絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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一二七話

双夜

 

 

人間の精神は、耐久力が低いので持って5日が限界だ。

徹夜をさせるにしろ、それ以上は精神を病ませる可能性がある。しかし、この世界軸の時空管理局が抱える闇は……管理局を、都合の良い組織にしようと色々していた転生者のおかげで深くなっていた。一部の高官の腐敗化だけでなく、正常なはずの局員の悪落ち化も多く広範囲に広がっている。もはや、管理局に正義は無く【悪の組織】と言っても過言では無くなっていた。

一応、リンディちゃん達に教える事件は厳選して法から大きく逸脱しているモノを回している状態だ。

それでも、リンディちゃん達や執務官達を病ませても有り余る状況で、一層の事……俺が資料や報告書を作り、それをリンディちゃん達に与える方が効率的かもしれない。

そんな中、ユーリから何度目かのリンディちゃん崩壊が報告される。俺は、急いでリンディちゃんの元へと戻り【真実の瞳】を使ってリンディちゃんを正常な状態に治した。

そこで、以前やった俺が纏めた資料を元に証拠と裏付けをするだけの方法を呈示した所嫌がられてしまう。何でも、自分達の能力が低く思われているようで嫌なんだそうだ。

全くただの、効率化重視の方法なのにそんな風に思うなんて人間は面倒な生き物である。

こう、何度も壊れて貰っては進む物も進まない。仕方ないので、リンディちゃんや他の提督……それに、執務官達には悪いがこちらで纏めた資料と時空管理局風に作成した報告書並びに提出書類を俺と使い魔で大量生産。(一件別)

それを、レティの元に送り出した。

すると、手法を変えた理由を求められてしまう。効率化重視と答えたが、執務官や提督の能力が低いのか?という質問が相次いだ。能力ではなく、『精神』が脆いからと答えた。その上で、何人かの使い物にならなくなった人達の報告を入れる。そのリストの中には、リンディちゃんの名も記載しておいた。それを皮切りに、執務室に拘束される人達の精神的なケアや肉体的状態の報告を上げて行く。

これ以上は、肉体と精神に致命的なダメージにもなりかねない事を報告した上で、一ヶ月程休暇を与える事を進言した。事実上のドクターストップである。

 

『三年前とは、違うのね?』

 

「これ以上は、精神が持たないと考えるよ。三年も頑張ってくれた事は評価するけど……そろそろ、ドクターストップが掛かっているんじゃ無いか?」

 

『……………………』

 

「調べたよ?一部、ローテーション組んでる方々もいるそうじゃないか……だいぶ前から、既に報告に上がってたんじゃないのかな?」

 

『……ええ。一年程前からよ……』

 

「だったら、この手法を取るしか無いよ。説明を求められるなら、僕が直々に教鞭を取って説明するよ?」

 

『………………そう……』

 

「プライドと能力が高いのはわかっている。しかし、この状況下では大事を取った方が良いんだ……実際、見付かっている事件数と報告している事件数は違うし……」

 

『……それ、どういうこと!?』

 

「ん?ああ、細かい事件は送ってないんだよ。管理局の法から、完全に逸脱しているモノを厳選して君達に処理して貰っている。その他の、法には触れているけど……法に触れている件数が少ないモノは、こちらでカットさせて貰った訳だ…………知りたい?」

 

『出来れば……』

 

「……………………数、すごいよ?」

 

『そんなに?』

 

「圧倒的に」

 

『…………………………………………見るわ……』

 

「そう?じゃあ、送るね?」

 

そう言って、今まで止めていた報告書と証拠物件等を纏めた資料を送り出して行く。レティ提督の目の前に、その瞬間から数時間に渡るメールデータが呈示され始めたのだった。その結果、レティ提督が壊れる結果となる。

とりあえず、自動送信モードを設定してレティ提督の元に飛び精神を正常な状態に治し落ち着かせた。

 

「こんなにあるのね……」

 

「うん?いや、まだ氷山の一角程度……掘り下げれば、もっと出てくると思われる……」

 

「………………………………」

 

ヤバイ。レティ提督が、余りな現実に白目を剥いてガタガタ震え始めてしまった。兎も角、落ち着かせなければ……。

 

