あ、R-15回かもしれません。かなり分厚いオブラートに包んで苦手な方でも大丈夫かな? 程度に抑えましたが今回グロ表現が少々あるかと存じます。ご注意ください。
それではどうぞー^^;
-追記-
かすてぃぐりあのか じゃないよ!? かすてぃぐりあのちから だよ!?
トリステイン・ゲルマニア連合軍がアルビオン大陸侵攻のためラ・ロシェールから飛び立つ日の数日前、軍港ロサイスを一隻のフリゲート艦が飛び立った。戦列艦よりも小さくそれでいて戦列艦並みの大型砲を抱える。しかし、フネはフリゲート艦の中でも小さい方で砲よりもむしろ船足を誇る軍艦だった。
単独で航行するそのフネの任務はメンヌヴィルと彼が率いる十数人のメイジを目標地点まで送り届けることである。艦長や士官は初めてメンヌヴィル達をフネに迎え入れた時、十数分の遅刻とその異様な匂いに嫌な感じを受けたが、皇帝クロムウェル直々の命令を受け、汚れ仕事に分類されるであろう任務でも艦の士気は高かった。
命令はトリステイン内部にいる協力者の情報を基に、トリステインの哨戒ラインを超えてトリステイン魔法学院までメンヌヴィル達を運ぶ事だった。しかし、トリステイン内部にいたレコン・キスタの協力者は、日に日に王軍によって捕らえられ数を減らしており、僅かに残っている協力者を総動員してこの作戦は立てられたものであり、哨戒ラインに関する情報にも穴があると思われていた。
だが、そのような情報があっても本来ならば単艦での浸透は言わば自殺行為である。目的地のトリステイン魔法学院はトリステイン王国の内陸部に存在しており、深く浸透する必要があるからだ。しかし、トリステインはアルビオン大陸への侵攻のため、ゴタゴタが続いており防衛ラインや哨戒ラインといったものが存在しているかすら怪しいという。
確かにこの広い空で小型で快速を誇るこのフリゲート艦を捕捉するのは曲芸に近いだろう。その上、哨戒ラインを構築しているというトリステイン空軍の情報もある程度得ている。さらに、この艦がメイントップマストの先端の吹流しに掲げているのは
異国の旗を掲げながら航行するのは当然ながら条約違反である。しかし、それ自体に関する罰則と言うものはなく、問題が発生するのは交戦後のことである。それに、戦闘発生直後までに自国の旗を掲げているのであれば、その旗の示す所属の軍艦として扱われる。そう、つまり、バレたとしても負けて拿捕されるような事にならない限り問題ないのだ。
当然相手も警戒はするだろう。しかし、トリステイン空軍のフネはこのフネよりも鈍足で、小型のピケット艦の哨戒にかち合ったとしても逆に沈めることも拿捕する事も可能だ。何より、トリステインの旗を掲げているのでこちらからの奇襲が可能な上、艦を操るのはハルケギニア最強を自負するアルビオン空軍の者達だ。
予定では日没までにトリステイン北西に沿岸近くの哨戒ラインから五十リーグの辺りまで進み、夜陰に紛れて哨戒を突破、そのままトリステイン魔法学院を目指すというものだった。そして、目的の地点に差し掛かったとき、運悪く予想外の場所にフネがいたようだ。
「左弦船首! コルベット!」
フリゲート艦の中でも一番高い場所に位置するメイントップマストに登っていた見張り員が眼下の甲板に大声を張り上げた。船員の注目が一気に集まる中、片腕でマストに捕まりながら空いた腕で船首方向の左舷寄りを指していた。
一段高くなっている後部デッキにいた士官達が狭い甲板を船首方向へと向った。そして、手にした望遠鏡で見張り員が指し示していた方向に望遠鏡が並ぶ。
はたして彼らの目に映ったのはこちらの前を横切るように右舷方向に進路を取っている一隻の小型艦だった。そのフネはフリゲートから比べるとかなり小さく、二本のマストはやけに船首側に寄っている。
「旧式のコルベットですかな。トリステイン空軍はずいぶんと古い艦を使うようだ。」
望遠鏡を構えたままひとりの士官がつぶやいた。アルビオン空軍ではサイズと用途ごとに艦種が判別されるため、マストの位置による違いはさほど大きくはない。ただ、二百年以上前に流行したという資料にしかないようなマストの位置がそのコルベットの年代の古さを感じさせた。
「せめて哨戒に使うのであれば船体は保護色にすべきだろうに……。」
そして、その船体は鮮やかな赤色に塗られていた。別の士官がつぶやくと、「トリステインは派手好きなようだ」とまた別の士官が感嘆の声を発する。哨戒という用途を考えるのであれば、平時ならばともかく、戦時ならばもっとくすんだ色を選ぶものではないだろうか。
「記念艦かもしれんな。しかし、トリステインもそこまで
「アイ、サー!」
最後に艦長が結論を出すと、士官達は自分の持ち場へと戻って行った。そして、戦闘配置のドラムが鳴り響き、にわかに甲板上に活気が溢れる。
彼らの取る作戦は基本的に見つからないことに重点が置かれているため、まずは回避が優先される。トリステイン国旗を掲げているため、遠目からはトリステイン所属の軍艦にしか見えないからだ。それに加え、アルビオンでも快速を誇るこのフリゲート艦であれば、トリステインの小型快速艦艇以外距離を縮められる事も無い。
そして、小型快速艦艇がごまかされずに距離を縮め、誰何《すいか》や臨検に望んで来るようであれば、奇襲で砲撃を加え、運悪くこのフネの事を知ってしまった人間は総じて消えてもらうしかない。
艦長は敵艦視認の士官二人と船首に残り、望遠鏡で相手のフネを見続けており、艦の指揮は現在副長が行っている。彼になら任せられると判断していた。そして、フネが僅かに右へと傾き、進行方向を左へと変えていく。幸いに真後ろから受けていた風が、進路を変えたことで左後ろからの風に変わり、横帆だけでなく、縦帆にも風が入るようになった。
それに従い、艦長と士官達は一度望遠鏡を降ろし、船首の左弦側から右弦側へと位置を移すと、信じられないものを目にした。
「
先ほどまで見ていた赤いフネがこちら側、つまり風上側へと船首を回したのだ。風上に切りあがる際、フネの進行方向をほぼ反対方向へと変える旋回には二つの帆走法がある。しかし、この広い空を走るハルケギニアのフネは基本的に
しかし、タッキングは艦首を風に逆らって回すため、帆は逆風を受ける。成功すれば比較的短時間で最短距離の旋回が可能となるが、失敗するとフネが停止、または風に煽られて旋回しきれずに元の方向へと戻らざるを得なくなるのだ。タッキングを成功させるためには船員総出で帆やヤードを操り、風メイジがいれば帆にウィンドを送り込み、後は経験に基づいた操舵手や
「旧式でもトリステイン空軍の錬度はかなり高いようだ……。」
しかも、こちらが進路を変えるのに合わせてのタッキングだ。まず疑いを持ってこちらを追ってきていると考えても良いだろう。
―――回避はできないかもしれん。そう思いながら艦長がつぶやくと、今まで船室にいたはずの人間が応えた。
「ほぅ? オレの出番かね?」
「メンヌヴィル殿。お手を煩わせるかもしれません。」
望遠鏡を降ろし、艦長がメンヌヴィルに向き直った。すると、メンヌヴィルは頬を吊り上げ嗤った。
「そうか、フネでの移動にも飽きてきたところだ。ククク、人の焼ける匂いを嗅げるのなら構わないさ。」
片目に眼帯をしたこの傭兵を気味悪く思いつつも、今は味方であり頼もしいという感想を持った。同じ感想を抱いているであろう士官の一人が、おずおずと自分の望遠鏡をメンヌヴィルに差し出すと、予想外にもメンヌヴィルはそれを断った。
そして、「出番が来たら教えてくれ、後部にいる」と言ってメンヌヴィルは去って行った。
好戦的とも思いつつ相手のフネを見ようともしなかったメンヌヴィルに多少の疑問を持ちながらも艦長は自分の望遠鏡を覗き込み、再び敵艦の動向を見守る。
