絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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一一三話

神崎

 

 

地上管理局レジアス・ゲイズ中将執務室。

仁王立ちした師匠が、苦虫を噛み潰してしまったかの様な顔をしたレジアス中将の目の前にいて見下ろしている。

 

「まさか、呑んだのかそんな要求……」

 

つい、先程まで【我々、神殺し】等の説明をしていた師匠が圧倒的な威圧感を放ってレジアス中将を言及している。

 

「……………………」

 

レジアス中将は、「うぐっ……」とか「ムムッ……」とか唸っているけど……それは、地上を護る為に下した決断ではなく、師匠が連れて来たおよそ百万の軍勢に対しての苦悩であろう。

 

「…………それだけの戦力があるならば、こんな要求など呑む事も無かった……」

 

「《神殺し》の戦力を宛にするなよ?百年も生きてない小童風情が!おい、ゼスト!何とか言ってやれよ。この情けない馬鹿に……」

 

「レジアス……あの時、我等が語り合った正義は……何処へ行ったのだ?」

 

「ぐっ……ゼスト、俺は……」

 

ってな感じで、レジアス中将は二言目には言葉が無くなってしまう状況が続いていた。事の起こりは、地上管理局に向けて『凌辱系転生者』からの宣戦布告である。

 

『24時間以内にエースオブエース・高町なのはを含む機動六課の面々を、デバイスを取り上げてゆりかごまで連れて来い!さもなくば、ミッドチルダに主砲を叩き込む!!』

 

等という声明を、ミッドチルダ全域に通信され……時間稼ぎの名目で、六課の隊長陣面々に出向命令が来たのが数時間前。それを聞いた師匠が、なのは達を押し留めてレジアス中将の元を訪れた訳である。

その際、ゼスト・グランガイツを連れて来たのはゼストがレジアスに会いたいと言い出した結果であった。

俺も口添えはしたけれど、師匠を動かしたのはゼストの熱意だと信じたい。

 

「さて、それでは運命分け目の会議を始めよう……って言っても、僕達《神殺し》が参戦しますよっていうお話なんだけどね。アルカリア、防御班でゆりかごの主砲を防ぐことは出来るかい?」

 

師匠が、何処かに向かって話しかけているけど誰もいない。だけど、声がするので振り返ってみれば普通にいるアルカリアさん。どこから、涌いて来た!?

 

「流石に何十発もは、受け止められないと思われますが……数回程度なら可能です……」

 

アルカリアさんの話を聞きつつ、師匠が提示したのは聖王のゆりかごの詳しいデータ。何でも、無限書庫から発掘して来たそうだ。ユーノきゅんの出番が……。

 

「この駆動炉が有る限り、ゆりかごの主砲は何度でも発射可能です。流石に、チャージ時間がありますが……それも、かなりシビアな時間加減となっております」

 

原作では、発射されてないし……連射もされてないので、そこら辺はわからないが……出来るのでは?

 

「一発のチャージ時間は、大体10分から30分から程と見ておいた方が良いか……連射は、出来ないんだっけ?」

 

駆動炉があれば、連射可能なんだろう?流石に、乱射はできないだろうけど警戒は必要かもしれない。

 

「ああ、そんな構造ではなかったよ。そもそも、防がれる想定なんてしていないだろうからね……連射する必要も無かったと思われる」

 

「何故、ここにジェイル・スカリエッティがいる!?」

 

突然割り込んできたジェイルに驚いて、レジアス中将がクワッと厳つい顔を更に厳つくして怒鳴り出す。

 

「元々、アレを隠し持っていたのは最高評議会の老害共だ……その管理を私は任されていたのだよ。故に、私以上にアレに詳しい者はいないと自負している!!」

 

サラッと、ジェイルに無視されたレジアス中将は歯軋りをしながらニヤニヤ笑うジェイルを睨み付けている。

 

