ソードアート・オンライン〜デュアル・クロス〜   作:阿良良木歴

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黒髪の少女

キリトと別れて数日、ライガは第1層の東の外れに来ていた。目的は武器の入手とレベリングにあった。この近くのダンジョンにお目当ての武器が眠っている。また、ここら辺のモンスターはレベルが高い分、経験値と落とす金が他よりも多くレベル上げには最適だった。無論、ライガはここに来るまでにも十分にレベルを上げており、安全マージンも完璧に行っていた。

 

「ふぅ……。今日はこんなもんでいいかな」

 

時刻は真夜中近くの午後11時半。適度に狩つくし、リポップまでのインターバルもある為、拠点としている村に戻る事にした。月夜の道をライガは歩く。大きな満月と満天の星空を眺めながら、ライガをぼんやりと呟く。

 

「バーチャルっつっても、ここまで再現出来るもんなんだな〜。前よりクオリティ数段上がってるし。……ん?」

 

ライガは足を止め、耳を澄ます。そして、微かに聞こえる剣戟と悲鳴じみた掛け声。ライガは迷わず、その音がする方へ駆け出した。

 

 

* * *

 

 

「はあぁぁぁぁっ!!」

 

ライガが駆け付けた時、一人の少女が複数のモンスターに囲まれていた。少女の体には多数の傷のエフェクトが刻まれており、HPがギリギリであることを伝えていた。ライガは反射的に駆け出し、少女を守るように立ちふさがった。

 

「さがれ!回復アイテムは?」

 

「え?も、持ってない!」

 

「ちっ!じゃあオレの側から離れんじゃねぇぞ!!」

 

叫びつつ、ライガはモンスターを一体、また一体と切り捨てていった。そして数分後、全てのモンスターを倒したが、ライガのHPも赤よりの黄色まで落ちこんでいた。すぐに回復アイテムを二つ取り出し、片方を少女に投げた。

 

「あわわ!?」

 

「使え。そのままだと危なくて見てらんねぇ」

 

「えっと……あ、ありがと」

 

お礼を言いつつ、HPを回復し一息ついた少女をライガは観察していた。

黒髪の肩にかかるかかからないかぐらいの短髪。朱色の瞳は大きく、活発そうなイメージを与えてくる。が、それとは逆に肌は病的なまでに白かった。どこか矛盾を抱えた少女だとライガは漠然と感じていた。

 

「あの、名前教えて貰ってもいいかな?あ、ボクはユウキ!よろしく!!」

 

「……ライガだ」

 

素っ気なく返すライガに疑問を抱きつつ、少女ーーユウキは話しかける。

 

「さっきは助けてくれてありがとう!キミ強いんだね!!ボクびっくりしーー」

 

ユウキの言葉の途中でライガは、ユウキの胸倉を掴んだ。その瞳には強い怒りと悲しみが混ざりあっていた。

 

「なんであんなことしてたんだよ!一歩間違えば死んでたんだぞ!!」

 

「……うん、知ってる」

 

「だったら!尚更安全に行けよ!!回復アイテム多めに持ったり、パーティ組んだりさ!」

 

「……ボク今一人だから。仲間、置いて来ちゃったんだ」

 

ユウキの言葉で、尻すぼみに力を緩めたライガ。どこかで仲違いして、そのまま意地だけでここまで来たのだと悟り、ライガはやるせない気持ちになった。

 

「……どっか行くあてあんのか?」

 

「ん〜今の所ないかな」

 

困った様に苦笑するユウキを見て、ライガは気合いの入れた声を上げた。

 

「っし!んじゃあオレんとこ来い。拒否権は無しな」

 

「ほぇ?」

 

ライガの言葉にユウキは理解出来ていなかった。

 

 

* * *

 

 

村の外れ、そこの古びた宿に二人はいた。ライガはなんの気負いも無く、まるで我が家にいるかのように振る舞っていた。対するユウキは、借りてきた猫の様に縮こまっていた。

 

(あれ?なんでこんな状況になってるんだっけ!?)

 

未だに状況が掴めないユウキに向かって、ライガはバスタオルを投げつけた。咄嗟のことに反応出来ず、ユウキは顔でバスタオルをキャッチする。

 

「うわっぷ!?」

 

「さっさと風呂入って来い。お湯ももう沸いてるはずだ」

 

「お、お風呂!?」

 

驚きの声を上げるユウキとは裏腹に、何を当然のことをと思っているライガ。事実、ライガは結構な風呂好きで毎日入るのが当たり前だと思っている。

 

「そ、それじゃあ……行ってきます」

 

「おう。ゆっくりでいいからな」

 

ライガの言葉を背に受け、ロボットの様に固い動きのままユウキはバスルームに向かっていった。ユウキにはライガの考えている事が全く読めなかった。

 

(会って数時間の相手をいきなり宿に連れ込む!?しかも異性だよ!!何考えてんのさ?!)

 

軽いパニック状態のユウキを見て、ライガは首を傾げる。

 

(あんまり友達の家にお泊まりしたことがないんだろうか?)

 

だが頭に浮かんだ解決策はかなり的外れなモノとなっていた。が、それもすぐに切り替え、料理を作り始めた。

 

 

* * *

 

 

「「ごちそうさまでした!」」

 

ユウキの入浴中、ライガにラッキースケベ的なイベントが起こるわけでもなく、順調に夕食を食べ終えていた。

 

「こっちに来て、こんなにおいしい料理食べたの初めてだよ!」

 

「そりゃどーも。こっちの食いもんは、まんまじゃ美味くねぇからな」

 

もっとも、まだ第1層であり、食材も限られてる中では上出来というだけの話だった。

 

「明日はダンジョン潜んだ。早めに寝とけよ」

 

「えぇ!?そんなの聞いてないよ!!」

 

「まあ、今言ったしな。あ、ベッドはユウキが使っていいから。そんじゃま、おやすみ」

 

「ちょっと!ライガ!?……もう寝ちゃってるし」

 

起きている時の三白眼は鳴りを潜め、あどけない表情で眠るライガを眺めながら、ユウキは愚痴を吐く。

 

「いきなり連れてこられてこの仕打ちは無いんじゃないかな。そもそもボクだって女の子なんだから多少緊張してくれ無いと、なんか悔しいじゃん……」

 

途中からライガの頬を指先でつつきながら、憂さを晴らしベッドに潜り込む。

 

「おやすみ、ライガ」

 

最後の言葉に、誰も返事はしなかった。

 




ユウキの容姿に関しては、アニメでちょろっと出た部分と作者の独自解釈によるものです。

あまり好ましくない方もいるとは思いますが、ご了承ください。
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