敵艦は明らかにこちらに気付いており、逆風の中切り上がってくるようで、いくつかの帆を縮帆しながらこちらの予想航路を横切るような航路を取っていた。
「艦長、戦闘準備完了しました」
「うむ。逸る事のないようにな」
「アイ、サー」
回避のためにあまり航路を変えると逆に不自然だろう。そして、あの大きさのフネであれば砲撃で爆沈させる事すら可能かもしれない。まず負ける事はないだろう。
艦長はそう結論付け、こちらの欺瞞に騙されないようであれば沈める決意を固めた。
ただ、不幸な事に、いくつかアルビオンに届いていない情報があった。
カスティグリアのフネは基本的に赤く塗装されること。そして、トリステイン王国の北西部沿岸にかかるように位置するカスティグリアは非常に閉鎖的であり、トリステイン艦であっても容易に近づくことを良しとしない事。さらに、今は戦時中であり、カスティグリア領にクラウス・ド・カスティグリアが戻ってきており、彼が戦略的な概要を決定していた事……。
つまり、トリステイン北西部沿岸はかなりの広い範囲を哨戒船が飛び交っていたのだ。しかも、
彼らに命令されている内容は至ってシンプルだ。近づく船があれば警告し、怪しいと思ったら拿捕または撃沈せよ。カスティグリアの許可を得ている輸送船であればかなり厳密に航路が決められている。そして、カスティグリアの軍艦であればその色と旗で確認を行いつつ誰何すればよい。その二つに当てはまらない、航路を外れた軍艦は基本的に敵として認識される。
陸路でもかなりの警戒があり、侵入者はどこからともなく捕捉され、カスティグリア諸侯軍に送られる。そして、そのトリステインですら信じないという一見独立を匂わせる異常な警戒を、実質的な宰相であるマザリーニ枢機卿は許していた。
それに伴い、トリステイン空軍の艦長や士官にとってカスティグリアの防衛ラインに近づく事は罰則の付く愚行であり、カスティグリアの赤いフネをその罰則と共に恐れていた。
そう、彼らは不幸な事にそれらのカスティグリアに関する重大な情報をトリステインに潜ませていた協力者から得る事が出来なかったのだ。アンリエッタ女王が誕生する以前であれば得られたかもしれない。しかし、ワルド子爵の捕縛から始まった貴族派に対する芋づる式の取り締まりがそれを不可能にしてしまった。
今では先のタルブ村が侵攻されたとき、徹底的に抗戦を回避しようとしていた高等法院の元院長リッシュモンを始め、それに連なる貴族が家名と財産を失い、自らと家族の首を晒す事となっていた。そして、アルビオンの得られた協力者というのは結局それらを
そして、トリステイン空軍の哨戒ラインの大きな穴は結局のところ、カスティグリアの定める領空だった。メンヌヴィルを乗せたフネは、図らずも一番哨戒の厚い所に来てしまったのだった。
望遠鏡でカスティグリアの赤いフネの様子を見ていた艦長は驚きを隠せないでいた。通常、逆風の中切りあがれる角度というものはそれほど大きくない。しかし、帆を減らしつつ切りあがってくる赤いコルベット艦はその常識を覆すのではないかという角度だったからだ。
いや、風メイジを大量に動員すれば可能ではある。しかし、薄く広く配置されるはずのピケット艦にそれほど大勢の風メイジを載せることが出来るのだろうか。記念艦として観艦式などに出すのであれば納得は出来るが、今行われていたのは哨戒任務だろう。
そして、接近される前に夜の帳が下りると思われていたにも関わらず、想定外の速さで接近を許し、並走されることとなった。
大砲の射程外であるため、交戦を選択するにはまだ早い。しかし、艦長には一抹の不安が沸いてしまった。あの速度で切りあがってくるフネが臨検や誰何ではなく、敵性と判断され、逃げられる可能性が出てきたのだ。もし逃げ切られたら厄介な事になる。
しかし、高速で切り上がってくる間に風メイジが何人いるかわからないがかなり消耗したはずだ。さっさと近づいて砲撃を開始するという誘惑に駆られながら、それでも艦長としての矜持が望遠鏡から目を離すことを良しとしなかった。
赤いフネがスルスルと信号旗を揚げ始めた。そして、揚げ終わると、一発の空砲が大気を揺らした。それらが意味するのは「即時停船セヨ」。事実上の降伏勧告に事情を知らない艦長は激しく混乱した。
フリゲート艦に対してコルベット艦が降伏勧告をするなど聞いたことが無い。いや、この大人と子供ほども違う圧倒的な戦力差でなぜ降伏を勧告できるというのか。しかも、こちらもあちらも掲げているのはトリステインの旗であり、変更があったと言う話は聞いていない。
「船尾、トリステイン国旗を掲げろ」
メインマストトップに吹き流されているトリステインの旗が見逃されていると考えた艦長は艦尾に大きいトリステイン国旗を掲げるよう命令を出した。
しかし、その巨大な国旗がはためいたのを確認したかのように、再び空砲が轟いた。艦長に取れる手段はすでに二つに絞られた。停船し、接近したところを奇襲するか、このまま戦闘に入るかの二つである。
近距離の撃ち合いであれば、砲門の数、そしてフネの大きさからこちらの方が有利で、しかも逃亡される恐れもなく確実に仕留めることができる。しかし、足を止めたところで、装甲のほとんどない艦長室や舵のある船尾側に付かれた場合、甚大な被害が予想される。
そして、アルビオンのフリゲート艦は風上に位置しており、戦闘を優位に運ぶことが出来る公算が高い。
「止むを得ん、了解の信号機を揚げろ。速度を落としつつ接近、右舷砲撃戦用意!」
その指示で副官を始めとした士官が激を飛ばし始める。最後の欺瞞として了解を示す信号機がメインマストをスルスルと上がっていく。しかし、フネの足は落とさずに少し右に舵を変えてカスティグリアの小型艦と並走するように近づいていった。
そして、フリゲート艦の積む大砲の射程内に入った時、コルベット艦の側弦から三門の砲が押し出された。
「ふふっ、たった三門の砲で、しかもこの距離で牙を剥くとはな……」
船首から敵の動向を窺っていた艦長が行動を共にする二人の士官にそう苦笑したとき、一つの轟音で三門の砲が火を噴いた。そして、数秒後、艦長と士官は艦首甲板ごと粉々になり、空に飛び散った。
最初に発射された三発の砲弾のうち一発が艦首を襲い、残り二発は艦尾を狙っていた。そして、艦首への着弾と同時に艦尾にも二発の砲弾が直撃していた。艦尾甲板で士官と己の出番を待ちわびていたメンヌヴィルと十数人の傭兵は艦尾甲板にある舵輪や舵板と共に等しく肉片とフネの残骸へと変えられ、空へと吹き飛ばされた。
舵と指揮官のほとんどを失ったフリゲート艦にもはやなす術はなく、あっさりと艦尾に回られると砲撃と機銃による銃撃を受け続けた。そして、一発の砲撃を行う事なく、船員のほとんどが肉片や死体と化したあと、ようやくコルベット艦は並走を始めマジックアイテムを用いた大声で降伏勧告を行った。
すでにほとんどの船員が死傷しており、士官は残っていなかった。そして、もはや戦う意思は完全になくなっていたが、降伏を示すことすら困難だった。しかし、これだけの打撃を受ければ誰が士官であろうと降伏するだろうと誰もが思い、その思いが「白旗を揚げろ」といううめき声を生み出した。
まだ十歳を少し過ぎただけの
メンヌヴィルが人知れずこの世を去った翌日、アルビオン大陸ではマチルダがカスティグリアに合流した翌日の昼ごろ、軍港ロサイスへと向う三万のアルビオン軍は目的の場所まで約八十リーグの場所まで近づいていた。クロアの率いるカスティグリア諸国軍が簡易的な防衛ラインを形成している地点からは三十リーグほどの場所である。そして、明日の夕刻までには軍港ロサイスへとたどり着くペースでの進軍であった。