「で、今送られて来ている資料は細かいけれどメインとなる犯罪ね?余罪に至っては、『馬鹿なの?死ぬの?』みたいな件数になってるよ?」

 

「良いから、ハッキリ言って貰えるかしら?」

 

「確認できているだけで、百万の単位を超えちゃったwもう、笑うしかないよ?」

 

「ーーー百万越え……orz」

 

レティ提督が、綺麗なorz状態になってしまった。

影が薄く伸びて、うっすら煤けているようにも見える。

 

「管理局内部犯罪で、これだけあるんだ……次元世界を含めると……億越えは、覚悟しておくと良い……」

 

「……億…………頭が痛くなって来たわ……」

 

「世界が増えるイコール人が増える……それの比例イコール犯罪だからな。魔法の管理と制限なんてやっていれば、いずれ管理システムは崩壊するだろう……」

 

「…………縮小しろと?」

 

まあ、その通りなんだけど……部外者の俺が、言うべき事では無いのでとある例え話で例題を与えてやる。

 

「今の管理システムをとやかく言う訳じゃないけど……ロストロギアにしたって、人的無害なモノまでかき集めてるだろう?例えば、ドラゴンから村を護る役割をもったロストロギアがあったとしよう。それなのに……ろくに調べもしないで『ロストロギアは危険なモノなんだ!』と盲目的に奪い取ってフォロー無し。『その世界が危険なら、ミッドチルダに行けば良い』と言ってこの世界に連れて行く。例えその民族が、狩りや農業を生業にしている自給自足の民族だったとしてもだ。そして、高い税金を課して奴隷の様に働かせようとする。そりゃ、この世界のシステムがそうなんだけど……つい、先日まで自給自足が当たり前だった民族からしたら溜まったもんじゃない。故郷を奪われた揚げ句、奴隷としてこの世界に連れて来られた様なモノだ。現体制に馴染めずに、テロリストにもなるさ……」

 

「……待って!それ、本当にあった事でしょ!?」

 

「えー?どうかなぁ……まあ、その局員さんはそのロストロギアのおかげで出世したらしいけど。他人を不幸にして、幸せになれるんだから……現システムって便利だよね?」

 

「最悪だわ……」

 

良くある小話のつもりだったのに、レティ提督が頭を抱えて『もしかしなくても、あのロストロギアよね……』等と呟いているので記憶にある件だったらしい。珍しく、人畜無害なロストロギアだったから記憶にあったと思われる。

しかし、その入手方法については知らなかった様だ。

それを入手した局員は、その珍しいロストロギアを報告して出世したのは本当。更に、ミッドチルダに移住したその世界の民族が近代的な文明に馴染めずテロリストになったのも事実。その他にも、ミッドチルダ式の文化や文明に馴染めてない世界もあるので、それらが敵となっているのも使い魔からの報告で明らかになっていた。

もう、何て言うか……時空管理局は、【悪の組織】で良いと思ってしまう。これを『【正義】だ!』なんて、口が裂けても言えない事が多すぎた。

まあ、俺の基準が【あの組織】なのでそれと比べると見劣りしてしまうのは仕方がないとしても……この組織とシステムが、誰かの都合の良いシステムとされている事は確かなのだ。それはもう、ヤりたい放題のしたい放題である。

転生者も、それを利用しているみたいなので頭の痛い話だった。これで、最高評議会なんて無かったとなれば……時空管理局は、特定の者達に取っての都合の良い組織でしかない。そうなれば、ただの【悪の組織】だ。

そんなモノに、俺が関わる事は無いから邪魔立てするなら潰す事も視野に入れて行動する事になるだろう。

それこそ、TAKE1の時の様に消し飛ばしてからゆっくり【転生者】を探して回る事になる。囮役をやっているからとは言え、そもそもこんな事をする必要は無いんだけど……ただ、『なのは』達原作人物に甘えてゴロゴロしているだけなんて逆にしんどい。だから、暇潰しとして時空管理局の正常化をやっている訳だ。

