絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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一二五話

 

 

私達は、一発合格で嘱託魔導師(戦士)になり、チビッ子達は司書資格を得て無限書庫に潜り込んだ。

神崎を刺した、黄泉岸航の罪は歴史改竄で無かった事になったが為に今も普通に局員として働いている。

ただ、素行の悪さは折り紙付き。自称オリ主を目指しているからか、一般的な常識は自分には適応されないと本気で信じているもよう。

そこら辺は、彼方から近付いて来たので……『正直者の陣』で、根こそぎ吐かせた結果である。

その事を神崎経由でチビッ子に伝えたら、リンディさん達含む後見人は余り良い顔をしなかった。ただ、チビッ子はこれでリンディさんが悪玉転生者を有効利用する事はないだろうと言っていたので、私の役割は果たした事になる。

ただ、問題があるとするなら嘱託を拝命する際に紹介された魔導師が【転生者】だった事ぐらいだろう。

 

「神崎を見て、ギルガメッシュ!?なんて、叫び出さなければ今でも普通の生活が出来ていたはずなのに……ね?」

 

「いや……まあ、そうなんですけど……」

 

「まさか、自ら死地に足を踏み入れる馬鹿がここにもいたとは……考えもしなかったよ……」

 

「イジメ無いでください……」

 

彼の名前は、『ミズキ・レンゴク』。

見た目は、今時の男の娘。可愛いのに、男だと言うのだから世界は正気じゃ無いらしい。魔力ランクは、一般魔導師よりかは高めのB+。魔力光は黄緑。空戦A、陸戦A。

でも、私達みたいな魔改造転生者ではないらしい。

デバイスも、局から借りた一般的なストレージ。

つまりは、地獄行きの亡者だった。

 

「生前、死んだと思ったらこの世界で……最初は、とても困惑したんです……神様に会っても無いのに【転生】とか……」

 

彼が、そう言うのも仕方がない。チビッ子の調べでは、彼は地獄の裁判を受ける前の状態で転生したらしい。

だから、一般転生者という分類に入るらしいのだが……彼が転生した時に、使用されたのが救済システムであるが故に、現状の罪歴は相殺されほぼ地獄行きは無いとのこと。

 

「まさか、自分が地獄行きの亡者で……今世で、善行を行い続けていたから地獄行きを免れていて、そのまま生きてOKと言われるなんて思いもしませんでしたけど……」

 

「まあ、戸惑うのは仕方がない。だが、モノは受け取り様だ。喜んでおけば、良いじゃないか……」

 

「それは、そうなんですが……」

 

神崎の言葉はそこそこに、私達は友好を深めて行く。

彼は、善良な転生者という見方でチビッ子と神崎が意見を一致させて、今は私達の善き理解者でもある。

 

「まさか、転生後に守護騎士化する人がいようとは思いませんでした。裏側の話もそうですが、《神殺し》と【神々】が転生者を間に挟んでイガミ合っているとか正気じゃないですよね……」

 

『否定はしない』

 

そこら辺の基礎は、チビッ子と神崎が説明していたし【凌辱系転生者】に関しては『そんな、クズがいるのか!?』とバッサリ斬り捨てていた。

 

「《ニコポ・ナデポ》とか、要求する転生者って何なんですかね?「グフッ……」神崎さん?」

 

「神崎は、元・踏み台転生者よ(笑)」

 

「そうなんですか!?」

 

「クソッ!なんで、《ニコポ・ナデポ》なんて要求してしまったんだ!?それを、戦闘系のスキルにしていればもっと師匠に尽くせたのにぃっ!!」

 

「…………これ、改心してるんですか?」

 

「まあ、そういう事になるのよね……」

 

嘆く神崎。それを、苦笑いで眺める私達の図。

神崎が、チビッ子に全力信仰状態だけど……今の神崎があるのは、チビッ子が色々してくれたお陰なので何も言えない。ミズキも、下手をすれば似た様な状況だったからか何も言わないけれど、神々の悪辣さには物言いたい様だった。

 

「そう言えば、鉄さんの修行は……凄かったですよね……」

 

「……………………」

 