軍港ロサイスを目指す目的はただ一つ。アルビオン大陸への侵略を目的としたトリステイン・ゲルマニア連合軍を水際で叩くためだ。
軍港ロサイスと言えど、桟橋の数には限りがあり、大量の人員や物資を降ろすにはその限られた桟橋を順番に使う必要がある。そう、いくら六万の兵を連れてきたとしても行軍するように降ろす事はできない。そのため、桟橋や軍港で防御陣地を張って戦えば三万の兵であろうと連合軍六万の兵を蹴散らし、追い落とす事も可能であり、優勢に進める事ができれば相手にかなりの痛打を浴びせられるのだ。
連合軍を待ち受けるのであれば充分間に合うと見積もられている。連合軍は輜重隊として多くの足の遅いガレオン船を連れており、それにあわせた艦隊の速度はとても遅いだろう。そして、最強のアルビオン空軍の守る空を数隻のトリステイン艦が先行しておりロサイスにいるという想定は無意味と判断されていた。
実際はすでに殲滅されており、カスティグリア諸侯軍が待ち構えているのだが、逃げ延びた艦や竜騎士がいなかった上に、軍港ロサイスにも限定的な攻撃が行われ混乱していたことが災いし、三万の兵を預かるホーキンス将軍は知る由もなかった。
そんな彼が違和感を感じ取ったのは少し先行している前衛の捜索騎兵隊からの一つの伝令だった。
「風竜と
「はっ、しかし、確認できたのは僅かな間だけで、ロサイス方面へ飛び去ったと思われます。」
ロサイスの近くには竜騎士の駐屯地が今回の作戦のために作られており、そこに配備された竜騎士たちはアルビオン空軍最後の戦力である戦列艦四十隻をメインとした艦隊と一緒に行動するはずだ。こちら側への偵察として考えると違和感が残る。
哨戒をするのであればトリステイン方面からやってくる連合軍の艦隊や艦隊の出した囮や偵察部隊に備えるはずだ。竜であれば艦隊が敵艦隊を捉えた後から駐屯地から出撃しても間に合うだろう。しかし、逆方向であるこちら側に派遣するという事に対して違和感が残る。
艦隊やロサイスに何かあり、伝令に来たのであれば合流し、何かしらの情報を置いていくはずである。だが、確認できたのは僅かな間だけということから、こちらの位置の確認に来たか、発見できず時間切れで帰ったか、そんなところなのだろうか。
ホーキンス将軍はそう考えつつ、その後の方針に関して少々迷いが生じていた。以前の将軍であれば迷うことは無かったが、タルブ侵攻作戦の結果がトリステインにいたレコン・キスタに協力する貴族からもたらされたとき、彼は衝撃と共に無敵であったアルビオン艦隊に対し不安を抱くことになった。
トリステインからもたらされたその貴重な情報は、「アルビオン艦隊はトリステイン空軍を文字通り全滅させ、タルブに橋頭保を築くべく三千の兵を上陸させたまでは良かったが、その後、背後から艦隊の奇襲とも言える襲撃を受け壊滅した」というものだった。
一度陸に上がってしまったフネが上昇するには時間がかかるだろう。そしてそこを上手く狙われたとするのであれば、タルブ村の損害を無視するようなかなりの戦術家がいたか運が悪かったかのどちらかだろうと考えた。
しかし、その艦隊がこの侵攻作戦にも参加していたとするのであれば、そしてただ運が良かっただけでなければ今回も何かしら手を打ってくる可能性がある。
しかも、今回予想されている艦隊決戦は戦列艦だけでも1.5倍の数を相手が有している状況だ。相手側は兵や物資を運ぶ輸送船を守りきる必要があり、こちらは一度負けたとは言え最強を誇っていたアルビオン艦隊だ。悪くない状況に思えるが、不安はある。
そして、間の悪いことに彼の指揮する軍に預けられた竜騎士はたった一小隊三名だけであった。この数は最少であり、ギリギリ伝令として使える数であった。もっと数が多ければロサイスとの連絡を密にすることが可能だったのだが、ロサイスにたどり着けば近くに六十の竜騎士がおり、首都や主要都市の警戒にも竜騎士は必要なため軍に同行する竜騎士の数が削られたのだ。
「ご苦労、戻りたまえ。副官、竜騎士をロサイスへ飛ばせ、艦隊とロサイスの状況を知らせたし」
伝令からの報告を吟味した結果、ホーキンス将軍はロサイスへと竜騎士の伝令を送るという決断を下した。副官はそれを受け、竜騎士への伝令を側付きの伝令に伝えると、側付きの伝令は復唱後、馬を走らせた。
しかし、行軍を辞めるという決断はしなかった。不安に駆られて伝令の竜騎士を飛ばすのが将軍としてのギリギリの矜持であった。不安なので進軍停止したところで、もし何事もなく、連合軍の上陸阻止に間に合いませんでしたでは済まされない。
そして、アルビオン軍の行軍は続く事となる。
時間は少し戻る。現在ブリッジにはアマ・デトワール提督や士官、そしてブリッジクルーのほかに、本来クロアを始めとした客人を招くために設置されているテーブルにはマチルダとシエスタがついている。
ティファニアとマチルダはレジュリュビの二人部屋でデトワールの訪問を受けた。そして、マチルダはぜひブリッジで戦闘の様子を見るようにというカスティグリアの意向を聞かされた。特に強制と言うわけではなく「拒否しても構わないが、今後のためにもカスティグリアの戦力を見ておいて欲しい」という事をクロアが言っていたと聞いてマチルダは快く了承した。むしろ、マチルダにとってカスティグリアの戦力を確認できるのは渡りにフネであった。
しかし、ティファニアや孤児たちには見せる気はさらさら無かったようで、
「ではティファニア嬢は孤児たちと一緒にいていただいた方が良いかもしれませんな。不安になる子供も出てくるでしょうし」
と、デトワールは人好きするような優しい笑みで言った。ティファニアが軍隊を恐れ、戦争を恐れているのではないかというクロアの心遣いだと感じ、ティファニアはマチルダをチラッと見て彼女が微笑みながら頷くのを見て、それに甘える事にした。
ただ、モンモランシーは自分がクロアの看護を引き受け、シエスタにはブリッジに上がるマチルダの話し相手や紅茶を出すよう言い付けた。シエスタが看護をし、貴族であり婚約者でもある自分がクロアの代わりにブリッジに上がるのが自然であり、義務でもありそうではあるが、戦闘が始まってクロアの容態が変化した時、看護を請け負ったシエスタが水メイジを探して右往左往した挙句、諸侯軍の水メイジを割くよりも自分がいた方が効率的だと感じたからだ。
モンモランシーがシエスタにその事を話すと、シエスタは少し寂しそうな笑顔を浮かべて請け負った。
シエスタの案内でマチルダがブリッジに上がると、まずそのセキュリティの多さに驚いた。扉の前に警備の者がいるというわけではないのだが、一つ扉をくぐるのにマジックアイテムによる承認と目的を告げるのだ。そして、いくつか扉をくぐるとようやくブリッジへとたどり着き、その広さに再び驚くことになった。
平民であり、学院のメイドとして雇われていた自分より年下の少女が、勝手知ったる自分の部屋のようにマチルダをブリッジに案内し、そして、艦長席の隣に設置されたテーブルへとマチルダを案内する様を見て、マチルダはこっそり自分の立場がよくわからなくなっていた。
確か元王弟の大公に仕える上級貴族の娘ミス・サウスゴータで、トリステインで名を馳せた盗賊『土くれ』のフーケで、最高峰とも言われたトリステイン魔法学院の元学院長秘書のミス・ロングビルで、現在はテファの母親代わりでクロアの協力者のマチルダだったはずだ。
そう、けっしてクロアの
まぁ今さらか……。とマチルダは一人で納得した。大体カスティグリアが関わってから常識というものが怪しくなってきている。これからカスティグリアの力を借りてテファを守っていかなければならない。そう、もはや一つ二つ増えたところで驚いている暇はないのだ。
