった時は恥ずかしかった。

 

 むしろ、今まで基準の制服のときはほとんどその辺りを視界に入れることができなかったが、今では目に優しいやら恥ずかしいやら嬉しいやらの仕様になっている。そして、その足を黒めのタイツが覆っている。こうして見ると、ただの制服を着ているだけだというのにモンモランシーの美しさとかわいらしさが如実に引き立っている。

 

 ううむ。まだ飲んでいないのにすでに惚れ薬が効いているのではないだろうか。

 

 そして、モンモランシーがすでに常備になっているベッドの枕元にある椅子に座ると少し心配そうな顔で尋ねた。

 

 「あなた、急にどうしたの?」

 

 「ああ、すまないね。どうにも困ったものなのだが、急に君の顔を見たくなってしまってね。モンモランシー、君の制服姿は何度見ても飽きる事がないみたいだ。その白いシャツは君の清楚さを、そして、そのプリーツスカートは君のかわいらしさを引きたてているし、さらにその黒いタイツが君の足を更に魅力的に見せてくれているようだ。この制服を学院の指定のものにしてくれた人間には感謝しなくてはならないかもしれないね?」

 

 本当に君の顔を見る必要があり、呼んだだけなのだが、彼女の制服姿について考えていたためかついポロッとそんな言葉が出てしまった。

 

 「そ、そう? ありがとう。まさか制服姿でも褒めて貰えるとは思わなかったわ。」

 「いや、褒めたわけじゃない。ちょっと思ったことがつい口から出てしまっただけだよ。」

 「ふふっ、いけない口ね。」

 

 照れて赤くなったモンモランシーがとても愛おしい。ふむ。この状態でさらにこの惚れ薬を飲んだらどのような反応を起こすのか少し興味が出てきた。これから変化する俺の状態はクロアin脳内惚れ薬and密造惚れ薬みたいな感じになるのだろうか。さて、モンモランシーが恥ずかしがっているうちに事を進めよう。

 

 モンモランシーと逆側に置いておいた惚れ薬入りのティーカップを左手で取ると、一気に、一滴残らず全てを飲み()した。

 ぐっ、コレはキツイ。なんというか人の飲める限界を遥かに超えているのではなかろうか。強いて言うのであればそう……、ハシバミ草100%の原液を限界ギリギリまで濃縮し、固形になる寸前のとろみにしたような味と食感だ。口内に入れた瞬間に変質でもしたのだろうか。

 

 そして、口内全体に一気に広がった味と食感に俺の体全体が拒否反応を示し、吐き気と咽るような感覚を全力で伝えてくる。薄めて飲むべきだったかもしれん。しかしもはやすでに引き返すことのできない場所にいる。ここは気合で全てを飲み込もう。

 

 何とか飲み込み、(むせ)そうになるのをなんとか押さえ込み、意識的に息をする。そして、口内に残った苦味を唾で何とか薄めて落ち着くと、心配そうに身を乗り出していたモンモランシーを見た。

 

 「あなた、大丈夫? 何かつらそうだったけど……」

 「ああ、大丈夫だよ、心配させてしまったね。ちょっと変なところに入ってしまったようだ。」

 「咳は我慢しないほうがいいわよ? ほら、背中さすってあげるわ。」

 

 モンモランシーがそう言って俺の体を少し起こすように促したので少し背もたれから体を起こした。気合で飲み下した以上、咽る感覚はすでに肺の置く深くに閉じ込められている。しかし、彼女の柔らかい手が背中をゆっくりさすってくれると、咳が出そうな感覚がやってきたので、彼女の心配に甘えて少し咳をして、咽るような感覚を体から追い出した。そして、「もう大丈夫みたいだ。ありがとう」と言ってベッドの背もたれに寄りかかった。

 

 「もう、ビックリしたわ。急にたくさん飲んではダメよ?」

 「ああ、心配をかけてしまって本当にすまないね。モンモランシー。」

 

 モンモランシーがそっと俺の頬に手を触れて注意し、謝るとそっと手を離した。彼女に心配をかけた罪悪感と彼女が心配してくれるという喜びがせめぎ合い、この優しい婚約者に黙って惚れ薬を飲んだ事を少し後悔した。

 

