IS大戦
~平成桜に浪漫の嵐~
第一話
「桜の兄妹、入学」
桜が咲き誇る季節、帝国華撃団・花組隊長の大神桜一郎と、その妹である大神桜花はIS学園に入学した。
賢人機関が世界中に真の1番目のIS操縦者である桜一郎を2番目の操縦者として公表したのが1ヶ月前、それからというもの、大帝国劇場には毎日の様に取材や日本政府の役人、世界中の政府の人間が訪れて、取材だの、是非とも我が国に所属してくれだの、色々と言って来たが、最初の段階で桜一郎は自分の所属する国は日本だと告げ、他所の国からの勧誘は全て断っていた。
勿論、日本に所属すると宣言してからは日本の自衛隊や様々な企業が専用機を造るから所属してくれないかと勧誘してきたが、その辺は賢人機関や天皇陛下の働き掛けで何とかなった。
あくまでも桜一郎の所属は帝国華撃団・花組隊長であり、秘密機関であるが故に語る事は出来なくとも裏から根回しは可能なのだ。
そんな怒涛の1ヶ月も終わりを告げ、桜一郎は桜花と共に神埼重工で最新型霊子甲冑、光武・伍式を受け取ってIS学園へと入学を果たし、現在は桜一郎と桜花、2人揃って1年1組の教室に居る。
「ねぇ桜花、確か双子って同じクラスにはなれなかったよな?」
「賢人機関や華撃団の方で色々と根回しをしたらしいですよ。いつ降魔が現れて出動が掛かっても対処出来る様にと」
「なるほど…」
IS学園も元々は桜一郎と桜花は双子という事で別々のクラスにするつもりでいたらしいのだが、賢人機関や華撃団を知る日本、フランス、アメリカ、イタリア4カ国の政府の役人、天皇、等々から必ず桜一郎と桜花を同じクラスにする様にと念押しされたので、現在の様に二人は同じクラスの教室に居るのだ。
「それでお兄様、あの人が…」
「ああ、織斑一夏…世界で2番目のIS操縦者だ」
「お兄様、世間では最初のという事で知られていますから、ここでは…」
「ああ、ごめん、IS操縦者である事にプライドは無いけど、流石に何年も最初の男性IS操縦者だって言われ続けてたから、ついね」
「まぁ、お兄様ったら」
口に両手を当ててクスクスと上品に、それでいて可憐に笑う妹の姿に桜一郎も少し照れ臭かったのか思わず頭を掻き、ふと桜花の全身を見る。
此処に来るまでずっと見ていたのだが、改めてIS学園のロングスカートタイプの白い制服姿の妹には違和感というか、新鮮な感覚を覚えた。
普段が和服、袴姿なので違和感の正体はそれが原因だろうとは思うが、やはり珍しいと言わざるを得ない。
「あの、お兄様…変、でしょうか?」
「あ、いや……凄く、似合ってるよ。普段の和服とは違って新鮮で、まるで天使が迷い込んだのかと思った位だ」
「そ、そんな…褒め過ぎですお兄様」
顔を真っ赤にして俯いた妹の頭を撫でながら桜一郎は桜花の黒く艶やかな髪を纏めている大きな赤いリボンに目を向けた。
高祖母である大神さくらが使っていた物を、今はこうして彼女に瓜二つな桜花が使っている、何となく感慨深い物を感じるものだ。自分のモギリの服も同じなのに、それを棚に上げてそんな事を考えていた桜一郎である。
「そろそろHRの時間だ、俺は席に戻るよ」
「はい、それではまた後ほど」
最後に桜花の頭をひと撫でしてから桜一郎は自分の席に戻った。
桜一郎が席に座るのとほぼ同時に教室に一人の小柄な女性が入ってきて、教卓の所で止まると教室全体を見渡してから教卓にあるボタンを押す。すると、後ろの黒板になっているスクリーンに『山田真耶』の文字が映し出された。
「このクラスの副担任を務めます山田真耶です。皆さん、今日から1年間よろしくお願いしますね」
巨乳よ言える胸以外は中学生がスーツ着て紛れ込んだのではないかと思えるほど幼い顔つきに、桜一郎も一瞬だが首を傾げるも、副担任だと言われると流石に驚愕を禁じ得ない。
それほど彼女、山田真耶は成人女性には見えないのだ。
「では、まずはこれから一年間共に過ごすクラスメートの顔と名前を早く覚えるために、自己紹介に入りたいと思います。出席番号順に、その場で立ってお願いしますね」
出席番号順ならあ行の桜一郎と桜花は直ぐだ。因みにその次は織斑一夏でもあったりする。
「では次、大神君、お願いします」
「はい、大神桜一郎です。趣味は剣術の鍛錬と水泳、世界で2番目のIS操縦者という事で入学する事になりましたが、1年間よろしくお願いします」
因みに桜一郎の趣味の一つである水泳、大神家の人間は水泳が得意な血筋で、桜一郎も桜花も免許こそ無いものの、ライフセーバーが出来る程度には泳げたりする。