このウェストウッド村のすぐ近くにいつの間にか作られていたマストも帆も甲板も見当たらないどちらかと言うと要塞に見える白亜の建造物をフネと言い張ったり、そこに並ぶ戦列艦や私らを迎えにきた竜たちがカスティグリア諸侯軍のモノだったり、驚くのはいいが出来るだけ早く受け入れて慣れていくしかないのだ。ふざけるなとも思うが慣れていくしかないのだ……。
そんなマチルダの葛藤など関係なくシエスタはマチルダの前にティーソーサーとカップを置き、紅茶を入れた。すると、「シエスタ嬢、出来れば私にもいただけないだろうか」というちょっと高い位置にある艦長席からデトワールの笑顔の要請があった。シエスタは「かしこまりました」と笑顔で応えるとティーカートの上で入れたあと、ティーソーサーを持ってデトワールに渡した。
「軍艦とか言ってたのに紅茶……」となにやらブツブツつぶやいているマチルダとは対照的にデトワールは紅茶の香りを楽しみ、一口含んだあとソーサーをタルブ防衛戦後に必要に迫られて艦長席に追加された紅茶置きに置いた。デトワールに紅茶を飲む習慣があったわけではなかった。
その紅茶置きはデトワールがシエスタの淹れた紅茶を飲んで以来、「これは作戦上必要な物である」と言い張り、カスティグリア研究所にねじ込み、追加された物だ。見た目は手すりの外側にお盆のような物が付いているだけなのだが、これに篭められた感情はある意味狂気に近い。どんな激戦でも紅茶をこぼすことなく終えられるというカスティグリア研究所とデトワールの自信と信頼の表れなのだ。
デトワールが充足感に浸り、マチルダが葛藤を続け、そんな様子を意に介さずシエスタが自分の紅茶を入れマチルダの隣に座ると、上空に旋回待機している風竜から通信が入った。ついにアルビオン三万の兵を捉えた瞬間だった。
風竜を降ろし、地上制圧のために連れてきた兵のごく一部が相手の動向を窺う役目を引き継ぐことになる。アルビオン軍はレジュリュビから約三十リーグの地点にいるようだ。
デトワールあらかじめ指示していた内容の命令を下しながら、これから始まる作戦プランの概要と共にカスティグリアが封印まで掛けて自分に渡した考えを思い返す。
シエスタ嬢に連絡を受け、軍艦には不釣合いなクロアの寝室を訪ね、モンモランシー嬢からクロア殿の容態を聞いた時、こんな状態になることが予測されつつも戦場に出向いた彼に尊敬の念を抱いた。そして、何も出来ないと憤りを感じていたであろう彼に演説を依頼し、書き上げた後に彼の流した涙が私の心を強く打った。さらに彼が演説文を悩むことなくあっさりと書いた事に、自ら導きたかったであろう無念も伺えた。
そして、彼の部屋を辞し、艦長室へと戻り、以前クラウス殿から直接手渡された開封条件付きの命令書を手に取った。これはクロア殿の病状が悪化し、指揮を取る事ができず戦略的に問題が起こりそうな場合に、モンモランシー嬢から許可を得てからようやく開封が許されるという手間のかかった命令書なのだが、中身が気になりつつもまさか本当に開封する事になるとはあの時は思っていなかった。
実際作戦を立てる段階である程度の情報は頂いていた。しかし、あそこに書かれていたのは終戦を見据え、その時に何が必要だったかを先に考えておくというものだった。確かに、細かい作戦を立てるだけであれば戦略面を考えるための情報と自分に預けられる戦力を示していただければ問題ない上に、戦うため意味は私の想像の範疇だろうと考えていた。
命令書と銘打ってはいたが、なんというかアレは命令書と言っていいのか疑問の残るモノだった。確かに文面だけを見ると聞いていた内容を捕捉し、明確な戦果目標が追加されただけだのモノだった。しかし、その戦果が必要な理由を事細かに分析すると、どう考えてもアレはこの戦争を主眼に置いているわけではなく次の戦争のため、いや、未来永劫続いて行くであろう戦争に対応するためのモノだったのだ。
戦後交渉を有利に進めるための戦略的な目標くらいならまだ予想の範疇だったのだが……。
そして、それは「不安定な未来のための布石であり、理想を実現するために一人の人間が考えただけの稚拙な案である」と締めくくられていた。筆跡を見たところクロア殿の書いた物だとわかったのだが、そこに少しの気弱さが見え、そしてカスティグリア公爵やクラウス殿がその気弱さを補うための努力をいとわない理由がわかった気がした。
それを読んで共感してしまった私はようやく彼らと同じ志を共に出来たのだろう。そして、カスティグリアの外で生を受けた私が彼らの信頼を得てカスティグリアの人間として認められ、カスティグリアの人間に生まれ変わったのだと実感した。
「提督、全軍準備完了しました」
士官の一人がそうデトワールに報告すると、デトワールは「うむ」と深く頷き、クロアの書いた羊皮紙と全軍へと直に通達するためのマジックアイテムを手に取った。
「カスティグリア諸侯軍、アマ・デトワール提督だ。本日、真に残念ながら最高指令官殿はご病気で伏せっており、ベッドから出れない状態だ。共に
レジュリュビの中だけでなく、近くにいる全てのカスティグリア艦に繋がり、艦内に備えられたマジックアイテムから流れるデトワールの硬い声色に諸侯軍の船員や竜騎士は動揺を隠せないでいた。しかし、続くであろう言葉と傾注という言葉に声を発する者はいない。
「クロア・ド・カスティグリアだ。カスティグリア諸侯軍の家族であり、戦友であり、選びぬかれた精鋭諸君。この大事に
いつも自分を俺と言うクロアが文章では私と呼称する事に対し、少し違和感を感じつつもデトワールは自分を褒める演説を自分で読まなければならないという事にむず痒さを感じた。この辺りは相談して変更してもらえばよかったと思いつつも続けるしかない。
「さて、これから戦友諸君が赴く戦いはアルビオン三万の兵を相手にするものなのだが、これまでの戦いを勝ち抜いてきた戦友諸君にとって、むしろ負けることの方が難しい戦いであると断言せざるを得ない。しかし、この戦いにおける私の望む勝利を親愛なる戦友諸君らがもたらしてくれると言うのであれば少々酷な事を命令しよう。」
ご丁寧に「一拍置く」と注釈が書かれた演説文を丁寧に保持しつつ、デトワールは少し言葉を出す障害を感じ、乗り越えるべく自然と一拍置いた。
「殺せ。三万の屍を大地に晒せ。誰もが目を背けるような光景を私は望んでいる。未来永劫語り継がれるような虐殺を私は望んでいる。」
自分の声が硬くなるのを感じた。ここまで誰の誤解も招かぬように殺す事を目的とする軍事命令は珍しいだろう。実際デトワールはこれまでの軍人生活の中で聞いたことは無い。その聞いたことの無い命令を代理とは言え自分が口にするのが少し奇妙だった。
同じく隣で聞いていたマチルダは驚きを隠せず紅茶から艦長席へと目を移した。しかし、最初から艦長がクロアの演説文を読むのを見ていたシエスタは特に驚いた様子はなく、目をキラキラさせているだけである。彼女にとって戦うという事は相手を殺し、殺される覚悟が必要な事をクロアの決闘騒ぎで刻み込まれていた。
「諸君らの中には彼らと同じ境遇の者もいるだろう。耕す土地がなく、店を開く金がなく、家族を養うために軍人になった者もいるだろう。愛するカスティグリアの家族達を守る為、自らの名誉の為に軍人になった者もいるだろう。そして、諸君らがカスティグリアの軍人となった今、みな志は同じだと私は考える。
これから戦う三万の兵のうちのほとんども諸君らと同じ経歴だろう。しかし、諸君らと彼らとでは大きな違いがある事を覚えておかなければならない。
我々は代々カスティグリアという土地で一丸となって生き抜き、カスティグリアの平和を守るという大儀の下に集った。彼らはどうだろうか。聖地奪還という大儀の下に集ったのだろう。しかし、行った事はブリミル教の認めた王を打ち倒し、そして、同じくブリミル教の認めたトリステイン王国に牙を剥いた。
