絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~ 作:葉月華杏
双夜
神崎の馬鹿が、チンクという少女と接敵する前に遡る。
眼下に集ったガジェットの群れと、無双しているユーリの戦闘をボーッと眺めながら俺は六課隊舎の屋上でジッと状況を見守っていた。
「ぶっちゃけ、ユーリさえ居れば戦闘面だけなら問題無いんだよなぁ……」
とはいえ、女の子に戦わせてなにもしないというのはアレなので、屋上からフォローをするつもりで上がって来たのだが……何だか、要らない子状態である。
その上、まだ会っていなかった最後の【転生者】も現れて完全にハブられていた。本当に、要らない子になってしまったので屋上の隅で三角座りをする。
「くすん……ヤバイ、これすっごく惨めだ……」
もう、いっそうの事……【転生者】諸とも、薙ぎ払って終わりにしたい気分で一杯だ。兎も角、詳しく知りたい人もいるだろうから最初から回想する事にした。
……………………。
六課の主要面々が、地上管理局の本部の警備に行った翌日の夕刻。事の始まりは、戦闘機人達とガジェットの襲撃から始まった。先に現れたのはガジェットで、その後ろから戦闘機人達二名が出現。戦闘機人達が、攻撃を仕掛けようとしたところでシャマル先生とザフィーラが出撃して『おおっ!?』と思った束の間……一撃で撃破されてしまう。
シャマル先生が撃破されたのを見て、うっかり戦闘機人達に殺意が湧いてしまったけど怒ったユーリが参戦して無双を始めたので何も出来なくなった。
だけど、ただ見ているだけというのも手持ちぶさたなので各地にいる使い魔達からの情報を整理しつつ、訓練校で弟子にした者達と連絡を取り合い事の終息に当たる事にする。ただ、通常の通信は妨害されていて通らない。故に、使い魔を中継しての通信で無理矢理繋いでみた。
弟子達は、既に動き出していて各地でガジェットと小競り合いを始めている。それ等の指揮を名乗り出て、殴り合い(修羅)専用の戦術を高ランク魔導師共々まとめて提案してみた。すると、その戦術に乗って来たのがゲンヤ・ナカジマ三等陸佐。なんでも、スバルの父親らしい。
「つー感じで、懐に潜り込ませれば一撃で撃破してくれるから……相手の位置とタイミングを指示してやるだけでOK」
『了解だ。他の魔導師達には、足止めをさせれば良いんだな?』
「倒せるなら、倒してしまっても構わないよ。その為の魔導師なんだろう?」
『ははは。違げぇねぇ!』
その後も、細かな打ち合わせをしつつ六課の状況も見ている。ハッキリ言って、余りよろしくない状況だった。
だって、守りの要であるザフィーラが撃破されて……それでも何とか立ち上がり、プロテクションを展開しているけどあの様子ではそれが限界だろう。このままでは、隊舎に攻撃が再開されるのも時間の問題だった。
やはり、自分が出るべきかと考え始めた頃、颯爽と現れた青年がシャマル先生を庇う様に降り立つ。
「鉄翼刀推参!これ以上は、殺らせないぜ!!」
パッと見た目は、踏み台転生者よりも地味目。
黒髪茶目の、そこそこ鍛えたと思われる青年だ。
刀型のデバイスを抜き放ち、奇声を発しながらガジェットの群れへと飛び込んで行く。
「砕け、幽世!!」
ユーリとは、また別の方向で無双を始めた【転生者】。
まあ、こちらの邪魔をしないなら放置していても問題無いので適当に切り上げて俺は隊舎の中へと入っていく。
外で俺がヤれる事は無いみたいなので、隊舎に侵入してきた者でも蹴散らすか……という結論に至ったからだ。
とりあえず、隊舎内にいる職員達にもしもの事を考えて退避するように促す。流石にロングアーチ達にまでは、声を掛けられなかったけれど被害は出来るだけ少ない方が良いだろうという判断だ。
「うーん……まあ、良いか。紫天の書を呼び出して……っと」
紫天の書から、翼の《スフィア》に連絡を入れる。
この世界での弟子達が、翼達が交戦している地点の真下に集合したと連絡があったからだ。高度を下げれば、弟子達のフォローが入る。そう考えて、高度を下げるように命じた。だけど、低ランクの弟子達は空が飛べないので、ついでにフォローするように指示メールを出した。