「使えるなら、犯罪者でも使うのが僕達だ。効率重視したら、手っ取り早いと考えただけだよ……」

 

「いやはや、素晴らしい!ここまで、柔軟に対応出来るとは……是非、就職先は君の下が良いね……」

 

「世辞はいらん。ゆりかごに侵入して、真っ先に駆動炉を破壊するとしたら、どの人選が良いか……」

 

ジェイルの世辞を、真っ向からバッサリ切り捨てて侵入メンバーの選出に頭を悩ませる師匠。

 

「ヴィータですかね?原作では、ヴィータが破壊してましたから……」

 

「ヴィータちゃんか……僕的には、この世界の住人は使いたくないんだけどなぁ……実力や生存力を考えたら、僕の使い魔を使った方が確率・回転率が高いんだよ……」

 

まあ、経験値的な面でも高々数百年程度しか活動していないヴィータよりも師匠の使い魔一万年の方が信頼は高い。

 

「って言っても、この世界の問題でもありますから……現地民が動くのは、当たり前かと思われます」

 

「下手すると、お荷物になる可能性があるんだぞ?」

 

そうですね。ナンバーズ何て、特にお荷物以外の何者でもありませんね。戦闘経験低いし、能力はあるけど頭が追い付いてないから簡単に突き崩せるのがナンバーズだ。

 

「リンカーコア封印スキルの転生者ですね……だとしたら、翼やユーリも連れて行けませんね……」

 

「私のナンバーズなら、ゆりかご内でも活動が可能だよ?」

 

『知って(ます)る!』

 

ジェイルの言葉に、俺と師匠が即反応する。

 

「あ、どうぞ。師匠……」

 

「うん。前にも言ったが、戦闘経験が乏しいお前のゴミ屑を連れては行けないぞ?ぶっちゃけ、お荷物以外の何物でもないからな……」

 

「ですね。ハッキリ言って、転生者同士の戦いでは役に立たないと思います。捕まって、捕虜となるか……廃棄物と成り果てるだけです!」

 

「……………………」

 

ジェイル・スカリエッティは、ショックを受けたのか部屋の隅で三角座りをして半泣き。それを、ウーノが慰める。

 

「……………………」

 

レジアス中将が、黄昏ているジェイルの背中を見て何かを言いたげな顔をしているが無言。

後で、牢屋にでもブチ込んで貰おう。

ただ、クアットロに関しては機動六課まで迎えに行って欲しい。とある部屋で、体内に組み込まれたセンサーが呉作動を起こすと超ビビっているから師匠に面白がられて閉じ込められているんだ。ここに来る前に、一度様子を見に行った時にはドンドン扉を叩いて五月蝿かった。

今は、どうなっているかはわからないけど……余り、よろしくない状態なのは見るだけでわかる。ティーダェ……orz。

 

「我々は、どうしたら良い……?」

 

ゼストが、今にも部屋を飛び出して行きそうな感じで問い質して来た。今にも、ミッドチルダが撃たれないか気が気ではないのだと思われる。

 

「避難誘導をした所で、焼け石に水ですし……」

 

「だからと言って、市民を放置する訳にも行かないからなぁ……TVや敵の監視を掻い潜って、市民だけでも避難させることは可能か?」

 

また、無茶な事を言い出す人だ。

敵に知られたく無いとは言え、マスコミを黙らせてた所で大規模な行動が取れる程世の中は甘くはない。

どこかで、必ず綻びは出てくるモノだ。

 

「無理じゃないですかね?マスコミは、自分の命が懸かっていても報道しますよ?……それが、全滅という結果をもたらしても利益とスクープの方が大事ですから……」

 

大きな溜め息を吐き出して、レジアスが目元を揉む。

マスコミに関しては、どこも似たような状況らしい。

 

「とりあえず、一般の市民は避難させる方向で……何もしないで、吹き飛ばされました……なんて事になる前に、少しでも手を打ちましたというパフォーマンスは必要だ!」

 