 しかし、肝心の惚れ薬の効果が全く見られない。もっと劇的に効果が出て彼女しか見られないような、彼女のことしか考えられないような、そして彼女が誰よりも愛おしく感じると考えていたのだが、別段いつもと変わらない。もしかしたら失敗してしまったのだろうか……。

 

 飲み干したカップに目をやり、そっといじりながら考えていると、

 

 「まだお湯が沸いていないので、少しぬるいかもしれませんが先ほどのものをいれましょうか?」

 

と、シエスタに尋ねられた。淹れ立ての熱いものより、個人的には少しぬるくなった紅茶の方が好きなので、それをいれてもらった。

 

 そして再び考察に入る。失敗した理由として考えられるのは材料の中に偽物が入っていた可能性だが、その辺りは途中で色々な人に確認して貰っている。手順も特に問題なかったはずだ。となると、もしかしたら媒体を作った人間を分けたのが敗因かもしれない。水の系統魔法の魔力のクセのようなものがあり、それが一定でないとダメとかそういうこともありえるのかもしれない。しかし、そうなると俺に密造は出来ないということになってしまう。

 

 「ところであなた、さっきは紅茶を飲んだのよね?」

 「いや、自己改善のために少々特殊な薬を作って飲んでみたのだが、全く効果がないようだ。」

 

 そういうとモンモランシーはいぶかしむような、少し怒ったような顔をした。やはりモンモランシーは怒った顔もかわいい。長く見ているにはリスクが伴うし、彼女を怒らせるような事を出来る限りしたくないので完全にレアシーンである。

 

 「薬なら私が作ってあげるわよ。あなたにもし何かあったらと思うと不安だわ。今度からは私に相談してからにしてちょうだいね?」

 「そうだね。俺の奇跡の宝石。黙っていてすまなかった。今度からは相談させてもらうよ。」

 

 そう言ってモンモランシーの手を取ったとき、部屋に闖入者が現れた。普段ほとんど接点のないサイトがドアを乱暴に開けて侵入し、ダッシュでこちらへやってきて

 

 「頼む! 匿ってくれ!」

 

と、言ってドアから見えない方の壁と天蓋の隙間に身を隠した。そしてほどなくして続いてルイズ嬢がこの部屋に現れた。

 

 「クロア。お邪魔するわね。ここにバカ犬、来てるわよね?」

 

 お、おう……、まさかのここで戦いが起こってしまうのだろうか。爆発魔法を見たことが無いため少々興味はあるが、命の危険を伴ってまで見たいとは思えない。

 

 「ルイズ、どうしたの? サイトなら……」

 「才人はいません」

 

 モンモランシーがサイトの場所を教えようとしたところで、サイトのこわばった声が天蓋の向こうから発せられた。ルイズ嬢はサイトが天蓋の向こう側にいると確信したような、獲物をついに追い詰めた肉食獣のような笑みを浮かべるとベッドに近寄り、俺の手元にあった紅茶を飲み下した。

 

 「ぷはー! 走ったら喉がかわいちゃった。それもこれもあんたのせいね。いいわ、こっちから迎えに行ってあげる。」

 

 そう言ってルイズ嬢は天蓋の向こうにいる獲物(サイト)から目を離すことなく、ベッドを回り込むといつも壁側で引かれたままの天蓋をざっと勢いよく開けた。そしてそこには壁の方を向き、頭を抱え、ガクガクと震えるサイトがいた。あんなに怯えるほど、一体なにが起こるのだろうか。

 

 「覚悟しなさい……、んあ?」

 

 ルイズ嬢が獲物にとどめを刺そうとしたところで、彼女はちょっと間抜けた声を発し表情を変化させたあと、ぼたぼたと涙を流し始めた。

 

 「ルイズ?」

 

 サイトがルイズ嬢の折檻が中々訪れないことを感じてそっとルイズ嬢に向き直ると急に泣き出したルイズ嬢に驚いたようだ。俺も何が起こっているのか全くもって理解不能だ。

 

 「ばかっ! ばかばか! どうしてよ!」

 

 そして、ルイズ嬢は涙を流しながらサイトの胸に取りすがり、ぽかぽかとサイトの胸を叩き始めた。

 ううむ。この反応。どこかで見たことがあるような、ないような……。考えつつモンモランシーを見ると彼女もいぶかしんでいるようだ。

 