少し前、地球に連れて行った時に見せた鉄翼刀強化修行の事を思い出したのかミズキがその話題を持ち出してくる。

瞬間、神崎が大人しくなってダラダラと冷や汗を流しているのが目に映った。ミズキが、興奮した様子で鉄の修行を語り出すとあらぬ方向を見上げて現実逃避に走っている。

 

「剣を、完全に静止させるとか凄かったです!!」

 

正確には、剣先にお皿を縦に乗せて落とさない修行の事である。チビッ子や使い魔達の話では、精神修行というモノだった。その時、神崎はというとその隣で土系の魔法を練習していたのを覚えている。

やらされていたのは、錬金系の土から刃を精製する魔法。

成功した分を、ゲートオブバビロンに入れていたから神崎にその気があれば、宝具ランクEレベルのゲートオブバビロンが出来るだろうとチビッ子達は言っていた。

ついでに言えば、精製速度と練度が上がれば瞬時にランクAクラスの武器が精製出来るようになるから、将来的にゲートオブバビロンから輝く黄金の武器が射出されるようになるらしい。ただ、神崎には不評。何故なら、チビッ子の《なんちゃってゲートオブバビロン》を見ちゃったから。

アレを見て、自分のを見たらチャッチ過ぎて萎えたと言ってた。今は、そんな事を気にしている場合ではないのに……使えるなら、チャッチくても使えば良いのだ。

 

「師匠が、邪神過ぎて泣きそうだ……」

 

「頑張りましょう?ね?」

 

「……………………」

 

空間遮断に匹敵する防御魔法を剣状にして、雨霰よろしく撃ち出すなんて事を平気でやるんだから溜まったものではない。しかも、拷問拷問と楽しそうで否定してはやれなかった。見えない、防御出来ない、回避不可能って、どんな攻撃よ!?しかも、数が尋常では無いって正気度が薄くて頭が痛かった。

 

「最近は、無限書庫に引き込もっているんですよね?」

 

「毎日、地球に戻って楓の説得もしているがな。超長距離次元転移が出来るからやりたい放題しているよ」

 

「僕らみたいな低ランク魔導師からしたら、羨ましい限り何ですけどね……」

 

「その代わり、瞬動術と鎧通しを修得中なんだろ?」

 

「まさか、その二つを自分が使うことになろうとは思いませんでしたけどね……現時点で、瞬動術はそこそこ。鎧通しは、出来るのかわからないです……」

 

「師匠に手解きして貰ってるんだろう?」

 

「たまにですけど……普通に、身体を鍛えていれば出来ると言われました。でも、道は遠いです」

 

「まだ、始めて一ヶ月も経ってないだろう?いきなり、諦めムードでどうするよ!?とりあえず、半年は覚悟しとけ?鎧通しは、大体それくらいは掛かるヤツだ」

 

「半年ですか?わかりました、気長にやります……」

 

余りにも、魔力ランクに拘っていたので今チビッ子と神崎がミズキを魔改造中だ。それが終われば、ミズキが周囲に広めて行く手はずになっている。それが、どんな影響をもたらすかはわからないけど、この辺りからの改革が一番効果があるという事だった。

 

「また、管理局が【ヤ】の付くお仕事になりそうね……」

 

「ヤ?……ああ、師匠が『潰せ』とか言い出しそうだ(笑)」

 

「や?や、や……や……?」

 

ミズキには、【ヤ】の付くお仕事が今一わからない模様だった。だけど、わからない方が幸せかもしれない。

 

「それで?地球の方にいた、もう一人の魔導師はどうなっているのかしら?」

 

「ああ、あの巨乳ちゃんか……」

 

それは、失礼極まりない覚え方だった。

コイツ……だから踏み台なんて呼ばれるんだってわからないのか!?と神崎の言葉にイライラしてくる。

 

「鳴宮海沙姫よ!ちゃんと、覚えておきなさい!」

 

「なんで、不機嫌なんだ!?」

 

「別に、不機嫌じゃないわよ!」

 

「不機嫌だろう!?俺、なんか変なこと言ったか!?」

 

「五月蝿い!それで!?」

 