「わかった。そちらは、我々が何とかしよう……」

 

レジアス中将が、重い腰を持ち上げて各方面に指示を飛ばし始める。それを見ながら、俺達はゆりかごに突入する人員の話を続けていた。

 

「結局の所、リンカーコア封印スキル持ちの転生者を殺すという案が有効か……」

 

「は!?」

 

「でなければ、魔導師はゆりかごに突入できませんし……ヴィヴィオは、なのはさんが助け出す予定なのでしょう?」

 

「ちょ、待ち!」

 

「その辺は、何も考えてなかった。なのはママを『ママ』にしないとイケないのか……この条件が無ければ、もっと簡単に事が済んだというのに……」

 

「ちょぉ、待ちぃって!今、リンカーコア封印スキル持ちの転生者を殺す言うてへんかったか!?」

 

あ……うっかりしていたが、ここには八神はやても来ていたんだ。今まで、大人しかったので忘れていた。

リンカーコア封印スキル持ちの転生者を、『殺す』ということに何の疑問も持たなかった俺達を咎めに掛かる。

これには、レジアス中将も忌避的な視線を向けていた。

何か、巧い言い訳をと考えていたのに師匠が普通の事みたいに対応する。

 

「言ったけど?それが、何か問題?」

 

「何か問題?やあらへん!何、人を殺す事が普通みたいな言い方しとんねん!?」

 

師匠にとっては、普通の話なんです。ぶっちゃけ、師匠は人を殺す事に何の抵抗もなくザクザク殺せるんだ。

 

「…………まさか、八神はやては……リンカーコア封印スキル持ちの転生者を生かせと?……それ、正気?」

 

まあ、どちらにしても正気の沙汰ではない。

 

「例え、どんなスキル持ちやかて命を奪うんはアカン!そんなことしたら、臭い飯を食べる事になるんやで!?」

 

「…………元より、その予定だと言ったら?」

 

「はあ!?」

 

「え!?」

 

「なに!?」

 

俺、はやてとレジアス中将の声が重なる。

というか、それは俺も初耳だった。

 

「何の為に、僕が民間人のままでいるのだと思ってる?」

 

「民間人って…………まさか、そんな!?」

 

「最初から、捕まる事を想定していたと!?」

 

俺は、師匠の覚悟に絶句していた。ってか、そこまで想定して行動する人が何処にいるというのだろうか!?

 

「ほぇ?何言ってんの?そんなん、当たり前じゃん……元より、僕は逮捕される前提で事に当たっているんだよ?今までに行った全ての事柄を背負って捕まる予定だけど……?」

 

『……………………』

 

ヤバイ。師匠の覚悟の仕方が、右斜め遥か上過ぎて全く理解できない。詰まる所、師匠は何の気兼ねなく犯罪を犯し……最終的には、全ての責任を一人で負って逮捕される予定だったと言っているのだろう。

だけど、それは認められるモノでは無かった。

 

「ハッキリ言っておくが、僕は僕の『正義』を成す為であるならば、幾らでも『悪』を演じることが出来る性質を持っている。故に、障害が立ち塞がるなら殺人でも何でも行うさ……特に、暗殺者は基本的に生かしては帰さない。昔、手痛い失敗をしたからな……再起不能にするか、直ぐには動けなくしてしまうようにしている……」

 

「ああ、聞いています。確か……実の両親に、暗殺者を仕向けられたんですよね?それで、泊まっていたホテル諸とも吹き飛ばされたんでしたか?」

 

「被害が、洒落にならなかったんだ。僕は生きてるのに、一般人が巻き込まれてたくさんの人が死亡している……だから、殺人もお手のモノだよ?」

 

最終的な結果を回避する為に、自分が汚れる事を容認する師匠。覚悟がある者と、そうでない者との違いはこれなんだとレジアス中将達は言葉を失ったまま師匠の話を聞く。

 

『…………………………』

 