―――そう、彼らが行った事を鑑みれば、ただの盗賊集団となんら変わらないのだ。」
確かに、とデトワールは思う。そして、兵達が持つであろう疑問を称えながら潰していく手腕は見事としか言いようがないだろう。過去二回のクロアの演説を間近で聞いていたが、スッと心に入り媚薬のように心を溶かす言葉を、瞳を怪しく輝かせ、少しオーバーな演劇調で口にし続けるクロアを思い浮かべると、今まで聞く側であり、今彼の言葉を口にするデトワールは少々恐ろしさを感じた。
「我々はカスティグリアのため、逃亡も敗北も許されない。我々の後ろには我々を信じ、平和を信じ、我々というカスティグリアの尖兵を支える領民達がいるからだ。しかし彼らはどうだろうか。自らの王国を欲のために食いつぶしたような連中だ。負けが込み始めれば再び反旗を翻し、脱走や投降や亡命をし、そして、再び戦争が始まれば喜んで参加し、略奪を、蓄財を、そして勝ち馬に乗り地位を得ようとするだろう。
そのような破廉恥な相手に対し、我々が望む平和を手にするにはどうすれば良いのか、私は常に考え続けている……。」
デトワールは先ほど読んだ命令書と銘打たれた資料の一部を思い浮かべた。
『戦は基本的に数の多い方が有利であり、トリステインはガリアやゲルマニアに比べ、国土と人間の数がはるかに少ない。ロマリアも領土は小さいが、ブリミル教徒という潜在的な自国民を持っている。つまり、トリステインはアルビオンも含め、ハルケギニアにある大国の中では最弱と言えるだろう。
そして、カスティグリアはそのトリステインのいち領地でしかない。そんな自国や領地を守ろうとしても道はそう多くない。その少ない道の中で、トリステイン王国がさらに戦争に巻き込まれない平和な時代を築くのはかなり難しいことだ。
技術はカスティグリアが覆した。しかし、技術だけでの競争ではすぐに追いつかれ、追い越される可能性がある。ならばその圧倒的な技術力があるうちに、相手の数を減らせば良いのだ。』
そこには“カスティグリアは防御に重きを置く”という平和的な方針に隠されていた狂気とも言える真意が書かれていた。冷めた目で自領土を分析し、ブリミル教やブリミル教の総本山であるロマリアすら敵性であるとみなす異常性。若さ故の単純さと残虐さ、そして本人の虚弱さ故だろう解決への最短距離を望む危うさと狂気を認めた。しかし、その狂気を肯定し、危うさを補強するカスティグリアと共に歩むと決めたデトワールには、今までにない意思の強さが宿ったのを感じた。
「そして、一つの手段を実現できる機会がやってきた事を私は確信した。そう、残虐に殺し、一方的に殺し、戦ったことに対する名誉も人としての尊厳もなく野に屍を晒す屈辱を与えればいいのだ。カスティグリアが関わると途端に戦での死者が増え、容赦の無い反撃が行われると魂の奥底まで刻み込めばいいのだ。そんな欲すら吹き飛ぶような事が起こるのならば名誉のためなら死ぬ事すら恐れない貴族ですらカスティグリアとの戦いを忌避するようになるだろう。
カスティグリアの平和のために、残虐で悲惨な、語ることすら苦痛を伴う地獄のような戦争をしなければならない。将来参加するはずの“おいしい戦争”を望む人間を減らさなくてはならない。戦場に立つのはもはや護国のために立つ軍人と、地獄を心から愛する狂人だけにしなければならない。」
ああ、とマチルダは納得した。実際にラ・ロシェールでアグレッサーの襲撃を経験しているマチルダにとって、それはとても説得力のあるものだった。そして、あの悪夢を思い出し、頼みもしないのにあの悪夢が規模を大きくして目の前で再現される事を確信した。
―――確かにテファには見せられないね。むしろ、この演説も聞かせたくはないところさ。
しかし、実のところカスティグリアの人間は、人を殺す事に関してクロアが懸念するほど忌避感を持っていなかった。彼らのほとんどが貴族位を持っていなかったメイジや平民であり、貴族のちょっとした気まぐれや、盗賊やモンスター、凶作や流行り病などによって簡単に命を失う世界で生まれ、生活してきたのだ。そんな世界で三年間濃密な戦闘や人殺しの訓練を行い続けていた彼らにとって戦場というのはようやく厳しい訓練が報われる活躍の場所なのであった。
そして、そんな忌避感を持たない兵に直接命令を下す士官に対してクロアの行った理由付けは
ただ、クロア自身がすっぱりと忘れていた二人には悩みを呼び起こすものだった。最終防衛ラインという名目で艦隊から十リーグほど離されて配置されたタケオの一室でルイズは悩んだ。
戦争は、そして戦いは貴族の名誉が問われるものだ。ルイズは虚無の系統に目覚めた事により、貴族としてアンリエッタ女王陛下とトリステイン王国のために家族の反対を振り切って戦争に参加した。しかし、この演説のあと生み出される戦場には名誉が存在しないとクロアは言う。カスティグリアの攻撃を受ける敵軍は、名誉もなく、ただただ殺され、無様に屍を晒す。ルイズはそんな死を想像した事は今まで一度もなかった。
でも……、とルイズは思う。でも、死よりも名誉が大事だという事はクロアも確かに言っていたし、実際彼の決闘での容赦の無さを何度か目にした。普段は病弱であの“おしゃべり剣”も持ち上げられないような彼が、こと名誉に関係するとあっさりと杖を抜く。
わたしが今恐れているのは名誉の伴わない戦死? 死んでも辱められるという恐怖? それを生み出そうとするカスティグリアが怖い……。でも彼はわたしの名誉を、女官としての役目と虚無が必要な場所を用意してくれた。それに将来わたしがいるべき場所の助言もくれた。うーん……。
ルイズが沈黙と共に思考の海に沈んでいる頃、サイトも同じく悩んでいた。本当にそれで平和が実現するだろうか、と……。
彼のもといた世界、つまり地球でも過去二回の世界大戦が起こっており、彼の住んでいた日本も過去大勢の人間が軍人、民間人問わず亡くなった。そして、冷戦へと突入し、拮抗状態がある程度続き、散発的な戦争が起こるのだが、第二次大戦後の日本は平和だった。
恐らくクロアが目指す平和というのはソレなのだろうという見当はつく。このハルケギニアというファンタジーの世界で日本の平和を目指すと言うのも変な話だなとも思いながら、少しクロアの評価を上げた。
でも……。とも思う。そう、サイトから見ると、カスティグリアの立ち位置はどちらかと言うとアメリカやソ連と言った大国ではないかと。もし、その立ち位置であれば今後戦争を続ける事になるはずだと……。
―――以前コルベール先生がクロアと平和についての話をしようとしたときクロアは「まだ使い魔君の方が理解を示してくれるかもしれない」と言っていた。歴史に自信があるわけじゃないけど地球の歴史が参考になるかもしれない。クロアと、いやコルベール先生と平和について話してみるべきか? あぁ~、歴史勉強しときゃよかった。
そんな事を考えつつサイトは頭をガシガシとかいた。
「ああ、親愛なる戦友諸君。どうも私は文字を書き始めると止まらないという悪癖を持っているようだ。長々と思うままに綴ってしまったが、まぁこの戦いは本来パンと一緒に出されるスープのような物だ。そして、今までの戦闘を乗り越えてきた諸君らには少々手応えがないかもしれんが、本来スープというものは総じて手応えがないものだ。
しかも、気の効かないカス共が用意したスープだ。残念ながら輸送用の皮の容器に入れられており、我々で封を切る必要があるらしい。よって、
そして、ご丁寧にもスープは飲みきれないほど大量に用意してくれたようだ。なに、この場で遠慮は無用だとも。このアルビオンの大地という皿におのおの好きなだけ注ぎたまえよ?
