ゼロの使い魔で割りとハードモード   作:しうか

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 フーケ(マチルダ嬢)視点です。ええ、何度も修正しつつフーケっぽくなるようにしたのですが、これが精一杯でした^^;

 それではどうぞー!


44 クロアとフーケ フーケ視点

 私はマチルダ・オブ・サウスゴータ。他にも『土くれ』フーケやロングビルなんて名乗っていた。数年前、父が健在だった頃は私もアルビオンの貴族だった。父はサウスゴータの太守で当時の王の弟であるモード大公の直臣だった。サウスゴータは古くから交通の要衝として栄えたアルビオン有数の大都市だ。あの辺りの地理はよく知っている。

 

 私は父に連れられ、テファがまだ小さい頃から時々隠れ住む彼女を訪ねていた。モード大公も彼女の出自を考えると誰かと会わせるのは難しい。しかし、父親としてテファを同じ年頃の子と遊ばせたかったのだろう。外の世界を知らないテファは私にとても懐いた。私も彼女を気に入り、昔からテファという愛称で呼んでいる。

 

 元王弟でもあるモード大公は財務監督官をしており、彼女の暮らす屋敷にも古くから伝わる財宝が数多く保管されていた。それらが私やテファのおもちゃになろうともモード大公は仕事熱心と言えるだろう。それに、兄である国王からも信頼されており、仲も悪くはなかった。

 

 しかし、モード大公の愛妾とその娘であるテファが彼の兄の知るところとなってしまってから全てが変わってしまった。

 

 元国王は弟であるモード大公にエルフ母子の追放を命じた。国王としては当然の判断だろう。栄誉あるテューダー王家の血をブリミル教の敵とも言えるエルフと混ざるなど、ロマリアに知れたらどうなるかわかったものではない。

 

 しかし、今ならその理屈を理解することはできるが、感情はそれを激しく否定する。当時のモード大公もそうだった。貴族として生きるより人間としての感情と愛を選んだ。その国王の命を拒否し、そして投獄され、殺された。

 

 王弟の直臣であり、モード大公を通じて彼女達と親交があった父はその愛妾とテファを匿ったが、その隠れ家も王家の軍に探し出され、テファの母はテファを物陰に隠し、彼女のすぐ近くで殺された。

 

 テファはその時に使った魔法で難を逃れた所で私が見つけ出し、ウェストウッド村に匿った。ウェストウッド村は十数件の藁葺き屋根を持つ家と各家に三人の孤児たちがいるが、自立しているわけではない。

 

 父の主が愛妾とその娘であるテファが原因で獄中死しようとも、父が直臣としての忠義でその母子を匿ったことで家名を取り潰されようとも、異教徒や悪魔として名高いエルフの血が流れていようとも、私はテファに愛情を持っている。むしろ、亡きテューダー家や貴族という存在を恨んだ。

 

 それに、テファは昔から私をマチルダ姉さんと呼ぶが、私にとって今やテファは娘のような存在だ。そんな娘のテファとテファに懐いてしまった孤児たちを養うため、私は『土くれ』フーケとなり、古い歴史を持つことだけしか取り得のないトリステインで稼いだ。そう、古い貴族というのはプライドだけが高いように見えるが、ありがたい事にその高いプライドがいくら家が金に困っても、警備にメイジを雇えず平民に剣を持たせるほど金に余裕が無くても、手放す事を躊躇わせる価値のある古いお宝をあっさりと頂戴できるような場所に置いておいてくれるのだ。

 

 目論見通りかなりの額を稼ぐ事ができた。ただ……、思えば“破壊の杖”を頂こうとしてからケチが付き始めた。

 

 たまたま酒場で会ったエロ爺が、最高峰と呼ばれたトリステイン魔法学院の学院長で、ちょうど秘書を探していてあっさりと雇われた事は幸運だった。魔法学院には宝物庫があり、恐らくハルケギニアに一つしか存在しない破壊の杖というお宝が保管されているのを偶然知っていたからだ。その希少性からかなりの値段で売れるだろうと計算していた。

 

 破壊の杖がすぐ近くにあるから毎日繰り返されるエロ爺のセクハラにも、歳が倍近くあるハゲ教師の下種な視線にも耐えられた。学院の教員達から信用を得るため、真面目に学院長の秘書として働き、夜は盗賊に勤しんだ。貴族の名を持たぬ出自の怪しいメイジにしては悪くない給料だったかもしれないが、孤児達を食わせていくにはゼロが一つ足りなかった。

 

 そして、秘書になった初めの年、一人の生徒が入学してきた。最終的に私の人生を狂わせた生徒。アイツはクロア・ド・カスティグリアと名乗った。姉も一つ上の学年に在籍しており、初めて見たアイツの印象は今にも病死しそうな哀れなボウヤだった。

 

 しかも、学院から介助のメイドを借り受けないと生活すら出来ないような、むしろなぜ入学してきたのかわからないような、同年代の女子生徒よりも小さく、貧弱で不健康な貴族だった。

 