「ううっ……今の所は、動きはないよ。フレールくんの調べでは、たまに結界を展開して空を飛んでいるくらいだそうだ。大かた、空を飛んでみたかったんじゃないか?」

 

「…………まあ、わからないでもないわ。自由に空を飛べるのって、そこそこ楽しいし……生前を考えるなら、それだけは転生して嬉しかった事の一つね……」

 

「だよなぁ……」

 

それに関しては、神崎も同じ気持ちの様だった。

それが、少し嬉しくて『クス』と笑いが溢れる。

 

「じゃあ、そろそろ俺達も移動を開始しますか?」

 

「本当に行くんですか?神崎さんは、空を飛べないという事でしたけど……」

 

「問題ねェよ。これでも、三体の戦闘機人相手に無双した事だってあるんだ!」

 

胸の前で、拳をバシッ!と自分の手で受け止めて神崎はチビッ子の様な邪悪な笑顔を浮かべた。こうなると、神崎は手の付けられないバトルジャンキー化するので困る。

 

「え゛!?」

 

ミズキが、驚いた様に神崎を見上げる。その様子からは、この人も怪物なのか!?みたいな驚愕を見て取れるので、この後の捕り物は見物になりそうだった。

 

「さあ、行こう!!」

 

他の局員達が、犯罪者達をこちらへと追い込んで来る。

私達は、追い込まれてくる犯罪者達を捕まえるのが目的だ。本当は、Sランク魔導師である私が捕まえる事になっているのだけど……地上の方は、神崎にお任せするつもりだ。

ハイウェイを、猛スピードで走ってくる車が見える。

その後ろを、局の魔導師達が追って来るので間違いなくアレが目標の様だ。神崎がまず、ハイウェイの中央へと歩いて行き……私は空へと上がって行く。

 

「翼ぁー!後方支援よろしくな!!」

 

「ええっ!?翼さんが、後方支援なんですか!?」

 

20のシューターを展開して、問題ないことを告げる。

ミズキが、何かを言っているみたいだったけど気にしない。気にするだけ無駄だ。

ある程度、近付いて来た車に神崎が突撃する。

それを、フォローするようにシューターを撃ち出して再充填。神崎は、猛スピードで突っ込んでくる車を素手で殴った。その結果は、車の方がクラッシュしながらガードレールに突っ込み、犯人達が呻きながら車から這い出て来るというモノ。当然、追って来た局員の方々も早々に到着し、神崎の恐ろしいまでの力にドン引きしていた。

宛にしていた戦力(私)を差し置いて、非魔導師である神崎が拳一つで犯罪者の武装を破壊しつつ殴り飛ばしている。

犯人が質量兵器(ハンドガン)を至近距離で発砲しても、手にしているナイフで飛んでくる弾を切り払い、犯人が混乱している間に意識を刈り取っていく神崎の手腕にだ。

最終的に、ほぼ一人で犯人を殲滅した神崎は物足りないと言いつつミズキの方へ。固まっている局員に、犯人の拘束を告げながらこの世界軸初の任務を終了させた。

 

「リアルラカンがいやがる……」

 

「リアルラカンw見た目は、ギルガメッシュなんだがなぁ……って、誰がバグだ!?」

 

「でも、似た様なモノじゃないですか!?」

 

「大丈夫。お前も、バグるからw」

 

「嫌だ!バグりたくないっ!!」

 

「生活が楽になるぞ?」

 

「局員である以上、生活が楽になる事は無いです!」

 

神崎の誘惑を、現実で振り払うミズキ。

しかし、生活が楽になるのは金銭的な話なので神崎の言い分は正しかった。

 

「お疲れ様。この後、どうするの?」

 

「少しずつ、仕事をこなして……あの黒塔の天辺に行けるまで頑張るさ。まずは、あの人に会ってみてそれとなくアレに関する事を聞いてみる……」

 

「そう。なら、私はその補佐ね……」

 

「恐ろしいなぁ……お二人の話を聞いていると、普通に可能の様な気がしてきます……でも、余り突つかないでくれませんかね?マジ、命が惜しいんで……」

 