すると、使い魔からハッキングと幻術で混乱を拡大している敵がいるという情報が送られて来る。居場所を確認すると、海上で空戦魔導師出ないと行けないような場所からの攻撃をしている奴がいた。
低ランク魔導師では、どんな方法を用いても届かない距離だ。仕方がないので、翼の方が終わった後にメールを送ってとある地点にブレイカー魔法を叩き込む様にお願いする。ついでに、管制通信を開いて『凌辱系転生者』を捜索している使い魔達とも連絡を取ってみようと試みた。
しかし、次の瞬間に外にいる転生者が空間攻撃をしたらしく、凄まじい衝撃が眉間に突き刺さる。
「ちょ、僕の感知能力……かなり、敏感なんだからこんな近場で空間攻撃とか止めてくれないかなぁ!?」
感覚が、マヒしそうになるから止めていただきたい。
だが、そんなことを知らない転生者はその後も空間攻撃を続け、更には空間が歪んでしまう程の超重力を発生させた。感覚感知能力が、マヒする前にガジェットが全滅したらしくそれ以上の空間攻撃はされなくなる。
「ううっ……頭が、痛い……」
全く、酷い目にあったものだ。
管制通信の方は、俺自身がダメになったのでしばらくは使い物にならないだろう。仕方がないので、外にいる転生者に報復の誓いを立ててから翼にブレイカーのGO!のサインを出した。その後も、各地から様々な情報が送られて来て……それに対して、それに対応した戦術を伝授し続ける。
一階のロビーに降りてきた所で、黒い人形の虫(?)にバッタリ鉢合わせになった。襲い掛かられたので、うっかり手加減もなく壁に叩き付けちゃったけど……生きてるよね?
「え、えっと……大丈夫?」
体液が噴き出して、ポタポタと血溜まりを作り始めているけど……俺の魔法で、回復出来るかちょっとわからないが放置する訳にも行かず回復魔法を掛けてみる。
「ほら、しっかりして!意識、ある?」
もし、原作に関わる相手であるならば全力で回復仕切らないとマズイ。また、神崎に愚痴愚痴とネチッコク文句を言われてしまう。それだけは、嫌だった。
「ガリュウ?」
振り返ると、紫色の髪をした女の子が立っていた。
何故か首を傾げて、頭の上に?を浮かべている。
「あ、この子の家族の人?」
「コクン……」
たぶん、このタイミングでいるってことは……この二人は、敵である可能性が高い。だが、倒したからと回復する俺と瀕死の状態で回復される彼(?)を見て敵対者だとわかる者がどれだけいると思おう?
「ごめんね?ちょっと、ビックリしちゃって手加減出来なかったんだ。直ぐに治療するから、ちょこっと待っててくれる?」
「……貴方が、ヤったの?」
「普段は、手加減してるんだよ!ただ、侵入者がいないか見回りしてたら、この子が急に現れて襲ってくるから手加減出来なかったんだ!!」
「…………そう……」
とは言ってくれたけど、理解してくれたのかは不明。
兎も角、壁からゆっくりと下ろして表面を診つつ、これ物質修復魔法の方が良いのかな?と首を傾げながら治療する。体内の回復も、ちゃんと出来ているのかわからなくて【真実の瞳】を使った診察になったけれど、一応なんとか治療出来たと思われた。
「これで、大丈夫?」
「……………………コクリ……」
黒い人形の虫が、俺の言葉に頷いた。
「本当?嘘じゃない?」
「大丈夫。ガリュウ、ちゃんと治ったって……」
「……表面とか、とても治った様には見えないんだけど……」
「大丈夫……」
「そっかー。じゃあ、拘束するけどOK?」
「それは、ダメ……」
「そっかー……ダメかー……」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
ヤバイ。変な空気になってしまった。
俺も女の子も、動けない状況に無言で固まってしまう。
「…………見逃してあげる……」
「見逃されても、困るんだけどなぁー……」
「……そうなの?」
「……たぶん?」
うっかり、二人して首を傾げてしまった。
そのまま、また沈黙の時間がスタート。さて、この雰囲気と状況を打開する為にはどうしたら良いのだろうか?