はやてとレジアス中将が、黙り込んだままで眉間に皺を寄せていた。はやての方は、師匠の両親(?)に怒りを露にしていて……レジアス中将は、『ここにも犯罪者が……』と思っていそうな雰囲気だ。

 

「ん?どうした、温室育ち。まさかとは思うが、自分が荒野で生き抜いて来た人間だとか思っているのか?まあ、常識的な苦労はあっただろうが……三歳で、地下牢に閉じ込められて有らん限りの暴行を受けた僕と比べたりするなよ?環境が悪かった……と言えば、それだけだが。僕は、『魔王』と恐れられた存在だ。君達みたいな、温室で育った様なお坊ちゃんでは無いのだよ……」

 

レジアス中将が、『お坊ちゃん』扱いって……いやまあ、雨風しのげる家の中で過ごしたという意味では間違いない。

それにしたって、言い過ぎの様な気もしないでもない。

 

「でも、その一年後には……助けられたんですよね?」

 

「ん?ああ。しかし、【紅の】が言っていたんだが……その頃も暗殺者が仕向けられていたらしい……まあ、世界最強の庇護に入っていたから、喧嘩を売る馬鹿はいなかったけどなぁ……」

 

「だったら、問題なかったのでは?」

 

「……いやいや、僕が庇護されていた訳でなくて……病院が、庇護下に置かれていただけだよ。あの頃はまだ、あの血筋の奴等とは面識が無かったからな……」

 

「……………………」

 

その頃は、本当に色々とヤバかったらしい。

 

「爆発したら、病棟事吹き飛ぶ系の爆発が仕掛けられた事も一度や二度じゃ無いらしいから……それに、看護婦をたらしこんで毒殺とか……?まあ、僕の所までに検査に引っ掛かって捕まったりしてたらしいけど……」

 

「…………キチガイッスね……」

 

それが、俺の正直な気持ちだった。

 

「全くだ。我が、親ながら正気の沙汰とは思えない。しかも、魔力否定派のリーダーだから魔力持ちの僕が生きてると……お金寄付して貰えないとか、権力を失うって理由だから。もう、救いようのない人だよ……」

 

聞けば聞くほど、理解すればするほど腸が煮えくり返る思いだった。自己中にも、程があるというものだ。

人の事は、言えないけれど……俺でも、ちょっとドが過ぎているとわかるレベルだった。

 

「魔法否定派の者なら、このミッドチルダにもいるが……魔力、そのものを否定する者はまだ出て来てはいない」

 

「『まだ』とか言っている時点で、出てくる可能性を認めるのはどうかと思うよ?」

 

「だが、完全には否定出来ん……」

 

「そこは、出させないとか……そんな未来は、ワシの目が黒い内はヤらせない!とか言って欲しかった……」

 

「ムッ、確かにその通りだ。今後は、気を付けよう……」

 

レジアス中将が、自分を戒める様に呟くのを聞いてから師匠の様子を見る。パッと見た感じでは、いつもと変わらない様子に見えた。

 

「とりあえず、『凌辱系転生者』には目にモノを見せてヤりたいので、僕は別動隊として動くよ。八神、お前のデバイス……ツヴァイを借りるぞ?レイジングハートやバルディッシュも預からせて貰う……」

 

「……詰まり、私らを囮にするって言うんやね?」

 

「ああ。どうせ、残りの時間で出来る作戦は無いのだろう?なら、敵が一番油断する所を突くしかあるまい……」

 

つまり、こちらが要求を呑んだと見せかけて油断させつつ、敵を撃破させるつもりらしい。だが、ここで俺はある事に気が付く。それは、敵が要求を通して目的の《原作人物》を手に入れる瞬間に攻撃を仕掛けるというもの。

しかし、迎え入れる時は『油断』ではなく最大の警戒状態では無いのかという事だ。まさかとは思うが、師匠は怒りで冷静な判断が出来なくなっているのではないだろうか?