それが、使い魔達に迷惑を掛けている自覚はある。

彼等は、片手間に情報収集しているとか……それ程負担にはなってないとか報告してくれているが……多分、それらの情報は片手間ではなく本腰を入れて捜査しているのだと思われた。それ程までに、時空管理局とその取り巻きが引き起こす問題が目に付くのか……目に余るのだと思われる。

 

「アイツ等も、正義の熱血系だからなぁ……」

 

バトルジャンキーもそうなんだけど、【悪】よりも【正義】に系統する奴等だ。狂ってるけど……俺みたいな、【混沌】に系統している魔王じゃない。

 

「あーもう!星間魔術技術の開発だって、滞っているのに何やってんだ『俺』……本当なら、惑星開拓魔術を創って火星をテラフォーミングしているはずだろう!?」

 

レティ提督の執務室から戻って、秘密基地の広間でソファーに沈みながら愚痴る。

そもそも、俺は技術者であって戦う魔術師ではない。

日がな研究室に籠って、ジェイル・スカリエッティみたいに研究漬けの毎日を過ごすはずだったんだ。それが、何をトチ狂っているのか他人の組織を助ける為の情報収集&整理をしているんだから意味不明である。

全ては、あの糞両親が自業自得の成れ果てにそのまま歴史の闇に消えて無くなれば良いモノを……権限を、取り返そうと足掻くから訳のわからない話になってしまうんだ。

元々、アイツ等は頭がおかしい連中だった。

魔術師が嫌いなら、無視していればそれで良かったのに……人権侵害や魔術師を自分達の奴隷の様に扱って、私腹を肥やしたりしていなければ権力にしがみついたりしなかっただろうに。細やかな家庭で、身の丈を超えない幸せを許容出来ていればこんな事にはならなかったはずだ。

だが、片や煌き輝く世界を救いし【英雄】とまで成った憎き魔術師。片や、魔力否定派のカリスマ的リーダーで特殊な宗教の教祖みたいな存在へと上り詰めた非魔術師。

同じ血筋でありながら、その差は歴然だった。同じ血を引いているだけに、彼等は引くに引けなかったのだろう。

それでは、誇れるモノは無いに等しい故に。

魔術師の家系が、輝けば輝くほど惨めな思いをしていたのも知ってはいる。【御先祖様】達みたいに色んな事件に首を突っ込んで解決して世界を救うまでに至った【英雄】レベルには至れなくても、何か一つ魔術師達に引けを取らない何かがあれば違ったのかもしれない。

 

「まあ、そうはならず……全ては、終わった事だ。…………いや、引導を渡した者が語るべき事ではないな……」

 

そう、全ては俺が引き金を引いて引き起こした事柄だ。

幼い子供の様な幼稚で稚拙な【正義感】で、全てを巻き込んで崩壊させた俺が語るべきではないだろう。

若気の至りと言えば、聞こえは良いが現実は最も重い。

愛する者も、護ってきた若き友人達もみんな俺が引き金を引いて巻き込んでしまった。600年以上続いた……とある血筋の身勝手な因習に巻き込んで、その未来を奪わせてしまった罪はありとあらゆる業よりも深く冷たい。

 

「…………前例を知る分、アリちゃと楓の溝が広がらない様にしないと……僕と似た結果になりそうだ……」

 

現在状況では、かなり分が悪いけど。

俺の過去の過ちは、一端置いといてアリちゃと楓の今後の落とし所を考える。リンカーコアの貸出賃金を寄越せ!!とのたまる楓と、実家になんか二度と帰るか!?と怒るアリちゃの気の強い事……。おかげで、完全に平行線のまま三年の月日が経ってしまった。一度は、アリちゃを説得して家に帰した事はあるんだけど……その時に、お金を払う払わないで大喧嘩したらしくてアリちゃは、中学卒業と同時にミッドチルダへと移住したのである。

 

「しかも、財産放棄とか……老後、どうする気だ?」

 

今は、時空管理局でバリバリ働いているので将来的には大丈夫そうではある。だが、あれ以来アリちゃは実家には近付く事もしていないそうだ。

そう、鮫島おじいちゃんに聞いた。

 

「元々は、アリちゃがバニングス家の実子なんだけどな」

 