 そう、貴族……、私の嫌いな貴族……、貴族の学び舎なのだから生徒は全て貴族の子女なのは当たり前だ。しかし、アイツはトリステインの貴族らしいプライドの高い貴族であり、トリステインの貴族とは思えないほど平民に対し誠実な貴族であり、貴族が貴族として在るような冷血さを持ち、戦いを好む貴族だった。

 

 学生同士の決闘で相手の両足を炭化させ、宣言通り命を奪おうとするような生徒はあの学院には他にいないだろう。ただの決闘が紛争を起こす引き金になると知っててなお血を吐きながら学院長を恫喝する生徒も他にはいないだろう。しかし、あの時は自分の面倒を見る平民のメイドのための決闘だったと知っていたので少し好感を持っていた。

 

 そして、ハゲ教師がつい口を滑らせた強固な宝物庫の弱点を知り、ゼロのルイズとして名高かったミス・ヴァリエールの失敗魔法が宝物庫にヒビを入れた事を偶然見回りをしていたため最初に知り得たのは幸運だったはずだった。

 

 一度その場を離れ、フードをかぶり、『土くれ』のフーケとして全高三十メイルの自慢のゴーレムを作り、宝物庫を物理的に外から破り、“破壊の杖”を頂戴する事ができた。足元を駆け回るミス・ヴァリエールもその使い魔の少年も、使い魔の風竜に乗る二人の女子生徒もたいした脅威ではなく、簡単におさらばできるはずだった。

 

 しかし、「使い魔君。ルイズ嬢を抱えて下がりたまえ!」という声がかろうじて聞こえ、声の主を探したところでアイツを見つけたとき、死を目前にしたような、まさに今まさに死が迫っているような感覚が駆け巡った。そんな感覚は初めてのものだったが、その感覚に本能が即座にフライを唱え、離脱を図らせた事が私の命を長らえさせた。

 

 直後に発現した想像したこともないような魔法が私の自慢のゴーレムを一瞬で塵に返した。そして、私もフライで少し離れていたにも関わらず、衝撃波と自分のゴーレムの破片が体を襲ったのだろう激しい痛みを感じ意識を失った。悪運とでも言うのだろうか、命を長らえ学院の医務室で治療を受ける事はできたが、私は『土くれ』のフーケとしてトリスタニアの監獄に送られ、そこで死刑を待つ身となった。

 

 そして、そんな私は一人のトリステイン貴族に助けられた。助けられたというのは少し語弊があるかもしれない。後にジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドと名乗った男はあろう事か風のスクウェアという才能を持ったトリステイン王国のグリフォン隊隊長というエリートだった。そしてそんなエリートは国を売り、アルビオン王国で起こっていたレコン・キスタの貴族派に所属していた。

 

 貴族同士勝手に殺し合っていろとは思ったが、彼に協力することで孤児達への仕送りができ、私の父と、テファの両親の仇を、テューダー家を間接的に討てるというのであれば悪くないとその時は思った。いや、脱走できただけでも悪くなかったのだろう。あそこで話を受けることが出来なければ私は処刑されていたのだ。

 

 そして、彼の命令で彼の偏在(ユビキタス)と共にラ・ロシェールへ向かい、そこで時期によって盗賊と傭兵を行ったり来たりするようなならず者を雇った。彼と彼の婚約者が移動するところを軽く襲わせ、彼の良い所を婚約者に見せるためと聞いた時は何と言うか、馬鹿かと思ったが、一応命の恩人でスポンサーなんだからしょうがない。

 

 彼が同行する一行がラ・ロシェールに着くと、夜、彼が泊まるその宿を襲うよう言われた。増えてしまった同行者をラ・ロシェールに分断すると共に、彼が婚約者に再び良い所を見せるという酷い内容だった。その上、テファと同じ年頃の子を殺す事になるかもしれないので気が乗らなかったが、彼のユビキタスが一緒に行動していたため、手を抜く事はできなかった。

 

 自慢のゴーレムを作り、彼とゴーレムの肩に乗り、彼の指示の下、盗賊兼傭兵を宿屋の扉に待機させ、いざ踏み込もうとしていたとき、閃光が走り、隣にいた『閃光』のワルドのユビキタスが一瞬で掻き消えた。

 

 そう、アイツが来たのだ。振り返るとあの赤い目を宝石のように輝かせ、頬を歪ませ歯をむき出しにして嗤いながら六匹の風竜を従えて私に向って急降下してきた。不思議な事に夜だというのに良く見えた。

 

 あの虚弱で授業にすらまともに出れないようなヤツがなぜラ・ロシェールに来たのかは謎だがそんな事はもはやどうでもいい。あの時はすでに死が迫っていたし、あの光景は未だに夢に出てきては私を苛みテファに心配させてしまう。

 

 以前ゴーレムを吹き飛ばされて以来フライの重要性が良くわかっていた。死の恐怖が時間を引き延ばしたかのように感じた。そして、反射で逃走という行動を選ばせ、私は数瞬で詠唱したフライで離脱を図った。あんなの(・・・・)に勝てる個人がどこにいるというのだ。私の全高三十メイルのゴーレムを一瞬で塵に返す人間がこの世にいていいわけがない。土とは言え、私のゴーレムは戦列艦より頑丈なはずだ。レコン・キスタご自慢の巨大艦レキシントンですら一人の個人に落とされる可能性があるのだ。

