ソードアート・オンライン〜デュアル・クロス〜 作:阿良良木歴
2022年某日、
都内某所の静かな喫茶店で、二人の密会が行われていた。一人は知的な雰囲気がにじみ出る大人の男性。もう一人は、幼さが残るものの落ち着いた物腰の少年。
<今日の3時からいよいよサービス開始か>
<ああ。君のおかげだよ>
<そんなことない。ただお互いの利害が一致しただけだ>
<君が欲したメディキュボイドのことかい?医療系に造詣が深い君に任せただけの話だ。聞いているよ、メディキュボイドと君の手がけた薬剤のおかげで医療技術が数十年も進歩したと>
<それはアンタの技術のおかげだ。オレの知識だけじゃどうにもならなかった>
<それを言うなら私の方も君にはかなり助けられた。この場で改めて礼をいう>
<もういいだろ。無限ループになりそうだ>
少年は話を切るように、注文したコーヒーを啜る。その様子を見ながら、男はフッと頬を緩めた。
<βテストは楽しんでくれたかな?>
<もちろんだ。今日のサービス開始もかなり楽しみにしてるよ>
<それは良かった。あれは私の幼少期から夢を具現化したものだ。そう言ってもらえると素直に嬉しい>
<全力で楽しませて貰うよ。さてと、オレはこのあと用事があるからもう行くよ>
少年はコーヒーを飲み干し立ち上がる。財布を取り出し硬貨を数枚机に置き、出口に向かう。少年の背中に男が声を投げかける。
<願わくば、ソードアート・オンラインが君の現実にならんことを、ライガ君>
<……オレの退屈を壊してくれるなら、それもいいな。茅場さん>
振り返らず、少年は喫茶店を出ていった。
* * *
所変わって、神奈川県横浜港北総合病院。少年は清潔感溢れる白い病院内を歩いていた。隣には白衣を身にまとった男。男は興奮気味に少年に話しかけていた。
<君の薬剤は凄いよ!今までは完治不可能と言われていた病気のほとんどが、あの薬剤によって快方に向かっている。それも副作用が無いなんて!!>
<大袈裟ですよ。オレはただ、自分に出来ることをしただけです、倉橋先生>
男――倉橋はそれでも興奮冷めやらぬ様で、顔を常時緩ませながら目元に涙を溜めていた。
<謙遜はよしてください。少なくとも君のおかげで救われる命が4つもあるんだ>
<倉橋先生が担当の患者さんですか?>
<そうだよ。症状が末期になっているから完治には時間がかかるだろうけど、それでも生きることが出来るんだ!!>
<……そう言ってもらえると、自分のやったことが無駄じゃないって思えます>
<残念ながら、本人たちには症状が落ち着くまでは教える事は出来ないけれど、早く教えられるように僕も尽力するつもりだ>
<お願いします。それでは、オレはこれで>
<ああ。また何か力を借りるかもしれない>
<そん時はオレも全力で手伝います>
少年はリノリウムの床に靴音を響かせながら、去っていった。
* * *
「やっば!あと1分もねぇ!!」
少年は自宅に駆け込み、勢いのまま自室のドアを開ける。壁に掛かっているデジタル時計が指す時刻は2時59分。少年はベッドの上にセットしていたヘルメットの様な物――ナーヴギアを被り、横になる。タイミング良く3時を伝える時計の音が届く。少年は声を弾ませながら、異世界に飛び立つ魔法の言葉を叫ぶ。
「リンク・スタート!!」
作品紹介でも言ったように、ユウキが好きすぎて書き始めた作品なのでもう何話かしたら出てきます。
感想・批評などあったら、書いていただけると作者のやる気が上がります!
これからもよろしくおねがいします!!