「大神桜花です。桜一郎の双子の妹になります。趣味は兄と同じで剣術の鍛錬と水泳、それから生け花を少々…」
桜花の趣味の一つ、生け花は幼い頃から桜花が剣術と水泳以外にやっていたもう一つの習い事で、その筋の者達には有名な腕前だ。
それから桜一郎も趣味の一つとして挙げなかったが、桜一郎も桜花と同様に剣術と水泳以外にもう一つ習い事をしている。
「では次、織斑君……織斑君?」
織斑一夏の名が呼ばれたのに返事が無い。疑問に思った真耶は教卓の目の前に座る一夏の顔を覗き込むと、一夏は脂汗を流しながら青褪めた表情で下を向いていた。
「織斑君!」
「あ、は、はい!!」
「あ、ご、ごめんね? 次、織斑君の番だったからつい大声で…えと、自己紹介、してくれるかな?」
「す、すいません! えと…織斑一夏です……」
そこで言葉が止まった。一夏が振り返って自己紹介をするとクラス中の視線が一夏一人に集中したので、思わず威圧されてしまったのだ。
「ええと……以上です!!」
他に何を言うのか期待していたクラスメート全員がコケた。まさか名前を名乗っただけで自己紹介を終わらせるとは予想出来なかったので、落胆よりも先に脱力してしまう。
だが、そんな空気の中、一夏の背後に立つ黒いスーツ姿の女性が、その手に持った出席簿を一夏の頭に叩き落した。
「あだっ!? って、げぇ!? 関羽!?」
「誰が三国志の英雄か、馬鹿者」
もう一度、女性は一夏の頭を出席簿で叩き、教卓に立つ真耶の横に立つ。
「あ、織斑先生、会議は終わったんですか?」
「ああ、すまんな山田君、朝のHRを押し付けてしまって」
「いえ、これもお仕事ですから」
真耶が織斑先生と呼んだ女性は真耶に代わり教卓の所に立つとクラス全体を見渡し、最後に桜一郎と一夏に目を向けた後、再びクラス全体に目を向けた。
「諸君、私がこのクラスの担任になった織斑千冬だ。これから3年間、諸君をIS操縦者として、または整備師、IS専門家として育て上げるのが私の仕事だ。先ずはこの1年、私の言う事には従って貰う、無理でも嫌でも従ってもらう。この1年で諸君を使いものにするのが私の仕事だ」
何という暴君発言、だが彼女の言葉で挙がったのは不満の声ではなく…歓声だった。
「キャアアア!! 千冬様よ! 千冬様だわ!!」
「私、この学園に入学して良かったぁ!」
「私、千冬様に会う為にこの学園に入学してきました! 九州から!!」
「千冬様~! もっと私を叱ってください! 教育してください!! むしろ罵ってください!!」
何やら妙な声もあったが、概ね彼女、織斑千冬はクラスに受け入れられていた。それもそうだろう、織斑千冬と言えばISに関わる者、関わらない者問わず世界中に名が知られる超有名人だ。
モンドグロッソと呼ばれるISの世界大会、その第一回目にて圧倒的な実力を持ってして総合優勝を果たし、世界最強のIS操縦者の称号である
第二回モンドグロッソでは2度目の総合優勝を目前にして決勝戦を不戦敗し、直ぐ後にIS操縦者として引退した今尚、その有名と人気は衰える事が無い。
「まったく、このクラスにはこんな馬鹿共しか居ないのか? それとも、私のクラスにだけこんなのが集められたのか?」
「あ、あはは…どうでしょうねぇ?」
クラスの反応に呆れる千冬に真耶が苦笑で返す。そして千冬は未だに固まっている一夏に目を向けると鋭い眼光で睨みつけた。
「それで、お前はまともな自己紹介もできんのか?」
「い、いや千冬姉…俺は」
「学校では織斑先生だ、馬鹿者」
一夏が千冬を姉と呼んだ。そして2人の苗字は織斑、これだけでも2人の関係は一目瞭然だろう。
「え? 織斑君って千冬様の弟?」
「いいなぁ、代わって欲しいなぁ」
「じゃあ、ISを操縦出来るのもそれが関係してるのかな?」
「あ、じゃあ同じISが操縦出来る男子の大神君も千冬様の関係者?」
なにか誤解されている。どうやら一夏がISを操縦出来るのは千冬の弟だからだと思われ、その関係から桜一郎も千冬と血縁者だと勘違いされていた。
「静かにしろ! 確かに織斑は私の弟だが、弟だからと区別はせん。それと大神兄は私とは何の関係も血縁も無い、今日が初対面だ」
無駄話は此処までとばかりに千冬は一夏の後、途中になっていた自己紹介の続きを再開する。ただ、クラスの自己紹介が全て終わり、HRが終わるまでの間、教室の空気はずっと浮ついていたのは言うまでもないだろう。
次回はセシリアが出てくるんですが、正直な話、桜一郎の性格は大神一郎そのままなのでセシリアの挑発は不発に終わりそう…。