 

 何とかゴーレムが塵に帰る前にフライが間に合い離脱に移れたのは幸運だった。最初に狙われたのが私なら生身でもユビキタスのように掻き消えていただろう。以前体験した衝撃波に備えることもでき、何とか衝撃をやり過ごし、数本の骨が折れたのだろう激痛の中、意識を保ったまま近くの建物の裏に隠れる事ができた。

 

 あの衝撃波の後に続いた轟音で、風竜も攻撃に加わった事が感じられた。そして、轟音が鳴り止み、辺りが静寂に包まれた。とても嫌な気分になった。悲鳴もうめき声も無かった。騒ぎを聞きいたはずのラ・ロシェールにいる人間も息を潜める事を無意識に選んだのだろうか。苦痛を押さえ、自分の存在を極力消しているハズの、巷を騒がせ賞金首にまでなった盗賊の私の呼吸音とバクバクと鳴る胸の音が一番うるさかった。

 

 まだ私を探しているのかを確かめるべきだという僅かに残っていた理性の訴えに従って、そっと女の嗜みとしてではなく盗賊として持ち歩いている手鏡で先ほどまでいた場所を窺った。ゴーレムがあったと思わしき場所は球状のクレーターが出来ており、盗賊がいた場所は数をかなり減らした体が……、元々は人間だったモノが散らばっていた。

 

 私は盗賊に落ちたとはいえ人を殺した事はない。そして、人の死を見た事はあるが、あんな死体は見たことがない。人がただの部品のようにバラバラになり、それを嗤いながら作り出す子供のような容姿の病弱なメイジなど……、この世界にいるといわれている吸血鬼の方がよほど人間らしいんじゃないだろうか。

 

 しかし、あの規格外の爆発と竜による攻撃は、その肉片が元々なんだったのかだけでなく私の生死も曖昧にしてくれた。あの時アイツは私を認識していたはずだ。なのにあの時に来た竜たちは私を捜索せずに帰って行った。数えるほどしか、しかもエロ爺や平民のメイドと話している所しか見た事はないが、その時受けた印象は“異常なほど正確性に拘る”ということだ。

 

 言葉の節々からゼロか全てか、あるかないか、白か黒かを異常に拘る性格が垣間見えた。しかも、通常ですら嫌味に思うほどであり、ハゲ教師がたまに憤慨して私に愚痴っていたほどだ。しかし、あの病的な完全主義者が一度あの魔法から死を逃れている私を探さないという事が、私に一つの希望を与えた。

 

 そう、あの時のアイツの目的はワルドの策略のちょっとした妨害だったのだ。どこから漏れたのか、なぜバレたのかはわからない。けれど、秘書時代に調べたカスティグリアの隠蔽体質がそのまま裏返され、諜報活動にも注力していると考えれば割と納得できる。

 

 ぶっちゃけそんな事はどうでもいい。重要な事は私個人がターゲットになっているわけではなく、ワルドの策略がターゲットになっていたことだった。そう、あの時気付いたのだ。レコン・キスタに参加し続けるのは危険だと……。

 

 レコン・キスタとその代表であるクロムウェルはトリステインにも手を出していた。アルビオンの内戦が終わったら必ずトリステインを攻めるだろう。しかも、ワルドの策略からすでに内戦は終わりつつあり、トリステインへの侵略も時間の問題だと思っていた。

 

 しかし、二度同じ魔法に吹き飛ばされ何とか死を逃れたこの命を、あの(・・)カスティグリアがいるトリステインを攻めるというレコン・キスタにベットする気にはもはやならなかった。私はワルドに見つからないよう死んだように装い、あの場を何とか切り抜け、痛む身体を引きずってテファの下へ帰った。

 

 テファはとても驚いて形見でもある癒しの指輪で私をすぐに治し、涙を流しながら何があったか聞いた。盗賊の事はずっと隠していた。そしてその事はテファに話したくなかった。そこで何とか話せる事情……、レコン・キスタに参加し仇であるテューダー王家を討とうと思ったら強敵がいて怪我を負ったと話した。

 

 しかし、今や神聖アルビオン共和国となっているがレコン・キスタ関連の情報はなるべく仕入れるようにしている。もし、レコン・キスタが敗北するような事になればこのアルビオン大陸が戦地になる事も考えたからで、派手に動くことは出来ないが、噂話程度のものを集めるだけでもある程度わかるものだ。

 

 実際、私がこっそりレコン・キスタから離れてから一ヵ月後にアルビオン共和国はトリステイン王国に宣戦布告した。噂で聞いた話では不可侵条約を結んだトリステインが、アルビオンの親善艦隊を礼砲で沈めたためというものだったが、恐らくこれは共和国が流した噂だろう。

 

 しかし、トリステインへ侵攻した艦隊は信じられない事にたった一日で全滅したようだ。その噂話を聞いた時、アイツのあの時の光景が脳裏を掠め、レコン・キスタに戻らなくて良かったと心の底から思った。

 

 それから半年以上戦争の噂はほとんど聞かなくなった。私の見たトリステインから考えると、アルビオン大陸の封鎖を目指すだけで侵攻は無いように思える。

 