 「ルイズ、お前、いったい……。」

 「どうしてわたしを見てくれないのよ! ひどいじゃない! うえ~~~~~ん!」

 

 そして、ルイズ嬢が戸惑うサイトの胸に顔をうずめて大泣きした。モンモランシーは何かに気付いたように、先ほどルイズ嬢が飲み干した紅茶の入っていたカップを手に取り、そっと香りを嗅いだ。

 

 「あ、あなた。さっき飲んだ薬ってもしかして……、その……、惚れ薬、なわけ、ないわよね?」

 

 「うむ。さすが俺の奇跡の宝石。そうとも、惚れ薬だとも。ご禁制とはいえ自分で作って自分で飲む分には構わないのではないかと思い作って飲んでみたのだよ。しかし、全て飲み乾したはずなのだが全く効果が無いようでね。どうやら失敗してしまったようだ。」

 

 モンモランシーは紅茶で薄められ、ほとんど残っていないであろう極僅かな香りだけで気付いたようだ。さすが『香水』のモンモランシー。才色兼備とは彼女のためにある言葉なのだろう。そして、もはや失敗し、俺自身に効果が無い上にモンモランシーに隠し事をあまりしたくなかったので正直に告げると、モンモランシーは口に出しつつも違うと思っていたようで目をまん丸にしてとても驚いた。

 

 ああ、なんてかわいいんだ。まさに奇跡の宝石。

 

 「惚れ薬ぃいい!? ど、どどどういうことなんですかね? クロア様?」

 

 「クロアがいいの? ねぇサイト、私なんかよりクロアの方がいいの? クロアは男の子なのにクロアの方がいいの?」

 

 「ル、ルイズ、そんなわけないだろう? 事情を聞くだけ! それだけだから!」

 

 サイトが驚きを隠せない声を上げた後、俺にどういうことか説明を求めたのだが、それに答える前にサイトに取りすがっているルイズがサイトの興味について問いただしたので、俺は答えるタイミングを失い、サイトもまずはご主人様の説得に移ったようだ。

 

 しかし、サイトは女性が好きなはずだが、まさか男色の気もあるのか? 本人は否定しているが、飼い主が言うのだから疑われる事例があるのかもしれない。

 もしかしたら、サイトがそのような趣向を持っており、後々彼の毒牙にかかってしまうというという未来が存在してしまうのかもしれない。もし、そんなことになっては生きていける気がしない上に名誉が傷つく。無いとは思うが一応ここは丁重に断っておこう。

 

 「ふむ。使い魔君。すまないが、俺にはこの世に二人と存在しない奇跡の宝石という婚約者のモンモランシーと、太陽と大地の癒しをもたらしてくれる側室候補のシエスタ、そして望み得ないほど愛らしい使い魔でありつがいでもあるプリシラがいる。さらに、残念なことに俺は男性に対して恋愛感情を抱くことは出来ないようだ。諦めてくれたまえよ。」

 

 「だあああああ! 俺だって男に興味ないわ! それで惚れ薬ってどういうことなんだよ?」

 

 ついにサイトが貴族に対して取り繕えなくなったようなので、落ち着かせるためにも説明することにした。恐らくルイズ嬢に関係ないことだとは思うのだが、それで落ち着くのであれば説明することも吝かではない。

 

 「少々問題が発生したので自己改善のために考えうる限り強力な惚れ薬を調合して一滴残らず自分で飲み干したのだが、どうも調合に失敗したようでね。全く効かなかったのだよ。参考にした文献から考えられる症状としては、飲んだあと初めて見た人物以外の事を考えることが出来なくなり、その人物に対する愛情で自分を抑えることが難しいはずなのだがね。

 いやはや、大金と時間と労力を注ぎ込み、あの味に耐え切ったというのにひどい有様さ。ああ、別段ルイズ嬢が口にしたとは思えない。安心したまえ。」

 

 「あ、あなた。確か同じカップに紅茶を入れてもらってたわよね? もしかしたらかすかにカップに残った惚れ薬が溶け出してそれをルイズが飲んじゃったんじゃ……。」

 

 サイトを落ち着かせるために惚れ薬の内容と効果を説明し、ルイズ嬢には飲ませていないことを告げたのだが、モンモランシーは俺の隣で少し怯えながら彼女の考えを口にした。

 ふむ。確かにありうる。一滴残さず飲んだがあの粘度ならばカップに付着していたとしてもおかしくはない。そしてそこにシエスタが紅茶のおかわりを注ぎ、俺が手を付ける前にルイズ嬢が乾いた喉を潤すために飲み干していた。