未成年でも、高ランク魔導師であるなら稼げて暮らせる管理局の嘱託システムが恨めしい。あれさえ無ければ、アリちゃが一人立ちするまでは実家に縛り付けれたのに……全く、面倒事ばかり引き起こしてくれるモノだ。

今現在、アリちゃは管理局の寮ですじゅかママと一緒に暮らしている。あの様子だと、いい人が見付かるまではあんな感じのままだろう。

その弊害と懸念が、黄泉岸航である事は間違いない。

事実、アリちゃとすじゅかママの魔導師化で『俺の後を追って来たのかい?子猫ちゃん♡』とかウザい事を言っていたので、未だに原作人物全員をハーレムに入れる算段でも立てていそうであった。

 

「サクッと捕まえて、バーゲン&タイムセールのハーレムトラウマを植え付けてやりたい……」

 

そう、思っているのに……やたらと遭遇率が低いのは、外部からの干渉以外他ならないだろう。今一不明瞭なんだが、【管理者】はあんな転生者を護って何がしたいのかサッパリわからない。まさかと思うが、このまま上手く誘導すればハーレムが出来ると思っているのだろうか?

 

「……………………あ。その計画を、根底から突き崩せる方法を思い付いてしまったんだが……さて、どうしてやろうか?」

 

思い立ったが吉日。早速、計画を実行に移すべくとある人物にメールを送った。吉と出るか、凶と出るかはわからないが……それでも、邪魔者の一人を抹殺出来るというのは魅力的な話である。

 

「神崎、お前にハーレムをプレゼントしてやるよ(笑)翼に刺されるが良い……」

 

という訳で、関係者各位にその計画を伝えた所……八神はやてが、面会したいと無限書庫までやって来た。

何故か、シャマル先生もいて公ではない密室で向かい合って座る。とりあえず、釘を刺しておこう。

 

「脱ぐなよ?」

 

「脱ぐか!?」

 

「密室に連れて来られたら、真っ先にそれが頭を過ったんだ。まあ、そんな事したらあの悪夢を再現するだけになるだけだし……管理局の機能を考えたら出来ないとは踏んでるけど、もしもって事もあるからなぁ……」

 

「そんなんする訳ないやろ!?まあ、心配なんはわかるけどな……それよりも、本題や。あの話、持って来られた時は正気を疑ごうたけど……本気なんか!?」

 

「黄泉岸航。アレを排除したいんだ……」

 

『……………………』

 

素直にそう言った瞬間、八神が真顔になって押し黙った。

隣にいたシャマル先生も真顔で、少し眉を眉間に寄せて困惑の表情を浮かべる。

 

「どうもアイツ、管理局の闇と繋がってるみたいでさぁ……邪魔なんだよね、管理局の正常化にさ……」

 

「なっ…………それが、何でハーレムになるんや!?」

 

「明確な犯罪をさせて、強制退場させたい……」

 

まあ、本人達を使わなくても出来るのでこんな事を言い出すのは別の意味合いが強い。そのまんま、受け取る事は無いだろうと行ってみた訳なのだが……。

 

「……それは、アイツに犯罪を犯させるって事か?そんなんアカン。時間の無駄やったな……」

 

こちらの意図を全く理解してない八神は、さっさと席を立とうとする。その目の前に、一つのファイルを投げ置いた。正義馬鹿の扱い辛さは、折り紙付きだった。

 

「見ろ。考えが、変わるかもしれないぞ?」

 

「見ぃへん。犯罪の片棒担がせるつもりなら、全うな方法であんたを逮捕するだけや!」

 

「黄泉岸航が、局員である事を良いことに一般人を食い物にしててもか?アイツを放置する事は、犯罪を見逃すって事だ。しかも、無辜の民から大量の犠牲者を出してな……」

 

「……………………」

 

八神はやては、席に座り直しそのファイルを広げた。

 

「これ……っ!!」

 

ページを凄い速さで捲って行く。

 

「証拠は……全て、上層部が回収して事件は揉み消され、アイツを訴えようとした被害者は不慮の事故で死亡……と。おかげで、証拠を掴む事が難しいんだよねぇ……」

 