「わかってるさ。俺達がやる事は、低ランク魔導師の底上げと、あの人達の凝り固まった常識をブチ壊すだけだよ」

 

「ある意味、『幻想』をブチ壊されるんですね」

 

「ネタ突っ込んでくるなぁ……お前は……」

 

「すみません。好きだったモノで……」

 

「ヲタク会話は、もういいわ。帰りましょう……」

 

二人を放置していると、何時までも続けていそうだったので早々に切り上げて帰途に付く。

 

 

……………………。

 

 

ある程度までは、局員の車で送って貰ってそこからは交通機関を使っての帰宅となった。今、借りている部屋はリンディさんが用意してくれた局員寮。男子寮と女子寮とあるので、神崎とは女子寮の前で別れる。

その後ろ姿を見送って、私は自分の部屋へと戻った。

部屋に入ると、何故かアリサ・バニングスと月村すずかがいて出迎えてくれる。

 

「何してるのよ……貴女達は……」

 

「ちゃんと、リンディさんの許可は貰ったわよ?」

 

「突然、押し掛けてゴメンね、翼ちゃん。でも、今日だけは泊めて欲しいんだけど……」

 

「なのはん家に、パパが来たのよ……」

 

「パパ……その年で、パパ……?」

 

「うっさいわねっ!御父様が乗り込んできたのよ!!」

 

「迎えに来てくれたんなら、帰れば良いじゃない……」

 

「帰れる訳無いでしょ!?私は、啖呵を切って飛び出したのっ!迎えが来たからって、おめおめと帰れる訳無いでしょ!?」

 

「すずかは、アリサの付き添い?大変ね……」

 

「あー……うん。そうだね……」

 

「ちょっと、すずかぁ!?」

 

「まあ、事情はわかっているから良いけど……明日には、帰るのよ?学校もあるんだから……」

 

「グッ……アンタは、私のお母さんか!?」

 

「あら?そういう事いうなら、なのはにここにいるって連絡するわよ?言ってないんでしょう?」

 

アリサとすずかが、揃って視線をあらぬ方向へ。

もし、ここにいる事をなのはやフェイトが知っていたなら既に迎えに来ているはずだ。何も告げずに来ているからこそ、アリサ達が隠れていられるのだと推測した訳だけど……まさか、図星とは思いもしなかった。

 

「まあ、良いわ。今日だけっていうなら、今日だけは泊めてあげましょう……じゃあ、買い出し。手伝って貰える?」

 

「居候しに来た訳じゃ無いもの、もちろん手伝うわよ!?」

 

「アリサちゃん……」

 

という訳で、女三人のパジャマパーティーが開催される事になった。とは言え、すずか達が家出娘レベルのお泊まりセットしか持っていない事や、それをデバイスの格納領域に入れている事はわかっているから足りないものを中心に購入した。夕食を食べ終えれば、待っているのは恋人がいない女三人の恋ばなになるのは当たり前で、学校に行っているはずの二人の話を私は聞いているだけだった。

 

「そう……香椎先輩が、誰かと付き合っているのね?」

 

「そう、そうなのよ!あの真面目な先輩がよ!?」

 

「聖祥大男子中の誰かなのよね?」

 

「うん!!」

 

「ふぅ……そうね。バスケ部の主将だったかしら……?」

 

まあ、平行世界の知識ではあるけれど、私の世界で当時噂になった程度の話を聞かせてやる。つまりは、誰と誰が付き合っているのかを本人ではなく、多少の違いはあるけれどそれを知っている私から聞き出すのがアリサ達だった。

 

「そう言えば、双夜はどうしているの?」

 

「あら?聞いていないのかしら?」

 

「聞いていないというより、何も話さないのよ……アイツ」

 

仕事の事は、基本的にノーコメントを貫くのがチビッ子だ。そりゃ、仕事仲間である私達やリンディさん達は別だけど……すずか達を巻き込まない様にしているのだろう。

 

「なら、私も語る言葉は無いわね……まあ、それでも聞きたいなら……無双しているらしいわよ?」

 

『ムソウ!?』

 

「ええ。本を片手に、無双しているわ……」

 

『本を片手に!?』

 