ああ、諸君らの中には不味いアルビオン料理のスープに不平を漏らす者が数多くいると思う。しかしだ、諸君。そんな不味いアルビオン料理でもそこいらにいる獣なぞは喜んで食してくれるだろう。博愛精神溢れるカスティグリアの戦友諸君。不味いアルビオン料理とはいえ、たまには自然に住まう獣にも施しなどをしてみようではないか。折角出されたのだ、獣たちのためにも飲み切れるかどうかなど気にせず気前良く注ぎたまえよ? ―――さぁおめしあがれ? 以上だ。」
そして、続いた軽い演説。コース料理になぞらえ、クロアがアグレッサーから拝借し続けるシャレの効いた例えを聞き、すでに臨戦態勢で張り詰めていた艦隊が沸いた。
「さて諸君、最高指令官殿が安心してお休みできるよう、そして回復し、彼が我々の上げた戦果をお聞きになられたときにお喜びいただけるよう、我々は最善を尽くすべきだと考える。我らが最高指令官殿のご所望だ。諸君、地獄を作るぞ!」
頬を吊り上げ嗤いながら締めくくったデトワールに釣られるように、デトワールの姿が見えていないにも関わらず艦隊の兵員は総じて同じ嗤いをその顔に貼り付けた。
カスティグリア諸侯軍から三十リーグほど離れた地点ではようやくアルビオン軍の三匹の風竜が偵察と伝令の任務を遂行するべく飛び立った。三万のアルビオン軍は移動のため縦に数リーグという長い列を成していたのだが、それが致命的な対処の遅れを取ることになる。
前衛の捜索騎兵隊がカスティグリアの竜を確認し、隊列の中央後方に位置するホーキンス将軍のところに伝令を送るのに十数分かかり、さらに後方の輜重隊の近くに位置する風竜に命令を伝えるのに十数分……、その間にカスティグリア諸侯軍は戦闘準備と演説を終えてしまっていた。
後方から高速で飛んでいく三匹の風竜が、点のように小さくなり、三つの点が遠くなるにつれ、ほとんど一箇所に集まるように見えた。馬上にいたホーキンスがその光景を見ていると、ふと、遠すぎるため目の錯覚かとも疑うような事が起こった。急にバラけたと思ったら下から六つの点が打ち上げられるように上がっていき、重なったと思ったら全ての点が丘の向こうへと消えた。
しかし、ホーキンス将軍にとってその奇妙な光景を早急に確認する術はほとんどない。楽観的に考えればロサイスにいるはずの六騎の竜騎士がこちらへと向ってきており、合流し、ロサイスへ向ったとも考えられるが、そんな都合の良い解釈は少々難しい。
ホーキンス将軍は信じられないと思いつつも一つの正解へと近づく。そう、すでにロサイスは落ちており、ロサイスの近くにいた竜騎士たちも壊滅しており、あの丘の向こうに連合軍が待ち構えているのではないかという憶測がじわりと存在感を増したのだ。
だが、そんなことがあり得るのだろうか。ホーキンス将軍は考える。敵戦力が六万という情報から兵の上陸だけでも一日二日かかるはずであり、輜重隊や物資の揚陸はさらに時間がかかるはずだ。そして、防御を固めずに物資の揚陸を行い、あの丘向こうまで前進して来ているとしたら連合軍は最低でも一週間近く前にロサイスにたどり着いている事になる。
しかも、アルビオン空軍の戦列艦や六十の竜騎士が残らず刈り取られたというのもありえないだろう。タルブ侵攻作戦のときとは違い、空軍に油断はなかったはずだ。上陸中に襲われるという奇襲がない限り、負けたとしても撤退することは出来るだろう。それに一週間も情報が途絶していればさすがに気付くはずだ。
そして、ホーキンス将軍は一番現実的とも思える考えに至った。最悪の場合、艦隊および竜騎士の半壊まではありうるだろう。そして、彼らは撤退中、もしくはロサイス近郊で我々の軍を待ち、同時に仕掛ける事も考えられる。
恐らく連合軍は連合軍の中でも足の速い竜騎士やフリゲート艦をロサイスの周囲に偵察を出しており、運悪く先ほどの竜騎士の小隊が奇襲を受け、落とされたと考えるのが妥当ではなかろうか。いたとしても数隻のフリゲート艦と先ほど目にした六騎の竜騎士だろう。
そして、こちら側に戦列艦や竜騎士が残っているのであれば彼らの援護を受けてロサイスまでたどり着き、揚陸中の無防備なところを襲うことは可能だろう。しかし、連携が取れず、フリゲート艦とはいえ空から一方的に砲撃を受け続けると軍が壊走しかねない。
「副官、どうやら丘向こうに
恐らく同じ結論に達していたであろう副官も苦い顔をしながら肯定した。
「そうですな。まだこちらの空軍戦力も残っていると考えられます。彼らを探しつつ相手の動きを窺いましょう。」
「うむ。少々早い休憩だが、斥候を出すことにしよう。全軍停止! 伝令!」
その判断が正しかったのか、もしくは他に手段があったのか、アルビオン軍の誰もが予測出来なかったであろう。全軍停止の命令が復唱と共に全軍に伝わりきり、軍が停止すると、丘向こうに隠れていたであろうフネが数十隻、そして竜と思われる点が同じく数十騎上昇するのが見えた。
はたしてそれはアルビオン軍が停止したのを見て、自らの存在が悟られたと判断したカスティグリア諸侯軍の艦隊である。戦列艦二隻とタケオ、そして半数の小型艦を防衛ラインに残し、アルビオン軍と距離を詰めるべく上昇し、蒸気機関を発動させ全速力で迫っていた。
それでも双方の間には約三十リーグという距離がある。その距離を走破するには蒸気機関を積んだカスティグリア諸侯軍でも四十分から五十分かかる。そこで、カスティグリア諸侯軍は竜部隊を先行させる事を選んだ。
竜による爆撃では艦隊がたどり着く前に壊走すると判断したデトワールは風竜隊と火竜隊に囲い込みつつ艦隊の到着を待てという命令と共にいくつかの命令を下した。そして、錬度の高いアグレッサーにはまた別の任務が与えられた。
しかし、四十分という長い時間、竜部隊が三万の兵を囲い込むのは難しいように思えた。そして、現実的に可能かどうか、被害や疲労はいかほどの物かを計りに掛け、囲い込みを行う竜部隊は極力無理な戦闘は控え、温存するようにと命令されている。
デトワールにとってこの距離でこちらの存在が露呈したのは不運としか言いようがない。相手はギリギリ風竜の見える距離で竜を飛ばしたのである。もう少し近ければ艦隊での囲い込みが行えたし、もう少し遠ければこちらの存在が露呈することもなかったに違いない。
こんな時、最高指令官がいらっしゃればこちらの位置が露呈することなくあの小さい使い魔が敵を発見し、さらに引き寄せられたに違いないだろうと思うと、今までの圧倒的な勝利にはやはり最高司令官殿の神がかり的な索敵が大きかった事を実感せざるを得なかった。
そして、もはや間違いなくこちらへ向うべく存在を
一抹の不安を抱えながら、そして、味方の残存艦隊である事を願いながら望遠鏡を覗いたホーキンス将軍は貴族としての矜持と将軍としての冷静さを失いかけた。
バカな!!! バカなバカなバカな!!! なぜこんなところにトリステインの戦列艦がいる! なぜこんな大戦力がこんなところにいるっ! しかも何だあの巨大なフネはっ!?