「あんたでもか?」

 

「うん。でも、八神なら全うな方法で捕まえられるんだろう?お任せって事で、よろしく!……と言えれば良いんだけど、それしたら八神が暗殺されるか……首輪と鎖で繋がれて、アイツが座る傍らで専属の娼婦となってる可能性の方が高いか……」

 

「はあ!?何言うとnーーっ!?」

 

怒鳴ろうとした八神の言葉を遮って、視線と威圧で大人しくさせてから更なる情報を上乗せする。

 

「じゃあ、違法薬物を吸入されて意識を保っていられるかい?違法薬物ウィエトンS-23c……シャマル先生は、知ってるよね?」

 

「え?……ええ。知っているわ……」

 

この場に、医療に携わるシャマル先生がいてくれて助かった。八神が、何の目的でシャマル先生を連れて来たのかはわからないが利用出来るものは全て利用させて貰おう。

 

「何や、ウィエトンS-23cって……シャマル?」

 

「意識は、ハッキリしているんだけど……身体を動かせなくなる危険な薬物なの……」

 

「身体を動かせないってのは、薬の効果がって話ではなくて、薬の効果が切れても身体が動くようになるかは……わからないっていう薬品だ……」

 

「なっ!?」

 

「元々は、次世代の麻酔薬と言われていたモノなんだけど……その副作用がわかって開発中止になった薬品なの……」

 

「解毒法も無いんで、被害者を助けられなくてなぁ……しかも、管理局お抱えの病院に入られたら……容態急変により、死亡……と」

 

「血液検査したら、わかるやろ!?」

 

「それがね、血液検査ではわからないの……」

 

「吸入って言ったろう?粘膜検査になるんだよ……でも、普通にそんなもんやらないんだよね。事件性も無いって事になってるし……解剖に回しても、管理局から圧力が掛かって血液検査程度で終わるし……正攻法で無理だったから、搦め手に走ろうとした訳だけど……別の方法を探すよ。まあ、それこそ犯罪になるだろうけどね。暗殺とかの黒い方法で」

 

「そんなん……っ!!何で、管理局がそないな事せなアカンのや!?管理局は、正義の味方やあらへんのか!?」

 

そう思っているのは、ホンの一部で八神やハラオウン派だけが例外……でないことを祈ってはいる。

 

「正義なんて、人それぞれだよ。そんなもん、夢か幻だ!……って、思ってた方が気が楽だぞ?真実を知った時……」

 

現実って、かなり酷い時があるから……ある程度は、直視を避ける方法を知っていた方が賢い。

 

「っ!」

 

「“俺”も昔、幼稚で稚拙な【正義】を貫いて手痛い思いをしたよ。世の中を……いや、人が抱える闇を甘く見てた。まあ、君等は法の中で出来る事を足掻けば良い……ホント、世界はこんなはずじゃ無い事ばかりだ……」

 

それだけ言って、俺はファイルを回収した。

 

「そう言えば、黄泉岸航ってお前らの幼馴染みなんだよな?小中と一緒の学校に通った……それが、片や正義の味方で……片や正義の味方の皮を被った悪人か。さて、君達はずっとそんな奴と一緒にいて見逃していた訳だが……君達に、罪は無いのかねぇ?」

 

「私等は、何も知らんかったんや!?」

 

「ああ、そうだよ?君達は、何も知らなかった。いや、知ろうともしなかった……か?そんな君に、こんな言葉を送ろう……『無知は、罪なり……』。では、またね?」

 

「っ!?」

 

八神はやては、終始目を見開いて驚愕の表情を浮かべたまま青冷めていた。ちょっと、やり過ぎた感があったけれど……タイミングが、悪かったと諦めるしか無い。

 

「公私混同は、減点だな……昔の思い出なんて、思い出すモノじゃ無い……辛い思い出なら、尚更……」

 

仕方がないので、使い魔の連中に声を掛けて原作人物のデバイス経由であるメールを黄泉岸航に送るよう指示を出した。その結果、黄泉岸航が白昼堂々と全次元放送(使い魔が)を行っている中で神崎大悟を殺害しようとする。