「じゃあ、こうしよう。今は、見逃して貰って……次にまた会ったら、戦闘しよう!これで、どう?」
「……………………コクリ……」
OKを貰えた様なので、俺は立ち上がった後バイバイと手を振って紫色の少女と別れた。相手も、手を振り返してくれたので一度仕切り直しという事となる。
しかし、調子の狂う相手だった。いや、狂わせていたのは俺の方かも知れないけど彼女と戦う事になるなら下手な疑問系で言葉を返すのだけは止めようと思う。
次の行動に支障が出るから。
玄関を抜けて外に出ると、シャマル先生達が伏せっていて意識を失っていることを【真実の瞳】が教えてくれる。
その先では、ユーリがエンシェントマトリクス無双をしていて次から次へと吹き飛ばしていた。その反対方向を見ると、鉄翼刀の姿は無く何処かへ消えてしまっている。
「この、短時間の間に何があった!?」
その声に気が付いたのか、ガジェットを操っていた二人の戦闘機人達がこちらに視線を向けて来た。
先に動いたのは、短髪の方で指先から緑の光線を撃ち出して来る。それを軽々と弾いて、隊舎に着弾するのを防ぐと、気に触ったのか……それとも、今ので敵と見なされたのかはわからないが……長い髪の戦闘機人が、そこそこ速い動きで向かって来た。二本のブレードを振り上げて、襲い掛かられて……それを、一メートル程の棒(ニーベルンヴァレスティ)で受け止めて流し体制が崩れた所で土手っ腹に鎧通しを入れる。
ついでに、追い討ちも掛けて吹き飛ばした。
「ぐっ……っ!」
「ディード!?」
慌てた様に長髪の元に駆け寄る短髪。
今一、表情とかわからないけど驚いている様子で俺を見ていた。何となく、嫌な予感がヒシヒシと感じる。
目の前の戦闘機人の中で、俺という存在がとんでもない勘違いの元、敵視されているような気がするのだ。
だが、敢えて言わせていただきたい。俺とユーリは、保護されてるただの民間人であって局員ではない。
まあ、『ただの』と言うと語弊があるかもしれないが……あくまで、俺達は局員ではないのだ。無限書庫には、所属しているけど!確かに、本局内にあるけれど局員ではない。
だがしかし、現実は無情で彼女達は俺を排除するべき敵と認識したらしい。あの様子だと、言葉を尽くした所で止まってくれそうにもないし……返り討ちにしないとダメッポイ。ここで、俺が討ち取られるという選択肢もあったけど……よっぽど、戦い方が巧いか経験の高い存在でしか討ち取れないと考えられる。ぶっちゃけ、雑魚に負ける気はない。
「あーあ。面倒臭いったら、ありゃしんない……」
面倒だと言いながら、襲い掛かって来た短髪と長髪の未熟過ぎる戦闘(?)を適当に流して、これまた適当に殴ったら長髪がアッサリ気絶してしまった。
「うわ……よわぁ……」
「くっ、このっ!!」
ひょいと避けて、適当に瞬動術で体当たりすると吹き飛んで当たり所が悪かったのか短髪も動かなくなった。
「雑魚過ぎるだろ!?ジェイル・スカリエッティ……これが、お前の言う最高傑作なのかい?」
流石に『無い』は、飲み込んだけど……それが、俺が下した『戦闘機人』という存在の評価だった。
名前の頭に『戦闘』と付けているんだから、せめてこちらの息が上がるくらいの戦闘能力を見せ付けて欲しい。
【鮮血の】が造る、アンドロイド(戦闘用)だって《神殺し》の息が上がるくらいの戦闘能力を見せ付けてくれるんだぞ!?巧く連動すれば、最下位ランクの《神殺し》にかすり傷は付ける事が出来るレベル。
「それでも、『()』が付いてる戦闘用だよ?……『“戦闘”機人』なのに、ガッカリだよ……」
肩透かしも良い線行っている。
何もかもが面倒になった俺は、片腕を二振りして集まっていたガジェット全てを排除した。
「はい。終了……っと?」
視線を上げれば、両頬をプックリ膨らませた涙目のユーリが視界に入る。そう言えば、ユーリが近くで戦ってましたね。気にせず、空間を乱雑に斬ったけど……そう言えば、ユーリがいたんだよなぁと苦笑いする。
「双夜……今、当たらなくて良かったぁ……とか、思いませんでした?」