「ぬ、うむぅ……。」
ホーキンス将軍は内に秘めた混乱を唸るだけに止めることに成功したが、同じく望遠鏡を覗いていた副官や士官は大あらわとなった。
「将軍! 即時撤退を愚申します。」
「将軍! あの戦力に対抗できるとは思えません! 即時投降を愚申します!」
即断し、ホーキンス将軍へ進言した二人の士官は明らかに恐怖を顔に浮かべていた。そして、ホーキンス将軍はその恐怖で混乱した二人の士官を見て僅かに残っていた冷静な部分が戻ってくるのを感じた。
確かにあの戦力に対し、抗戦するというのは無謀だろう。しかし、撤退は可能だろうか。ホーキンス将軍は再び望遠鏡を覗き、一つの救いとも思える点に気付いた。
ふむ。まだ展帆しておらず……か。急造された錬度の低い艦隊なのだろう。そうなるとフネの速度もそれほど速くないかもしれん。しかもあちらにとっては向かい風。間切りながら進むか風メイジ頼りになるだろう。風が変わることなくメイジが力尽きれば移動速度はそれほど変わらないはずだ。
「落ち着け。慌てるな。全軍転進準備!」
「しかし、将軍、ある程度部隊を残すべきかと存じます。」
同じく副官も何とか冷静さを取り戻していた。ハルケギニアでのフネの速度は船種によって変わるが、快速船でも時速十三リーグほどであり、武装した戦列艦や小型艦、輸送用のガレオン船などはさらに遅くなる。そして、行軍による歩兵の移動速度は五リーグほど、騎兵のみの移動速度は二十リーグほどになる。
そう、ホーキンス将軍と副官はフネとの速度差だけを鑑みればただの行軍速度であっても六時間ほどの猶予が見込めることに気付いたのだ。さらに輜重隊への人員を増やせばそれだけ急がせる事も可能だろう。長くつらい移動になるが、戦力と物資を出来る限り残しつつサウスゴータまで戻る事が出来れば城壁が守ってくれる上にロンディニウムに救援要請を送ることも可能だろう。
「うむ。幻獣隊と騎兵隊を
そして、追加でサウスゴータまで先頭を行くことになる輜重隊とそれを補佐するよう徴兵や志願で集まった平民中心の歩兵部隊を中心とした部隊に伝令が送られた。他の部隊は輜重隊の後ろを先行してくるであろう竜から守る事になる。
ホーキンス将軍を中心とした軍の指揮官が集まる場所から伝令が散り、アルビオン軍は撤退に向けて再び騒がしくなった。そして、軍が移動を開始するまで、その後の対処を検討しつつ、サウスゴータへの受け入れや防衛のための伝令を誰に任せるかという議論を行っていたところ、銃の発砲音と多数の魔法が炸裂する音が轟いた。
早すぎる! ホーキンス将軍は敵の竜の速さに驚き、その竜騎士隊の戦力を把握するため銃兵部隊の方を見やると、すでに前衛を突破し、彼から二十メイルほどの距離に迫った低空を高速で飛ぶ風竜の部隊があった。
―――それはカスティグリアの宝。選び抜かれた六人のメイジと六匹の風竜で構成されるその部隊はカスティグリアの自慢でありハルケギニア大陸最強を目指し続ける狂気の集団。その理不尽な存在に出会った者は敵も味方も畏怖を覚えるという……。そんな
『先行し、敵中央を突破し、損害を受けることなく敵指令官を捕獲せよ。』
常日頃から命令の難易度に疑問を持っていたアグレッサー部隊の隊長にとっては「ようやく見せ場がやってきた」くらいの認識しかない。それに、クロアが見つけたアルビオン貴族は彼らが運んだのだ。ゲストとして扱われていた彼女らが、初めてカスティグリア諸侯軍を目にするであろう彼女らが自分達の戦いを見ているはずであると確信している隊長はさらに気合が入っていた。
敵部隊の前衛部隊直上まである程度の高度と出来る限り速度を稼ぎ編隊を密にしていた。密に組まれたトライアングルを保ったままさらに速度を限界まで上げて急降下に入ると、六匹の竜は突入前に目星を付けた敵指令官と思われる人物へ突っ込んで行った。
アルビオン軍の銃兵やメイジはアグレッサー特有の速度と彼らが起こした暴風に狙いを反らせ、標的に着弾させる事ができなかった。そして、そのたった一度のチャンスを失った銃兵とメイジが次弾の準備を行う頃には後発の風竜や火竜が迫ることとなる。
ホーキンス将軍はアグレッサーを目にし、思考するよりも早く彼の長い軍人生活で培われた反射行動が己の軍杖に手をかける事に成功した。しかし、彼が出来た抵抗はそれだけだった。
アグレッサー隊の放った風の魔法が彼らを襲い、下から吹き飛ばされるような暴風に耐え切れず、ホーキンス将軍とその近くにいた副官や数人の士官が巻き上げられると、アグレッサー隊の愛する風竜の足に捕まえられ、
アグレッサーは自らが起こし、敵軍の指揮官達を吹き飛ばした爆風すら利用して一気に高度を上げて銃の射程外へと退避すると、旋回しながら作戦成功の報告を行いレジュリュビからの指示を待つ。
そして、彼らが長い時間をかけて育てた竜部隊の活躍をはるか上空から見ながら編隊の距離を広げた。風竜隊が囲いを作るべく敵軍の両サイド上空へと展開していくのが見えた。眼下には火竜隊が同じく敵軍という異物を避ける水の流れのようにキレイに分かれ、挨拶がてらのブレスを敵軍の外縁に放つ姿が見える。
意識を失っていたホーキンス将軍は火竜隊の放ったブレスの爆音で気が付き、竜に手荒く確保された事でへし折れた両腕とわき腹から伝わる激痛を味わった。しかし、竜の足に捕まえられたまま地上を見たホーキンス将軍はそのような激痛などよりもっと酷い物を見てしまった。
空から見るとよくわかる。風竜たちは高度を維持しつつ
逃亡すら難しいであろうあの
―――私たち以外を見逃すつもりはないということか! この数の人間を容赦なく殺すというのかっ!