因みに、TV放送は強化された局員を紹介する番組。

最近、調子の良い管理局の理由を探りたかった報道と偶々利益が合致した為、GOサインを出した結果がアレだ。

その場で、強化された局員に取り押さえられるという異例の事態ーー局員が殺人未遂ーーになったけれど後悔はしていない。局員の強化の宣伝にもなるし、それが抑止効果を持てるならば今回の報道は成功だとも言える。まあ、ちょっと過激な映像になったけれど問題はないと考えていた。

 

 

……………………。

 

 

後日、八神はやてが激怒して怒鳴り込んで来たけど知らぬ存ぜぬで通している。ノラリクラリと、ボカした言い方を続けていると俺が殺人教唆をしたと騒ぎだした。

 

「そんなに言うなら、証拠を持って来い。僕が明確に何かをしたっていう証拠をね?ま、ここに来たって事は何も見付からなくて頭を悩ませた末だろうけど……」

 

「くっ……自分のやった事を、ちゃんと理解しとんのか!?あれは、間違いなく殺人教唆や!!」

 

「はあ?僕が、黄泉岸航に神崎を殺してくれ……みたいな事を言ったとでも?馬鹿を言うなよ、査察官殿。何が楽しくて、自分の弟子を殺させる様な事をしなきゃならんのだ?もし、殺るなら翼に神崎が浮気をしているぞ?と言うさ」

 

うん、普通に神崎が翼にボコられる結果が目に浮かんでしまう。それはもう、顔がパンパンに腫れるまで殴られる事だろう。っていうか、今度やってみようと思う。楽しみ。

八神も、それを思い浮かべたのか視線を反らしていた。

 

「ううっ……せやけど、あの話の後でこうもタイミング良く黄泉岸があんな事をするやなんて…………私は、あんたが何かしたんやと思っとるんや……」

 

「奴のデバイスか、パソコンになんか入ってたのか?」

 

ちょこっと、ヒントを与えてみた。

 

「……なんも、あらへんかった……けどっ!!」

 

あるぇ?メールと画像が、消えてなくなった?

『私達、交際することになりました』と『ハーレム完成♪お疲れ様、踏み台(爆笑)くん』が黄泉岸のデバイスに入っていたと思うんだけど……使い魔達が、何かしたかな?

画像の方は、動画等があったはずなんだけどなぁ……神崎と原作人物達が、裸でラブラブしている過激なヤツが。

 

「だったら、アイツが勝手に暴走して捕まっただけの話だろう?……と、はい。これ、あげるからもう帰ってくれない?ああ、それは面白いモノだよ?撮影されたのは、数時間前のヤツだけど……黄泉岸航が、収監されていた監獄から外に出た写真な?」

 

「何やて!?どういう事や!?」

 

これくらいは、自分で調べてくれると助かるんだが……目の前の答えにすがり付いて来る八神はやて。

 

「これで彼は、名実共に影の査察官と呼ばれる管理局の闇のお仲間になった訳だ。ああ、もうすぐ黄泉岸航が監獄内で自殺したって発表されるから騒いでも無駄だよ?」

 

どんな取り引をしたのか不明だけど、ああも簡単に釈放されると本腰を入れて滅ぼしたくなるから止めて欲しい。

 

「わかってて、黄泉岸を捕まえさせたんか!?」

 

そんな訳が、無いだろう!?

完全に、想定外の話だよ。

 

「余程、彼は管理局の闇にとって重要な存在だったんだろうね。全く、あのまま拘置所に入っていれば良いものを…」

 

「…………想定外やったんか!?」

 

「さあ?何の話しかわからないね?」

 

「まだ、白を切る気かいなっ!?」

 

「だから、知らないってば……でも、これで彼は人権すら無くなったと言えるよね?もし、あの状態で殺害されても公には死んだ事になっているから身元不明の遺体になるんだよ?【もし】、死んだらね?」

 

「それは、殺害予告と取ってもエエんやね!?」

 

「だから、何の話さ?僕は、常識の話をしているんだよ?人権を失うっていうのは、そういうことなんだよって言っているだけじゃないか……」

 

「くっ……あくまで、情報を整理した上での判断やいうんやな!?この、鬼ぃ!悪魔!人でなしっ!!」

 

段々、面倒になって来た。何時まで、こんな押し問答を続けなければならないのだろうか?