 

「まあ、最大の警戒はされるだろうから……僕達は、君達を囮にして反対側からミサイルで、乗り込む予定だ」

 

あ、良かった。いつもの、冷静な師匠だ。

俺は、少しホッとした。

 

「ミサイルの中に、乗り込むんッスね?」

 

ちょっと、大き目のミサイルに爆弾ではなく人を入れて打ち上げ……割りと簡単そうにいうので、何て事無いかと思ったが……普通に考えたら、ただ爆弾を抜いただけのミサイルって色々とヤバそうな感じがした。

 

「ミサイルで、ゆりかごの近くまで飛んだら……転移魔法で内部に突入する!あ、転移失敗したらペチャンコか……撃ち落とされてバラバラになるな……」

 

「不安になる事を言わないでください!それでなくても、不安いっぱいな作戦なんですから!!」

 

「にゃははは」

 

一番、聞きたくない結末だった。

ペチャンコと言われて、Gで潰れる可能性やその他諸々に気が付きゾッと背筋を冷やす事となる。そこら辺、師匠は何か考えているのかと思ったけど……この人の事だから、『面白そうじゃん!』の一言で済みそうだ。

頭を抱えていると、師匠が邪悪な笑顔でわらっているのが見える。それを見て、俺は諦めが付いた。

ああ、俺は辿り着く前に駄目になるかもしれない。

 

「えっと……大丈夫なん?」

 

「もう、諦めました……」⬅悟り

 

『なっ、おい!?』

 

はやてとレジアスの焦った顔が見える。

余程、彼等から見た俺の表情はダメだったらしい。

 

「兎も角、一般の航行艦を一機用意してデバイスを取り上げた六課の面々をゆりかごまで護送してくれ。それは、レジアスに任せるよ……僕達は、ミサイルを何機か用意してゆりかごの近くまで飛ぶ。ある程度近付いたら、撃沈された風を装って中に突入だ。その後、僕は単身で暴れるから神崎は六課と合流して暴れるって事でどうだろう?」

 

「あ、ちゃんとした作戦……」

 

はやての呟き。それを無視して、師匠は続ける。

 

「僕達の目標は、リンカーコアを封印するスキル保持者を暗殺する事だ。そうじゃないと、六課の面々にデバイスを与えても意味がない。言っとくけど、相手が六課を手に入れても撃たないという保証は無いからね?」

 

「わかっているとも……我々が、時間稼ぎをしようとしているのは相手もわかっているだろうからな……高い確率で、撃って来るだろう……」

 

レジアス中将は、苦虫を噛み潰した様な顔で重苦しい声で呻く様に話す。この様子だと、時空管理局の方も動いている可能性があるけど……そちらは、どうするのだろうか?

 

「リンディちゃんには、僕の方から注文を出しておいたから……ゆりかごのミッドチルダを挟んで、反対側に出て来て貰ってる……」

 

「早い対応ッスね?」

 

「声明が出た時点で、僕の情報網に引っ掛かってんだから対応策は取るよ……」

 

余りにも対応が早いので、聞いてみたら大きな溜め息と共に呆れた視線プラスで睨まれた。

しかし、それってレジアス中将が相手の要求を呑む事を見越していたという事でもある。もしかすると、要求を呑まなかったパターンもあったかも知れない。

テロには屈しない……と、レジアス中将なら言い出しそうだけど……それは、周囲に止められてしまったようなのでレジアス中将はさっきから歯軋りしっぱなしである。

 

「後の話は、クロノンの艦内で話す。怒られるのは、一回で良いからな。リンディちゃんが、来てないと良いな……」

 

「あ、それも想定済みなんやね……」

 

「当たり前だろう?ま、一番手っ取り早い方法もあるけど被害を度外視した方法だからな……レジアスが取った、六課の出向だって……局の身内だからって理由が大きいだろう?」

 