「って、訳がわからないわよ!?」

 

「あ、アリサちゃん!落ち着いて……!でも、双夜が本を粗末に扱う訳がないから……比喩か何か何だよね?」

 

「いいえ。そのままの話だそうよ?」

 

と、良い感じで相手を混乱させる様な事を言ってみたり、チビッ子よろしく攪乱してみたりした。

……チビッ子は現在、かなり正気度を失っているらしい。

もちろん、忙し過ぎて目が回る程だと言っていた。

そこへ、双夜が裏側の情報を掘り起こしているという話をスパイ経由で知った『管理局の闇』が、双夜を亡き者にせんと犯罪者を送り込む訳だ。

その結果が、どうなるか言うまでもないだろう。

双夜が、犯罪者集団を壊滅させたり……『正直者の陣』で、黒幕を吐かせたりするから……さあ、大変!!

更には、証拠もザックザック掘り起こして……現在、本局は上から下まで大混乱なんだそうだ。

 

「態々、捕まりに行かなくても良いものを……」

 

「翼ちゃん?」

 

「何でもないわ……そろそろ、寝ましょう?」

 

「そうだね。……って、アリサちゃん。もう寝てる……」

 

「一番騒いでいたのが、真っ先に寝るのは何処の世界でも一緒ね……明日の朝が、大変そうだわ……」

 

「はううっ……」

 

ベットに入り、目を閉じる。

それで、思い浮かべるのは神崎の事。離れて暮らしているからか、アイツの事を良く思い出す様になってしまった。

思い起こされるのは、私を庇ってクズに刺された時の事。

自身もボロボロな癖に、最後まで私を気にかけてくれた神崎。大丈夫、と声を掛けてくれて笑って消えていく彼。

それを見た瞬間、頭が真っ白になった。

失いたくない、と……手を伸ばし、胸が苦しくなる。

 

「……………………」

 

真っ先に来るのは、認めたくないという感情。

でも……心でも頭でも、私はもうわかってしまっている。

それでも、私はそれを否定した。

だって、私が先に堕ちるなんてフェアじゃないわ。

堕ちるなら、アイツが先じゃなきゃ認めてやらない。

それに、あの馬鹿は原作人物の方にまだ心を向けている。

現実を、あの馬鹿にわからせて私はーーーー。

その後の記憶は、私にはない。(血圧上昇の為、気絶?)

ごちゃごちゃ考えている内に、眠ってしまったらしい。

目が覚めたのは、アリサが起きる少し前で……アリサは、私を起こせなくて残念がっていた。

朝食を食べて後片付けをした後、自分が出るのと一緒に彼女達を送り出す。偶々、神崎も来ていてすずか達がいる事に鳩が豆鉄砲に当たったかの様な顔をしていた。

 

「神崎くん、翼ちゃんのお出迎え?」

 

「え?あ、ああ。つーか、学校大丈夫か?」

 

「遅刻は、覚悟の上よ!」

 

「ダメだろう……師匠に、言っておくからな?」

 

『うっ……それは、ちょっと……』

 

チビッ子に一対多数で、蹂躙された事を思い出したのか二人が顔を青くして顔を背ける。楓と顔を会わせたくないアリサを帰るように説得していた時、アリサが怒り出してそれなら模擬戦で負けたら帰るなんて無茶を言い出した。

アリサが言い出したので、一対一の単騎決戦でもやるのかと思いきや、その時地球にいた魔導師全員でチビッ子を袋叩きにしようとしたのである。まあ、なのは達はアリサに捲し立てられてはいたけど消極的だった。

しかし、始まってみればたった一人の幼児に蹂躙される原作魔導師組+2人。最後の方は、なのは達も本気でやっていたけど……砲撃を受け止めて、投げ返して来る常識の遥斜め上を素でひた走るチビッ子に終始翻弄されていた。

シグナム曰く、正気の沙汰ではないらしい。

まさか、シグナムにそんな事を言われるとも思っていなかったチビッ子はすずかに抱き付いて落ち込んでしまった。

 

「それじゃあ、二人共気を付けてね?次は、絶対泊めないから……来たら、無限書庫に連れて行くわよ?」

 