 

 しかし、その推論には前提となる穴が存在する。俺が飲んだ量はおよそ50ml。試験管一本分丸々飲んだ。そして恐らくルイズ嬢が飲んだ量はカップに付着していた1mlほどの量ではないだろうか。つまり、彼女の状態が惚れ薬の効果だとするならば、およそ50倍の効果が俺に訪れていなければならないはずだ。しかし、いつもの状態とあまり変化がないような気がする。

 

 ふむ。体質的な問題だろうか。俺は純粋な火の系統であるからして、もしかしたら体の中で“水の精霊の涙”が拒否され、焼き溶かされたという状況がありうるのかもしれない。プリシラを呼んで、俺の体の中に水の精霊の涙、つまり、水の精霊の成分があるかどうか調べることが出来ないか聞いてみた。するとベッドの天蓋の張りにプリシラが停まった。

 

 『ほんの少しいるみたいね。ご主人様。たまになら見逃してあげるけどあまりオススメしないわ。』

 『ああ、すまないね。プリシラ。どうしても確かめたかったのだよ。ところでルイズ嬢にも入っているだろうか。』

   

 しばらく俺の方を見てから少し不機嫌そうな声で、そう言ったのでついでにルイズ嬢のことも聞いてみた。しかし、水の精霊を体に入れるのはプリシラにとってあまり良いことではないらしい。気をつけよう。

 

 『そうね、ご主人様に入っている量の1/100くらいかしら。探せば見つかる程度だわ。』

 『ふむ。すまなかったね。ありがとう、俺のつがい。』

 『構わないわ。私のつがい。』

 

 互いにつがいの確認をするとプリシラは再び部屋を出て行った。

 ふむ。やはり俺のつがいは愛らしい。他に彼女以外に望み得ないのは間違いないだろう。そして、いつかは消えるとは思うが、俺とルイズ嬢にはやはり水の精霊が入り込んでいるということも分かった。つまり、俺の体質で無効化されたという線は消えたことになる。やはり惚れ薬は失敗作であり、ルイズ嬢は少々情緒不安定になっているだけだろう。貴族の情けで見ないフリをしてあげるのが優しさというものではないだろうか。

 

 「モンモランシー、今プリシラに聞いてみたのだがね。どうやら惚れ薬の原料である水の精霊のようなものが俺やルイズ嬢の体内に存在しているらしい。ルイズ嬢の中に入っている量は俺の1/100ほどだそうだ。確かに、惚れ薬が溶け出して彼女が摂取してしまったということに間違いはないのだが、俺の状態を考えるとやはり惚れ薬は失敗作であり、ルイズ嬢は少々情緒不安定なだけだと思うのだよ。」

 

 プリシラに調べてもらった事と自分の見解をモンモランシーに伝えると、モンモランシーは俺の顔を覗き込んで、しばらく見つめたあと、そっと頬をなでると、なぜかシエスタを呼んだ。

 

 「シエスタ。少し確かめたいことがあるの。前に言っていたアレは今でもいいかしら?」

 

 「そ、そそそんな。今ですか? 皆さんがいる前でですか?」

 

 「ええ、時期をみてもあまり変わらないと思うわ。慣れておいた方がいいわよ。」

 

 「え、えっと、わかりました。クロア様。初めてのときはあのような状況でしたので、その、できればですね。その、ちゃんと記憶に残るようにですね。その、キスしてほしいのですが」

 

 あのような状況というのはモット伯がシエスタの引き抜きに来た時のことで、突然のことだったので記憶に残っていなかったのか。あの時は確かに緊急時、しかもヒーリングを掛けてくれる人間もおらず、がんばってキスした感がある。次はシエスタが俺のほっぺにしてくれた時だが唇じゃなかったので彼女としてはノーカウントなのだろう。

 

 シエスタのことも大切に思っているし、恋愛感情もある。うん。普段は極力意識しないようにしているが、その努力を放棄すると世界に二人といない奇跡の宝石の前だというのに、シエスタの抗いがたい魅力をあっという間に認識させられてしまう。今彼女にターンされたり、スカートの裾を引き揚げられたらかなり危険だろう。