そう、まだ艦隊は戦場に到着していないのである。
アルビオンの地上軍は混乱の極みにあった。しかし被害はまだ限定的であり、混乱で暴走した馬による被害やいち早く逃亡という選択肢を選んだ兵が恐慌を呼び、周りに感染させ逃げようと必死になる隊が現れ始めた程度だった。だが、隊列を抜けることに成功した人間はあっという間に風竜の放ったブレスで人間としての形を失い、それも何とか回避した人間は総じてマジックアローによって地に伏した。
そして、竜に対して銃や魔法を撃った隊は火竜隊による苛烈な反撃が行われ、時間が経つにつれ、反撃する力が削がれていく。しかし、火竜隊に与えられた最優先目標は実のところ騎兵や銃兵、そしてメイジなどではない。
銃兵隊やメイジの比較的近くにいた部隊が彼らの惨状を見やり、武器を捨て投降を示すように白旗や両手を挙げると、真っ先に火竜隊の一小隊が突っ込んでいき、その一帯が焼き払われた。火竜隊の最優先目標は白い旗
「ったく、メイジども、普段は威張りくさってるクセに何とろとろやってんだ? さっさと竜どもを追っ払え! クソッ!」
散発的に行われるアルビオン軍の竜への攻撃が続き、距離が遠い事で双方の存在を音でしか関知できていない兵は幸せだっただろうか。未だに無傷の連隊が多くあり、伝令で送られた命令通り輜重隊を急かせるべく移動する部隊も多かった。
「お、おい、あれ……」
「なっ、なんであんなのがこんな所に……」
彼らが見たのはようやく戦場へと到達した戦列艦と小型艦、そしてアグレッサーを収容したレジュリュビだった。捕獲された敵指揮官たちと共にアグレッサーがレジュリュビに収容されると、ホーキンス将軍は激痛の中、何とか声を出して降伏を申し出た。しかし、うざったいとでも言うように「提督閣下は今お忙しい。後にしろ」と捕縛の命令を受けているクルーにあっさりと言われた。
「提督閣下に降伏を伝えてくれ! 私はどうなっても構わない! 兵たちを助けてくれ!」
ホーキンス将軍は必死で他の人間やまだ近くにいたアグレッサーに訴えかけた。しかし、彼の訴えはことごとく無視され、ガンデッキクルーによって武装解除が行われ、水メイジによる簡単な治療を受け、捕縛された。
十隻の戦列艦が高度を落とし、比較的低い場所を悠々と進んでいき、逆サイドからは小型艦が少し離れて囲いを作るように展開していく。そしてレジュリュビは敵正面の上空から戦場を見下ろしていた。
ここに来てようやく本当の地獄が始まる。レジュリュビから見て左サイドに縦隊を組み一列に並んだ戦列艦から、完全に統率された砲兵によって右舷に備えられた大砲や機関砲が同時に押し出されると、一瞬戦場が静寂に包まれた。そして、その完全に統率された敵艦隊に魅入られたアルビオン軍はもはや夢でも見ているかのような錯覚を覚え、次の瞬間、肉片へと帰っていった。
次々と放たれる7.7mm機銃や20mm機銃は面制圧を行い、かつてアルビオン空軍がミョズニトニルンの協力によって手にした新型の大砲が遠い目標から順番に吹き飛ばした。止む事のない銃撃と砲撃は大量の死傷者と肉片と血煙を生み出し続けた。偶然伏せて初撃をかわした者も次の瞬間大地に血を吸わせる事となった。
運が良かったのか悪かったのか、初撃の標的範囲を逸れていた部隊は恐慌状態に陥った。失禁して動けなくなる者、這ってでも逃げようと試みる者、言葉にならない叫び声を上げ続ける者、すでに内乱によって戦争に慣れていたはずの降伏する事を叫び続ける部隊長や傭兵たち……。
しかし、すでに小型艦が竜部隊と合流し、虐殺のための囲いは完成してしまっていた。そして、彼らが全て大地に還るまで攻撃が止む事はなかった。平原という自然の美しさが人間の死体や肉片と砲弾や銃弾によって耕された荒地と化した後、最後はご丁寧にレジュリュビによる絨毯爆撃が敵部隊がいたと思わしき場所に徹底的に行われ、三万を誇ったアルビオン軍の壊滅と共にこの戦闘が終わりを告げた。
いかがでしたでしょうか。個人的にはマダマダ難しいしスキルが足りてない感が半端なかったです。なんというか、切り替え部分が上手く伝わってるか不安な仕上がりになってしまいました。
ええ、これが限界ですがっ!;;
今回はカスティグリアの純粋な力がどの程度なのかという事を書こうかなと思いました。ええ、ここに多くの犠牲になった方々へお詫び申し上げます。以下、犠牲になった方々(ドラ○エ風味)
メンヌヴィルイベントが消滅した!
コルベールのキュルケフラグがへし折られた!
アニエスのコルベール隊長発見フラグが消滅した!
アニエスの敵討ちイベント達成がハードモードに変化!
ホーキンス将軍のかっこよさが50さがった。
クロムウェルはこんらんした。
なぜかシェフィールドもこんらんした。
クロア「あ、幻獣は捕獲したかったかも。ほら、ハンカチの材料とかっ!」
そういえば、マチルダさんは気にしていましたが、普通に帆船や軍艦でも紅茶をティーカップで飲む事はよくあったと思います。映画マスターアンドコマンダーでも戦闘前に紅茶を飲むシーンがあります。ええ、ソーサーを手に持ってますが! 戦列艦でも普通にテーブルで食事もしますしね。まぁ戦闘中でも紅茶を嗜むのはレジュリュビだけかもしれませんが^^;
帆船の操船方法に関してちょっと出てきましたね。実は私、詳しくは知りませんっ! 私の帆船に関する知識の出どころは海外の海洋物の小説(ジャック・オーブリーシリーズ、ホーンブロワーシリーズ、トマス・キッドシリーズ)や大航海時代(ゲーム)、そして帆船模型(骨組みだけ組んで説明書読んだだけで手付かず)やその他関連本なんかです。
帆船モノの小説なんかで出てくる「嵐なのに風下に岩礁が! タッキングだ!」しかし、タッキングが失敗すると座礁する危険性が~ みたいな緊迫感溢れる状況が結構好きでした。
おまけ。前半部分の続き。拿捕後のカスティグリア小型艦艦長さん。
「艦長はどちらかな?」
「吹き飛びました。サー。」
「ふむ。では副長はどこかね?」
「吹き飛びました。サー。」
「で、では、最先任の士官は?」
「士官は全員吹き飛びました。サー。」
「で、では、ううむ。そうだな。残った中で一番偉いのは誰かね?」
「はっ、船大工の自分であります。サー。」
「ど、どうしたら!?」
次回……、まだ何にも考えてません! まだ手付かずです! つ、続くよね?
あ、感想は常にお待ちしております。よろしくお願いします(ペコリ
次回おたのしみにー!
自分の作品なのに似た題名があったのに気付いたのでちょっとサブタイトル変更しましたorz 9/22