師匠が、レジアス中将の方に振り返って問う。

レジアス中将は、厳つい顔をまた険しく変化させて忌々し気に肯定した。

 

「一般人の差し出しだったら、即拒否しておったわ!!」

 

「まあ、局員であるなら凌辱くらい耐えて時間を作れって事だろうなぁ……とは、思ってた!」

 

「慰謝料は貰いますよ?」

 

アッサリ、はやてが慰謝料の請求をし始める。

 

「カウンセリングが必要なら、地上管理局持ちで幾らでも受けるが良い!!それくらい、ポーンと出してやる!!」

 

「ぅわぉ!太っ腹!!」

 

わかっていたのか、レジアス中将はアッサリ許可を出してしまった。うん、太っ腹である。

 

「つーか、健康の為に痩せろ。時間作って、運動しろ……」

 

「うぐっ…………」

 

師匠が、レジアス中将の体型に関してそんな事を言い出した。アレかな?健全な精神は、健全な肉体に宿る的な話なのかな?と思っていたら……普通のディスりだった。

 

「見ていて、熱っ苦しい……痩せれ……つー訳で、八神と俺達は一度六課に戻ります。ジェイルとナンバーズは、このまま地上管理局に残り留置場へ!アルカ!!」

 

「はい!では、行きましょうか?」

 

「フファはーはーはーはーはー!!嫌だね。ゆりかごの最後を見るまでは捕まらないー……って、離してくれたまえ!私はまだ、ヤりたいこtーーー」

 

ジェイルは、なにかを叫んでいたがその途中で意識を失いグッタリと倒れてしまう。師匠が何かしたらしいが、俺には何をしたのかわからなかった。

 

「じゃあ、行くよ?」

 

『はい!』

 

 

………………………………

 

 

……………………

 

 

…………

 

 

XV級艦船クラウディア。

そんなこんなで、やって来ましたクロノ率いるクラウディア艦隊の指揮艦『クラウディア』。

クロノが、艦長を勤めるガチ戦艦です。

 

「ミサイルの準備万端か!?」

 

「そんな質量兵器が、時空管理局にある訳ないだろう……」

 

「よし。この船を落とすぞ!!」⬅本気

 

その時、振り返った師匠の目はマジだった。

 

「止めて上げて下さい……師匠なら、そういう事もあろうかとミサイルを用意していたんじゃないんですか?」

 

「チッ……しゃーないなぁ……」

 

悪態を付きながらも、師匠は宇宙空間に出て行ってクラウディアの艦頭にミサイル発射口の付いた設備を取り付け始める。周囲から、『人が、生身で宇宙空間に……』という呟きが聞こえて来るけど無視。あの人の理不尽っプリは、説明してもどうしようもないので放置の方向で無視する。

 

「とりあえず、アレを止めてくれないか?」

 

「止まりません。止められません。兎も角、放置の方向で無視しててください。アレは、理不尽そのものです!」

 

「……………………」

 

気持ちはわからないでも無いが、どれだけ言ってもあの人が変わる事はないので気にするだけ無駄である。

ならば、放置して気にしないのが正解だ。気にすれば、気にする程こちらの精神と肉体が持たなくなる怪物なので。

 

「とりあえず、俺達はロストロギア『聖王のゆりかご』に突入してリンカーコア封印スキルの持ち主を無力化しますので、後の事はよろしくお願いします……」

 

「アルカンシェルで、破壊してしまっても問題ないのでは?ヴィヴィオって子も大事だか、ミッドチルダの事を考えたら、それが最善だと思うが……」

 

「師匠がキレたら、全次元が消滅しますけどね……それとも、アレを止められるんですか?時空管理局は……」

 

「……………………」

 

クロノの言い分はわかるが、ヴィヴィオを失ったら全次元がヤバくなるので却下して師匠を見る。

すると、師匠と目が合った。

無機質な視線を向けられて、少し背筋に冷たいモノが流れる。アレは、ヤバイ方の目だ。こちらの会話が、筒抜けになっている事を理解して口を閉じた。

 

「君達を送るのは構わないが……こちらにも、被害が及びそうなんだが……」

 

「攻撃は、回避してください」

 

「回避!?XV級に高速戦闘機並の能力を期待されても無理なモノは無理なんだ……全く、無茶を言ってくれる……」

 

「致命傷だけ回避すれば良いんだよ」

 

更なる、無茶を言い出したのは師匠だった。

致命傷だけというが、蓄積されるダメージはどうする予定なのだろうか?