「思ってないよ?そう言えば、ユーリがいたなぁ……とは思ったけど……」
「余計、悪いです!!当たったら、どうするつもりだったんですか!?」
「駆体放棄させて、再起動?」
「あんまりです!扱いが、酷過ぎます!!」
「まあまあ……当たらなくて良かったじゃん……」
「良くないです!ちゃんと、安全確認してからしてください!!」
最近、あまり相手してやってなかったから色々と鬱憤が溜まっていたらしい。その後も、紫色の髪の少女が現れるまでユーリは文句を言い続けていた。
しばらく、ユーリの怒りが治まるまであやしていたのだが、紫色の髪の少女が隊舎から出てきた所でユーリが戦闘体制に戻る。ここで、紫色の髪の少女に声を掛けるとまた面倒な事になるのだけど……声を掛けずにはいられない。
「おや?用事は済んだのかい?」
「双夜……また、ですか?」
低く怒気を孕んだ声が、俺の隣から聞こえてくる。
「違うから。さっきは、こちらの不手際で見逃したけど……今度は、逃がさないよ?」
良い訳にも聞こえるそれを言うと、黒い人形の虫が紫色の髪の少女の前に立った。
「あれ?手ぶらって事は、用事は済まなかったのかい?」
「コクリ。……いなかった……」
「いなかった……?誰が?」
「……聖王のクローン……」
「そっかー……ヴィヴィオ、いなかったかぁ……………………えっ!?ヴィヴィオいないの!?」
俺は、その場をユーリに任せると慌てて隊舎へと駆け込んで行く。途中、紫色の髪の少女や黒い人形の虫から攻撃されたけど、俺の防御を抜く事は出来ず真横を素通りさせて貰った。
素通りする時、チラッと紫色の髪の少女を見たら、とても驚いた様な表情で俺を見送っていたけど……はて?
それはさておき、俺は【真実の瞳】を使って様々な場所を見て回った。とりあえず、ヴィヴィオが何時もいる場所はもちろんの事、ヴィヴィオが行きそうに無い場所や人が隠れられそうな場所を重点に探して回る。
しかし、ヴィヴィオの姿は何処にも見当たらなかった。
「嘘ぉ……何時、連れ去られたよ!?」
物理的にも、空間的にも俺のいる場所から半径100メートル圏内は絶対領域。そして、更に外周一キロ圏は完全に認識出来る範囲である。そんな俺から、気が付かれずにヴィヴィオを拐い出す事は無理難題に近い。
そもそも、空間的認識であるならば次元規模で感知が可能な俺が僅か数百メートルの事を感知出来ないはずがなかった。ならば、いったい何時ヴィヴィオをこの隊舎から拐ったと言うのだろうか!?
「あ……鉄翼刀か!?」
至近距離とも言える100メートル圏内で、空間攻撃を乱射し超重力によって発生させた重力波でこちらの感覚をマヒさせかけたアイツならばヴィヴィオを拐い出す事は可能だろう。実際、俺が外に出て来た時には戦場から離脱していた訳だから最有力容疑者だった。
「あの野郎……ジェイル・スカリエッティ側の回し者か!?」
まさか、味方を装って六課隊舎を護りに来た【転生者】風に見せ掛けつつ、ヴィヴィオを拐って行くとは良い度胸である。だが、巧く誘拐したつもりだろうけど俺はジェイル・スカリエッティの居場所を知っていた。
なので、ヴィヴィオを迎えに行くついでにジェイル・スカリエッティの野望もプチッと潰して一連の騒動を終わらせるのもありだろう。
「ははは。OK、OK!今すぐ、ブッ殺しに行ってやるから首洗って待ってろ!!」⬅激怒
ジェイル・スカリエッティを監視させているフレールくんの居場所をサックリ感知。座標を設定。
即、妖精転移で瞬間移動する。
……………………。
薄暗い、奇妙なガジェットみたいなオブジェクトがズラーと並ぶ空間に転移した。左右を確認して、背後も見てみる。しかし、何処までも薄暗く奇妙なオブジェクトが続いて変な駆動音がするだけで静かな場所だった。
「さて、ジェイル・スカリエッティは……と?」
遠慮無くズカズカと進むと、少し広くなっているけど行き止まりになっている所に着いた。
その中央では、ジェイル・スカリエッティが狂ったように笑っていて、その傍らにはウーノと呼ばれる助手?が控えている。とりあえず、ジェイルの狂った様な笑い声が勘に触ったので一瞬で間合いを殺して蹴り飛ばしてみた。