 しかし、もし侵攻してきたとしてもテファがいる以上ここから動くのは難しい。私だけならガリアにでも逃げてまた『土くれ』のフーケに戻ればいいだけだが、テファが危険に巻き込まれる可能性がある以上ここを離れられない。動くとしても戦争という嵐が収束するか通り過ぎるのを待ってからの方が良いと思った。

 

 

 

 

 最近はテファの家にある私の部屋で土から壷を作っている。最初はただの手慰みだったのだが、意外といい作品が出来、悪くない値段で売れてからハマりつつある。にわかに外から子供のはしゃぎ声がした。何か珍しいものでも見つけたのかもしれない。やはり、この村はいい。なんというか、和む……。

 

 そんな事を考えていたらテファが青い顔をして私の部屋に飛び込んできた。

 

 「マ、マチルダ姉さん。軍隊が! 軍隊が来た! どどどどうしよう!?」

 

 「落ち着きな、テファ。旗はあったかい? とりあえず子供達を家に入れて出てこないように言いつけな。」

 

 テファはあの事件以来、軍というモノをとても怖がっている。しかし、こんな寂れた村を訪れるのは斥候か傭兵崩れの盗賊くらいなもんだ。そして、その程度ならテファは系統の不明な“忘却の呪文”で追い払うことくらいはできる。だが、このテファの焦りようだとよほどの大軍が来たのだろう。交渉で何とかしない限り面倒な事になるかもしれない。

 

 フードをかぶり、杖をいつでも抜けるよう確認してからテファに続いて家から出ると、目に入った光景にフッと気が遠くなりそうになった。

 

 森の中に隠れるように作られたようなウェストウッド村の周囲を、低空で飛び回る三十近い数のゴツイ鎧に身を包む火竜に乗った竜騎士たち。そして、今まさに翼を広げ、ゆっくりと村に下りてくる六匹の風竜。風竜に何かをつけたあの独特のシルエットは、間違いなくあの夜に私が見た悪夢の元凶。アイツだ。アイツが来たのだっ!

 

 テファに落ち着けと言ったがあんなものを見て落ち着いていられるわけがなかった。まだテファは相手の正体を知らないだけマシだったかもしれない。

 

 落ち着け、落ち着いて活路を見出せ。考えろ、考えろ、どうすればテファと子供達を守れるか考えろ!

 

 相手がアイツならば、そしてまだ杖を抜いていないのであれば交渉は可能なはずだ。アイツならば交渉で決まった事は律儀に守るはずだ。もし私の首が、フーケの首がご所望だというのであれば交渉次第ではテファと子供達は見逃してもらえるかもしれない。いや、こんなバカみたいな竜の数を引き連れた相手に交渉なんてできるのか? でもテファを守るためにやるしかない!

 

 子供達を家に帰し、テファが心配そうな顔で私の所へ来た。私の顔に浮かんでいるのはどんな表情だろうか。達観だろうか、悲壮だろうか、覚悟だろうか。

 

 「テファ、良いと言うまで絶対に杖を抜くんじゃないよ。それからアンタも家に入ってな。」

 「う、うん。でも私はマチルダ姉さんの隣にいる。ほ、ほら、私の忘却の魔法だって上手く当てれば……。」

 

 アイツはそんなに甘い相手じゃない。杖を抜いた瞬間、敵対した瞬間に塵にされてもおかしくないような相手なんだ。それにハーフエルフであるテファを恐れるとも思えない。

 テファに強く言い聞かせようとフードを外し、テファの両肩に手を置いた。

 

 「それは絶対にダメだよ。いいから家に入ってな!」

 「マチルダ姉さん!」

 

 頑固な娘を説得するために優しい笑顔を作ろうとした時、テファの肩に二十サントほどの透き通るような赤い羽根を持つ鳥が止まった。そして、その鳥がアイツの存在を確信させ、全てが手遅れになったと悟った。しかも、相手の狙いがテファである可能性まで出てきてしまった事に絶望した。

 

 風竜たちがゆっくりと着地すると、着地のショックを和らげるための強い羽ばたきの音と、それが生み出す風が私たちの注目を集め、先頭の竜からはアイツが竜騎士に抱えられて降りてきた。

 

 他の竜からは気軽に馬から降りる様に降り、軽く自らを包む赤いドレスをささっと直した金髪の女性、―――確か魔法学院の女生徒でヤツの婚約者だったはず。そして、ヤツの介助要員のメイドや、ワルドが口説き落そうとしていたヴァリエール、さらにその使い魔が降りてこちらにやってくる。

 

 そして、風竜と竜騎士たちは私たちを取り囲むように円陣を組んだ。

 

 「ア、アンタは……」

 

 何とか搾り出した声がヤツに届くと、ヤツはメイドの肩から手を離した。そして、杖や剣を抜かないようこちらも届くように周りにいる人間に言い含めると、その場にいる全ての人間を代表するように一歩前に出て貴族が良く浮かべる作ったような社交的な笑顔を浮かべた。

 