 

「もう、いっそうの事……クラウディアをジャックして、ゆりかごに突撃したい気分になってきたよ……」

 

「わかった。致命傷だけは、回避しよう!」

 

「色々、ダメな方向にまっしぐらだな……」(;-_-)

 

クロノが、師匠の脅しに屈服して回避要請を受け入れる。

それをニヤニヤ顔で、見ていた師匠は『冗談だ』と言って数人の使い魔を貸し出した。

 

「さて、本来の作戦だが……クラウディアには、普通に飛んで貰って普通に帰って貰う予定だ。まず、ミッドチルダの反対側。二つの月の魔力を受け、防衛力が上がったゆりかごの側面を通過。その際、僕達はミサイルで乗り込む。で、クラウディアはそのまま時空管理局に戻るだけだ」

 

「それだけで、良いのか!?」

 

「良い。でも、懸念があるなら月の裏側に隠れて待っていると良いと思う。外と中から、挟撃って手も良い……」

 

「精神的に相手を揺さぶるんですね?」

 

「上手く行けば、六課の面々が凌辱される可能性も低くなるからな……フェイトちゃんが心配なら、挟撃も良いだろう」

 

「待て、フェイトがテロリストに凌辱されるとはどういう事だ!?」

 

唐突にクロノが、慌てた様子で状況を聞いて来た。

それを師匠と見上げて、顔を見合わせて首を傾げる。

 

「ありゃ……聞いてない?神崎……」

 

「はい。『24時間以内にエースオブエース・高町なのはを含む機動六課の面々を、デバイスを取り上げてゆりかごまで連れて来い!さもなくば、ミッドチルダに主砲を叩き込む!!』……以上です!」

 

「……そ、それで、凌辱されるとはどういう事だ!?」

 

「で、時間を稼ぐ為に六課の面々を囮に突入するって作戦だ。それと、こっちの案件は覚えてるな?まあ……今、ゆりかごを占拠しているのが……そのアホ共だ……」

 

「……………………っ!!」

 

以上を聞いたクロノは、顔を真っ青にして艦長席に身を預けた。その様子からは、フェイトの身を心配する兄という姿が見受けられる。

 

「作戦は、難しいですかね?」

 

「うーん……」

 

「あ!双夜、もうクラウディアに来ていたんだね!」

 

そこへ、フェイト達六課の面々がクラウディアのブリッジに入って来た。

 

「っ!フェイト!?何故、ここに……」

 

「あー……説明不足に……」

 

「どういう事だ!?時間を稼ぐんじゃ無かったのか!?」

 

「あーうん。そうなんだけどね…………早かったね、フェイトちゃん達……もっと、遅れて来るんだと思ってたよ……」

 

「双夜の事だから、クロノをイジメているんじゃないかって……急いで来たんだよ!!」

 

「……………………っ!!」

 

クロノが、グリンとこちらを向いてキュピーンと輝く瞳で睨み付けて来る。はい、そうです。ただのイジメでした。

とりあえず、師匠の元からススーと身を引いて逃げる。

 

「君は……君達は、そんなに俺が苦しむ姿を見るのが楽しいのか?この逼迫した状況で、良くそんな事が出来るな!?」

 

ヤバイ、逃げ切れそうに無い。

激怒したクロノが、ズカズカとこちらに向かって来る。

 