「ぐげぇ!?!!???」
「ドクター!?」
奇声を発して、ジェイルが海老反りに倒れる。
何だか、瞬動術を失敗した生徒達の様だった。
「初めまして、ジェイル・スカリエッティ。邪魔になって来たから、潰しに来たよ?」
「…………えっと、君は誰だい?」
ジェイル・スカリエッティは、俺をしばらく見上げてから首を傾げつつ訊ねてきた。時間稼ぎなのはわかっていたけど、何も恐れる必要のない俺は適当に答えてやる。
ついでに、【鮮血の】特製の侵食システムを立ち上げて、この施設のシステムを乗っ取りに掛かってみた。
「無限書庫所属の民間人。如月双夜だ!」
「如月双夜……ああ、私の代わりにあの老害共を屠った少年だね。私の友人から、話は聞いているよ……」
「そうかい。とりあえず、君の最高傑作は全部捕まえたから……後は、君達二人だけなんだよね。大人しく、捕まってくれると有り難いんだけど?」
「ふむ……嫌だと言ったら?」
「……………………」
ニタァ……と邪悪に笑って、視線を超慌てているウーノに向けた。ジェイルも釣られて、ウーノに視線を向けウィンドを開き現状を確認している。
「ほら、速く取り返さないと主導権こっちが掌握しちゃうよ?って、ジェイルは見ているだけなのかい?」
「フム……どうやら、ピンチのようだね……私の操作も受け付けない所を見ると、この施設は君に乗っ取られたと見るべきか……いやはや……」
「あ、そうだ。僕の用件も済ませとかないと……ジェイル、六課の隊舎から拐ったヴィヴィオを返してくれないかな?」
「……ヴィヴィオ、とは、誰の事だい?」
「あ?鉄翼刀に、隊舎から拐わせただろう?」
「……………………いや、知らないが……」
あるぇ?【真実の瞳】を通しても、ジェイルが嘘を言っている様子はない。むしろ、本当に知らないみたいだ。
「あ?……聖王のクローンだよ!!後、てめぇ等の協力者だ!!鉄翼刀、知っているだろう!?」
「聖王のクローン……ああ、ルーテシアくんにお願いした件か……だが、その鉄翼刀という人物には心当たりはないよ」
ルーテシア?誰の事だかわからないけど、本当にここにヴィヴィオはいないらしい。何だか、無駄な事をさせられた気分になった。ならば、いったい誰がヴィヴィオを拐ったと言うのだろうか?思い付くのは…………一つだけあった。
「……………………『凌辱系転生者』の方だったか……?まあ良い。ジェイル・スカリエッティ、てめぇを逮捕する。って、僕には逮捕権がねーから機動六課まで来て貰うぞ?」
一人愚痴って、今出来る選択肢をサクサク選ぶ。
逮捕権は、フェイトちゃんが持っていたはずだからジェイルとウーノはフェイトちゃんに差し出すとして、『鉄翼刀』の方は使い魔達に管制通信が出来次第探させる事にする。
兎も角、この施設内で保管されている裸の女性達に付いては、後日他の局員達に保護させる事にしてジェイルとウーノを掴んで妖精転移で六課の隊舎へと戻った。
……………………。
六課の隊舎に戻ると、何故か翼に大男を押し付けられて治療しろと言われたり……ユーリが確保したらしい、巨大な白い虫とかてんとう虫の巨大バージョンとかを紫色の髪の少女に紹介されたりした。
「ちょっと、そんな事はどうでも良いからこの人の治療をお願いできないかしら!?このまま死んだら、私が殺した事になっちゃうのよ!!」
何だか良くわからないけど、その大男は紫色の髪の少女……ルーテシアの知り合いだということで、治療することになる。というか、何で俺は敵であるルーテシアと仲良くなっているんだろう?今一、状況が把握出来ないけれど求められるままに大男を治療する。
「つーか、この人……戦闘機人なのか?」
「ああ。彼は、レリックウェッポンの実験体だよ。しかし、能力発揮は正常に成されず……生命維持にも重要な問題が発生したため、最高評議会からは「失敗作」と評されていたがね……」
「それを、何とかするのが君の役目だろう?自分を天才だと言うのなら、それくらい何とかして『成功作』にすれば良かったんじゃ無いのかな?」