『は、はい!!』

 

「あ、何なら俺のへyごab□ふじk!?」

 

神崎が、何かを言う前に封殺した。すずか達が、苦笑いしているけど気にせず地球に急いで送り返す。

学生を何時までも、ここに置いておく訳にはいかない。

その後、苦悶している馬鹿を引き摺って待ち合わせをしていたミズキと合流した。

今日は、他の部隊の局員を交えて瞬動術と鎧通しのパフォーマンスを行う日だ。

昨日の大捕物は、この日の為の布石。

これで、評価されれば今度は神崎が主だって作る『小修羅』達が生産されて行く事になる。私達が、伝えればそのまま技術が局員達に伝わるから、チビッ子の様に何世代かに別けて技術を伝えなくて済むのが利点だった。

その舞い舞台に、ついにたどり着く。リンディさんやクロノ達に手伝って貰って、接近格闘魔法術を専門にする人達を集めて貰っていたのだ。ここには、それなりに武術に心得のある局員達が集まっている。

 

「ーーーーーーーーーー」

 

 

 

ーーそう……そのはずだった。

 

 

 

だが、そこにいたのはーーいや、あったのは小さな舞台と数人のお偉いさん達。他の部隊の局員達は、一っ子一人いない客席も閑古鳥が鳴いている様な場所だった。

 

「そんな……これって、どういう事!?」

 

「あー……これは、実装されないパターンだな……」

 

「なんでよ!?」

 

あんなに、色々と手を回して貰ったのに……まさか、リンディさん達が嘘を付いていたとでもいうのだろうか!?

 

「圧力が、掛かったんだろう?何処から、掛かったのかはわからないけど……やっぱり、黒幕に転生者が関わっているのは確定事項かなぁ?」

 

「そんな……これを広めれば、戦力の底上げになるのよ!?」

 

「だからさ。低ランクって事は、叩き上げの人材だ。成る程、師匠が訓練校に入った訳がわかるぜ……ま、俺は全力でやるだけだけどな!」

 

そう言って、神崎は瞬動術と鎧通しを数回見せて終了。

何とかなるかと思っていたけど、余り良い評価は得られなかった。いや、むしろ神崎を批判する声の方が高かったのだ。神崎の話では、ここに集まっていたお偉いさん達全員が魔法至上主義の団体さんだったらしい。

そんな奴等の前で、質量兵器と変わらない戦い方を見せればどうなるかくらいはわかる。つまり、戦力の底上げは出来ず……局員達は今のまま、犯罪者とのいたちごっこを繰り返すだけとなるる訳だ。しかも、その犯罪者の大半が管理局の闇が産み出した犯罪者だって事がわかっているから……余計に、目も当てられない。

 

「どうするのよ?」

 

「魔法で、出来ないか試して見るか?消費魔力が、少なければ良い訳だし……ミズキの協力があれば、何とかなるだろう?……あ、いや。無理そうだ……」

 

神崎の視線の先を見て、愕然としてしまう。

視線の先には、魔法至上主義のお偉いさんとミズキの姿。

ミズキは、食い下がっているみたいだけど……何かを強目に言われてガックリと力を抜いた。

そして、お偉いさん達は退場。何の意味も無かったと、大声で笑いながら立ち去って行く。それを、目で追っていた神崎が何かを見付けて大きな舌打ちをする。

 

「…………チッ。黄泉岸航……」

 

「え!?」

 

視線を、お偉いさん達が歩いて行く方に向けると確かに黄泉岸航の姿があった。黄泉岸は、お偉いさん達と合流してニヤニヤ顔で去っていく。

それを見て、私は確信した。アイツが、私達の邪魔をした張本人であると。だが、状況証拠と憶測だけで決定的な証拠は何一つない。『ヤられた……』という、悔しい気持ちを押さえながら私達は初の敗北を味わうのだった。

 

「俺達の行動全てを、高町達へのアピールと取られた様だな……全く、目障りな……」

 

「ブチのめしたくなるわ!!」

 

「そう怒るな。アイツは、局員で俺達は嘱託だから……その、信用性を利用したんだろう……」

 