 

 しかし、本当に婚約者の前でしちゃってもいいのだろうか。それだけが気になるが、むしろモンモランシーが今しろというような事を言っていた。一応モンモランシーの顔を見ると、浅く頷いた。

 

 「ああ、えっと、今回もこんな状況だけど、その、いいのかい?」

 

 「構いません。その、お願いします。」

 

 シエスタにこれからみんなの前でキスをするという事を考えるとすごく恥ずかしくなってきた。さらに一応シエスタに確認を取るとお願いされてしまった。シエスタの顔は先ほどから真っ赤に染まっており、その黒くて大きい目も潤んでいる。その上、照れてもじもじとキスをねだる姿はとても愛らしい。

 

 「おいで、シエスタ。大好きだよ。」

 

 ベッドの脇に来たシエスタの顔を優しく両手で引き寄せて、そっと目を瞑って唇にキスをすると、シエスタは最初少し硬くなっていたが、彼女は自分の唇が押し付け、そして味わうように柔らかく俺の唇を挟んだり、そっと横に動かした。俺も彼女の唇を味わいながらそっと片手をシエスタの背中に回すと、シエスタも俺の顔を包み込むように首に腕を回した。

 

 数十秒、数分、数十分、どのくらいキスをしていたのかはわからないが、彼女の甘い感触とメイド服を着たシエスタに包まれる幸福感は、シエスタがそっと少し離れたところで終わりを告げた。シエスタも同じくらいの幸福感を感じてくれたのだろうか。ほんの腕を曲げていても手が彼女の肩に届くほどの距離に少しだけ唇を開いて蕩けた顔をしたシエスタの顔がある。

 

 そんなシエスタをモンモランシーが優しく引き離し、彼女が座っていた枕元の椅子に座らせると、今度はモンモランシーが同じように何の前触れもなくキスをした。顔を包む柔らかい両手の感触とともに、視界に広がる赤くなりながらも目をキュッと瞑った彼女の顔が大写しになり、唇に彼女の甘い感触がした瞬間、視界が真っ暗になり意識が途絶えた。

 

 

 

 

 モンモランシーのヒーリングを詠唱する声で意識が戻ると、そっとモンモランシーがため息をついた。

 

 「あなた。間違いなく惚れ薬が効いてると思うわ。ルイズの反応だけでも一目瞭然だけど、あなたの反応でもはっきりしたわ。」

 

 モンモランシーが真面目な顔でそう断言すると、ルイズ嬢が途端に活動を再開した。突然目の前で繰り広げられた他人同士のキスに硬直していたようで、サイトにすがりつきつつ、色っぽく瞳を潤ませた。

 

 「ねぇサイト、わたしもキスしたい。ねぇ、サイト、わたしに、して?」

 

 「え?」

 

 ふむ。確かにこうして見ると、惚れ薬が効いているように見えなくもない。原作と違って貴族の教育を受けているサイトが、ルイズ嬢の環境に近くなり、原作よりも親密になっていただけだと思っていたのだが、ルイズ嬢が人前で平民であるサイトにキスをねだるというのは確かに腑に落ちない。

 

 サイトはご主人様であるルイズ嬢のキスの要求にたじろぎ、モンモランシーや俺の意見を伺いたいのかこちらをチラチラ見てくる。いや、俺やモンモランシーがゴーサインを出したとしても、してしまったら後々死ぬ可能性が出てくるのではないだろうか。

 

 「それからサイト、惚れ薬が効いている間の記憶は消えないわ。理解できると思うけど、場合によっては今後命の危険もあるから気をつけなさい。それから、シエスタ。浸っていたい気持ちはとてもよくわかるけど、ルーシアさんを呼んできてちょうだい。」

 

 モンモランシーがシエスタに頼むと、シエスタは惚けていたようで、ポーっとしていた瞳を即座に普段の状態に戻すと「はいっ!」といい返事をして部屋を出ていった。

 

 「ねぇサイト。わたしにキス、してくれないの? わたしのことが嫌いなの?」

 

 「え? い、いや、その。嫌いじゃないけどさ。その、あああああ、どうすりゃいいんだだ!?」

 

 「ふむ。行くところまで行って後で殺されるか、効果が切れるまで耐え切るかのどちらかではないだろうか。」

 