さっさと、お帰り願いたい。

 

「アイツが、こんなに速く自殺したなんて誰が信じるんだよ?アイツを恨んでいる奴は山ほどいるんだぜ?家族、友人、知人、恋人、親類……上げたら、キリがない……」

 

「その人等まで、巻き込むつもりか!?」

 

「だからっ……《ピピッ、ピピッ》」

 

八神に帰って貰おうと、トドメを刺そうとした所で緊急通信が入って来る。調度良いので、この間に帰って貰おうと考えた。因みに、俺が逃げるって選択肢は無い。

 

「ワリ、通信だ。音声通信のみか……誰だろう?はい。如月双夜です」

 

『マスター、すいません。出し抜かれました!!』

 

「んん?その声は、ロォート?お前って、エイミィさん達の護衛だろう?出し抜かれたって、エイミィさんを拉致られたのか!?」

 

「ちょぉ待ち!?護衛ってなんや?ってか、エイミィさんが拉致られた!?」

 

『いえ、エイミィさんは無事です!ですが、カレルとリエラが拉致されましたっ!!』

 

「何やってたんだ!目を離すなって言ったろう!?」

 

「クロノくんの子供等が……拉致られた!?」

 

『すみません!突然、カレルとリエラの背後に孔が開きまして……急いだのですが、間に合わずっ!!……既に、各使い魔達に連絡して周辺の次元世界を捜索中です!!』

 

「わかった、増援を送る。クソッ!八神がグダグダ言ってくるから!!ああ、もう!カレルとリエラが、人間爆弾になってたらお前の責任だからな!?」

 

「なんや、人間爆弾って……どういう事や!?なぁ!!」

 

いや、後悔するのはまだ早い。まずは、地球に増援を送って周辺の次元世界を捜索させて……。

 

「なぁ!ちょっと、説明して!!」

 

俺の衣服を、掴んで引っ張ってくる八神が鬱陶しい。

しかも、状況を説明しろとしつこくせがんでくる。

誰のせいで、こんな事になっていると思っているのだろうか?さっさと、黄泉岸航を回収して置けば問題無かったのに……完全な後手に、回ってしまっているのにまだ足を引っ張るつもりなのか!?

 

「うっさいなぁ!お前等が、のんびりしている間こっちは打てる手を打ちまくってたってだけだろう!?さっさと、戻れよ、八神はやて。ここから先は、お前みたいなのが踏み込んで良い領域じゃない」

 

「まさか、黄泉岸航を殺す気か!?人殺しなんてさせへんで!?……この手は、絶体離さへんからな!?」

 

ああもう!OK。現実を直視して、絶望するなよ糞餓鬼。

まあ、絶望したらディアーチェが上書きされてしまうかもしれないけど……自分で選択した道だ。諦めて貰おう。

 

「…………チッ。管制通信!!全員に告ぐ。カレルとリエラが誘拐された。草の根を裂いてでも捜し出せ!尚、現在任務執行中の奴は省く。フレールくん、全力放出。《ミリオネア・アガシオ》、《ユグドラシル》全力起動!!!!」

 

無限書庫から、次元転移して地球へ。

向かう先は、地球にあるハラオウン家のベランダだ。

 

「え?ええ?あれ?ここ、地球!?」

 

服を掴んだままの八神が、目を白黒させて驚いているけど無視。とりあえず、服を掴んでいる手に呪いを掛けて取れない様に細工した。

 

「ロォート。現状を報告、それと記憶を提出しろ……」

 

「はい。こちらです」

 

ロォートが握り拳を突き出して来るので、俺も握った拳をコツンとその拳に当てた。瞬間、流れ込んで来るのはロォートの記憶。それを確認して、因果律に干渉しこの世界へのアクセス状況を調べる。だが、この世界に干渉したのは俺の妖精魔法だけだった。ならばと思い、地球内部からの干渉を確認するがそれにもヒットは無い。