「クックックッ……耳が痛いね……」
ジェイルは、鎖でグルグルにされながら粋がった様に答えている。しかし、その姿で粋がられても格好は付かない。
「はあ。とりあえず、延命処置を掛ければ良いのかな?それとも、ザックリ生き返らせるとか?」
「お前、何とか出来るのか!?だったら、旦那を助けてくれよっ!!旦那は……旦那は……こんな所で、死んで良い人じゃねぇんだよっ!!」
インプ(?)が、俺の耳元でギャーギャーと喚く。
マジウザいので、耳元で喚くのは止めて欲しい。
「んー……神崎は?」
「まだ、戻ってないわ……待つの?」
周囲を確認して、神崎の所在を確認するが翼の話ではまだ戻ってはいないらしい。ヤる(原作ブレイク)とするなら、今しかないと思われる。
「じゃ、いなかったからって事で……」
「ヤるのね……これで、手放しで喜べるわ……」
秘密基地のシステムを起動して、ナノマテリアルが入った注射器を手元に引き寄せて大男に注入する。それから、残っている人間の部分の細胞を活性化させてから生命維持装置に手を加えた。まあ、手を加えると言ってもやるのはナノマテリアルで俺は細胞を活性化する事に集中している。
「それにしても、私の最高傑作をこうも簡単に捕獲するとは……どんな手を使ったんだい?」
「は!?最高傑作?あんな、出来損ないの戦闘能力の欠片も無いあれが最高傑作!?ぶっちゃけ、雑魚だったけど?」
「……………………」
「そうね。苦戦は、しなかったわ……」
「……………………」
ジェイルが、完全に黙り込んでしまった。
薄気味悪い笑みも、浮かべられない程ショックだったらしく硬直している状態だ。ちょっと、辛辣過ぎたかと思い始めた頃、再起動したらしいジェイルが意見を求めて来た。
「どんな所が、ダメだったか?……そんな事聞いた所で、研究も何も出来なくなるだろう?捕まるって事は、そう言うことだろう?」
「わかっているとも!しかし、何がダメなのかがわからないのは困るんだ!!」
「……………………翼は、何かあるか?」
余りにも必死だったので、一応って感じで翼に聞いてみる事にした。流石に、訳もわからないくらい弱かったって事は無いだろうから直接戦った翼なら何かわかるだろうという考えの元の質問だ。
「攻撃が、単調でワンパターンだったわ。これは、戦闘経験が低いせいかしらね?」
「ああ。経験が乏しいから、前に上手く行った戦闘方法を取り続けるっていう心理だろうね?確かに、そんな感じだったかなぁ……他には?」
「そうね……全体的に、今一つって感じかしら?手を抜いているというか……油断しているというか……」
「それは、自分達が『最強!!』とか思っているから油断が生まれたんだろう。特に、弱者をいたぶった後とかそうなりやすいよな!」
アインへリアルだったか、地上本部を襲撃する前にそれの警備隊とやり合っていたはずだから、それで生まれた油断だろうと考えられる。もしくは、初見必殺の瞬動術と鎧通しが盲点になっていたかの何れかであろう。
まあ、良いんだけどちょっと待って欲しい。
段々ではあるが、彼等の質問やフォローに集中出来なくて大男の治療が疎かになりつつある。
「他には、何かあるかい!?」
「そうねぇ……私的には、以上かしら?」
「双夜くんは、どうなんだい?私の作品は、何処が弱かったんだ!?何が、イケなかったんだと思う!?教えてくれないか!?」
「……あんらぁ~?みんなお揃いでぇ~……ドクターもぉ、捕まっちゃったんですねぇ~。あらあらぁ~ゼストてばぁ~、もう死んじゃうんですかぁ~?そちらの坊やもぉ~、治せるとか言っておきながら死なせちゃうんですねぇ~♪」
「……………………」
「旦那!?なあ!治るんだよなぁ!?」
「あ、双夜!エリオとキャロが、戻って来ましたよ!?」
「双夜、ユーリちゃん!これ、どういうこと!?」
「何で、戦闘機人達がこんなに!?」
「ーーーーー」
『双夜!どういうことか、説明して!?』
「どうなんだい?何故、黙っているんだい!?」
ーーーブツッ!