 ルイズ嬢のおねだりにサイトがしどろもどろになったあと混乱してしまったようなので、二つしかないであろう選択肢を提示した。実際その二つの選択肢しか考えられないが、恐らく彼なら後者を選ぶのではないだろうか。原作でもサイトは“これは本当のルイズじゃない”とか何とか言って耐え切った気がするし、何とかなるだろう。

 

 「大体効果が切れるまでってどのくらいかかるんだよ!?」

 

 「ふむ。その辺りは以前読んだ文献では確か、個人差の問題で一ヶ月から一年だったと思うが、なにせ今回俺が作ったものは自分で飲むために作った物だからな。効果をできるだけ高くし、そしてランニングコストも考え長い効果期間を見込めるよう独自に色々研究して開発したものなのだよ。つまるところ、効果期間に関してはなんとも言えん。実際先ほどまで失敗作だと思っていたくらいだからな。はっはっは。」

 

 俺が独自に開発した惚れ薬の効果はぶっちゃけよくわからない。いじりすぎて失敗したと思っていたくらいだ。効果期間に関してもイレギュラーが起こってすぐに切れる可能性すら残っている。いや、個人的には成功しているのであればかなりの長期間を見込めると思うのだが……。

 

 「なっ!? そんなに耐え切れるか! 今すぐ! なんとか! しやがれ!」

 

 サイトがルイズ嬢に取り付かれながらこちらに詰め寄ろうとしたのだが、モンモランシーがサイトの行動を阻んだ。

 

 「サイト。その、事故とはいえ、私の婚約者が申し訳ないことをしたわ。あなたは出来るだけ耐えてちょうだい。ルイズのことはルーシアさんも呼んだから何とかするし、解除薬の作成もするから時間をちょうだい。」

 

 モンモランシーが真面目な顔でサイトを説得すると、サイトも少し落ち着いたのか

 

 「あ、ああ。ええと、その、声荒げてすいません。」

 

と、ようやく少し余裕が生まれ、同年代の知り合いから貴族への対応に変えることができるようになったようだ。ふむ。ルイズ嬢によるサイトの教育は順調なようだ。取り乱した時はまぁ、しょうがないだろうし、勢いが必要な場面もあるだろう。つい約二ヶ月前までは全くこの世界の事を知らなかったんだ。むしろ上出来と言えるのではないだろうか。そう考えるとサイトの順応性はかなり高いように思える。

 

 「モンモランシーがいいの?」

 「そ、そういうわけじゃねえよ。待ってろ。すぐに元のお前に戻してやるから。」

 

 ルイズ嬢が心配そうにサイトに不安をぶつけたがサイトはルイズ嬢の両肩に手を置いてルイズ嬢に自分の決意を語った。

 

 「ふむ。もしかして惚れ薬で好かれるよりも本心で好かれたいというやつだろうか。」

 「おう、その通りだ。これはルイズの本当の気持ちじゃねぇ。だから俺は早くルイズを元通りにしたいんだよ。」

 

 ちょっと口に出したサイトの心境の考察をサイトはかっこよく肯定した。わからないでもない。しかし、実際にモンモランシーが惚れ薬を飲み、俺を最初に見たとして、そこから俺はどうするだろうか。ルイズ嬢と違ってモンモランシーは婚約者であるわけだし、気付くことなく受け入れ、幸福の中、天に召されてブリミルに会う気がする。

 

 「ううむ。しかし、本当に効いているのだろうか。俺が飲んだ感じだと、飲む前と別段気分的な変化は全く無かったのだよ。いや、まぁ飲む前からモンモランシーに完璧に惚れていたからかもしれんが、それにしてはシエスタやプリシラへの恋愛感情もそのまま残っている。」

 

 「それなんだけどね、あなた。さっきシエスタとはヒーリング無しであれだけ長い時間キス出来たでしょう? でも私との時は少し触れただけで気を失ったわ。普段は抑制できる思考や感情ではなくて、あなたの身体が自動的に反応するようになってしまったんじゃないかしら。」

 

 ふむ。そう考えると確かにそうかもしれない。いくらモンモランシーとのキスとは言え、接触した瞬間に意識を失うのはさすがにおかしい。数秒なら耐えられたはずだし、レジュリュビでしたときはもっと長かった気がする。

 