 「お久しぶりです。ミス・ロングビル。いや、マチルダ姉さんというのが本名なのですか? 突然の訪問、何卒ご容赦いただきたい。そして、お初にお目にかかります、キレイなお嬢さん。俺はカスティグリア諸侯軍、最高司令官をやっております。クロア・シュヴァリエ・ド・カスティグリアと申します。二つ名は『灰被り』を名乗っております。」

 

 そう、コイツは片手を胸に置いて丁寧な礼をした。テファの方をチラッと見ると肩にコイツの使い魔を止まらせたままキョトンとした目をしていた。いや、確かに先ほどまでの混乱振りからこんな自己紹介が飛び出すとは思ってなかっただろう。

 

 しかし、フーケの名を出さなかったのはもしかして私に対する心遣いかい? 確かにテファや今は家に入っているガキ共を上空から見ていたのであれば私が保護者に見えるだろうし、私の前職を知られたくないだろうとでも思ったのか……。実際私は盗賊だった事をこの子達に知られたくはないから助かりモンだけどね。

 

 だが、その後ろにいるヴァリエールやその使い魔は明らかに私がフーケであった事を気にしているのはまる分かりだ。私に対して何の警戒もしていないように見えるのはアイツと隣にいる赤いドレスの少女、そして平民のメイドだけだ。いや、私たちを囲む竜騎士たちは気にしているどころか円陣を組んで私たちも含めて守るように外側を警戒している。

 

 しかし、『灰被り』かい……。白髪交じりの薄い金髪が灰を被ったように見えなくもないけどね。でも、自称しているくらいだ。あの凶悪な火の魔法で全てを灰にする自信があるってのかい。お似合いかもしれないけどなんて物騒なんだい……。

 

 「そして、ミス・ロングビルはご存知かもしれませんが、こちらは先日アンリエッタ女王陛下の女官となられたルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢。トリステインでは女王陛下に次ぐ権限をお持ちだ。」

 

 そうヴァリエールを紹介すると、ヴァリエールも一歩前に出た。しかし、あの姫様が女王でこの小娘が女官とはね……。トリステインもそう長くはないかもしれないね……。

 

 ただ、コイツはフーケの名を出さないようロングビルに拘ってるようだが、後ろの連中を見るといつフーケの名が出るかわかったもんじゃない。こいつ等に本名で呼ばれるのは気が進まないけどしょうがないってもんかね。まぁコイツにはテファにマチルダ姉さんって呼んでるのを聞かれてたみたいだしね。

 

 「マチルダだ。他の名はもう捨てたんでね。」

 

 そう本名を告げると、皆疑いの目を向けたが、コイツだけは意外そうな顔をした。

 

 「そうでしたか。では、ミス・マチルダ。これから言う事は調子の良い事だというのは理解している。しかし、そちらにとっても良い話ではないかと思うのだよ。まぁここで過去の事は過去の名と共に水に流し、ぜひとも相談に乗っていただきたい。まず、ここに来た目的なのだが、我々が欲している人物がいないかと思ってね?」

 

 嫌な予感しかしない。賞金首としての私、土のトライアングルとしての私、百歩譲って元ミス・サウスゴータまでなら何とか譲ろう。だが、コイツの狙いが王家の残した異端。ハーフエルフとしてのテファだったら最悪だ……。

 

 コイツはちょっとおどけたような表情をしながら、私の緊張をほぐそうとしているかのように、手をヒラヒラ振りながら天気の話でもするように続けた。

 

 「もしかしたらまだテューダー家に血のつながりのあるメイジが残っているのではないかと考えたのだよ。そんな方がいらっしゃればその御方は女王陛下のイトコにあたる。アルビオン共和国が滅んだ暁には女王陛下の助力の下、将来的にはその方に治めていただくというのが良いと思ったのだよ。

 そして、実務が出来るほど優秀でその人物のために命を賭ける事の出来るような、さらに、俺ともカスティグリアとも繋がりのある、そんなメイジが個人的には欲しい。俺に可能な範囲だが、もしそのメイジが望むなら個人的に力を貸そうとも思っている。心当たりはないかね? 」

 

 な、なに……? いや、言ってる事はわかる。確かにテファの血筋を考えれば女王と血のつながりがあるだろう。それはいいんだ……。少し落ち着こう……。問題は、すでにアルビオン共和国が滅ぶと決まっているって言うのかい!? 戦争の足音すら聞こえていないのに……、いや、そもそもなぜコイツがここにいる? ま、まさか噂に上るより早く侵攻してきたってのかい!?

 

 しかも探しているのがピンポイントで私とテファじゃないかい! でもテファを、ハーフエルフのテファをこいつ等が受け入れるとは思えない。コイツの力は魅力的だが、“個人的に”というのも引っかかる……。やはりここは知らない振りを―――

 

 「おや? あるようだね。ふむ、今まで表に出なかったような御方だ。きっと深刻な理由があるのだろう。しかしだね? この際、その御方がエルフや亜人とのハーフだろうが、世間知らずで全く知識がなかろうがこの際構わないのだよ。なに、血筋の真偽はこちらの女官殿が正確に判定してくれる。さぁ、教えてくれたまえよ?」

 

 ―――する必要もなく終わっていた。偶然見つけて私の表情の変化を読んだような振りをしてるけど、どこからどう見ても確信を持って来たとしか思えない。下手な芝居をして知らない振りをしているが、不自然なほどテファをピンポイントで指してる。

 

 けど……、今コイツは何て言った? ハーフエルフでも構わないと言わなかったか? 本当にハーフエルフでも構わず、元盗賊の私を貴族に戻そうとしているっていうのかい!?