「じゃぁかましいわぁ!!ちったぁ、黙ってろっ!!!!《アバァ・ザナー》!!!!!」
ブチギレた俺は、周囲にいた全員に沈黙の妖精魔法を掛けた。ヴィヴィオの事もあって、すぐにでも探しに行きたいのを我慢していたというのにコイツ等と来たらグダグダと五月蝿いったらありゃしんない。管制通信だって、まだ出来なくて回復まで時間が掛かりそうだというのにコイツ等はぁ!!と、怒りで目の前が赤く染まっていく。
久し振りの感覚だった。目の前が、赤く染まっていくなんて何時振りだろうか?ついでに、面倒になった俺は戦闘機人のみに妖精魔法の効果を固定して、彼女等にとって最も屈辱的な魔法を展開した。
「対象者固定……《リヴゥフロー・ザナー》!!」
次の瞬間には、戦闘機人達が幼い幼女へと変化した。
ついでに言うと、幼女化したせいで合わなくなったレリックが戦闘機人達の胸から出現する。
「さてと……このレリック、壊したらどうなるのかな?つーか、レリックウェッポンがレリック失ったらただの機械人間だよね?どうして欲しい?ねぇ、どうして欲しい!?ホンの数分前まで、自分をどうにか出来るならやってみろってこっちを見てたみたいだけど……どうにでも出来るってわかって、どんな気持ち?」
固まっているメガネの幼女に、排出されたレリックをツンツンとしながら訊いてみる。先程までの余裕もなくなって、クアットロ(未来知識)はパクパクと口を動かしていた。
「はあ?何言ってんの?聞こえないよ?つーか、状態異常系の対策くらいしておけよ!凡人が!!」
ジェイルを睨み、凡人と怒鳴った後立ち上がって爪先でクアットロの腹を蹴る。クアットロが、衝撃で浮かび転がって数回転後……ゲホゲホと胃液を吐いて苦しむ姿をニヤニヤと眺めていた。頭に血が登っているおかげか、そんなクアットロを見ていても何も感じない。
兎も角、俺は大男の元に戻り治療を再開した。
「はあ。漸く、静かになった……これで、落ち着いて治療に専念できる……」
『……………………』
とりあえず、何かを訴えていた者達も口を閉じて大男の治療が終わるまで待つ事にした様だった。
鉄翼刀、原作の周りをウロウロしている三人の転生者の内最後の転生者です。
神崎に魔法無しで空を飛ばされた人ですね!
本局に行ってからいなくなっていた方です!!
理由は、また今度w
まあ、神々に騙されてる残念な転生被害者です。(笑)
ルーテシアと双夜の会話。
ヤバイ!会話が、マッタリとしたモノに……。
この頃のルーテシアと双夜は、相性が良すぎますね(苦笑)。
片や腹黒だけど素直な魔法少女。片や腹黒魔法使い。
その二人が、ガリュウを通して会っちゃった。
しかも、回復中……(焦)。
どうやっても、敵対させる事が出来ない状況。ルーテシアに好印象与えた結果、双夜との戦闘が失われてしまった。
よって、ルーテシアはユーリと悪夢のエンシェントマトリクス舞闘をするはめにwガリュウは、不調のままユーリ戦w
最終的に面倒になった双夜が、空間断裂斬を実行しておしまい。すると、ヴィヴィオの誘拐が発覚。
さて、何時誘拐されたのでしょう。わかるかな?
後は、珍しくイライラしている双夜が周囲に八つ当たりしているだけのお話wwwww
双夜、ブチギレイベントはもう少し後へ……。
楽しみにしていた方々、本当に申し訳ありません。
しかし、原作を虐めても面白味がないのは事実なので……ここは、初心に帰って元々の方針でヤらせていただきます。ww
ユーリ戦も殺りたかったんだけど……ただ、エンシェントマトリクス無双するだけのお話に話数を使ってまで書く必要性を感じなかったので切り捨てw
誤字・方言あれば報告をお願いします。
m(_ _)m
感想もあれば、お願いします!
いつも読んでくれる方々に感謝を……。