 それに、シエスタに対しては、たった数秒で意識しないよう耐えてギリギリ何とかなる程度だったり、不意打ちでほっぺにキスされただけで意識を失ったりと、全然慣れていない気がする。しかし、今回はかなり長かったのではないだろうか。今思い出してもとても恥ずかしく幸福感が気持ちを包むが特に体調がきつくなる事もない。

 

 そう考えると、これは今後の研究課題として残しておいたほうが良いのではないだろうか。その、えーっと、つまりだな。次世代を残す鍵にな……、ごふっっ

 

 「あ、あなた、大丈夫? しっかりして!」

 「あ、ああ、すまない。少々危険なことを考えてしまったようだ。」

 

 モンモランシーにヒーリングを掛けてもらいつつ彼女に謝罪する。この考えは危険だ。せめてこの効果が切れてからにするべきだろう。一応羊皮紙の思い出しメモに書いておいた。しかし、モンモランシーを一番に考えるために、強制的に揺らがないよう作ったはずの惚れ薬が、まさかモンモランシーとの接触を遠ざけるとは思いも寄らなかった。なんという悲劇だろうか。しかしこれは二人の未来に……ごふっ

 

 す、すまないモンモランシー、久々だったので油断したようだ……。

 

 そして、今度はヒーリングが間に合わなかったようで、視界が暗くなった。

 

 

 

 

 

 

 再び目が覚めると今度はルーシア姉さんのヒーリングの声が聞こえた。目を開けてみて飛び込んできたのはセーラー服姿のルーシア姉さんだった。そしてルーシア姉さんは俺がしっかり起きたのを確認してから、その場で一回転し、少し前かがみになり指を立てて「お待たせ!」とのたまった。

 

 うむ。さすがルーシア姉さんである。まさか即実行してこの場に着てくるとは思わなかった。そう、ルーシア姉さんに協力を求めた際、彼女の提示した条件は『マルコの攻略材料』だった。そしてこの部屋に来るのに時間がかかったのはマルコをきっちりと悩殺していたからだそうだ。

 

 少し悩殺されたマルコが心配になってきた。いくら彼が健康体とはいえ、悩殺されて廃人になっていないだろうか。それに、この破壊力だとモンモランシーにされたら俺は死ぬかもしれん……。モンモランシーやシエスタがマネしないよう祈るしかない。

 

 俺が寝ている間にモンモランシー、ルーシア姉さん、サイトの三人で話し合った結果、現在ルイズ嬢は彼女の部屋に戻り、サイトとモンモランシーに寝かしつけられてお休み中らしい。非常事態なため、杖は没収してありその事は書置きしてきたらしい。ぶっちゃけ軟禁状態だそうだ。そして、取り合えず俺が密造した惚れ薬に関しての情報が必要とのことで俺を起こしたらしい。

 

 サイドテーブルにある鍵付きの引き出しから羊皮紙の資料をひと束取り出すとモンモランシーに渡した。この惚れ薬は実に様々な改造が加えられている。精霊由来の素材とそれを使う秘薬の作り方をほぼ全て調べ上げた上、その精霊由来の素材への補助材がどのような効果を発揮しているのかを連立方程式を解くように想定し、概ね考えられるだけの魔改造をした。

 

 元々カスティグリアの研究所で追加研究を行い、カスティグリアの資金を使って密造し、ギーシュに飲ませるためのものだったため、成功するかどうか不明だったし、個人的には最高の惚れ薬と断言できるが、実証がないため粗悪品の可能性もある。しかも畑違いな上に実物を見たことのない材料が多々あり、むしろなぜ一回で成功したのか謎なくらいだ。

 

 「かなり研究されていてある意味恐ろしいわね。」

 「ええ、そうですね……。あなた。ちょっとやりすぎなんじゃないかしら。」

 

 ルーシア姉さんとモンモランシーがそのように褒めてくれるのだが、顔は真剣で少々焦りのようなものも浮かんでいる。どうせなら笑顔で褒めてくれると嬉しいのだが、これはこれであまり見られないモンモランシーのレアシーンかもしれない。

 

 「はっはっは、そうかね。元々それは以前あった君への届かない愛が詰まったものだからね。完璧なものを追い求めるのにもそれほど苦痛はなかったとも。」

 

 「いや、褒めてねぇと思うぞ?」

 