「権力を持つ者と、持たない者の差を見せ付けたって事?……最低ね……」

 

「まあまあ……せめて、瞬動術だけでも伝えられたら良いんだが……色々、難しそうだな」

 

そんな感じで、私達の低ランク魔導師の戦力底上げは失敗に終わった。片付けを済ませて、沈黙するミズキと共に舞台のあるホールから出る。

すると、何故かチビッ子が玄関口で待っていた。

 

「よぉ……お疲れ……」

 

「師匠……無限書庫に、引き込もっていたんじゃないんですか?」

 

「うん?まあ、そのつもりだったんだが……弟子の晴れ舞台を見に来たんだが……入れて貰えなかった……」

 

「そ、う、ですか……」

 

「で、入れて貰えなかった連中と一緒に、フレールくんが流した神崎の武舞いを見て貰ってな?連中が、戦力の底上げになるならやってみたいって言ってるんだが……どうする?」

 

『ーーーーー』

 

ニヤリと邪悪な笑みを浮かべるチビッ子を見て、私達はその背後に視線を向ける。そこにいたのは、リンディさん達が集めてくれたたくさんの局員達。全員がニカッと笑って、私達に手を振ってくれていた。

 

「師匠……こんなん、俺……俺……」

 

「良かったですねっ!神崎さんっ!!」

 

神崎が涙ぐむのを見て、私も貰い泣きしてしまう。

あんな、妨害工作が行われて落ち込んでいたのに、こんなフォローされたら……それが、チビッ子の策略だったとしても、私は何も言えなくなってしまった。思いがけないサプライズに、胸の奥底から感情が溢れる上がって来る。

 

「ああ、もう……こんな事されたら、貴方に幾らでも付いて行きたくなるじゃない……」

 

「今頃か?全く、遅いなぁ翼は……」

 

神崎が、局員達の輪に加わって行くのを見送りながら私はチビッ子に文句を言う。不本意ではあったけれど、私はこのチビッ子を認めるしかない様だ。

このチビッ子こそ、私の……私達の【希望】なのだと……。

 

「さて……翼に取っては、これからが大変だぞ?恋に、仕事に、転生に大忙しだ!!」

 

「恋なんてしてないわ!!」

 

「まだ言うか!?」

 

「してないもの。してない事を頑張る事なんて出来ないわよ?そうでしょう?」

 

「…………まあ、良いけどね。じゃあ、僕は無限書庫に戻るよ。目的は、達成したし。ここにいる理由もないからね?」

 

やっぱり、私達のフォローに来ていたらしいこのチビッ子は、それだけ言って姿を消した。

もしかすると、最初から姿を隠していたのかもしれないけれど……最高に粋な計らいをするチビッ子である。

漸く、私達の魔導師の戦力底上げ計画はスタートラインに立った。これから、様々な事があるだろうけどそれらを押し退けてやる以外の選択肢はない。

私も、神崎を支えて行かなければならないし、あの技術を巡る争い事も増えてくるだろう。

だけど、まずは今を喜ぼう。せっかく、チビッ子が用意してくれた舞台なんだ。彼処にいる全員が、この先の未来を繋げていけるように私達が頑張らないといけない。

私は、その覚悟を決めて神崎達に合流した。

 

 

 

 

 

 

 




神崎に、称号が追加されましたww
何故か、リアルラカンwまだ、その境地には至ってないはずなんですが……一般の転生者から見ると、リアルラカンに見えるそうですwwまあ、双夜最近大人しいけど、リアルラカンは双夜にこそ相応しい?

そして、漸くすじゅかも魔導師化。
代償に、吸血鬼人生を捧げて本人は超嬉しいww
そのまま、バジャマパーティーをして翌日は神崎の踏み台様発言が良い感じに翼の制裁の餌食となる訳よww最近、ご無沙汰だったので突っ込んでみたww

双夜の【希望の神格】は伊達ではないのだよ!!
神崎達の失敗をフォローする双夜。失敗に終わったかに思えたパフォーマンスは、双夜の【希望】によって拾われたww
その後は、翼の全力否定ww乙女心は複雑なんだそうだ。w

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