 

 た、確かに、調子の良い事だね……。こちらにとって都合が良すぎる。でも、コイツがこう言うからにはこちらだけじゃなくコイツにも都合が良いはずだ。落ち着け……、テファの話が出る前、コイツはなんて言った?

 

 

 『女王陛下の助力の下、将来的にはその方に治めていただく』

 

 ハーフエルフをアルビオン王国の女王にするつもりなのかい……? そんな事ブリミル教が許すだろうか。いや、むしろテファの排除に動くに決まっている。しかし、コイツは確信を持っているかのようにテファに治めさせるつもりのようだ。

 

 もしかしてコイツは……、コイツの敵はブリミル教……!? レコン・キスタより数段性質(たち)が悪い!

 でも、そう言われてみれば元国王がテファの両親を奪ったのも、テファがこうして隠れ住んでいるのも元はと言えばブリミル教の教えが原因だ。フフッ、そうだね。確かにそうだね……。仇はテューダー家でも貴族でも無かったのかもしれないね……。

 

 でも、テファを女王に担ぐって事はテファを対ブリミル教の矢面に立たせるって事になるんじゃないかい? できればテファには平穏な人生を送ってもらいたい。しかし、コイツは何となく事を起こす前に全てを決めてしまうような嫌らしさを持ったヤツだ。断ったとしたら更に酷い結果になりかねない。そう考えるとすでに退路は無いみたいだ……。

 

 

 『俺と繋がりのあるメイジが個人的に欲しい(・・・・・・・)―――個人的(・・・)に力を貸そうとも思っている。』

 

 しかし、コイツ……。まさか婚約者がいるのに私まで囲おうってのかい? 見た目によらず女好きなのかね? そういえばコイツ……平民のメイドに手を出さないとか誓ってたくせにこんな戦争にまでお供させてるって事は……、まぁ誓いを破って手を付けたとしか思えないね。

 

 私もこんな人生で結婚自体諦めてたし、コイツは病弱でかなり若いが見てくれはそれほど悪くない。それに、テファをコイツの毒牙から守れるんならそれもアリかね? テファのためにもコイツには味方でいて貰った方がいいし、近くからそれを監視できるならそれも悪くないか……。

 

 しかし、病弱と言いつつ戦争に参加する元気は……、はっ!? もしかして見た目が病弱なだけで実は寮で……。んんっ、ま、まぁそれは追々確かめるとするさね……。

 

 テファの方を見ると、よくわからないと言うような困った顔をしていた。そして、テファの方に軽く頷くと、ヤツに向き直り、心の中で気合を入れた。

 

 「確かに調子がいいね。こっちにとっちゃ調子が良すぎてイマイチ信用できないくらいさね。しかし、アンタがそう言うんだ。信じていいんだろうね?」

 

 「ふむ。マチルダ嬢。俺は一度だけ誓いを破った事があるが、それでも信じていただけるというのであれば、先ほどの言葉に偽りはないと誓おうではないか。」

 

 真面目な顔で真摯にこちらを見つめて()は口を開いたが、恐らくその一回はそこにいる平民のメイドのことだろう。きっと律儀な彼の唯一の弱点が女好きという所なのかもしれない。ここでテファに手を出さないよう誓わせても撤回される可能性が高い。つまり、それ以外は信じられるはず……。

 

 ならば、信じて未来を切り開くべきだろうさ。テファの不安は私が彼と取り除いていけばいい。共通の敵、共通の目的を持つ誰もが強いと思える存在が少し弱いところを持っているのも私好みだ。

 

 「そうかい。なら信じるよ? 決して私たちを落胆させるんじゃないよ?」

 

 「うむ。善処はするとも。」

 

 私が信じた事を確信したのか、彼はようやくほっとしたように普通の笑顔を見せた。たった二人の女を攫うためだけにこれだけの戦力を引き連れてきておいて、そんなに心配だったのかい。いや、断った時の事を考えていないはずがないだろう。ということはその手段を使わなくて済んで安心したといったとこかね。

 

 「知ってて来たんだろうけどね。お探しの人物はこのティファニアと私だろうさ。でも、どうやって身の証を立てさせるつもりだい? テファは私にとって最後の家族だ。手荒な事をするってんなら抵抗させてもらうよ。」

 

 「ふむ。いやはやまさか、本当に見つかるとは思っていなかったとも! うむ。まさに偶然だとも! はっはっは!」

 

 絶対知っていただろう。彼がするオーバーアクションが馬鹿らしいほどわざとらしい。

 

 「それで、身の証の立て方だが、ここは女王陛下の女官殿の助力を()おうと思う。彼女は少々特殊な魔法を使う事が出来るのだよ。俺はまだ実際に見た事はないのだが、『その時にその場にあった物に宿った記憶を女官殿と見せたい人間に、さもその場にいたように見せることが出来る』らしいのだ。」

 

 そんな便利な魔法があるなんて聞いたことがない。いや、強いて言うのであればテファの忘却の魔法もテファにしか使えず……、もしかしてヴァリエールとテファは同じ系統だというのかい!?