「あー、まあ良いか。時間稼ぎの為に、六課の面々を囮に突入するという作戦を立ててたんだけど……アルカリアが、別に本人達を使う必要はないと言い出したんだ。で、フェイトちゃん達の代わりに僕の使い魔達が囮役をするから、クラウディアでフェイトちゃん達を保護して欲しいとお願いする予定だったんだけど。何も知らない君が、イケないんだよ。何も知らないから、弄りたくなったんじゃないか」

 

しかし、師匠は気にせず作戦の全貌を語り冷たい瞳でクロノを睨む。確かに、次元航行中だとしても情報を得る事は可能だ。なのに、何も知らなかったクロノに文句をいう資格はない。資格はないのだが、残念でこの上ない。

 

「兄、失格ですね‥ちゃんと、情報アンテナは広げて置いて下さい。知らないから、弄られるのです……」

 

「だがっ!」

 

「お前が、事情を知らないから弄りたくなったんじゃないか……何で、僕がお前を動かしたんだと思ってる?」

 

「ジェイル・スカリエッティが、巨大ロストロギアを使ってテロを起こしたと言われたら……普通に裏があるとは思わないだろう!?」

 

「……………………師匠、そんな風に言ったんですか?」

 

「傍受されているかもしれない通信で、本当の事を言う訳には行くまい。相手は、レアスキルを持つ犯罪者だぞ?何処で、どんな風に盗聴されているかわかったものではないのだから。それで、思い付いたのがジェイルだっただけだ……嘘は言っていない。事実、巨大ロストロギアは飛んでいてミッドチルダを人質にフェイトちゃん達を要求しているんだから……」

 

確かに、嘘ではない。嘘ではないのだけれど……テロを起こした主犯と、置かれている状況が大きく違う。事実、テロは起きていてミッドチルダは危機に貧しているけど!

だがしかし、それではあんまりにもクロノが哀れだ。

ジェイル・スカリエッティが、テロを起こして暴れているからと呼び出されて来てみれば、実際テロを行っているのは【転生者】でジェイルは地上管理局の留置場に収監されている始末だ。更には、自分の妹が人質として差し出せと言われていて、つい先っきまで護送用のコンテナに居たなんて思うまい。アルカリアさんが、人質を使い魔で構成しようと言い出さなければ、本当に人質としてゆりかごに送られていたのだ。

 

「まあまあ、過ぎた事を愚痴愚痴いうのは止めましょう。師匠も、クロノは仕事で疲れていたんです。大目に見て上げましょうよ……」

 

『……………………』

 

「スゲー、上から目線だなぁ……おい」

 

あれ?何でか、みんなから白い目で見られている。

師匠も、呆れた様に俺を見上げているけど……変なこと言ったかな?

 

 

 

 

 

 




説明をハショッてしまったので、あとがきでフォロー。
レジアスにも、全部ネタバラししました。最初は、親の仇を見るような眼で見ていたけれど、相手が理不尽過ぎて諦めたもよう。因みに、レジアスは『テロには屈しない!』の精神で要求をはね除けようとしたんだけれど……最高評議会撤廃後に作っていた議会協力の権力者達に抑え付けられて、時間稼ぎの為に要求を受け入れる形に。どうせ、相手が要求しているのは局員なんだからと丸め込まれてしまったモヨウ。

ゆりかごの主砲は、連射出来ない仕様にしてあります。
その上で作戦立案。クロノンが何も知らなかった件。
ただ、弄りたかっただけだよ!!

【外】に在住する《神殺し》達は、第三世代の《神殺し》で三種・第五戦鬼と呼ばれる亜人や龍族の集まりです。w
だから、そこそこ強い存在ではありますが【管理者】単体は余裕でも《人工落ち神》の大群には、負けてしまいます。

誤字・方言あれば報告をお願いします。
m(_ _)m

感想もあれば、お願いします!
いつも読んでくれる方々に感謝を……。
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