 サイトに褒めてないと言われ、改めて二人を観察してみると、確かに褒めてないとも取れなくもない。い、いやしかし、どう考えても褒め言葉だったはずだ。うむ。

 

 「それで、解除薬の作り方や材料が全く載ってないのだけど……」

 「うむ。必要ないと思い全く研究していないとも!」

 「おい! ちょっと待て! ってことはルイズはずっとこのままか!?」

 

 全く研究した事がないと堂々と告げると、サイトが取り乱し、モンモランシーからの圧力が増した。う、うむ。解除薬を作ることを考えずに薬の研究をするのは水の系統としてタブーなのかもしれない。一応考えてあった見解を伝えておこう。

 

 「ま、まぁ普通の解除薬で構わないのではないだろうか。主に強化したのは効果と期間の長期化だが、基本的に解除薬で足りる範囲に入っているはずだ。普通の解除薬は途中に記載があったはずなのだが……」

 「ああ、これね。わかったわ。」

 「お、驚かせるなよ。」

 

 ふむ。しかし、解除薬を作るにはさらにハードルが存在する。その話題になった時に話そうと思っていたのだが、この調子なら今のうちに打ち明けておいたほうが良さそうだ。

 

 「しかし、一つ問題が存在するのだよ。」

 

 そう前置きをすると、三人が真剣な顔でこちらを向いた。うむ。少し怖い。

 

 「惚れ薬を作るにも解除薬を作るにも『水の精霊の涙』という素材が必要なのだが、それの研究はカスティグリアに回すつもりで何も研究していない上に、今回入手を頼んだ人間が言っていたのだが、彼が入手してくれたのはトリスタニアにあった最後のものだったらしくてね。次の入荷は精霊殿との連絡が取れないため絶望的なようなのだよ。」

 

 「つ、つまり、クロア様? ルイズはずっとこのままっつーことでございましょうかね?」

 

 「いやいや、落ち着きたまえよ、使い魔君。問題は入荷しないことではない。つまり、入荷しないのなら取りに行けばいいじゃない。と、言う事なのだがね? 少々遠出になる上に危険が伴う可能性がある。休暇届を出し、準備をし、戦力を整えて、と考えると少々カスティグリアの予定とすり合わせる必要があるのでは? ということさ。まぁカスティグリアはトリスタニアで大切なイベントがあるようだし、時間がかかるかもしれないね?」

 

 そう告げると、解除薬の調合方法を確認したモンモランシーとルーシア姉さんが動いた。

 

 「大丈夫よ、サイト。ルーシアさん、明日の朝で構いませんわよね?」

 

 「ええ、モンモランシー、こちらは竜の手配をするから、あなたはモンモランシに連絡しておいてちょうだい。シエスタは旅行の準備をお願いね。とりあえず3日分でいいわ。」

 

 「かしこまりました、ルーシア様。」

 

 あっという間に方針が決まり、その場は解散し、俺は明日に備えて強制的に睡眠をとることになった。こういうときのカスティグリアの人間はなんというか、息が合いすぎではなかろうか。

 そんなことを考えつつ、俺は夢の世界へ旅立った。

 

 

 

 

 

 




 いかがでしたでしょうか。ええ、パレードの模様をお伝えするつもりがなぜかこうなりました。しかも、この話を半分くらい書いた後「やっばー。惚れ薬のイベントって時系列もっと前じゃなかったっけ?」なんて思って原作読み返しました。ええ、すっぽりと忘れてましたが惚れ薬イベントは意外と重要な要素が含まれているため、避けられませんでした。
 小説版では戦勝パレードのあと、さらにサイト君がセーラー服ゲットした後だったようです。
 ええ、ルイズ嬢やサイト君のセリフをついでに少し抽出したりも出来て棚ぼたでした^^ 


次回もおたのしみにー!




書いてる時に思いついた多分原作に関係ないいつものオマケ

ノー○ッド「さて問題です。今回の事件はいったい誰が悪いのでしょう?」

クロア 「俺の紅茶を勝手に飲んだルイズ嬢」
モンモン「私のためと言いつつ作ってしまったクロア」
サイト 「飲み残したクロア」
ルイズ 「わたしを怒らせたサイト」
ルーシア「マルコを悩殺できたからどうでもいい」
シエスタ「最初に惚れ薬を考えた人」


プリシラ『水の精霊ェ……(怒)』
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