 

 その肝心のテファは不安そうな顔で私の服を引っ張って不安そうな顔をしている。過去を覗かれることもそうだが、自分がハーフエルフである事を、そして過去王軍に母を殺された事を知られるのが怖いのだろう。

 

 「悲しい過去を掘り起こす事になりかねない事は承知している。そして、自らの過去を暴かれる恐怖もとてもよくわかるとも。しかし、これからの未来のため、そして、我々とあなた方が分かり合うために必要な事なのだ。

 ……ティファニア嬢、ここにいる、これから君と君の姉の過去を共有しようとしている人間は、これから君と歩んで行くことが出来ると考え連れてきたのだよ。そう、きっと美しい君と君が持つ優しくも悲しい過去を知り、きっと共有し、お友達(・・・)になれるであろう人間達なのだよ。」

 

 「お友達……ですか……? でもわたしは……。」

 

 テファは彼を知らないし、過去王族に仕える人間に両親を殺された事を考えれば難しいだろう。なんせヴァリエールは女王陛下に仕える女官と紹介されている。

 彼はチラッと私を見たが、私は意趣返しの意味も篭めて僅かに片頬を上げて皮肉を篭めた笑顔を返した。ここはお手並み拝見といこうじゃないか、色男。

 

 「ふむ。では少々お手本を見せるとしよう。使い魔君、彼女の帽子を取って来てくれたまえ。」

 

 「はぁ!? お、俺!? い、いや、その……。」

 

 ぶっ、自分でお手本を見せるんじゃないのかい! しかも断られてるじゃないか。全て彼の計算どおりに進んで行くと思って様子を見てたのに、そんな微妙なところで(つまず)くのかい……。

 

 そして、彼はなぜかソワソワしているヴァリエールの使い魔の近くに行くと、チョイチョイと耳を貸すようにジェスチャーしてヒソヒソと話し始めたようだ。何を話しているかは聞こえないが、時折反応を示す使い魔の言葉だけがギリギリ聞こえる。

 

 しかし、聞こえてくる言葉(ワード)がひどい。恐らく使い魔が彼の言った事をそのままつぶやいているのだろうが、「胸革命(バストレヴォリューション)」とか、「多分世間知らずでお人よし」とか、「友達になればちょっとくらい触らせてくれるかもしれない」とか……。別の意味でテファを(かくま)いたくなってきた……。

 

 「ねぇ、姉さん。バストレヴォリューションって何?」

 

 「え? そ、そうだねぇ……。わ、私には良くわからないから彼らとお友達になれたら聞いてみると……ってダメだ! いいかい? テファ。もし仮にヤツ(・・)らとお友達になっても一生を添い遂げる相手以外に胸を触られちゃダメだからね! わかったかい?」

 

 「え、う、うん。私の胸っておかしいのかな?」

 

 「そんなこと気にするんじゃないよ。」

 

 しかし、ヤツはテファの帽子を取らせて使い魔の反応を見せるつもりだったんだろう。けど、何となく帽子だけとは言え今となってはテファに触らせたくない。

 

 「あー。帽子を取ればいいのかい? テファ、帽子を取りな。」

 

 テファにそう促すと、テファは周りを囲む竜騎士たちを気にした後、不安そうに私の顔を見た。そして、私が頷くと、おずおずとテファの耳を隠すためにかぶっている大きな帽子をとった。

 

 ヤツと使い魔は特に反応しなかったが、他の三人は「エルフ!?」と大声を出して驚いた。その瞬間、テファは外側を向いているとは言え周りを囲む竜騎士たちの反応が一番怖かったようでキョロキョロと周りを確認した。しかし、竜騎士たちはよく訓練された近衛兵のようにピクリともしなかった。

 

 「ああ、やはりハーフエルフ。しかし、なんというか、森に囲まれたハーフエルフというのは光を浴びた妖精のようだね。天然の美しさとでも言うのだろうか……。」

 

 戸惑っているテファにヤツがそんなキザったらしいクサいセリフを吐き出した。今とてもヤツを殴りたい。しかし、我慢だ……。エルフに驚いていたはずのヤツの婚約者が、ピクッと一瞬片眉を動かしたのを私は見た。あの気の強そうな婚約者がきっと後で問い詰めるに違いない。彼女に任せようじゃないか。

 

 「ああ、そうだった、そうだった。使い魔君。彼女をどう思うかね?」

 

 

 「え? あぁ、その、きき、キレイすぎてその……、触ったら罰が当たりそうなほどキレイで、でも、その、胸―――」

 

 使い魔が胸と言った瞬間、使い魔の股間にヴァリエールの足がめり込んだ。そして、私はその恐ろしく素早い体術の方がよほど恐怖を感じた。使い魔は死んだようにうずくまっているが、ピクピクと動いている。ま、まぁ死にはしないだろうさ。いや、むしろ死んでくれた方が心配が減るかもしれないさね……。

 

 「あー、お分かりいただけたかな? お嬢さん。」

 

 「あの、エルフが怖くないの?」

 

 ヴァリエールの使い魔が生み出した微妙な空気の中、ヤツがテファにそう問いかけると、テファは顔を赤くしつつもおずおずと確認するように問い返した。

 

 「ん? ああ、お嬢さん。女性陣は驚いたようだが、俺や使い魔君の目に映る君はエルフでなく、ハーフエルフでなく、ただの美しくも無垢で純粋なお嬢さんなのだよ。そのような君を恐れる理由がどこにあるのだね? むしろ、使い魔君にとってはご主人様の方が恐ろしいかもしれないね?