管制通信を開いてみても、発見の報告は見当たらなかった。時間が、刻々と過ぎて行く。出来るだけ素早く、取り返さなければカレルとリエラの命は無いだろう。

 

「チッ……後、出来る事は……」

 

等価交換を原則とした魔法くらいだろう。

だが、少しだけ躊躇する。それをするには、本体の【徳】がどうなっているかを考えなくてはならない。

前回、【外】へ出た際に俺は【神殺し】を実行している。

しかも、一柱だけでなく複数の神を屠っているのだ。

その時に、かなりの【徳】を消耗したはずなので、下手をすると自らを削る事になりかねない。

だから、一瞬だけ躊躇してしまった。

だけど、脳裏にフラッシュバックした思い出に背中を押されて等価交換を原則とした魔法を展開する。二度と、未来ある若い命を失わせたく無かったから……自らを削ってでも、助け出さなければという思いだけで行動した。

 

「世界よ、持っていけ!!等価交換の原則の元、我が身を対価として捧げる。我が望みは、カレルとリエラの元に転移する事!!術式展開……」

 

「え?え?ちょ、待って……今のどういう事なん!?」

 

「五月蝿い。ロォートは、ここにいろ。付いて来い!……ジャンプーーーー」

 

言った瞬間、俺の衣服を掴んで来た手が多数。

展開される魔法陣は、複雑奇っ怪な幾何学模様。

次の瞬間には、薄暗い場所に転移していた。

目の前には、泣き叫ぶカレルとリエラの姿。それを数人の男が見下ろしていて、中には黄泉岸航の姿も確認できる。

 

「《神威》……」

 

神速の領域に入り、状況を更に詳しく確認していく。

両サイドからは、俺の使い魔達が武器を構えて飛び出して行く所だった。転生者は、使い魔達に任せて俺はその場にいた男達を【真実の瞳】で確認する。

特異転生者、一般転生者、一般転生者、特異転生者、特異転生者……と、【神様転生】をした者とそうでない者の混合部隊であるという事が見てとれた。

通路の奥側に視線を向ける。そこにも、特異転生者がいて冷徹な視線をカレルとリエラに向けていた。

反対側の通路には誰もいない。魔力で強化ブーストした【真実の瞳】で、生体反応も確認したから間違いない。

例え、神々が妨害していてもブースト状態の【真実の瞳】の効果の方が上なのであちら側には誰もいない事は確かである。再度、人が隠れていた通路へと視線を向ける。

漸く、事態に気が付いたと思われる転生者が驚愕の表情を浮かべていた。一歩、前に出ようとして後ろに引かれる。

そう言えば、八神に呪いを掛けて外れない様にしていたっけ……仕方ないので、マジックハンドで八神を抱え通路に潜む誰かの元へ移動した。見れば、通路から見えていた転生者とは別にもう一人転生者と思う奴がいる。フードを深く被って、顔は見えなかったが唇に引いた紅から女だと推測された。一瞬、楓の事が頭を過るが【真実の瞳】は違うと否定する。ならば、鳴宮海沙姫!?と知っている転生者を次々に思い浮かべるがいずれも違っていた。

その『敵』は、俺に気が付いたとたん転移魔法で何処かへ消えて行ってしまったので、仕方なく俺は手前にいた転生者を取り押さえた。

 

 

 

 




双夜は、基本的に前衛ではなく後陣で技術開発とかをしている系統の研究者ですw これは、【次元の果て】の設定でもありましたので間違いないですw 棒術や槍術や薙刀が、マスター級ではありますが……前衛ではありません。
しかも、研究方針も戦闘系ではなく開拓やその後の開発を中心としたガチ研究者……所謂、マッドサイエンティストという人種ですね。ただ、技術が圧倒的に高いですがw 脳のホルマリン漬け?なにそれ、おいしいの?状態ですからw
そんなことしなくても、データは集められますのでww
魔術技術が5。科学技術(over technology)が3。魔科学が2の魔工技師ですねw魔科学は、融合型技術なのでまだレベルが低い状態です。
因みに、レベルは5が最大ですw

次回は、作者が遊び過ぎてしまった為……しばらく、5日置きとなります。申し訳ない……m(_ _)m

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m(_ _)m

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