 しかし、その長い耳のさわり心地がどのようなものか気になる……。そう、とてもとても気になる……、しかし、貴族としてそのような願いを口にする事はすまいて。」

 

 口にする事はすまいてと言いつつしっかりとこちらまでそのつぶやきが届いた。すると、テファは真っ赤になりながら大きな帽子を目深にかぶって私の後ろに隠れてしまった。テファは別の意味で耳を隠す必要に迫られたようだ。

 

 そんな少し弛緩した空気の中。ヴァリエールが少し怒ったような口調で昔から持っているモノがあるか聞いてきた。何というか、テファがエルフである事よりもこの馬鹿げた空気にイラついているように見えたので、後ろに隠れるテファに促すと私に自分の杖を渡した。どうやらしばらく隠れているつもりのようだ。

 

 「これでいいかい?」とヴァリエールに渡そうとしたら持っているように言われ、ヴァリエールは自分の杖を抜いて「じゃあいくわよ」と言って詠唱を始めた。その独特のルーンを聞いていると、やはり何となくテファのルーンに似ている気がする。「あ、そういえばヴァリエールと言えば失敗魔法が―――」と、思った瞬間、私たちは昔懐かしいテファの隠れ住んでいた家にいた。

 

 「過去に干渉する事も出来るけど、今回は干渉できないようにしたわ。」

 

 竜騎士たちの作る輪の中にいた全員がヴァリエールの両隣に並んでいた。目の前にはテファとテファの両親、そして私と死んだ父がいた。この場面は私とテファが初めて会った日だったようだ。互いの両親、モード大公と愛妾のエルフ、そして私の両親が互いの子供に自己紹介して挨拶を交わしているところだ。そして、興味深そうにテファを見る私と気後れしたテファがそれぞれ改めて自己紹介した。この後、すぐに打ち解ける事ができ、私はマチルダ姉さんと呼ばれ、ティファニアをテファと呼ぶようになるのだが、さっとシーンが変わってしまった。

 

 きっとヴァリエールの興味次第で見たい場面を選べるのだろう。今度はテファがひとりでモード大公が管理する財宝で遊んでいるところだった。水色の大きな宝石のついた指輪をしてオルゴールを開くと、目の前の小さなテファが驚いたような顔をしたあと、何も聞こえないはずのオルゴールに耳を澄ませ、何かを口ずさんでいる。

 

 そんな光景をヴァリエールは目を見開いて眺めたあと、横に並ぶテファに視線を移した。テファは懐かしそうにその光景を見るだけで、特に反応らしい反応はしなかった。きっとヴァリエールは何かに気付いたのだろう。と言う事はやはりテファとヴァリエールは同じ系統なのだろうか。

 

 再びシーンが変わると、モード大公がテファとその母に険しい表情で話しているところだった。そして、その後二人はサウスゴータに匿われ、あの忌まわしき事件が起こることになる。その事件をまた見る必要があるのだろうか。きっと同情を引き出す事はできるだろう。でも、これ以上はテファの傷を抉るだけに思えた。

 

 「女官殿。ここら辺りで良いのではないかね。これ以上は彼女達が許すのであれば彼女達から聞けば良いだろう。」

 

 不穏な空気を感じたのだろうか。彼の進言に「そうね」とヴァリエールがつぶやくき、視界がウェストウッド村の景色に戻った。

 

 「ミス・ティファニア。アンリエッタ女王陛下の女官としてあなたをテューダー家の血筋、モード大公の娘と認定いたします。それに、あなた……、虚無の系統なのね……。」

 

 そんなヴァリエールのつぶやきが、静寂を支配し、何となく感じていたものが確信に変わった。そして、その時、皮肉を篭めた笑いを仄かに浮かべ軽く目を伏せた彼の姿が印象的だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 マチルダ嬢の行き遅れフラグが立った!
 メロンちゃんマジ空気!

 いかがでしたでしょうか。一つ気付いたことがあります。他のキャラ視点だと前半部分の説明やら今までの見方何かを追加するので長くなってしまうようです。しかも最初書いた時はどう見てもクロアの論理パターンでざっくり風味なフーケさんとは似ても似つかなくて大変でした;;

 ティファニア嬢だったらと思うと何書いていいかもはやわかりませぬ。

 一応次話書きつつ修正して大丈夫かなー? ということで投降したわけですが、次話が意外と進まない……。何か最近ずっとこんな感じですなー。モチベーション下がりきってしまったのでしょうか。というか未だに読んでいただけているのか少々不安ががが……。

 あ、えっと、その。私はこんな有様ですが、感想お待ちしておりますorz

 次回もおたのしみにー!
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